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真の休日とは「インスタに載せる写真がない日」のことである…予定は「休息→運動→仕事」の順に立てるべき理由

プレジデントオンライン / 2024年7月25日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Daniel de la Hoz

元気に働き続けるにはどうすればいいのか。韓国のエッセイスト、イ・ダヘさんは「常に仕事を最優先にして働く生き方には無理がある。休みの日には有意義なことをしようとせず、ただ休む方法を身につけたほうがいい」という――。

※本稿は、イ・ダヘ『仕事帰りの心 私が私らしく働き続けるために』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■「生産性を上げなければ」と常に追い立てられている

私たちはいつも仕事に追われています。「私たち」と言いましたが、あなたはあなたなりに、私は私なりにできる限りのことをしようとがんばっている。燃え尽き症候群が問題になる理由は、仕事ができないからではなく、生活が回らなくなるからです(うつ症状は生活にも支障が出るし、場合によっては生活にだけ支障が出る場合もあります)。

「このところ忙しいでしょう?」という言葉がありがたい挨拶のように使われていて、「最近仕事が多くて」という言葉が謙虚な返事のように聞こえます。誰もが忙しい。お金はあまり稼いでいなくても、暇な人は見たことがありません。

だから生産性に関する強迫観念まで感じるようになります。一番多く寄せられる質問もまた、生産性に関するもの。

「どうすればそんなにたくさんの仕事ができるんですか?」

■休息と運動の時間を確保してから仕事の予定を入れる

私はまず休息のスケジュールを先に立てます。40代になる前までは、その次に仕事の予定を組んでいましたが、40代半ばになってからは、休息の後に運動のスケジュールを入れるようになりました。その次が仕事です。

仕事の時間を最小限にしないと、休息時間や運動の時間はとれません。私のスケジュール管理はざっくり言えばこれがすべて。

ジェシカ・チャスティン主演の映画『女神の見えざる手』を観ていて、目の前がくらくらしましたが、もしかしたら現代人のいう生産性自体を、映画の主人公ワシントンD.C.のロビイスト、エリザベス・スローンが象徴しているかもしれないと思ったからです。スローンは(少しオーバーに言えば)眠りません。

映画の内容は悪名高き(つまり抜きんでた実力の)ロビイスト、スローンが銃規制法案通過のために働く過程を描いています。参考までに、スローンが悪名高いといわれる理由は、法の境界を行き来し、公共の利益に反する法案も通過させてしまう敏腕ロビイストだから。

■覚せい剤を使ってまで働き続ける主人公

彼女はお金のために働きます。ところが銃規制法案は、今までスローンがやってきた仕事と正反対の性格のものでした。果たしてスローンは何を考えているのか。

映画の後半のスリリングなどんでん返しも見所ですが、観るたびに驚くのは、スローンの仕事の仕方、生き方です。彼女はなかなか休みません。スケジュールはびっちりで、その中で完璧に装い、メイクアップし、ぜんまいじかけの人形のごとく、誤差なく人に会い、仕事を処理する。それもただの仕事じゃない、莫大なお金がやりとりされる、実力者たちを動かす(脅迫もする)仕事です。

彼女は、それは優れた手腕の持ち主です。そしてワーカーホリックでもあります。ワーカーホリック、仕事中毒がどういう意味かわからなければこの映画を一度観ていただきたいと思います。

彼女は眠らないために、仕事をたくさんするために、覚せい剤を服用します。彼女なりのストレス発散法ですが、誰かにばれでもしたらすぐに弱点として利用されてしまう類のものでもあります。このすべての過程は、「無理やり」というより「かろうじて」やっているに近いように見えます。

プライベートを豊かに、あるいはのんびりと過ごすために働くのではない。仕事が先で、仕事がすべてなのです(※ここからは映画の結末についての話が出てきます)。

■海外渡航の直前まで徹夜で働いていた

超凄腕のスローンは、仕事に人生を捧げます。問題は私がこの映画を観ていて、そんなスローンに多少なりとも魅せられたという点です。私は休息のスケジュールをまず先に確保しておく、それこそ遊ぶために働く人ではあるものの、体力が許す限り、最大限がんばって働くことにも慣れています。

30代半ばまでは、海外に向かう飛行機に乗る直前まで徹夜しない日のほうが少なかった気がします。「機内で寝ればいい」。これが私のモットーでした。時間はいつも足りず、もったいなくて仕方のない資源でした。遊ぶのは好きですが、それと同じくらい仕事も重要でした。ある日、大学病院の眼科で検査を受けた帰りに、すぐに集中治療室に行くようにと言われる前までは、すべてがそんなふうに流れていたのです。

(説明するとなると長くて奇妙な経緯で)集中治療室に自分から歩いて入っていった患者とはいえ、退院してみると、お箸一つ持つのにも難儀しました。集中治療室、重患者室、一般病棟を経たとはいえ、私の体感では入院前の私はぴんしゃんしていたのに、ベッドに寝かされたまま集中治療室から重患者室に移動するときも休む間もなく電話をかけていました。

会社に状況を知らせなければならなかったし、翌日の約束はキャンセルしなくてはならなかったし、週末にも予定が入っていました。しばらくの間電話をかけまくってから、ベッドを押してくれている看護師に聞きました。

「重患者室では携帯を使えますか?」

看護師の返事は簡単です。

「そこまで元気な方はいらっしゃらないので……私もこういったケースは初めてで」

外からは元気そうに見えても、いつ何が起きてもおかしくないという診断でした。

■緊急入院を経てスケジュールの立て方を変えた

その入院以来、定期的に通院していますが(主治医の名前がよりによって私の嫌いな野球チームの主戦メンバーと同じ)、休息を最優先に、運動をその次に、仕事を最後に考えるようになりました。

それ以降、私にとって生産性とは映画の中のスローンとはまったく異なる性質のものになったのです。私の目標はいつもはっきりしています。私が生産性を高める理由は、すぐに仕事を終えて横になるためです。すっきりと軽やかな気持ちで横になるため。

秀でた実力を身につけることは諦めたとはいえ、急かされているような気分にならずに座って仕事をするには、運動は欠かせません。それに運動はちょっとおもしろいところもあります。運動の強度も簡単には上げず、定期的に運動することを目標にして、気分が落ち込みやすい冬場の数カ月は、できるなら仕事はしないようにしています。積極的に。

■生産性を上げて確保した時間に仕事をするスパイラル

でも、スローンは休むために働くのではない。仕事のために働きます。優秀な人だからこそ、仕事に時間を注いだ分だけ、普通の人たちでは夢にも描けないような成果を手に入れます(いけないと思いながらも観れば観るほどかっこいいと思ってしまう理由です)。

人生で一度ぐらいはスローンみたいに生きてみてもいいんじゃないか? でも、その「スローンみたいに」から「仕事」をとったら残るものは何もありません。

ワーカーホリックの男性たちを描いた映画でよくあるように、仕事には長けているが、人生(または愛)には不器用な人たちの典型です。生産性は永遠に引き上げなければならない何かになってしまう。生産性を引き上げる理由は、新しく確保した時間に仕事をするため。だから終わりがないのです。

では、スローンはいつ休んでいるのか? 牢獄に入ってやっと休めるのです。そこではスマホも覚せい剤もなく、彼女が出席しなければならないパーティーもない。強制的に仕事ができない状況にさせられて初めて、彼女は生産性という呪文から解き放たれます。

映画ではかっこいいエンディングかもしれませんが、現実のあなたには、もっと持続可能なやり方で仕事をしてほしいのです。生産性がつくりだしてくれた時間は余暇に、あなたにとって大切な人間関係に使いましょう。仕事ができなくなったときに、退屈だったり寂しくなったりしないように。

■休日の過ごし方すら「使える」が基準になってしまう

余暇の過ごし方についても、生産性が大切だと信じている人がたくさんいます。週末に遊びに行く場所でどうやったら新たなインスピレーションを得られるか、読書からいかに学びを得るかというこまごましたプラン、さまざまな生産性のためのツールを使ったチェックアップが一般的になっています。インスタグラムやツイッター〔現X〕に余暇を記録する行為は、個人のブランディングの延長として受け止められます。

友人Aは小説を読む必要がなくなってからは(つまり学校を出た後は)一編も読んでいないそうです。時間の無駄だと。週末にカフェに行くときも新しい場所に行かなければ気がすみません。すでに行ったことのある場所にまた訪れるのは時間がもったいないからと。

新しい経験をするとき、「この経験が自分にどんな意味をもたらすか」を考えながら経験をスタートさせるわけです。ダイアリーをデコる人は、ダイアリーにどうやって記録するか悩み、映像や写真メインで活動する人は、そのワンカットワンカットを考える。

私はそうじゃないという秘訣をシェアしたいところですが、私も同じです。ただ「これをどうやったら使えるか」と考えないように努力しているだけ。

■遊ぶ時間も仕事につなげてしまう考え方から抜け出す

どうしたら仕事をたくさんできるのか? よくこの質問をされますが、私の答えはいつも同じです。働いている時間以外は遊ぶ。ここで「遊ぶ」というのは、本当に遊ぶという意味です。

誰とどこでどう過ごすかを証明する理由はなく、休息している間にどんな本を読んでいるのかを誰かに知らせる必要もありません。私はSNSをやってはいますが、遊んでいる間はいっさいアクセスしません。週末旅行に出かければ時間をかけて本を読んだり、音楽を聴いたりする以外の用途でスマホを開くこともありません。

遊びついでに何かをすると考えると、遊ぶ時間も仕事になってしまいます。最初はプレッシャーはないかもしれないし、プレッシャーがない間は気の向くままでいても問題はないでしょう。

余暇を自己啓発あるいは自己PRにつなげるのは1年ぐらいなら気楽にやっている人もいるようだし、5年経っても軽々やっている人だっています。でも何かを経験しているときに、目の前の状況に集中できないのならば、燃え尽き症候群(以下、燃え尽き)になるサインはすでにでています。

職場で深夜にストレスを感じるビジネスパーソン
写真=iStock.com/PeopleImages
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

ほかの人の目にさらされない自分だけの時間を持つ方法を見つけるようにしましょう。その活動あるいは関係は、他人から認めてもらったり評価されたりする必要がなければないほどいいでしょう。家族とよい関係を保っている人たちが、コンスタントに何かを達成しているのは決して偶然ではありません。

休暇は「目の前の今ここに集中」する時間であってほしいと思います。登山や水泳をはじめ、体を使うレジャーがおすすめなのは、集中しないと事故になりかねないので、十分楽しめないからです。「これを活用して次のレベルにいかなくては」と常に悩んでいる状態を、休暇とは呼ばないのですから。

■休んだことのない人は「ただ、休む」ことができない

30代後半を過ぎると、仕事を20年近くしてきた人たちが似たようなことを口にします。仕事好きだという事実を認めるべきだと。仕事が好きだと言っているのであって、同僚が好きだとか会社が好きだという意味ではないのは先に強調しておきたいところです。仕事だって、仕事によります。

なぜ年齢の話をもちだしたかというと、仕事が自分の思いどおりにはいかないという事実を、本格的に受け入れる時期は遅かれ早かれ、誰にでも訪れるからです。

20年近く働いていると、燃え尽きは一度や二度は経験している人がたくさんいます。もちろん視野には燃え尽きから生き残った人たちだけが見えている。燃え尽きで離脱して帰ってこられなかった人たちは、あなたの目の前にはいないのですから、実際にはみんなが克服しているように見えるはずです。

だから燃え尽きになったら、無理やり休息を楽しもうとは考えないように。休んでみたことのない人は、「ただ」休むことを実行できません。お酒を思い切り飲むだとか、友人たちと話題のスポットに出かけるというパターンの休息は、多くの人たちが家庭を築き、家で休みたがる年齢になると、だんだん難しくなってきます。なんの悩みもないように見える人だって、実際話してみると、あれこれ心の中は悩みでいっぱいなのです。

■仕事をやめたときに自分には何が残るのか

十数年間仕事をしていると、仕事が自分のアイデンティティのとても大切な一部だと気づかされます。仕事が減っていく心配、引退の心配、お金の心配だけじゃありません。仕事をきっかけにした他人との関係、あるいは社会的な認知もまた、仕事がもたらしてくれた財産です。つまり、仕事がなくなったら、私自身をなんと紹介すればいいのかまったく思い浮かばなくなっているわけです。

いわゆる仕事の延長としての人間関係が余暇活動にもすべてつながっていると、この問題はもっと深刻になります。業界を離れてからも業界の知人たちと付き合うような関係なのか? そうじゃないなら仕事を辞めて残る人は誰で、自分は時間をどうやって使うつもりなのか?

余暇を生産性の観点でとらえると、燃え尽きになった後にどんなことをしてもまったく回復の兆しが見えない現象も発生します。口では余暇と言っているものの、実際にはずっと何かをつくるために努力している途中だからです。「この経験をどうやって活用するか考えないようにしよう」と思わないと、考えてはいけないとも思わないまま、ただ時間だけが過ぎます。そうしてぼんやりと気づくのです。

自分は休み方がわからないんだ、と。

■インスタに載せる写真が1枚もない日がちゃんと休んだ日

他人との交流はネットワーキング、週末はアイディア集め、SNSアップロードはブランディング。こうしたパターンで過ごしていると、目的をもたずに休むこと自体をそもそも忘れてしまいます。そして仕事を始めて10年が過ぎてみると、それぞれの分野の成長の勢いは鈍っていて、新たな試みにトライする余暇なしには仕事も生まれなくなっている。

イ・ダヘ『仕事帰りの心 私が私らしく働き続けるために』(かんき出版)
イ・ダヘ『仕事帰りの心 私が私らしく働き続けるために』(かんき出版)

単純に考えてみましょう。マラソンを走るなら100キロマラソンのように走ってはいけません。能率にこだわらない時間をしっかりと確保するべきです。ほかの人たちに知らせなくても、すごい方法で伝えなくても、自ら満たされる時間をつくれるようにしましょう。

肉体疲労は虫眼鏡のようにすべての問題を拡大してしまう傾向があります。だから、しっかりと休ませてあげるべきです。でも休めというと、「どうやって休むのかわからない」という人たちが意外にも多いもの。休むというのは、「する」行動ではなく「しない」行動です。

何かをしなければならない状態をなぜ休息と呼ぶのでしょう。勤勉な現代人ならば、インスタグラムに載せる写真のない一日こそが、ちゃんと休んだ一日です。

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イ・ダヘ 作家、映画雑誌記者
著述と公演を生業とする。CGVシネライブラリー「イ・ダヘのブッククラブ」、ポッドキャスト「イ・ダヘの21世紀シネフィックス」、ネイバーオーディオクリップ「イ・スジョン、イ・ダヘの犯罪映画プロファイル」のパーソナリティを務めた。現在KBSラジオ「イ・ダヘの映画館、チョン・ヨウルの図書館」を担当。著書に『明日のための私の仕事』『旅の言葉』『朝食:朝食中に思ったこと』『とにかく、スリラー』など多数(すべて未邦訳)。

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(作家、映画雑誌記者 イ・ダヘ)

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