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最も評価されるのは「トッププレーヤー」ではない…"営業利益率55%超"キーエンスがリーダーに求める能力

プレジデントオンライン / 2024年8月2日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tadamichi

キーエンスの営業利益率は55%超と高い。強さの秘訣は何か。元キーエンス社員でアスエネ共同創業者の岩田圭弘さんは「組織の成果を向上させるには、再現性の高い結果を生み出すための仕組み化が重要だ。キーエンスでは、仕組み化ができない人はリーダーになれない」という――。

※本稿は、岩田圭弘『仕組み化がすべて』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

■「再現性の高い結果を出すチーム」をつくる

「営業利益率は脅威の55%超」「社員の平均年間給与は2000万円超」など、キーエンスは日本の製造業の衰退が叫ばれる中で、目覚ましい成果を上げる企業として注目を浴びています。その強さの背景にあるのは「仕組み化」です。

組織の成果を向上させるには、属人的な依存を防ぎ、再現性の高い結果を生み出すための仕組み化が重要です。そして組織の成果はメンバーの行動の総和です。

つまり、行動量と成果の相関関係を見極め、最低限必要な行動を仕組みとして規定し、共有することが求められます。そのため優れた行動を言語化し、組織全体で実践することで安定的な成果につなげることができます。

したがって組織全体の結果を出すためには、メンバーの行動を適切な方向へと導く仕組み化が重要です。

ただし、仕組み化の際にはメンバーの自主性や創造性を損なわないよう注意し、柔軟性のある仕組みを構築することが大切です。また、仕組みの定着にはメンバーへの丁寧な説明と適切なフォローアップが欠かせません。詳しく見ていきましょう。

■トッププレーヤーが抜けても結果を出せる組織に

組織の成果を上げるためには、仕組み化が重要です。その理由は、属人的な依存を防ぎ、再現性の高い結果を生み出せるようになるためです。仕組みがない状況では、メンバーがそれぞれの考え方ややり方といった我流で仕事を進めてしまいがちです。

営業を例に取ると、トッププレーヤーと呼ばれる優秀な人材と、そうでない人材の間で成果に大きな差が生じることがあります。トッププレーヤーの行動が言語化されて仕組み化され、組織内で共有されていない場合、トッププレーヤーが抜けた途端に組織の業績が落ち込むという属人化の問題が発生します。

一方、仕組みが整備されていれば、優れた人材の行動を言語化し、それを仕組みに組み込み組織内で共有することで、全体として再現性の高い成果を上げることができます。

つまり、属人的な依存を避け、安定的な結果を生み出すために、仕組み化が必要不可欠なのです。さて、ここで考えたいのは、組織の成果と個人の行動の関係性です。

組織の成果は、所属するメンバーの行動の結果であると言えます。つまり、組織の成果は「メンバーの行動の総和」なのです。

再び営業部門を例に取ると、成果を上げている人は、そうでない人に比べて多くの行動を取っているはずです。この行動量と成果の因果関係を見極め、最低限必要な行動を仕組みとして規定して組織内で共有することが重要です。

■ビジネスにおける成果は確率論である

たとえば提案書の提出率と商談獲得率の関係性を分析し、提案書を提出した時のほうが商談獲得率が高いとわかれば、提案書提出率を上げることを組織全体で取り組むべき課題として設定することもできます。面談したうち提案書を提出する比率を30%に設定し、全員で実践するといった具合です。

ビジネスにおける成果は、確率論に基づいています。つまり、いくつかの変数があり、その中で相関関係のあるものを見出し、実践することで結果が出やすくなります。営業であれば、面談の件数や提案書の提出件数などが変数となります。ただし、これらの変数は企業によって異なるでしょう。

ビジネスにおける成果が確率論である理由は、顧客という相手があるからです。たとえば、100件の面談を行ったからといって、100件すべてが成約するわけではありません。相手の気持ちや状況をコントロールすることはできないため、結局のところ確率の問題に帰結するのです。

組織の成果を上げるためには、この確率をいかに高めるかが重要です。つまり、行動の量と質を上げることに尽きます。

散乱した数字と虫眼鏡
写真=iStock.com/patpitchaya
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/patpitchaya

このへんについては拙著『数値化の魔力』にて詳しく紹介しています。そのためには優れた行動を言語化して仕組み化し、それを部門全体で実践することで確率を高め、安定的な成果を生み出すことが必要です。

■アポ取りから面談まで一連の行動を「仕組み化」する

組織全体としての結果を出すためには、バラバラになっているかもしれないメンバーの行動を適切な方向へと導くことが重要です。そのために有効なのが、仕組み化による行動の統一です。

営業部門を例に取ると、面談の実施、アポイントメントの取得、電話でのコミュニケーションなど、営業活動における一連の行動を仕組み化することで、各メンバーの行動が成果につながりやすい行動になり、組織としての底上げができます。

他の部門、たとえば人事部門などにおいても同様のことが言えます。採用プロセスを例に取ると、応募から入社決定までの一連の流れがあります。その中で、内定承諾率を高めるためのクロージング方法に着目してみましょう。

たとえばクロージングの際に電話をかける人と、メールのみを送信する人がいます。もし、電話をかける人の内定承諾率が高いことがわかれば、全体でクロージングコールを行うような仕組みを作ることで、内定承諾率を上げることができるでしょう。

一方、バックオフィス系の業務においては、確率を高めるというよりも、納期を守ることが重要になります。たとえば、決算資料の作成において、何日以内に仕上げるというルールがない場合、仕事が進まないことがあります。

■メンバーへの説明とフォローアップは必須

このように、業務を前に進めるという観点では、どの部門においても仕組み化が必要だと言えます。業種単位でも同様です。

たとえば製造業であれば、経理部門が支払いを滞らせてしまうと必要な部品が入ってこなくなり、製品の製造ができなくなってしまいます。つまり、組織内の各部門の業務は密接に関連しているため、一部門の遅れが全体のフローを停滞させてしまうのです。このような事態を防ぐためにも、しっかりとした仕組みを構築することが不可欠です。

以上のように、組織全体としての結果を出すためには、メンバーの行動を適切な方向へと導く仕組み化が重要であることがわかります。営業部門であれば成果につながる行動の確率を高め、人事部門であれば内定承諾率を上げ、バックオフィス系の部門であれば納期を守るなど、それぞれの部門の特性に応じた仕組み化を行うことで、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。

ただし、仕組みを定着させるためには、メンバーへの丁寧な説明と、適切なフォローアップが欠かせません。組織全体の成果は、一人ひとりのメンバーの行動の積み重ねによって生み出されます。メンバーの力を最大限に引き出し、組織の目標達成につなげていくためには、適切な仕組み化が重要な鍵を握っているのです。

タブレットと資料を示して打ち合わせ
写真=iStock.com/Jirapong Manustrong
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Jirapong Manustrong

組織の状況に合わせて、柔軟かつ効果的な仕組みを構築していくことで、組織のパフォーマンスを持続的に向上させていくことができます。

■組織で結果を出すためには「仕組み化」が必須

企業では、個人の力だけでなく、チームや組織としての力が求められます。組織で結果を出すためには、仕組み化が非常に重要だと言えます。

仕組み化とは、業務を標準化し、誰でも同じ品質で業務を遂行できるようにすることです。この仕組み化ができていないと、様々なデメリットが生じます。まず、仕組み化ができていないと、業務を人に任せられず、自分自身がいつまでも1プレーヤーでなければなりません。

そうなると、マネジメントに上がることができず、組織を作れない人になってしまいます。

次に、仕組み化ができていないと、業務量が増え続け、本人の業務が十分にできなくなってしまいます。また、精神的にもつらい状況に陥ってしまうでしょう。

さらに、組織では、全体の力が働くことで結果が出ます。しかし、仕組みがないと、各人がバラバラに動いてしまい、組織としての目標にまとまりがなくなり結果が出ないということになります。

つまり、仕組み化ができていないと、組織運営そのものができなくなってしまうのです。チームや組織で動くためには、何らかのルールが必要不可欠です。仕組みがないと、組織が崩壊し、個人でやっているだけになってしまいます。そうなると、階層も作れず、人も増やせず、拡大もできなくなってしまいます。

■「仕組み化できない人」はリーダーにはなれない

会社では、組織で結果を出せる人が最も評価されます。逆に言うと、組織で結果を出せない人は評価されないということになります。なぜなら、1人の力は限られているからです。3人で仕組み化できる人は、10人、100人になっても、その力を扱えます。しかし、仕組み化ができない人は、ずっと1のままなのです。会社も伸びていきません。

岩田圭弘『仕組み化がすべて』(SBクリエイティブ)
岩田圭弘『仕組み化がすべて』(SBクリエイティブ)

ただし、個人で結果を出すことが最初から必要ないというわけではありません。入社したばかりでプレーヤーのときは、個人で結果を出すべきです。自分でやってみて、結果が出て、そこから仕組み化するというのが一般的な流れです。

つまり、自分の階層が上がっていくにつれて、だんだん個人から組織へと頭を切り替えていく必要があります。組織が拡大していく中で、新しい人たちをうまく機能させられるかどうかが、仕組み化の力だと言えます。

以上のように、組織で結果を出すためには、仕組み化が非常に重要です。個人の力を発揮しつつ、徐々に組織の力を引き出していける人こそが、ビジネスの現場で求められる人材だと言えます。

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岩田 圭弘(いわた・よしひろ)
アスエネ共同創業者 兼 取締役COO
慶應義塾大学経済学部卒業後、2009年にキーエンスに新卒入社。マイクロスコープ事業部の営業を担当。2010年新人ランキング1位を獲得。その後、2012年下期から3期連続で全社営業ランキング1位を獲得し、マネージャーに就任。その後本社販売促進グループへ異動、営業戦略立案・販売促進業務を担当。2015年、三菱UFJリサーチ&コンサルティングに転職。小売、医薬、建設業界の戦略策定、新規事業戦略策定に従事。2016年にキーエンスに戻り新規事業の立上げに携わる。2020年アスエネに参画。

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(アスエネ共同創業者 兼 取締役COO 岩田 圭弘)

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