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「営業の厳しい服装ルール」は逆効果の可能性…"社員の年収2000万超"キーエンスが「見直し続けているもの」

プレジデントオンライン / 2024年8月6日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/filadendron

キーエンス社員はなぜ高い成果を出せるのか。元キーエンス社員でアスエネ共同創業者の岩田圭弘さんは「キーエンスの成果を支えているのは『仕組み化』だ。仕組み化には4つのステップがある」という――。

※本稿は、岩田圭弘『仕組み化がすべて』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

■チーム全体の成果を出すための仕組み化「4つのステップ」

日本の製造業の衰退が叫ばれる中で、「営業利益率は脅威の55%超」「売上高1兆円に満たないながらも、日本の時価総額ランキングで第5位にランクイン」と言われ、キーエンスは目覚ましい成果を上げる企業として注目を浴びています。その成果を支えているのが「仕組み化」です。

組織全体の成果向上のために、マネジャーは仕組み化を推進し、チーム全体での成果を最大化することを優先すべきです。それは、仕組み化により、部下の実力を引き上げ、チーム全体の成果を倍以上にすることが可能だからです。

それでは、チーム全体の成果を出すための仕組み化は、どのようなステップで実現できるのでしょうか。それは「標準化」「浸透」「振り返り」「責任と権限」の4ステップです。一つひとつ見ていきましょう。

■ルールを作り、浸透させていく

STEP1 標準化――全員の行動を一緒にする

仕組み化において最初に行うべきは標準化、つまりルールづくりです。課題を解消するための対策を考え、それを仕組みとして言語化することが肝心です。この言語化されたルールがなければ、メンバーの各人が何をすればいいのかわからないからです。

ただし、ここで言う仕組み化は、単なるルールづくりだけではありません。ルールを浸透させ、理解してもらい、責任と権限を委譲することまでの、組織へのインストールの方法も含んでいます。標準化はその中の第一歩となります。

標準化において重要なのは、ルールを明文化することです。しかし、その前に課題を明確にし、その課題に対してどのようなルールを設定するのが適切なのかを考える必要があります。仕組み化はあくまで問題解決のためにあるのです。

意味のあるルールにするためには、目的を伝えることが重要です。キーエンスでは、必ず目的を浸透させることから始めます。目的のないルールは守られなくなったり、「なぜこれをやるのか」という疑問を生じさせたりしてしまいます。ルールを明文化することも大切ですが、その目的をしっかりと伝えることがポイントなのです。

■目的を明確に示すことが必要不可欠

メンバーに納得して実行してもらうためには、目的を明確に示すことが必要不可欠です。そのためには、何の課題に対して何をするのかが論理的に整理されていなければなりません。

また、社会情勢の変化に伴い、ルールも変えていく必要があります。当初の目的から現行のルールがズレていないかを確認するためにも、目的を中心に置くことが重要です。

そもそも、仕組み化の第一歩が標準化である理由は、仕組みを作るための基準を確認する必要があるためです。基準に基づいた仕組みであれば、違和感を覚えずに行動に移すことができます。社会的慣例に基づいた法律でなければ、遵守する意義を見出せないことに似ています。

以上のように、仕組み化において標準化は非常に重要な役割を果たします。課題解決のために適切なルールを明文化し、その目的をしっかりと伝えることで、メンバーに納得して実行してもらうことができます。

■Why、What、Howをもれなく説明する

STEP2 浸透――全員に“実際に”行動してもらう

組織の力を最大限に発揮するためには、標準化された仕組みを組織全体に浸透させることが非常に重要です。そして仕組みを浸透させるには、まず目的をしっかりと理解させる必要があります。

仕組みを実行する意味を組織のメンバー全員が理解していなければ、各人が行動に移すことはできません。

また、何をどのようにやるかというルールを明確に伝えることが求められます。Why(なぜ)、What(何を)、How(どのように)の3点を漏れなく説明することで、メンバーの理解度は格段に高まります。

浸透の方法には、文書の回覧や掲示で済むケースもあれば、メールやグループウェアなどで配信する場合もあります。特に重要度が高い内容は直接全員に伝える必要があるなど、いくつかのパターンがあります。仕組みの内容や重要度に応じて、適切な浸透方法を選択することが求められます。

多くの企業では、仕組みの浸透が不十分なためにメンバーの行動が伴っていないケースが見受けられます。仕組みを実行するための目的が理解されていなかったり、行動指針が明確でなかったりするためです。

会議、スピーチをするビジネスマン
写真=iStock.com/Prostock-Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Prostock-Studio

■20人の行動と100人の行動では成果が全然違う

仕組みの浸透の成果は、次のステップの「振り返り」で確認できます。仕組みを実行した結果を評価し、改善につなげていくためには、メンバー全員が仕組みをしっかりと理解し、行動に移す必要があります。

組織の成果は、メンバー一人ひとりの行動の積み重ねによって生み出されます。20人が行動するのと、100人が行動するのでは、組織の成果に大きな違いが生まれます。組織の力を最大限に引き出すためには、できるだけ多くのメンバーを巻き込み、行動してもらうことが不可欠です。

仕組みを浸透させる際には、KPI(重要業績評価指標)を設定することも有効です。目標を数値化することで、メンバーは具体的に何をどれだけ行動すればよいのかを理解しやすくなります。

また、振り返りの際にも、目標に対する達成度を評価することができます。標準化された仕組みを組織全体に浸透させ、メンバー一人ひとりの行動を促していくことが、組織力を最大化するための鍵と言えるでしょう。

■社会情勢の変化に合わせたルールの更新が重要

STEP3 振り返り――ルールを見直し、「成果の再現性」を高める

振り返りのステップは、前のステップで定めたルールや仕組みが目的通りに機能しているかを評価し、必要に応じて見直しを行う重要なプロセスです。

まず、浸透のステップで伝達したルールが、実際にメンバーの行動に反映され、当初掲げた目的や数値目標の達成に寄与しているかを確認します。この振り返りがあることで、ルールを策定しただけで満足することなく、実効性を検証し、改善につなげることができるのです。

また、社会情勢の変化に応じてルールを見直すことも大切です。たとえば、コロナ禍でオンラインでの面談が増えた場合、従来の対面を前提としたルールが適切でなくなっている可能性があります。

このように変化に合わせてルールを更新しないと、非効率な業務プロセスが残ってしまうリスクがあるのです。ルールや仕組みは、組織の大勢を一気に動かすことができるパワフルなツールである一方で、マイナスの影響も大きくなりがちです。

無駄なルールや時代に合わなくなったルールが残っていると、一人ひとりの行動量の無駄が組織全体で積み重なり、機会損失にもつながりかねません。

たとえば、お客様への悪印象を避けるために厳しい服装ルールを設けていたとしましょう。しかし、ビジネスカジュアルが一般的になった現在、そのルールを守ることが逆に自社の採用に悪影響を及ぼすかもしれません。

スーツを着た男女のビジネスパーソン
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

■無駄なルールに時間を使うのは機会損失

あるいは、ある社員が1日のうち1時間を無駄なルールに従うために費やしているとしましょう。1人であれば1時間の損失で済みますが、100人の組織であれば、100時間分の行動量が無駄になってしまうのです。これは単なる時間の浪費だけでなく、その時間を本来の業務に充てることができれば得られたかもしれない利益を損失しています。つまり機会損失でもあるのです。

また、状況の変化に応じてルールを柔軟に変更できないことも、組織にとって大きなリスクとなります。このことは戦争にたとえるとわかりやすいでしょう。戦争において、晴天を前提に立てた作戦を、突然の悪天候の中でも変更せずに実行してしまえば、多くの兵士が敵に倒されてしまうかもしれません。

企業活動においても同様に、社会情勢や顧客ニーズの変化にルールを適応させていく必要があります。変化に対応できない硬直化したルールは、組織の競争力を損ない、市場での敗北を招くリスクがあるのです。

したがって、組織のルールやプロセスは定期的に見直し、無駄や非効率を排除していくことが重要です。それには、現場の社員の声に耳を傾け、変化のサインを敏感に察知する感度の高さも求められます。

過去の前例にとらわれず、現状に合ったルールを追求する。その積み重ねこそが、組織の生産性を高め、目的達成を後押しする鍵となります。

■「自分がいなくても回る仕組みを作る」のがマネジャーの役割

STEP4 責任と権限――自分がいなくても、回るようにする

ビジネスにおいて、責任と権限を明確にすることは非常に重要です。ルールや権限を設定した後、そのルールや権限に対して誰が責任を持つのか、どのくらいの頻度でルールを見直すのかを明確にしておかないと、ルールが形骸化するリスクがあります。

たとえば、営業部の課長が責任を担うと決めておけば、その課長がいなくなっても次の課長がルールがちゃんと機能し続けるようにメンバーに指導するでしょう。自分がいなくても回るような仕組みを作ることが、マネジャーの役割だからです。

ただ、自分の存在意義がなくなってしまうのではないかと不安に感じるマネジャーもいるかもしれません。しかし、仕組み化によって浮いた時間を使って、別の付加価値を生み出せば、会社からの評価は上がるはずです。周りの人ができていないことをマネジメントできるようになれば、高く評価されるでしょう。

虫眼鏡で分析するビジネスマン
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

■5人のチームで成功したら、次は10人のチームを作る

ある程度仕組みが定着したら、その仕組みを人に任せて、自分は新たな仕組みづくりに回るのがよいでしょう。そうやって組織の成果を最大化できる仕組みを次々と作っていくことが、組織から評価され続けるポイントです。

岩田圭弘『仕組み化がすべて』(SBクリエイティブ)
岩田圭弘『仕組み化がすべて』(SBクリエイティブ)

たとえば、5人のチームで成功したら、次は10人のチームを作る。そして10人のチームが自動で回るようになったら、また新たに10人のチームを作っていく。そんな風にステップアップしていくことが重要だと言えます。

いきなり大きな権限を部下に与えるのはリスクが高いかもしれません。しかし、5人のチームを回せるようになったら次は10人、10人のチームを回せるようになったら次は20人というように、徐々に権限を拡大していけば、部下もスキルアップしていけるはずです。

責任と権限を明確にし、自分がいなくても回る仕組みを作ること、そしてその仕組みを作ったら次の仕組みづくりにシフトしていくことが、マネジャーに求められる重要なスキルだと言えます。

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岩田 圭弘(いわた・よしひろ)
アスエネ共同創業者 兼 取締役COO
慶應義塾大学経済学部卒業後、2009年にキーエンスに新卒入社。マイクロスコープ事業部の営業を担当。2010年新人ランキング1位を獲得。その後、2012年下期から3期連続で全社営業ランキング1位を獲得し、マネージャーに就任。その後本社販売促進グループへ異動、営業戦略立案・販売促進業務を担当。2015年、三菱UFJリサーチ&コンサルティングに転職。小売、医薬、建設業界の戦略策定、新規事業戦略策定に従事。2016年にキーエンスに戻り新規事業の立上げに携わる。2020年アスエネに参画。

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(アスエネ共同創業者 兼 取締役COO 岩田 圭弘)

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