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冷暖房ランニングコストが安いのは「平屋より2階建て」…一級建築士が「それだけはやめろ」という家の"方角"は

プレジデントオンライン / 2024年8月2日 6時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/west

■“現代版家相術”でお金が増える家を目指す

玄関に金色のものを置くとお金が貯まる――。過去に流行した風水の影響で、「金運が上がるもの」を信じている人がいるかもしれません。しかし、そんなことでお金持ちになれるなら、誰も苦労はしませんよね(笑)。

とはいえ、私は家相や風水を頭から否定するつもりはありません。

たとえば家相では「裏鬼門(南西)に台所をつくってはいけない」と教えます。南西は家の中で温度が高くなりやすい場所で、食材を置いておくと傷みやすい。このように、理屈の通った教えもあります。

ただ、それも冷蔵庫のなかった時代の話です。先人たちの知恵も、科学の発達やライフスタイルの変化に合わせて、科学的根拠に基づいた“現代版家相術”へとアップデートする必要があります。

では、現代の視点でお金が貯まる家とは、どのようなものなのか。一言で言えば、「健康を維持できて光熱費を抑えられる家」です。

金運を変えることはできませんが、冷暖房効率がよくなる間取りにすれば、そうではない場合と比べて月々の家計が確実に楽になります。また健康であれば医療費を抑えられます。

■お金が出ていく家は冬に弱い

冷暖房効率を左右する要素は複数ありますが、家選びでまず重視するのは「方角」です。メインで生活する部屋がどちらの方角にあるか、また部屋の窓がどちら向きかで、冷暖房の効きが変わります。

冬は、日差しが入りにくい北側がもっとも寒く、暖房を強力にかけるぶん光熱費がかさみます。逆に光熱費がもっとも少なくなるのは日差しが入る南側です。そう考えると、メインで生活する部屋は南に置いて、窓を大きく取るといい。

しかし、夏は逆です。日差しをよく取り込むと、部屋が暑くなりすぎて強い冷房が必要になります。とくに西向きの窓は最悪です。西日は午後の気温がもっとも上がる2〜4時頃に差し込みます。部屋がサウナのように加熱され、冷房も効かずに光熱費がかさみます。

問題は、間取りは固定のものであり、季節によって変えられない点です。光熱費を節約したければ、夏と冬どちらの季節を優先して間取りを考えるべきでしょうか。

答えは冬です。月々の光熱費を比べると、一般的には夏より冬のほうがより多くの電気を使います。

また、日差しの取り込みには限界がありますが、逆に遮蔽することは容易です。

たとえばカーテンやブラインドで日射熱は4割カットできます。さらに効果が高いのは窓の外側に付けるアウターシェードです。バルコニーがある部屋ならヨシズを立てかけてもいい。日差しを窓の外側で遮蔽すれば、日射熱を8割減らすことができます。このように夏の日差しはコントロール可能なので、家の間取りは冬を想定して考えるべきです。

■お金が増える家は表面積が小さい

冷暖房効率を決める要素は、日射量以外にもあります。屋内の「断熱性」と「気密性」です。断熱性や気密性が高いと熱損失が少なくなり、冬は暖かさを、夏は涼しさを外に逃がしにくくなります。

熱損失の大小は、建物の表面積によっても決まります。バイクの空冷エンジンについているひだ形状の放熱フィンは、表面積を大きくしてエンジンの熱を外に逃がすためにあります。家も同じで、表面積が大きい、つまり外気や地面と接している面積が大きいほど、外の気温の影響を受け、冷暖房の効率が落ちます。

あたりまえですが、家は大きくなるほど、表面積も大きくなります。ただ、冷暖房効率を高めるためにわざと家を小さく建てる人はいません。大切なのは、居心地のよい家の大きさを確保したうえで、いかに表面積を小さくするかです。

実は同じ延べ床面積でも、形状によって表面積は変化します。わかりやすく1辺1メートルの立方体8個で考えてみましょう。

表面積がもっとも小さくなるのは正6面体の場合で、表面積は24平方メートル。2階建てアパートのようにブロックを1列横に2層分並べた直方体だと28平方メートル。コの字に並べた平屋は34平方メートルになります。

つまり同じ大きさなら、平屋より2階建てで、できるだけ立方体に近いほうが弱い冷暖房でも室温をキープできることになります。

なお、表面積が増えると外壁材も多く必要になり、とくに平屋は屋根面や基礎面が増えるため、工事費が高い。平屋は光熱費などのランニングコストだけでなく、建てるときにも多くの費用がかさむと覚悟してください。

平屋に住むとお金が減る理由

断熱性を高めるには窓の大きさも重要です。窓は壁に比べて断熱性能が劣ります。かといって、小さいと日差しを取り込めないので、南は窓を大きく取り、東西北は小さめがよいです。東西北面の窓には遮熱Low-Eガラス、南面には断熱Low-Eガラスがオススメです。

すでに住んでいる家の断熱性を高めたいなら、天井に簡単なリフォームを施すといいでしょう。たとえば、屋根裏や天井裏に「現場発泡ウレタン」を吹き付けると、泡が固まって断熱性が劇的に高まります。ケース・バイ・ケースですが、リフォーム費用は20万〜30万円。ちょっとした出費にはなってしまいますが、光熱費のコストダウンによって、リフォーム費用は5〜6年で回収できます。

(後編へ続く)

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年7月19日号)の一部を再編集したものです。

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松尾 和也(まつお・かずや)
松尾設計室代表取締役、一級建築士
設計活動のほか、住宅専門紙への連載や「断熱」「省エネ」に関する講演など、多岐にわたって活躍。著書に『お金と健康で失敗しない間取りと住まい方の科学』(新建新聞社)など。

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(松尾設計室代表取締役、一級建築士 松尾 和也 構成=村上 敬)

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