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だから圧倒的パワーで数々の成功をおさめた…稲盛和夫が新たな仕事を生み出すときに何度も自問自答した言葉

プレジデントオンライン / 2024年7月23日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Gearstd

我欲ではなく、利他の心で仕事に取り組むにはどうすればいいか。禅僧の枡野俊明さんは「人間の欲に翻弄されないためには、他人のことを考えずに自分の利益ばかりを求める『我欲』ではなく、人の背中を押し、良い方向への推進力となる『意欲』を持つことで前向きに生きられる。京セラやKDDIの創業者である稲盛和夫さんは、新しい事業やプロジェクトを始めるとき、何度も何度も『自分自身や会社の利益だけでやろうとしていないか』『皆に喜んでもらえるものだろうか』などと時間をかけて自問自答し、『よし、大丈夫だ』と思ったら、圧倒されるほどのパワーで事業を推し進めた」という――。

※本稿は、枡野俊明『迷ったら、ゆずってみるとうまくいく』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

■やりたい仕事がかち合ったら「ゆずる」べきか

ゆずると気持ちが明るくなる――禅が教える「共にきれいになる生き方」

エレベーターや駅の自動改札、狭い道などでタイミングが同じになって、人とかち合ってしまい、どうしようかと迷うことがよくあるものです。

そうしたとき、私は「お先にどうぞ」と先をゆずるようにしています。すると、相手はニッコリしてお礼の会釈をしてくれ、ゆずった自分も気持ちよくなります。

ところが、それが当然のように目を合わさずに無言で先を行く人もいます。そんなときは、「ああ、残念だな」という気持ちにもなります。

あるいは電車やバスで、席をゆずってもらうのが当たり前のようにお礼のひと言もなく座ってしまう人もいます。そんな場合も気持ちよいものではありません。

それでも、私は「ゆずる」気持ちを大切にしています。お互いにニッコリ笑顔で心地よく過ごせるように、ゆずり合いの気持ちをいつも持っていたいからです。

気持ちよくゆずることができた日は、「今日は調子がいいな」と明るい気分で過ごせます。

ビジネスシーンにおいても、「かち合う」という場面はよくあります。

所属部署に魅力的な仕事が舞い込みました。リーダーの「やりたい者はいるか?」の声に、やる気のある人なら皆手を挙げるでしょう。もし自分が担当して成功すれば、それは大きな評価につながるのはもちろん、自身のキャリアアップにもなります。

しかし、担当できるのはひとりです。リーダーは誰を選ぶのか。同僚に担当をゆずると、自ら負けを認めた気持ちになるかもしれません。かといって、「私が、私が……」と人を押しのけてまで自己主張するのも憚られます。

こんなときにも、ゆずり合いの気持ちを持つべきなのでしょうか――。

■協力関係や信頼関係が醸成され切磋琢磨できる

「勝ち組・負け組」などという、弱者切り捨てにつながる格差的な言葉がふつうに使われるようになって20年以上が経ちます。

働いた人が働いた分だけ評価を得られるのはよいことです。しかし勝ち負けを意識するあまり、今までは協力関係にあった者同士がライバルとなって足を引っ張り合うようになっては本末転倒です。

腕を組んで向かい合う二人のビジネスパーソン
写真=iStock.com/baona
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/baona

自分の持っている情報を抱え込んで、周囲に協力を求められない雰囲気が蔓延すれば、仕事がうまく進まなくなり、それはとても残念なことです。企業にとっても大きな不利益です。

やりたい仕事が同僚とかち合ったら、私はこの場合もゆずる気持ちが大切だと思います。「キミがやるといいよ。頑張りなよ」と、気持ちよく同僚に仕事をゆずるのです。

そしてもし、その仕事で相手が困っていれば、手を貸してあげるのです。そんなところから、協力関係や信頼関係が醸成されます。

そうすれば、次に同じような機会があったとき、相手は「この間はゆずってもらったから、今回はどうぞ」と言ってくれるでしょう。

お互いに競い合い、助け合いながら共に成長していくことを「切磋琢磨」といいます。中国の『詩経』の「切るが如く、磋(みが)くが如く、琢(う)つが如く、磨(と)ぐが如し」という一節からきた言葉といわれています。

「切磋琢磨」から、私は畑で採れたジャガイモを思い出します。

泥のついたジャガイモをバケツの中に入れてガラガラとかき回すと、お互いにぶつかり合って泥が落ちてきれいになります。自分だけでなく、共にきれいになっていく関係――これが、「ゆずると皆が気持ちよく、明るくなる」ということだと思います。

■“盛る”という行為は「自我」のあらわれ

「私が、私が」ではなく「皆が、皆が」――「欲」に翻弄されないための極意

「○○さんは、あの有名レストランで食事をしたんだ!」
「△△さんは、温泉旅行を楽しんでいるんだ!」

知人や著名人の“リア充”をアピールするSNS投稿を見ると、うらやましくなったり、今の自分に不満を感じることがあるでしょう。

すると、ちょっぴり対抗意識がはたらいて、「私だって」と、自分のリア充ぶりを無理に演出し、いわゆる“盛って”SNSにアップするかもしれません。“盛る”という行為は「自我」のあらわれです。

自分自身の存在や考え方に執着する心を「自我」といいます。私は、情報社会が人々の自我の心を強くしていると感じています。

現在の情報社会に暮らしている私たちには、知らなくてもよい情報まで無意識のうちに入ってきます。その情報に感化されてしまうから、「私も、私も」と現実以上の自分を見せようとする気持ちが起こってしまいます。

自我は、仏教でいうところの「我欲」に通じています。我欲とは、他人のことを考えずに自分の利益ばかりを求める気持ち、自己中心の欲望のことです。「他人よりももっと」と固執して自分をよく見せようとすることも、我欲のひとつといえるでしょう。

もちろん、仏教では我欲を否定しています。自分だけが幸せになればよい、自分が幸せになるためには他者を犠牲にしてもかまわない、という欲深い心が良いわけはありません。

しかし、すべての欲を否定するわけではありません。欲とは、生きるために必要なものであり、生きる力になります。“リア充”投稿も、前向きに生きる力に変えることができるはずです。

■会社の利益を守ろうとする意欲が転じて我欲となる

人の背中を押し、良い方向への推進力となる欲望が「意欲」です。「意欲」と「我欲」は紙一重。意欲にできれば、前向きに生きられます。

たとえば、ビジネスで利益を追求するのは当然です。利益を出せない企業は淘汰されます。しかし、他社を犠牲にしてまで自社の利益だけを追求する企業は、そのときはよくてもやがて消えていくものです。

品質偽装やデータ不正、粉飾決算などの不祥事は、企業の致命傷になることは誰でも知っています。不祥事をきっかけに消えていった企業は数多くあります。

企業不祥事を見ていると、不祥事の隠ぺいに大きな問題があることがわかります。つまり、会社の利益を守ろうとする意欲が転じて我欲となっているのです。

“意欲の人”といえば、日本を代表する企業家のひとりである稲盛和夫さんです。

枡野俊明『迷ったら、ゆずってみるとうまくいく』(クロスメディア・パブリッシング)
枡野俊明『迷ったら、ゆずってみるとうまくいく』(クロスメディア・パブリッシング)

京セラやKDDIの創業者であり、経営破綻した日本航空(JAL)の再建に尽力したことは周知のとおりです。

稲盛さんは、新しい事業やプロジェクトを始めるとき、何度も何度も、時間をかけて自問自答したそうです。

「自分自身や会社の利益だけでやろうとしていないか」、「皆に喜んでもらえるものだろうか」、「10年経っても100年経っても、あれを作ってくれてよかったねと言われるだろうか」

そして、「よし、大丈夫だ」と思ったら、圧倒されるほどのパワーで事業を推し進め、それが数々の成功につながりました。そこには我欲の微塵もありません。

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枡野 俊明(ますの・しゅんみょう)
曹洞宗徳雄山建功寺住職、庭園デザイナー
1953年、神奈川県生まれ。多摩美術大学環境デザイン学科教授。玉川大学農学部卒業後、大本山總持寺で修行。禅の思想と日本の伝統文化に根ざした「禅の庭」の創作活動を行ない、国内外から高い評価を得る。芸術選奨文部大臣新人賞を庭園デザイナーとして初受賞。ドイツ連邦共和国功労勲章功労十字小綬章を受章。また、2006年『ニューズウィーク』誌日本版にて「世界が尊敬する日本人100人」にも選出される。

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(曹洞宗徳雄山建功寺住職、庭園デザイナー 枡野 俊明)

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