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猫背は治す必要がない…整体師が「猫背でゲームをする子どもを静観したほうがいい」と断言する理由

プレジデントオンライン / 2024年7月27日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/qizai00

「良い姿勢」とはどのような姿勢なのか。整体師の片山洋次郎さんは「『気をつけ』のような立ち姿は一見良い姿勢に見えるが、本当の意味で良い姿勢ではない。人間がこのような『見た目』のいい姿勢を維持しようとするのは無理がある」という――。(第1回/全3回)

※本稿は、片山洋次郎『姿勢をゆるめる 疲れない身体と心の整え方』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。 

■“良い姿勢”とはなにか

「良い姿勢」と聞いて、あなたはどんな姿勢を思い浮かべるでしょうか。

背筋がピシッと伸びて、胸が開いている。

背骨がシュッと立っていて、あごをきちんと引いている。

そんな直立不動の姿勢をイメージする方は多いかもしれません。

確かに、「気をつけ」をしているような立ち姿は、一見すると良い姿勢に見えます。

私たちが学校や家庭で教えられたのも、まさにこの姿勢です。

しかしそれは、本当の意味で良い姿勢ではありません。

人間は、つねに変化している生き物です。1日働けば夕方には疲れるし、季節や年齢、生活環境などによって体調は変わります。その人間が、ずっと背筋を伸ばし、先ほどのような「見た目」のいい姿勢を維持しようとするのは無理があります。

見せかけだけの良い姿勢は、「持続可能」ではなさそうです。形のみが整った姿勢ではなく、質的に「良い姿勢」とはどんなものか。

私たちは日々の生活や仕事の中で、まっすぐな姿勢以外にも、必要に応じていろいろな姿勢や動作を繰り返します。集中するためにも、リラックスするためにも姿勢は大切です。

■猫背は決して“悪い姿勢”ではない

はじめに、良い姿勢の反対、悪い姿勢の代表格「猫背」について考えていきます。猫背で悩んでいる人は非常に多くいますね。しかし、猫背が悪いとは一概には言い切れません。もともと体質的に猫背気味だという人も、実はいるのです。

日本の代表的な整体技法である野口整体に、「体癖」という考え方があります。体癖では、体格や身体の動きの偏り、内臓の働き方の傾向から10の要素を抽出し、姿勢バランスの取り方を把握するスケールとしながら、姿勢バランスを見ます。「正しい」姿勢に矯正しようとせず、むしろ人それぞれの「癖」に沿って施術していくのが理想です。

その中の特定の人たちにとっては、猫背は個性のひとつ。特別悪いことではありません。

また、一時的に猫背になることは誰にでもあります。

たとえば、緊張する打ち合わせが終わってデスクに戻り、お茶を飲みながらホッとひと息ついている時、休日に好きな動画を観ながらダラダラしている時。猫背になるのは、ごく自然なことです。

■「子どもが家でリラックスして猫背」は静観を

子どもが家でリラックスして、ゲームをしている時も同じです。

猫背になっている子どもを見ると、親は「姿勢が悪いよ」と指摘しがちですが、本人としては、学校での緊張がほぐれて脱力しているだけ。学校で集中している時はシャキッとしているものなので、「今はオフなんだな」と静観していればいいのです。

このように、人間という生き物の特徴として誰でも、オンの時は身体を緊張させ、オフの時は気が抜けてダラッとなる。そう理解していれば、猫背を直さなければと思い込む必要はないというわけです。

とはいえ、猫背では見栄えが悪いからどうにかしたいと思う人もいるでしょう。

確かに背筋がピシッと伸びていれば、見た目は美しいかもしれません。しかしそれは、身心にとって本当の意味で良い姿勢とは言えません。

実際、無理に背筋を伸ばしたり道具を使って矯正しようとしたりしても、猫背になんらかの必然性があれば、すぐ元に戻るだけです。

身心が整い、場面に応じて適度な緊張を保ち、それが終わったら、ほどよくゆるむ。そういったサイクルで生活できるようになれば、その人らしい姿勢になります。周囲から見ても、その姿がもっとも魅力的に映るのではないでしょうか。

勉強中にスマホを見ている小学生の男の子
写真=iStock.com/TATSUSHI TAKADA
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/TATSUSHI TAKADA

■「体感がまっすぐ」であれば良い姿勢

一人ひとりの姿勢を横から見てみると、当然ながら、背中の丸みや腰の反りなどにはかなりの個人差があります。

片山洋次郎『姿勢をゆるめる 疲れない身体と心の整え方』(河出書房新社) 
片山洋次郎『姿勢をゆるめる 疲れない身体と心の整え方』(河出書房新社) 

実際には背骨の形よりも、むしろ硬いかやわらかいかといった弾力や、動く際に重いか軽いかという姿勢の「質」の方が大切です。また形から見ても、その人にとって適正な範囲の背中の丸みと腰の反りがあるとも言えます。

姿勢が「まっすぐ」とは、外から見た姿勢ではなく、むしろ本人の体感を基準にした方が正解なのです。

たとえば、疲れて姿勢のどこかが固まって重苦しい、痛いと感じる場合、整体の場では姿勢のこわばりをほぐしていくことになります。

施術が進み、どんどんゆるんで力が抜け、首や肩・腰などの余分な緊張が抜けると、自然に下腹がギューッと縮んで力が集まります。すると、本人が意識して姿勢を正そうとしなくても骨盤がスッと自然に立ち、上半身(頭・首・肩・胸)は軽く感じるようになります。

身体が整い、自然に良い姿勢になっていると、自分自身が頭のてっぺんからお腹の底までスーッとまっすぐな線が入っているようにも感じます。これが本当の意味での「まっすぐな姿勢」です。

つまり、外見的な「まっすぐ」よりも、自分の体感的な「まっすぐ」の方が正しいと言えます。ですから、「自分の体感がまっすぐであれば、良い姿勢である」と見ればいいのです。

■状況に応じて姿勢を変えられることが大事

健やかに日々を送るための良い姿勢には、形以上に大切な要素があります。

刻々と変わる身体の内外の状況に即して姿勢を変え、身心がリラックスしたり集中したりできること。自分自身の状態に即して、自在に姿勢を変化させられることです。

人それぞれ生まれ持っての体格や体型があります。他人から見て「悪い」姿勢でも、その人にとって気持ちが良ければ、それでいいわけです。

自分自身が楽でリラックスしやすく、また集中もしやすい。動作がギクシャクせず、なめらかに動く。

つまり、自分自身がつねに気持ちよくいられる姿勢。何かに集中したい時は全身がバランスよく緊張していて、集中状態が終われば、興奮や緊張が静まって自然にゆるんでいく。これが理想です。

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片山 洋次郎(かたやま・ようじろう)
整体師
1950年神奈川県生まれ。東京大学教養学部中退。現在、身がまま整体 気響会を主宰。20歳代半ば、自身の腰痛をきっかけに整体に出会う。その後、野口晴哉の思想に触発されながら独自の整体法の技術を創り上げる。著書に『骨盤にきく』『身体にきく』『整体かれんだー』『女と骨盤』(以上文春文庫)、『自分にやさしくする整体』(ちくま文庫)、『生き抜くための整体』(河出文庫)、『呼吸をふわっと整える』(河出書房新社)などがある。

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(整体師 片山 洋次郎)

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