面接官の「あなたの短所を教えてください」にどう答えるべきか…三流はバカ正直に答えて自爆、では一流は?
プレジデントオンライン / 2024年7月25日 8時15分
※本稿は、マット・エイブラハムズ『Think Fast, Talk Smart』(翔泳社)の一部を再編集したものです。
■質疑応答はピンチではなく「チャンス」であるワケ
前もって準備したプレゼンを見事に披露すれば、それで一つの山場を越えたことになります。しかし、その後に続く質疑応答での突発的なやり取りには、どう対応できるでしょうか。会議や面接で思いがけない質問が飛んできたら、どうすれば良いでしょうか。
質問が浴びせられた瞬間、攻撃された気分になり、少しでも言い間違えれば信用を失うと恐れる人は多いに違いありません。
質疑応答を聴衆との「ドッジボール」ではなく、「対話」と捉え直せれば、相手とのやり取りの中でテーマをさらに広げていく機会をつかめます。主導権を明け渡すことなく、話の流れをコントロールし続けられます。
「質疑応答はチャンスだ」と言うと、大げさに聞こえるかもしれません。しかし、事前に発言を準備したプレゼンや会議では得られないプラスの効果がいくつもあります。
第一に、ごまかしのない自然体と誠実さを印象付けられます。カンペを手放した話し手からは、本当の人柄がにじみ出ます。無理に作った自分ではない方が、聞く側との信頼関係が深まり、親しみやすさと温かみを感じてもらえます。
聞き手一人ひとりを個人として尊重したやり取りを通じ、相手の考えや立場について得られる情報も多くなります。
質疑応答セッションでは、自分の考えをさらに明確化し、プレゼンで伝えきれなかった部分にまで踏み込むことが可能です。臨機応変に受け答えできれば、造詣の深さが示され、信用を失うどころか、いっそう人望を集められます。
質問への答え方をマスターすれば、聴衆の関心を引きつけ、自分の意見をはっきりさせながら、人間味のある形で伝えるという効果が得られます。
■質問には「こ」「れ」「か」で答える
次に挙げる「これか」で話すと、質疑応答が聞き手にとって意義深くなります。
れ=例 次に、答えを裏付ける具体例を挙げる
か=価値 最後に、自分の答えが質問者に提供する価値を説明する
順番は入れ替えても構いません。「答え」「例」「価値」という3つの要素だけで、優れた回答が出来上がります。
例示は特に重要です。聞く側にとっては、漠然とした話より、具体性のある話の方が覚えやすいものです。具体的なエピソードを交えることで、あなたの答えが相手の記憶に残りやすくなります。聞き手にとっての価値や意義を説明すれば、身に迫るように伝わり、より強い関心を引き出せます。
私が「これか」にどれだけ信頼を置いているかと言えば、企業の採用担当者だった時、面接に来た候補者たちに伝授したほどです。
面接の冒頭で「質問を受けたら答えを返し、具体的な説明で裏付け、その回答がどのような意味を持つか(この職を得た時にどう生かせるか)を教えてください」と指示しました。
すると見事な効果が表れました。返答がよりクリアになったうえ、型が決まっていることで候補者側の緊張もいくらか解けた様子でした。私にとっては、どの候補者が採用にふさわしいかを見極めやすくなりました。では「これか」のステップを一つずつ追ってみましょう。
■「単刀直入な答え」と「具体例」で返す
ステップ1は「質問に答える」です。
質問に対する直接的な答えを、なるべく明確かつ簡潔に提供します。前置きや細かい背景情報は不要で、単刀直入に答えを出します。
時間を稼いだり、焦点をずらしたりすると、何かをごまかしているように受け取られかねず、信用を失うおそれがあります。
発言の例
採用選考の一環として課されたプレゼンを終えた後、企業側から実務経験がどれだけあるかと問われたら――
「私はこの分野で15年以上の経験があります」
大勢が集まる社内ミーティングで進捗状況を報告した時に、役員からスケジュールの遅れの理由を質問されたら――
「サプライチェーンの問題と物流の遅延に足を引っ張られています」
ステップ2は、「具体例を挙げる」です。
答えを裏付けるのに格好の例を1つ思い浮かべます。ささいな内容を盛り込みすぎないようにしましょう。
若干の説明は役に立ちますが、多すぎると聞き手が飽きて気をそらし、耳を傾けなくなります。いくらかの詳細を加えつつも、せいぜい2つか3つの文にとどめるのが理想的です。
発言の例
「これまでにA社、B社、C社の3社を経験し、新規プロジェクトのスコープ設定、部署の垣根を越えたチームワークの促進、役員への成果報告を担ってきました」
「一例として、製品の基盤となる材料が、関税の問題で港湾に10日長く留め置かれました」
![会議でプレゼンをする男性](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/0/1200wm/img_f009850cc34d6a8b2792d830c26bdef2229975.jpg)
■答えた内容の「価値」を理解してもらう
ステップ3は、「価値を説明する」です。
私たちはつい、自分の答えの意味や重要性をわざわざ説明しなくてもわかってもらえると思ってしまいます。残念ながら、そうとは限りません。こちらの回答の価値を理解してもらい、高い評価を得られるよう、しっかりと口に出して意義を伝える必要があります。
発言の例
「そのため、迅速に課題を見つけ出し、解決策を提案する能力に長けています」
「すでにサプライヤーの追加に向けた契約を進めており、今後の遅延を減らすために
代替的な輸送手段を検討しています」
1つ目の例と違い、2つ目の例はネガティブな事例を扱っています。こうしたシチュエーションの場合、価値を説明するステップを使って、問題の解決に向けた取り組みを伝えます。
採用面接を受けている時に「あなたの短所を教えてください」と言われたら――
「メールやスラックのメッセージへの返信に気を取られ、業務がおろそかになってしまうことがあります(答え)。
具体的には、始業時刻の時点で受信ボックスに20件ほどメッセージがたまっていることが多く、仕事への取りかかりが遅れがちです(例)。
今では10分のタイマーをかけるようにしています。アラームが鳴ったら返信を書くのをやめ、他の業務に着手します(価値)」
「これか」の型を使うと、質問への答えが回りくどくならずに済みます。即座に答えを言い切ってから、聞き手にとって意味があり、覚えやすい説明だけを付け加えるからです。
「これか」の効果を最大限に発揮し、より良い受け答えを目指すために、次のことを試してみてください。
■想定問答を録音してチェックする
質疑応答は即興でのやり取りですが、何も対策できないわけではありません。想定される質問をあらかじめ考えてみましょう。
プレゼンで最も時間をかけて準備した部分はどこですか? 思いつく中で一番難しい質問は何ですか? 誰かが必ず聞いてくるだろうという質問はありませんか? 聴衆の特徴から、質問のタイプの予測がつきませんか?
質問を想定できたら、「これか」を使って説得力のある答えを模索しましょう。そのうえで、質問をきっかけに話を広げてみます。
答えの中で触れたいテーマやポイントは何ですか? こうした質問がそもそも出ないように、あるいは自分が答えやすい状況を作っておくために、プレゼンの内容や会議の議題そのものを見直す必要があるかどうかも検討しましょう。
説得力のある答えを完成させるのが難しければ、頼りになる知り合いに聞いたり、ネットで調べたりするなど、手早く答えを見つけられる手段を探ります。
満足のいく答えが出来上がったら、声に出して言ってみてください。録音し、どう聞こえるか自分でチェックしても良いでしょう。
答えが見つからなければ、本番でどう返事をするか考えます。私は質問への答えがわからない時、その事実を認め、いついつまでに調べて連絡すると約束します。
![スマホに音声を録音する男性](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/3/1200wm/img_f3349785f51cf2560293ab0692336fe2207921.jpg)
■質問を募るのは「自分に有利なタイミング」で
質疑応答の時間は、プレゼンや会議の最後に設けられるケースが多いものの、そうでない場合もあります。プレゼンがいくつものテーマに及んだり、2つ以上のパートに分かれたりするなら、節目ごとにいったんストップし、質問を受け付けるのが良いかもしれません。
一般的に言って、10分以上も質問の機会を設けずに話し続けるのは感心できません。質問を募ることで、聞き手の参加を促し、自分の話していることがきちんと伝わっているか確認できます。
逆に中断が多すぎると、プレゼンや会議が長引いてしまう可能性があります。内容が途切れ途切れになり、集中しづらいかもしれません。5分もかからない程度のプレゼンなら、質疑応答を最後にするのがおそらく好ましいでしょう。
まだよく知らないテーマだったり、緊張感が大きかったりする場合、プレゼンを終わらせてから質問を受け付けた方が良いと思います。話しているうちに自信が湧き、聴衆にうまく響いた時の反応に気付けるようになるかもしれません。
それを知っておくと、後で質問に答える際に役立ちます。念入りに準備した内容をまず全部話してしまえば、思いがけない質問によって脱線させられる事態も防げます。
質問をどの時点で受け付けるか、聴衆にあらかじめ伝えましょう。最後に質疑応答の時間を設けると知らせておけば、途中で手を挙げる人が出てくる可能性を下げられます。聴衆の中には、後で聞けるように質問を書き留めておく人もいるかもしれません。
質疑応答のタイミングを含めたプレゼンの構成を明確にしておくと、聞き手が先の展開を心配せずに落ち着いて集中できるようになります。
■「質問数」や「制限時間」はルールで示しておく
質疑応答では、話し手が案外強い主導権を発揮できます。受け付ける質問の数、制限時間、対象とするテーマを設定するのは妥当です。こうしたルールをはっきりと示しておけば、適切でない質問への回答を拒否できます。
例えば、「私からの話の後、チームの新規プロジェクトと、その市場ポテンシャルに関する質問を約10分間受け付けます」とアナウンスします。
質問を募るタイミングが来たら、進行のコントロールを手放さないようにしましょう。ただ「何かご質問はありますか」と聞く人が少なくないですが、それはやめた方が良いです。テーマに大して関係ない質問を投げても構わないと誤解されるかもしれません。
最初に設定したルールがあれば、聴衆にあらためて伝えます。「さて、この新規プロジェクトについて何かご質問ありますか? お伝えした通り、質問に答えられる時間は10分ほどです」
■最後の決め台詞で「感謝」する
「これか」の型や、その他のテクニックを使って、質疑応答を上手にやり遂げられたとしましょう。
その成功を最後の最後で台無しにしたくはないはずです。それなのに、話し手の多くが「それではどうも」とか、「こんなところですかね」と遠慮がちにつぶやいて舞台から下りてしまいます。
例えば次のように、聞いてもらったことに感謝しつつ、肝心なメッセージやアイデアをあらためて印象付けて締めくくりましょう。
「ご質問ありがとうございました。目標の達成に向け、今回のプロジェクトに全力を注ぎます」
「ご質問とご意見をありがたく頂戴しました。皆様と一緒に、この取り組みを成功させていきます」
聴衆にぜひ持ち帰ってほしいメッセージを一つ選び、それを最後の決め台詞にします。締めくくりの言葉を事前に考えておけば、途中で何が起きても有終の美を飾れるという見通しを持てます。
![会議で拍手をする人たち](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/a/1200wm/img_1ada007794a29c4f17d2c383f102b230254312.jpg)
■質問が無ければ「よく人から聞かれるのは…」と話すと良い
質疑応答に入ってすぐに最初の質問が出てくるとは限りません。無理もないでしょう。話し手と同じく、聴衆も、一方的な語りから対話へのモード切り替えに時間がかかります。
最初に声を上げるのが恥ずかしいと感じる人もいますし、聴衆の人数が多ければなおさらです。質問をしたくても、一番乗りは避けたいと思っているかもしれません。
質問者が誰も出てこなければ、しばらく待ってみましょう。気の短い話し手だと、何も質問がないと結論付けて終わらせてしまいます。私にはそれがうまいやり方だとは思えません。質問したいと思っている誰かがいるに違いないからです。
その誰かとは、自分自身かもしれません。何秒か待ってみて(ゆっくりと5つ数えましょう)、誰も挙手しなかったら、私が命名した「後ろポケットの質問」を使ってみます。
![マット・エイブラハムズ『Think Fast, Talk Smart』(翔泳社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/c/6/1200wm/img_c6759bced1223548b96a48919abcbb87128671.jpg)
このようなシチュエーションに備えて質問を一つ考えておき、比喩的な意味で「後ろポケットにしのばせておく」のです。自分が喜んで簡単に答えられる質問にしましょう。
「よく人から聞かれるのは」とか、「このテーマについて初めて知った時、私が理解に苦しんだのは」などと前置きし、話し始められるでしょう。
質問を一つ挙げて答えてみせるだけで場の緊張がほぐれ、他の人が次の質問をする確率が高まります。それでも質問が出てこなければ、質疑応答の時間を終えて構いません。
見事な質疑応答セッションだったとは言えないでしょうが、少なくとも一つの質問に答えたという成果が残ります。
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コミュニケーション専門家
スタンフォード大学経営大学院で組織行動学の講師として、戦略的コミュニケーションやバーチャル・プレゼンテーションなどの人気講義を担当し、アラムナイ・ティーチング・アワードを受賞。スタンフォード継続学習プログラムでも、即興で会話するためのメソッドを教えている。また、コンサルタントやコーチ、講演者としても活躍し、IPOロードショーやノーベル賞受賞スピーチ、TEDトーク、世界経済フォーラムといった重要な場に向けて準備する数々の発表者を支援してきた。自身のオンライン講演は数百万ビューを獲得し、受賞歴のある人気ポッドキャスト「Think Fast, Talk Smart: The Podcast」を司会している。前著『Speaking Up without Freaking Out』は、不安を克服し、自信を持って自分らしく会話するために多くの読者に役立てられている。リラックスしてリフレッシュする手段は、妻とのハイキング、子供との会話やスポーツ観戦、友人と会うこと、空手など。
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(コミュニケーション専門家 マット・エイブラハムズ)
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