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蓮舫氏は「都知事選で惨敗した人」で終わるのか…二重国籍問題以上に致命的な"政治家としての最大の欠点"

プレジデントオンライン / 2024年7月20日 9時15分

東京都知事選で落選が決まり、会場から引き揚げる蓮舫氏=2024年7月7日夜、東京都千代田区 - 写真提供=共同通信社

2004年の参院選以来、選挙では負け知らずだった蓮舫氏が東京都知事選で落選した。評論家の八幡和郎さんは「私が蓮舫氏の二重国籍問題を指摘した際、議員辞職して次の選挙で出直せばよかったのに、その場しのぎの説明で自分の非をごまかし続けた。自分を見つめ直し、地に足が着いた政治家として復活してほしい」という――。

■サンドバックになったまま消えてはもったいない

都知事選で落選した蓮舫氏にバッシングの嵐が吹いている。蓮舫氏は、片っ端から反論して、それがまた炎上を招く事態になっており、さすがに気の毒に思う。

蓮舫氏という政治家を長く観察し続けてきた者として、何が今回の惨敗をもたらしたか、再起するなら何が課題かについて冷静に論じてみたい。女性政治家としても、海外にルーツを持つ政治家(※)としてもパイオニアだったのだから、サンドバッグになったまま消えるのは困るのである。

※蓮舫氏の父親(故人)は台湾出身、母親は日本人

私が2016年に蓮舫氏の「二重国籍」を突き止め、批判を続けてきた経緯は、『蓮舫「二重国籍」のデタラメ』(飛鳥新社)に書いたし、プレジデントオンライン記事「『上級国民の特権』をこれ以上増やすべきではない…日本が『二重国籍』を導入する巨大リスク」でも問題点を解説した。

私の最初の指摘のあと、蓮舫氏は二重国籍を解消させたものの、「知らなかった」「故意ではなかった」と言い続けて民進党代表の座に1年も留まり、上昇気流に乗れないまま辞めることとなった。その際も、反省はあまり口にせず、他人の批判ばかりが多かった。

■学歴をごまかす小池氏vs国籍をごまかす蓮舫氏

保守系の人々からは、「ブーメランの女王」とか言われていたが、知名度は健在だったので、立憲民主党は「勝てる候補」と勘違いして都知事選に擁立した(選挙前に離党し、無所属で立候補)。

小池氏には、2期8年の間に大失政はなかったので、現職有利な現在の制度では、打倒はかなり難しそうに見えた。小池都政最大の問題は、新型コロナ対策が典型だが、真摯な努力をするより、豊かな財源を使ったバラマキで誤魔化す手法だ。財政力がないほかの地方自治体にとっても国にとっても大迷惑だった。

だが、これは政府が地域間の財源再配分で対抗すべき問題で、東京都民が投票で是正を迫る問題ではない。

そこで、反小池勢力は、学歴詐称を指摘し攻めたのだが(学歴の粉飾くらいだと思うし、アラブ語のレベルはかなり高い)、「国籍疑惑」を抱える蓮舫氏では迫力がなかった。

政治家にとっては、国籍をごまかすほうが学歴をごまかすより深刻なのだから、蓮舫氏本人が直接、小池氏にその点を追及することはできなかった。

最悪の候補者選択だったし、蓮舫氏も出るべきでない選挙だった。また、二重国籍は、それを解消したら過去はどうでもいいという性格の問題でないし、8年前にきちんとした対応をしなかったので謎がまだ残っており「過去の問題」とも言えない。

■貪欲で、真面目な勉強家だった

私と蓮舫氏の接点は、二重国籍問題が最初ではない。本人は憶えていないだろうが、まだ、蓮舫氏がタレントだった時代に同じ勉強会に参加していたことがある。もともと、豊かな華人ビジネスマンの娘で、小学校から青山学院に在籍して法学部に進んだお嬢さまだが、自分で生きなくてはと、グラビア・モデルなどとして貪欲に売り出した。

さらに、アイドル路線では長持ちしないと、勉強して報道番組にも進出した。華人らしく、明るくあっけらかんとしていたが、真面目な勉強家でもあった。

思想的には穏健保守といった感じだった。2016年に「私はバリバリの保守ですよ」と語って話題になったことがあるが、民主党政権時代の「事業仕分け」だって、基本は新自由主義的な発想である。

家業はバナナ輸入利権を武器に日本の保守政界に食い込んだ政商で、国会で公明党から追及を受けたこともあり、民進党の地盤である台南地方が基盤である。

2010年5月30日、楊秋興・高雄県県長(当時)が東京都内のスーパーで台湾フルーツをPR。同日夜、麹町のホテルで開かれたパーティーに、蓮舫・参議院議員(左)も駆けつけた(写真=小興 蠟筆/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons)
2010年5月30日、楊秋興・高雄県県長(当時)が東京都内のスーパーで台湾フルーツをPR。同日夜、麹町のホテルで開かれたパーティーに、蓮舫・参議院議員(左)も駆けつけた(写真=小興 蠟筆/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons)

■最初の選挙公報に書かれた「ウソ」

ただ、本人はタレントとして田原総一朗や高野孟などリベラル派の系列で育ち、その斡旋で北京に留学し、民主党にスカウトされて2004年の参院選に出馬した。党内では野田佳彦元首相に近かった。蓮舫氏の政策論はそういう環境を反映したやや雑多なもので、福島瑞穂氏や辻元清美氏のような左派の闘士ではない。

蓮舫氏が生まれた1967年当時の法律では、国籍は父親の国籍と姓によることになっていたので、中華民国人(当時は国交があった)の謝蓮舫だった。17歳のときに法改正があり、23歳の誕生日まで台湾と日本両方の国籍を維持できるようになり、合法的な二重国籍状態になった。

しかし、蓮舫氏は23歳以降も国籍選択を放置し、法律違反の状態を続けた。さらに問題なのは、2004年に参院選に立候補する際、選挙公報に「1985年、台湾籍から帰化」と書いたことだ。法律で定められた国籍選択手続きをしてなかったのだから虚偽記載なのだが、二重国籍は解消されているとみんな思い込んでいた。

■議員辞職し、出直し選挙をしておけばよかった

私は1980年代にENA(フランス国立行政学院)に留学していたときに、移民が政治家や公務員に多いことに興味をひかれ研究した。在日韓国・朝鮮人が帰化しても政治家や公務員にあまりならず、一方、気分的には反日的な人が多いのが残念だったからだ。

フランスなどの常識に拠れば、移民系の政治家は、母国と日本が対立したら日本のほうにつくことを明確にし、受け入れ国の文化に対する愛着を示すことが要求されるのだから、日本でもそうあるべきだと1980年代から一貫して言ってきた。

そういった主張もあって、2016年に民進党代表選に立候補した蓮舫氏に注目してきたのだが、彼女は尖閣問題を「領土問題」と表現するといった失言もあったし、日中・日台の問題について積極的に日本の立場に立つという姿勢が感じられなかった。また、文化について華人文化への愛着を語ることは多いが日本に対しては皆無に近かった。

そして、夕刊フジ編集部が私の記事を掲載する前提で蓮舫氏の事務所に台湾籍離脱の年月日を聞いたら、明確な回答が得られなかったので、二重国籍であろうと気づいた。

このとき二重国籍であったことを認め、民進党代表選への立候補を取り下げ、参議院議員を辞職して、次の選挙で出直せば、再出発できたのである。ところが、あいまいなまま代表選を続け、野党第一党の代表になってしまった。

■蓮舫氏も悪いが、周りの人間も悪い

その間、台湾籍を離脱し、日本国籍を選択したのち、過去の経緯を説明したが、証拠書類の開示は拒み、1年後になってやっと公開した。しかも、「死んだ父親が台湾籍を抜いてくれたと信じていた」という、いささか無理のある説明をしたのだから、「終わった話」にしてもらえるはずなかった。

その過程で、本人もいけないが、派閥の親分で蓮舫代表のもとで幹事長も務めた野田佳彦元首相など周囲の政治家たちもいけない。民進党内でも厳しい意見が幹部会で出たのに押し切ったし、納得できる説明をするように本人に指導しなかった。また今回も、なぜ二重国籍問題をひきずったまま都知事選に出馬させたのか不思議だ。

ともかく、蓮舫氏も悪いが、そのチームがお粗末だった。法律に反しているのに「二重国籍を批判するのはヘイト的意図がある可能性がある」などと反論したり、「台湾はひとつの中国なので国でなく二重国籍にならない」とか政治的に通るはずがないかたちで擁護したり、蓮舫氏が素直に非を認めるのを邪魔した人も多かった。

■「失策」だらけの選挙では負けて当然

泉健太代表の責任を言う人もいるが、蓮舫氏は泉氏を日ごろから激しく批判し、今回の選挙でもほとんど出番を与えなかったくらいだから、責めるのは筋違いだと思う。

都知事選も「失策」だらけだった。共産党と安直に組んだことも疑問であるが、共産党が勝手に公約まがいのものを配布したり、カンパを募ったりして共産党に利用されている感が酷すぎた。

自民党の裏金事件に絡めて小池知事がかつて清和会に属していたと攻撃したが、小池氏は小泉純一郎氏に重用されたものの、森喜朗氏に意地悪されて飛び出たのである。

外苑再開発は開発後のほうが快適になりそうだったし、民間事業の是非を住民投票で決めろというのは乱暴だ。そして、野田元首相や共産党の志位氏といった「過去の政治家」そろえての街頭演説など愚の骨頂である。

■「ブーメランの女王」を返上する方法

ほかに、蓮舫氏が政治家として改善すべきなのは、口から出まかせでその場を切り抜けて、しかも、それを忘れてしまうことだ。二重国籍疑惑でも、前日の説明と違うことを言ったり、すぐにばれる嘘の説明をしては墓穴を掘っていた。

国会ではブーメランの女王と言われたが、「以前とは違う意見を言う」「自民党を批判したものの、自党も同じことやっていた」といった類いである。こんな調子で、首脳会談で前と違う説明するなどしたら国際問題だ。

これからは日記でもつけて、いつ自分が何を言ったか記録し、繰り返し読むことだ。安倍元首相は最初の首相経験を不本意な形で辞めたあと、記録を詳しく読み、あのときどう言えば良かったか真摯に熟考したからこそ、大宰相として復活したのである。

もうひとつは、以前にお世話になった人たちを忘れないように努力すべきだ。忘れていたとしても、安直にそんな人は知らない、友達でないと突き放さないことだ。

最近も東国原元宮崎県知事を友人でないと言ったが、東国原氏から県知事室にアポイントなしに蓮舫氏が面会に来たことをバラされていた。個人的にお世話してあげたのにといった苦言も多い。

私は海外にルーツを持つ政治家として野党第一党のトップにもなり、最初に総理まで狙える地位にまで到達した蓮舫氏には、後に続く人たちのためにも、日本社会の多様性をいい方向で増進させるためにも、責任があると思う。イメージチェンジに成功した蓮舫氏が地に足がついた存在感を政治家として示してくれることを期待したい。

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八幡 和郎(やわた・かずお)
歴史家、評論家
1951年、滋賀県生まれ。東京大学法学部卒業。通商産業省(現経済産業省)入省。フランスの国立行政学院(ENA)留学。北西アジア課長(中国・韓国・インド担当)、大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任後、国士舘大学大学院客員教授を務め、作家、評論家としてテレビなどでも活躍中。著著に『令和太閤記 寧々の戦国日記』(ワニブックス、八幡衣代と共著)、『日本史が面白くなる47都道府県県庁所在地誕生の謎』(光文社知恵の森文庫)、『日本の総理大臣大全』(プレジデント社)、『日本の政治「解体新書」 世襲・反日・宗教・利権、与野党のアキレス腱』(小学館新書)など。

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(歴史家、評論家 八幡 和郎)

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