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だからファミリー客が次々と来店している…快進撃を続ける「丸源ラーメン」と競合チェーンの決定的違い

プレジデントオンライン / 2024年7月25日 10時15分

丸源ラーメンの看板メニュー「熟成醤油ラーメン 肉そば」 - 写真提供=物語コーポレーション

物語コーポレーションが国内に213店展開するラーメン店「丸源ラーメン」が好調だ。同社における2023年のラーメン部門全体での売り上げは352億円(富士経済調べ)で、業界2位となっている。好調の理由はどこにあるのか。経済ジャーナリストの高井尚之さんがリポートする――。

■全国展開をしながら業績を拡大する「丸源ラーメン」

「ラーメン店の倒産」というニュースが一段と目立つようになった。以前から言われてきた「ラーメン一杯1000円の壁」もよく話題となる。

国民食のような存在だが、原材料費や光熱費、人件費の上昇で店の経営環境は厳しい。一方で話題の店も次々にオープンし、人気店には行列ができる。

そんな状況のなか、近年勢いを増すチェーン店が「丸源ラーメン」(運営会社:物語コーポレーション、本社:愛知県豊橋市)だ。2001年に1号店をオープンしてから23年、現在213店(2024年7月24日時点)を展開する。

ラーメン業界では珍しく、北海道から沖縄県まで国内41都道府県に店があるのも特徴だ。各地域で味の好みも分かれるので、競合他社も近年は広範囲に全国展開せずにエリア展開が多かった。そうした障壁を乗り越えているのだ。

どんな取り組みで業績を高めてきたのか。同社の事業責任者に聞いた。

■ラーメン業界では2位の売り上げ

まずは業界での順位について。同ブランドを統括する池田頼信さん(物語コーポレーション 執行役員 丸源事業部 事業部長)に聞いた。

「調査データによって順位が異なります。『ラーメン専門店』では首位で、『ラーメン業界』では2位となっています。競合他社をどう捉えるかで順位が変わるようです」(池田さん)

たとえば富士経済が行う調査では、物語コーポレーションが展開するラーメン部門(「丸源ラーメン」「二代目丸源」「熟成醤油ラーメンきゃべとん」)は2位で、2023年の市場シェアは7.7%となっている。同年のラーメン部門全体の売上高は「352億円」(売り上げの大半は丸源ラーメン)だ。

競合には、業界首位の「日高屋」(運営会社:ハイデイ日高、本社:埼玉県さいたま市)や、「幸楽苑」(同:幸楽苑、本社:福島県郡山市)などがある。日高屋や幸楽苑に比べて店舗数が少ない丸源ラーメンは、大型店を郊外ロードサイドに出店し、メニューも多彩で1店舗あたりの売上高が大きい。

コロナ前2019年6月期は「219億円」(富士経済調べ)だったので、そこから約1.6倍になった。

「2024年6月期は、通期で既存店売上高が111.5%、客数が107.7%となりました。コロナ前2019年6月度と今年6月度の既存店売上高を比較すると約130%となっています」(同)

丸源事業部の池田頼信事業部長。
写真提供=物語コーポレーション
丸源事業部の池田頼信事業部長。 - 写真提供=物語コーポレーション

■他のラーメンチェーンとは違う3つの特徴

取材を基に、丸源ラーメンの特徴をまとめると次の3点に集約できる。

(1)「肉そば」に代表される商品力と専門性
(2)ファミレスの佇まいに専門店の雰囲気
(3)多彩なサイドメニュー

(1)の商品特徴を池田さんに説明してもらった。

「店の主力商品が『熟成醤油ラーメン 肉そば』(大半の店舗では759円=税込み、以下同)で、多くの来店客の方に支持されています。この1年で2026万杯以上(※)ご注文いただきました。

それ以外の麺類を食べたい方には“醤油とんこつ”や“醤油”、“塩”や“味噌”ラーメンも用意しています。ご家族で来店されても、それぞれの嗜好にあった味が楽しめます」(同)

(※)2023年7月1日~2024年6月30日、全店におけるイートイン出数(物語コーポレーション調べ)

「肉そば」は、他の店にはない食べ方として「味変」がある。下記の写真1のようにメニューにも記されており、肉そばの生みの親である同社の堀誠さん(現:海外事業本部マーケティング担当)がイラストでも推奨している。

肉そばの特徴と味変(下の黒部分)を提案したメニュー。
写真提供=物語コーポレーション
(写真1)肉そばの特徴と味変(下の黒部分)を提案したメニュー。 - 写真提供=物語コーポレーション

(2)厨房の様子も見えるようになっており、「キッチンで働くスタッフにも(裏方でなく)輝いてもらいたい」と、池田さんは話す。

作業の様子がわかるので来店客も安心するようだ。一見すると、お店の作りはファミリーレストランのようだが、本格的な厨房には専門店の雰囲気も。こうした対応も人気を支える。

(3)を代表するメニューには「鉄板玉子チャーハン」(小サイズ385円、中サイズ495円)がある。鉄板の中央に円形のチャーハンが乗っており、運ばれた後、店舗スタッフが溶き卵をチャーハンの周囲にかけてくれるパフォーマンスつき。人気のサイドメニューには「丸源餃子」のほか、「おいしいからあげ」「枝豆」「フライドポテト」がある。

さらには、107円で楽しめる「ソフトクリーム」や、季節にあわせて期間限定で登場する「ミニパフェ」も用意。多彩な内容で来店客に訴求する。

自分で味を仕上げることができる「鉄板玉子チャーハン」。
写真提供=物語コーポレーション
人気のサイドメニュー「鉄板玉子チャーハン」。 - 写真提供=物語コーポレーション

■麺の湯切りは機械、スープは手作業

「肉そば」が開発されて今年で20年。現在、「みんなで食べよう! 肉そばチャレンジ」というキャンペーンを開催中(2024年7月16日~9月1日)だ。期間中の出杯数に応じた割引率(100万食で10%off〜250万食で25%off)のアプリクーポンが配布される。

肉そばは、「丸源ラーメン」の売り上げが低迷した時期の起死回生策として誕生した。

「『世の中にないラーメンをつくりたい』という思いで、和食職人だった堀誠が考案しました。味に加えて、おいしさを感じていただく“食の5原色”(柚子こしょうおろしの「赤」、焼き海苔の「黒」、背脂や丼の「白」、麺やスープの「黄」、青ネギの「緑」)を丼に配置しています」(池田さん)

ロードサイドの大型店が多く、車や歩行者の視認性も高い。
筆者撮影
ロードサイドの大型店が多く、車や歩行者の視認性も高い。 - 筆者撮影

2004年に期間限定の「たっぷり背脂の肉そば」として発売されると大好評となり、翌05年にグランドメニュー(定番商品)に昇格。2009年頃に看板商品に成長した。

作り方は最新自動マシンと手作業の組み合わせだ。自動茹で麺機や麺の湯切りは機械が担当し、スープや具材の調理は注文後に1杯ずつ手鍋で行い、仕上げる。

ラーメンの麺のゆでと乾燥はそれぞれ機械で行う。画像はゆで麺機。
写真提供=物語コーポレーション
ラーメンの麺の茹でと湯切りはそれぞれ機械で行う。画像は茹で麺機。 - 写真提供=物語コーポレーション

■だから全国で人気になった

日本は各地にご当地ラーメンがあり、それぞれ味も違う。北海道でも札幌は味噌ラーメン、函館は塩ラーメンの文化で、博多と久留米(ともに福岡県)ではとんこつのつくり方も違う。なぜ、丸源ラーメンは北海道から沖縄県まで出店できたのだろうか。

「丸源ラーメンの認知が高まり、肉そばが全国区で受け入れていただいているのではないかと感じています。一般的に外食においては、『オープン直後は爆発的に利用され、そこから1年~1年半をかけて落ち着き、売り上げが落ち底をついたところで安定していく』ものです。

札幌ラーメン本場の『札幌菊水元町店』や博多ラーメン本場の『福岡福重店』、“うどん県”の『丸亀店』も安定期に入っていますが、売上前年比を超えており、じわじわと伸びています。」(池田さん)

「当社には『地域一番店主義』という戦略があり、『一度はじめた商売はやめない』という哲学もあります。そのためには、メニューも外観・内装も、お客さまのニーズや時代の変化に合わせて変えていく。過去には繁盛店になるまで約10年かかった例もあります」(同)

お店の外観。
筆者撮影
お店の外観。 - 筆者撮影

■最も売り上げが大きいのは8月

ご当地ラーメンの聖地でも、東京で人気の店や全国チェーンの味を楽しみたい人は多い。また、地域の人気店は小規模な店舗も多く、丸源ラーメンのような大型店で多彩なメニューをそろえたラーメン店は少ない。車社会の地方で、友人・知人や家族で利用するには便利、という一面もあるのだろう。

「ラーメンは冬のイメージがあると思いますが、実は丸源ラーメンの売り上げが最も大きいのは8月です。もともとファミリー客が多く、お子さんが夏休みに入ると家族で来店されます。夏は、自宅で火を使う料理をしたくないでしょうが、外食なら気にしなくてよい。空調も整っており、座席が広いのもご利用されやすいと思います」(池田さん)

利用客の声を聞くと、「ラーメン店なのに店内が清潔」という意見もあった。広い空間でファミレス的な使い方もされているようだ。ファミリー客を楽しませる訴求も行う。

たとえば小学生までが注文できる「お子さまラーメン」は209円という安さで、“えらべるおもちゃ”つき。高学年向けには大人サイズの「肉そばデビューセット」(759円)もあるが、これにもおもちゃがつく。

■目指すのは日常使いできるラーメン店

飲食店で進むDX化については、注文時のタッチパネル、会計時のセルフレジは導入しつつ、「配膳ロボットにラーメンを運ばせることは考えていない」という。従業員が商品提供や片づけを行いながら、来店客の要望に応える姿勢を貫いている。

最後に「ラーメン1000円の壁」について、どう思うかも聞いてみた。

「諸経費も上昇していますが、1000円を超えると特別な時に行く“目的来店”となり、日常使いで利用されるブランドでなくなると思います。できるだけ企業努力で対応し、現在の金額感をキープしたいと思います」(同)

日本の食文化には汁物(そば、うどん、ラーメン)もある。いつの時代も庶民の食べ物として親しまれてきた存在なので、価格帯も身近でいてほしい消費者は多いようだ。

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高井 尚之(たかい・なおゆき)
経済ジャーナリスト/経営コンサルタント
学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。

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(経済ジャーナリスト/経営コンサルタント 高井 尚之)

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