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「ダメだこの人、なんで管理職になれたんだ?」50代のダメ上司が無能ぶりをフルに発揮している歴史的理由

プレジデントオンライン / 2024年8月13日 7時15分

木村 尚敬 経営共創基盤(IGPI)共同経営者 マネージングディレクター。ベンチャー企業経営の後、IGPIへ参画。全社経営改革や事業強化などを推進している。著書に『ダークサイド・スキル 本当に戦えるリーダーになる7つの裏技』など。

■ダメ上司を思うままに動かすスキルとは

「上司のくせに、この人はダメだな」
「なぜこんな人が上司なんだろう?」

誰でも一度や二度は、こんなふうに思ったことがあるでしょう。

しかし上司が相手では、あからさまに盾突くわけにもいきません。だからといって、心の中でイライラを押し殺しているだけではしょうがない。さまざまなスキルを駆使して、ダメ上司を思いのままに動かしてみましょう。

「そんなスキルがあるのか?」と思うかもしれませんが、このようなスキルは英語力や財務会計の知識と違い、履歴書の特技欄に書くわけにもいかず、ビジネススクールでも教えません。このような光の当たらないスキルを、私は「ダークサイド・スキル」と呼んでいます。この人心掌握スキルこそが、ダメ上司を動かすのです。

私が思うに、いまの日本に多い「ダメ上司」には3タイプあります。

1つ目は自身の能力のなさを棚に上げて、「ポジションパワーにすがる」タイプ。自分の能力が足りず、うすうす「俺、いらなくね?」と気づいているけれど、断じてそれを認めたくない。だから部下からなめられないように、ことあるごとに上司の権力を振りかざすのです。パワハラ上司にもなりやすいタイプですね。

2つ目は「自己保身」タイプ。現代はデジタル化などに伴い、ビジネス環境は大きく変化しています。そうなれば当然、求められるスキルセットも変わります。しかし50代ともなると、変化についていけない人も多く、いわば「変わりたいけど変われない症候群」。最も多いタイプかもしれません。

仮にこういう人がトップを務める部門を閉鎖する計画が持ち上がったとしましょう。次の日には50ページにもわたるパワポの資料を作って「なぜこの部門が必要か」を訴えるのがこのタイプです。自己保身のためなら周囲の足を引っ張っても何とも思いません。

3つ目は「政局上司」タイプ。仕事より社内政治にばかり関心がある人たちです。会社全体の成長は二の次で、自分の属する派閥の利益が第一。「敵に手柄を立てさせてなるものか」とばかりに、敵対派閥の人がやることは片っ端から反対する。このタイプは少なくなったものの、まだまだ絶滅していません。会社を改革しようとするときによく反対勢力になる人たちですね。

【図表】できない上司3つのタイプ

■年功序列で搾取され取り返す側に回った?

そもそも、なぜこんな人たちが上司になれてしまうのでしょうか。

年功序列・終身雇用制度の「負の遺産」というのが私の考えです。いまの50代は年功序列・終身雇用制度の時代に入社しました。新卒一括採用で、定年まで終身雇用を約束されたメンバーシップ型の雇用です。この制度下では、若いときは成果を出しても給与に反映されず、「搾取」されます。でも年齢を重ねると、論功行賞的に報酬とポジションをもらえるようになっている。だからダメ上司にしてみれば、ようやく、若いときに搾取されたぶんを取り返す側に回れたということなのです。

そこへ急にゲームのルールが変わったと言われても納得できない。従来のやり方や現在のポジションにしがみつくのも、心情的には理解できます。

しかし実際問題として、ダメ上司の下にいる部下からすればたまったものではありません。そこで上手に使いこなしたいのが「ダークサイド・スキル」。これは組織の成長に不可欠な大きな改革を成し遂げようというときに、反対派をうまく説得し、組織を動かすスキルといってもいいでしょう。

さて、ダークサイド・スキルについて詳しく説明する前に、考えてみてほしいことがあります。それはダメ上司を動かす目的が、組織にとって「本当に正しいことなのかどうか」です。

拙著のなかでは、「煩悩に溺れず、欲に溺れろ」と書いています。つまり「偉くなりたい」「認められたい」「カネがほしい」といった個人的な煩悩を原動力にするのではなく、「職業人として、こういうことを達成したい」「人の役に立ちたい」というような、いい意味での「欲」を原動力にしようということです。

私利私欲によって上司を動かそうとしたところで、おそらくダークサイド・スキルの効果は期待できないでしょう。なぜならダークサイド・スキルの第一は、「味方を作ること」。「この会社をなんとか成長させたい」というような大義がなければ、誰も味方にはなってくれないからです。

「あの上司が嫌いだから仕返しをしたい」というような個人的な理由ではなく、「こうすることが会社にとっても、働くみんなにとっても正しいんだ」という確信が持てたところで、ダークサイドスキルの習得を始めてください。

■上層部に味方を作り自分の案を通させる

先ほども言いましたが、ダークサイド・スキルの「その1」は味方を作ること。あなたが中間管理職であれば、まだ大きな権力は握れていないため、経営会議などで自分の案を支持してくれる人を作っておく必要があります。

やはり権力側で一緒に戦ってくれる人がいないと、なかなか「討伐運動」はできません。社内の権力作用構造がどう働いているかを観察し、ダメ上司に対して物を言えるのは誰かを見極めましょう。社長を味方につけることができればベストですが、ダメ上司と同等の権力を持つ人、あるいは斜め上の人でもOKです。

味方は社内の人とは限りません。メインバンクや金融機関の人にこっそり話をして、「外部から厳しい意見を言ってもらえませんか」と頼んでみるのもアリ。あるいは部下のいない部長など、社内の保守本流ではなく、普段は目立たないけれど、周囲の人間関係や立場を熟知しているような人を味方に引き入れておくのも有効です。「たぶんこの人が、こういうことを言ってくる」「その背景にはこういう事情がある」というようなことを全部教えてくれるケースもあります。

2つ目は、ボトルネックになっているダメ上司が、「なぜそんなことを言うのか」を理解すること。

人間は「自分が正しい」と思うと反射的に「相手が間違っている」と思ってしまいます。特に若い人は、「正しいことを言っているのに、なぜわかってくれないのか」と腹を立てることもあります。しかし現実には正義は一つではなく、相手には相手の正義があるはず。共感する必要はないけれど、相手のロジックは理解しておきましょう。また相手のメンツをつぶさず、花を持たせるところは持たせてあげるような割り切りも必要です。

3つ目は、会社の規模にもよりますが、社長に直談判することです。ひと昔前の社長は昨日の延長上の「改善改良型」の経営をしていればよかった。ところがいまの社長は「改革型」の経営をしなければならない。切った張ったの経営判断の連続です。厳しい経営環境のなかでどう生き残っていくかを真剣に悩み、考えている人が多いから、現場の声を大事にする傾向があります。

ただし、それはCEO本人だけで、経営陣のなかには前述のような、自分の出世しか考えていないダメ上司タイプもいます。その人たちに提案を握りつぶされないように、ホットラインで社長に耳打ちするのも効果的でしょう。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月2日号)の一部を再編集したものです。

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木村 尚敬(きむら・なおのり)
経営共創基盤(IGPI) 共同経営者マネージングディレクター
慶應義塾大学経済学部卒業。IGPI上海董事長兼総経理。IGPIでは、製造業を中心に全社経営改革(事業再編・中長期戦略・管理体制整備・財務戦略等)や事業強化(成長戦略・新規事業開発・M&A等)など、さまざまなステージにおける戦略策定と実行支援を推進。著書に『ダークサイド・スキル』(日本経済新聞出版社)など。

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(経営共創基盤(IGPI) 共同経営者マネージングディレクター 木村 尚敬 構成=長山清子 撮影=大崎えりや)

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