ラーメン店の多い都道府県は脳卒中死亡率が高い…管理栄養士「塩分・糖質・脂質の塊」をヘルシーに食べる方法
プレジデントオンライン / 2024年8月9日 8時15分
■「牛乳入りラーメン」を研究家が勧めるワケ
7月11日は日本ラーメン協会が制定したラーメンの日だった。あなたはラーメンが好きだろうか。
ラーメンに関連した研究では2019年、英国の栄養学専門誌「Nutrition Journal」に発表された「ラーメン店が多い都道府県では、脳卒中の死亡率が高い」という報告がある。自治医科大学医学部内科学講座神経内科学部門の松薗構佑講師らが行ったもので、4種類の外食店(ラーメン店、ファストフード店、フランスおよびイタリア料理店、うどんおよびそば店)の「店舗数」を都道府県ごとに算出し、「脳卒中」と「心筋梗塞」による死亡率を集計して外食店との関係を調べたところ、「ラーメン店の数」と「脳卒中の死亡率」に統計的に有意な関連性があったという。
ラーメンが悪と決まったわけではなく、あくまで地域におけるラーメンの店舗数の比較である。松薗講師も、「ラーメンをたくさん食べると脳卒中で亡くなるという関係を直接示したわけではない」と前置きしたうえで、「けれどもラーメン店が数多くあるのは、そういう食事を好む方が多い地域であり、脳卒中の死亡率が高い傾向にあると考えてもいいと思います」と話す。
脳卒中には、脳の血管に血栓が詰まる「脳梗塞」と、脳の血管が破れて起こる「脳出血」がある。死亡率が高いのは脳出血だ。
さまざまな研究で「塩分」が血管にダメージを与えることがわかっている。「日本人の食事摂取基準」では食塩摂取量の目標値を成人1人1日あたり男性7.5グラム未満、女性6.5グラム未満に設定しているが、日本の伝統的な食事が高塩分であることもあり、日本人は世界的にみて食塩摂取量が高い。ラーメン一杯を完食すれば通常6グラム以上の塩分摂取だ。ラーメンを含む高塩分食ばかり摂取した結果、脳の血管がもろく(切れやすく)なってしまう可能性はあるだろう。
しかもラーメンそのものも“糖質(麺)と脂質(スープ)の塊”である。外でラーメンを食べる場合はせめてスープを半分にして塩分を「取らない」か、「排出する」ほうに力を入れたい。野菜や果物に含まれるカリウムは、ナトリウム排泄の作用がある。今の時期ならバナナ、キウイ、スイカなどにはカリウムが豊富に含まれるので、食後に摂取してもいいだろう。
そして一番のお勧めは、家で健康的なラーメンを作ることだ。管理栄養士でミルク料理研究家の小山浩子氏が「ミルクラーメン」を提案してくれた。文字通りラーメンに牛乳を入れるのだが、意外にもおいしい。小山氏によると「スープまで飲み干せるラーメン」なのだという。
「日本人は塩分の3分の2を調味料から摂取しています。ですから調味料を減らせば簡単に減塩ができます。ところがそうなると、味が物足りなくなって続きませんよね。でも牛乳は、そのものが五味(甘み・酸味・塩味・苦み・旨み)をもっているので、味噌味・醤油味・塩味のいずれのラーメンでも調味料を半分に減らして牛乳を加えれば、味がなじんでおいしく減塩できるんです」
インスタントのようなひとつの鍋で作るラーメンなら、ぎりぎり麺がつかるくらいの水分量でゆで、麺をゆで終えたら、半分以下の調味料を入れ、味をみながら牛乳を加える。
「市販のラーメンに添付される調味料は塩分約3グラム、多いもので5グラムくらいです。できれば1.5〜2グラム以下に減らしたいところですね。また麺にもおよそ1.5グラムの塩分が含まれるので、手間はかかりますが麺を別ゆでし、ゆで汁を使用せずにスープと合わせれば、減塩効果が高まります。そしてスープは少なめに作ったほうが、牛乳を足すことで味を濃く感じるでしょう。七味唐辛子や黒胡椒などの香辛料で味を補ってもいいですね」(小山氏)
■具から食べて血糖値の急上昇を抑える
ミルクラーメンの利点はまだある。
「牛乳には野菜や果物なみにカリウムが含まれるので、摂りすぎた塩分を体外に排出してくれます。また牛乳に含まれるビタミンB1は糖質(麺)の代謝を、ビタミンB2は脂質(スープ)の代謝を促します。ラーメンのスープはあまり良質な脂質ではありませんが、牛乳には抗酸化作用があるビタミンAも多いので、スープの悪影響をブロックする作用も期待できます」(同)
小山氏は以前、出張先の青森県で「味噌カレー牛乳ラーメン」を目にした。しかしこれは隠し味に山盛りの塩を、最後に麺の上にバターをのせるのだという。店主に作り方を聞き、小山氏がその場で塩分計算をしたところ、1杯10グラムという試算だった。これでは意味がない。当たり前だが牛乳を足す分、調味料を引かなくては減塩などの健康効果を得られないのだ。ちなみに青森県は松薗講師らの研究で、人口あたりのラーメン店舗数が多く、脳卒中の死亡率が高い都道府県の1位(男性)と3位(女性)にランクイン。全国的に脳卒中の死亡率が高い地域だ。
「最後にバターではなく、オメガ3を含む亜麻仁油やエゴマ油を数滴たらせば健康的で、むしろ脳卒中予防になるラーメンです」と小山氏。
魚の脂肪に多く含まれる「オメガ3」と呼ばれる脂肪酸は、血液の凝固を抑え、脳の働きを良くしたり、中性脂肪やLDL(悪玉)コレステロールを下げる働きがあるといわれる。しかしオメガ3は熱に弱いため、小山氏が提案するように最後に“たらす”といい。
また気をつけたいのは健康志向の人が選びがちな「ノンフライ麺」。「カロリーは抑えているものの、フライ麺と比較すると塩分が1グラムほど高い」(小山氏)という。フライ麺はカロリー高めが難点だが、私なら塩分が低いほうを選ぶ。食物繊維が豊富なメンマ、ワカメ、コーンなどをのせて具から食べるようにすれば、太る元凶である血糖値の急上昇を抑えられる。それでも高カロリー摂取が心配なときは、食後に軽く歩くといいだろう(30分でごはん半杯程度のカロリーを消費できる)。
同様に「ヘルシーカップ麺」にも注意したい。食べすぎは体に負担になると、健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子氏が話す。
「低糖質がウリのヘルシーカップ麺はサイリウムや難消化性デキストリンといった、体内で食物繊維のような働きをする物質が入っていますので、ほかの栄養素の吸収をさまたげてしまう恐れがあります。プロテインを強化したラーメンも、一食あたりのタンパク質量としては不足しています。ヘルシーだからいくら食べてもいい、これだけ食べていれば安心と思っていると、栄養素の過不足が起きてしまうのです」
何かに頼るのではなく、自分の体に合わせた方法で、おいしくラーメンをいただきたい。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月2日号)の一部を再編集したものです。
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ジャーナリスト
1978年生まれ。本名・梨本恵里子。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)、プレジデントオンラインでの人気連載「こんな家に住んでいると人は死にます」に加筆した『潜入・ゴミ屋敷 孤立社会が生む新しい病』(中公新書ラクレ)など。新著に、『野良猫たちの命をつなぐ 獣医モコ先生の決意』(金の星社)と『老けない最強食』(文春新書)がある。ニッポン放送「ドクターズボイス 根拠ある健康医療情報に迫る」でパーソナリティを務める。 過去放送分は、番組HPより聴取可能。
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(ジャーナリスト 笹井 恵里子)
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