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「イライラして暑さ倍増する迷惑者」自分は利口だと勘違いする"職場のバカ"を黙らせる頭のいい人のやり方

プレジデントオンライン / 2024年8月7日 7時15分

和田秀樹氏

■【グループ 他人を尊重できない】無神経タイプ

変われない昭和世代は会社の規則に従順

現代では、「ハラスメントは悪」という認識が浸透してきました。しかし、そうした価値観の転換についていけない人が、中高年を中心に相当数いるのも事実。最近も、現代と昭和時代の価値観のギャップを、コミカルに描いたTVドラマ『不適切にもほどがある!』が話題になりました。「行きすぎたハラスメント規制で会社が壊れる! 社会の活力が失われる!」といった反対論を盾に、「昭和の流儀」を押し通そうとする人は少なくありません。

残念ながら、そういうタイプの人の価値観を変えるのは、精神医学的には難しいでしょう。しかも、職場でパワハラやセクハラを繰り返す無神経な人は上の世代、つまり、上司や先輩であるケースが多く、部下や後輩の立場からは「物言い」がしにくい。

とはいえ、企業にとって、ハラスメント対策は待ったなしです。いわゆる「パワハラ防止法」が2020年から施行されるなどハラスメントに対する法規制は年々厳しくなっています。職場でハラスメントを受けた労働者が労働局などに訴えると、事業主側の主張が退けられるケースも急増しています。

パワハラで部下が精神疾患になった場合、上司が「傷害罪」に問われた判例も出ています。無神経さがハラスメントまで及ぶ社員を放置すれば、本人の問題だけにとどまらず、企業の経営基盤を揺るがすリスクにもなりかねません。企業はまず、パワハラ防止法のガイドラインなどを参考に社内ルールを明文化し、「どんな行為がハラスメントなのか」という基準を社員に示すことが肝要です。

ではあなた自身の上司が、昭和世代の無神経な人物だったとしたらどう対策すべきでしょうか。社内ルールが整備されている会社なら、自分で上司に直接「やめてください」などと言う必要はありません。上司のハラスメントに振り回されているのは、一人や二人ではないはず。コンプライアンス・法務部門といったハラスメントを管掌する部署に複数人で申し出て調査してもらい、上司を注意・指導してもらえばいい。変われない昭和世代は、「会社の規則には従順」という習性があるので、ハラスメントを減らすのに効果的と考えられます。それでも意識を変えられず、ハラスメントがやめられない上司は解任、降格などの処分で、会社から勝手に放逐されるでしょう。

会社からの注意・指導で、上司のハラスメントが収まったとしても、チクった部下に対して、上司が「シカトする」「みんなが嫌がる仕事ばかりを振る」といった社内ルール基準未満のマイルドなハラスメントで、仕返しをしてくることも想定されます。上司と部下の関係が続く以上、それを我慢するだけの耐性を、部下はつけなければならないことも多いでしょう。

上司のハラスメントを会社に申告する勇気のない人は、マインドを変えて、「ゴマをする」といった手段で、上司に取り入るのも一考。上司が昭和世代の場合、「上下関係にうるさい」ので有効な手段になりえます。気に入られれば一転、贔屓してもらえるかもしれません。自分が今いる組織を離れたくないなら、そうした“したたかさ”も身につけなければなりません。(和田)

【図表】無神経タイプの思考パターン、弱点、対処法
複数人でハラスメント窓口に駆け込んでやればいい

■【グループ 他人を尊重できない】論破タイプ

権力を持たない人間のささやかな抵抗

子どもたちの間では最近、口論に勝つと、「ハイ、論破!」というのが流行してしまいました。国際舞台で堂々と議論ができる人材を増やそうと、日本でも欧米並みのディベート教育が求められている影響か、議論で相手を論破したがる人が、若い世代を中心に増えているようです。職場においては口下手な人や大人しい人を狙って議論を吹っ掛ける輩もいて、「ロジカルハラスメント」なる新語も登場しています。

ディベートで建設的な議論をするのは、もちろん悪いことではありません。しかし、目的が相手を言い負かすことになってしまい、相手の主張のわずかな矛盾点を突く揚げ足取りのようなことで、議論に勝ったと喜んでいるのは本末転倒でしょう。

とりわけ、職場に「論破好き」の若手社員がいる場合は要注意。ミーティングでの議論をかき乱して、意思の決定や疎通を妨げたり、ほかの社員のやる気をそいだりして、仕事に支障をきたすケースも少なくありません。理論武装に長けていて、一面筋の通った正論で攻撃してくるので、上司にとっても面倒な存在。迂闊に反論して逆襲され、「部下の主張が正しい」と言質を取られると、彼らのペースに巻き込まれ、要求を追認するように迫られるといったリスクもあります。

確かに、正論も社会システムを正しく運用するために必要なケースもあるでしょう。ただ、社会経験が豊富なビジネスパーソンなら、世の中が「正論ばかりでは回らない」ということも、百も承知のはず。言い換えれば、正論を武器に論破してくるということは、組織内で権力を持たず、論理やデータ以外に寄る辺のない人間が、「ささやかな抵抗を試みているにすぎない」とも取れるわけです。相手を論破することで優越感に浸ったり、論理的思考力やコミュニケーション能力の高さを誇示したりするのも、「自分の価値を認めてもらいたい」といった、歪んだ「自己愛」に基づく欲求を満たそうとしているからにすぎません。

正論や論破で、組織の重要な意思決定が覆ることはありません。それは日本の国政を見ていればよくわかります。例えば、今国会で紛糾した裏金問題。与党自民党は、政治資金規正法のわずかな修正で国会の論戦を打ち切り、問題の幕引きを図りました。正論による野党の追及をのらりくらりとかわし、国民が不祥事を忘れた頃合いを見計らって、法改正で禊(みそぎ)を済ませる。まさに自民党政治の面目躍如。自分たちの思惑通りに政治を動かしているわけです。

そうした自民党政治の手法は、論破を試みてくる部下を撃退するのにも応用できます。部下を決して無視してはいけませんが、まともに議論する必要もありません。とりあえず部下に言いたいだけ言わせ、「なるほど」などと相槌を打ちながら、ただ聞いておけばいいのです。

ただし、部下の話の内容は、しっかり把握するようにしましょう。その中に、もし「傾聴に値する納得できる意見」があれば、取り入れてもいい。それ以外の意見は、野党の法案を自民党が「廃案」にするように、握りつぶす。厄介な部下を上手に使いこなすのも、上司の役目です。(和田)

【図表】論破タイプの思考パターン、弱点、対処法
言いたいだけ言わせて、「なるほど」で済ませていい

■【グループ 他人を尊重できない】マウントタイプ

以前にも増して攻撃を仕掛けてくる

マウンティングとはもともと、動物が別の個体にまたがって、自分の優位を誇示する行動を指していました。近年ではそれが転じて、人間が自慢話やお説教といった言動・態度によって、他人に対する自己の優位性を見せつける行為も指すようになりました。「マウントを取る」といった表現も使われています。困ったことに、マウンティング好きな人種も、さまざまな職場で増殖しているようです。

マウンティングは、病的な精神状態の一種といえるでしょう。精神分析学者のハインツ・コフートによれば、マウンティングのような行動に依存せずにいられないのは、「常に優越感を得られないと、自己愛が満たされず、不安に陥ってしまう心理状態にあるから」で、「劣等感の裏返し」とも分析できるようです。

劣等感を克服するのに自己完結してくれるなら構わないのですが、マウンティングは自己顕示欲のために他人を貶めます。相手の自己愛を傷つける行為を平然と行っている点で、幼稚で自己中心的な問題行動ともいえます。

企業では営業成績や社内コンペの採否の発表といった、社員同士を競わせ、勝ち負けの結果をはっきり示すイベントが少なくありません。マウンティング好きのビジネスパーソンにとっては、大手を振ってマウンティングができる舞台になるわけです。

例えば、営業部門の表彰式で、販売成績トップになったセールスが、2位以下のセールスに、「キミらも頑張ってくれないと、会社が困るんだよね。だから、オレの営業のコツを伝授してあげてもいいよ? オレにはそれでも、トップを守れる自信があるけど」などと、自慢げにマウントを取ってきたら、どう対処すべきでしょうか。

マウンティングをされて不愉快になるのは当然です。だからといって、聞こえよがしに相手の悪口を言ってはいけません。

マウンティングをマウンティングで返すのは、最悪の対処法です。マウンティングを返されたら、自己愛を傷つけられた相手は、以前にも増して、マウンティングの攻撃を仕掛けてくるようになるでしょう。そうなると、お互いにマウンティングをし続ける、不毛な負のスパイラルにはまってしまうおそれがあります。

相手からのマウンティングに対する最善の対処法は「大人の振る舞い」をすること。「キミの営業力にはかなわないな〜」などと、心にもないお世辞でおだてておきましょう。心の中だけで、「雑魚のくせに、大口を叩きやがって」などと、密かに舌を出しておけばいいのです。

本当に優秀なビジネスパーソンであれば、余裕があるのでマウンティングなんてしません。「販売成績トップになれたのは、私だけの力ではありません」などと謙遜したり、周囲の人を立てたりします。その結果、他人の支援をもっと受けられるようになり、販売成績もさらに上がるのです。

ただ、自分以外の部下や同僚がマウンティングに悩まされているようなら、別の対策が必要です。こっそり飲み会を開き、悪口大会で溜飲を下げてみてもいいでしょう。チームのガス抜きも、優秀な組織人なら当たり前にしなければならないことです。(和田)

【図表】マウントタイプの思考パターン、弱点、対処法
「君にはかなわない」心にもないお世辞返しが一番

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月2日号)の一部を再編集したものです。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹 構成=野澤正毅 撮影=宇佐美雅浩)

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