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「なぜこのタイミングなんですか!」人事異動に納得いかず承諾しなかった社員がコロッと落ちた何気ない一言

プレジデントオンライン / 2024年8月11日 8時15分

川端克宜氏

■【グループ 考え方に問題がある】暴走タイプ

二度とチャンスを与えない部下の特徴

私の場合、一回は本人の気の済むようにやらせます。もちろん、経営が傾くレベルの行為があれば職権でストップしますし、経験の浅い部下にそこまでのリスクを背負わせないように気を付けますが、それ以外なら本人の望み通りにとことんやらせてみるのです。

「あえて失敗させる」と言うと少し語弊がありますが、結局のところ、人は失敗からしか学べません。手痛い思いをして初めて丁寧に調査し、万全の準備を整え、合意や確認を取りつけて、慎重に進めることを覚えるのです。

あなたの職場では「失敗を恐れるな」と言いながら、失敗する直前にストップをかけていませんか。失敗は、本人がはっきりそれとわからなければ、意味がありません。直前に上司がストップをかけてしまえば、「またですか! なぜ何度言っても理解してくれないんですか」と部下が怒るのは当たり前でしょう。本人は一つも腹落ちしていないのですから。

経験豊富な上司からすれば助け船を出したつもりでも、本人は「あのまま自分の思い通りにやらせてくれればできたはずなのに」と都合よく解釈するに違いありません。そうしたことが何度か繰り返されると「この職場ではやりたいことができない」と鬱憤を募らせて、最後には転職してしまうのです。

経営層は若手を育てるためのコストと割り切れますが、中間管理層にとってはそうではないかもしれません。部下の失敗が自らの失点になる、という意識があるからです。

経営層まで若手の不満の声が聞こえたり、中間管理層とのギクシャクが見えているなら、それは風通しのよい証拠です。経営層が中間管理層に「わかっているよ。部下が暴走気味なんだろう。育てるつもりで一度やらせてみたらいい」と伝えればいいだけです。

どの部下も、失敗しようと思って行動しているわけではないはずです。自分の評価を上げるため、所属する部署の売り上げに貢献するため、会社のためと思っての行動なら、それでいいではありませんか。

失敗から学び、前進している限り、チャンスは何度でも与えていいと思います。「チャンスは一度限りで、失敗したら次がない」文化をつくってしまうと、萎縮して誰もチャレンジしなくなってしまうでしょう。

ただし、雑な失敗は認めません。経営者や上司が「失敗を恐れずチャレンジしろ」と言ったのをいいことに、ろくに計画を立てず準備もしないで独り相撲をとり、揚げ句の果てに「失敗してもいいって言ったじゃないですか」と開き直るような者には、二度とチャンスは与えません。

なぜなら、その失敗から本人が学べるものは何もなく、仲間が共有できる教訓もなく、ただただチームに損害を与えるだけだからです。反省もないまま次のチャンスを与えたところで、同じミスを繰り返すのが関の山。失敗を経験させ成長の機会を与えるのは、本人が会社のためを思って本気で成功する気でいるのが大前提です。

部下の本気度を見極め、失敗直後に学習の機会を設け、本人の将来に繋げることもまた、チームをマネジメントする上司の重要な責務です。(川端)

暴走タイプの思考パターン、弱点、対処法
失敗させたらいい。またチャンスをあげたらいい

■【グループ 考え方に問題がある】思い込みタイプ

誰が言うかによって反応が変わる

思い込みが激しく、人の意見になかなか耳を傾けない。バイアスのかかった根拠で行動する同僚や部下をどう説得すればいいか、頭を悩ませている人は多いのではないでしょうか。

こうした状況では、自分自身が思い込みを捨てなければなりません。過去の経験から、「この人は言っても変わらない」と決めつけていないか自問してみましょう。

私はビジネスの意思決定をする際に、「アンケートを信用するな」とよく話をします。お客様の声を無視しろと言っているわけではありません。ただ、いいことがあって上機嫌な状態で回答されたのか、家族で喧嘩したりして不機嫌な状態で回答されたのかで、間違いなくアンケートの回答は変わります。

同じ聞き方をすれば同じように回答してくれるコンピュータと違い、人間は感情を持つ生き物です。機嫌が悪いときもあれば、前日に飲みすぎて体調が悪いこともある。同じ人間と話しても、朝に話をするのと夕方に話をするのとでは答えが変わるのはよくあることです。自らが思い込みを排して、相手の置かれた状況を判断しながらコミュニケーションを取ってみるといいでしょう。

話をするタイミングを変えるだけで、違った反応を引き出せる可能性がある。こうした配慮は、例えば人事の現場では当たり前に行われていることでもあります。子育てや介護が必要な社員に転居を伴う人事異動を内示する場合、週末に話をすることで家族と相談する時間を持たせられます。

コミュニケーションの入り口を変えることも効果的な手段の一つでしょう。同じことを言っても、誰が言うかによって、話を聞いた人の反応は大きく変わります。

一例をお話ししましょう。人事異動に納得がいかず、承諾をしてくれない部下がいました。「なぜこのタイミングで」と、一向に受け入れてくれません。面談していた人事部長も困っていたのですが、たった一言、「グループ長と話して決めた人事なんだ」と伝えたところ、ガラリと反応が変わったそうです。

「え、グループ長と話したんですか」
「それなら行きます」
「僕のことをよくわかってくれていますから」

実際、グループ長は彼と一緒に地方の支店で仕事をしていたこともあり、働きぶりをよくわかっていました。人事部長も異動についてグループ長と確かに話をしたのですが、まさかここまで反応が変わるとは思わず、拍子抜けしてしまったそうです。

思い込みを解く説得をするためには、社長などの肩書や役職は大きな意味を持ちません。相手は信頼を置いている人からの言葉かどうかを重視しているからです。「この指示はこの役職の人が出すもの」と、組織の構造に杓子定規に縛られる必要はありません。私自身、「自分が話したほうがスムーズだ」と思えば、直接現場の社員と話をすることもありますよ。

自分以外の人に説得を依頼する場合は、その人が誰と仲がよく、誰と仲が悪いかといった人間関係を把握しておくことも大切です。仕事と同じように、コミュニケーションにも適材適所があるのです。(川端)

思い込みタイプの思考パターン、弱点、対処法
「誰が説得するか」で結果は180度変わる

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月2日号)の一部を再編集したものです。

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川端 克宜(かわばた・かつのり)
アース製薬 社長CEO
1971年、兵庫県生まれ。94年に近畿大学商経学部(現・経営学部)卒業後、アース製薬に入社。広島支店長、大阪支店長、取締役ガーデニング戦略本部本部長などを経て、14年に代表取締役社長就任。21年より現職。

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(アース製薬 社長CEO 川端 克宜 構成=渡辺一朗 撮影=宇佐美雅浩)

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