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「告発女性への素行調査」でドロ沼裁判の様相…このタイミングでSNSを再開した松本人志がいちばん恐れていること

プレジデントオンライン / 2024年7月24日 8時15分

2025年万博誘致委員会の発足式に、アンバサダーとして登場したお笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志さんと浜田雅功さん(=2017年3月27日午後、東京都千代田区) - 写真提供=共同通信社

■被害女性を出廷させないよう「妨害工作」か

松本人志と週刊文春(以下文春)が裁判そっちのけで場外乱闘を繰り広げている。

先に仕掛けたのは文春側にいわせれば松本の代理人である田代政弘弁護士からだったという。

松本人志から性的被害を受けたと文春で告発し、法廷でも証言すると語っているA子さんに対して、田代弁護士側は出廷させないようさまざまな妨害工作をしてきたというのである。

文春と松本は名誉毀損訴訟の真っ最中だから、文春のいうことがすべて正しいとは思わない。だが、もし幾分かでも事実だとすれば、田代という弁護士は真実の追求なんぞそっちのけで、どんな手を使ってでも裁判を有利に進めたいという一念で凝り固まっているように思える。

しかし、松本を蔑(ないがし)ろにして弁護士が勝手に動くわけはないから、合意の上なのであろう。

こうしたやり方を見ると、私は、松本人志は相当焦っているように思われる。マリー・ローランサン風にいえば、自分が“もっとも哀れな忘れられたお笑い芸人”になってしまうことに怯えているのではないか。

■SNS発信を再開したが「センスがなくなった」

文春が松本の性加害疑惑を報じたことに対して、松本側は名誉毀損だとして5億5000万円の損害賠償を求めた。裁判は3月から始まったが、決着がつくまで2~3年はかかるといわれる。

これまで沈黙してきた松本はここへきてSNSで定期的に発信し始めている。だが、受け手側の反応は「センスがなくなった」「面白くなくなった。いなくてもなんの問題もないことがわかった」という厳しい声が多くなってきているようだ。

少し前になるが、3月27日にTBSが定例会見で、松本人志がMCを務めていた「クレイジージャーニー」について言及したとデイリースポーツデジタル版(3月27日)が報じていた。

「松本は芸能活動休止後、2月19日の放送回から姿を消している。その後の影響を問われ、コンテンツ戦略局長の三城真一氏は『視聴率っていろんな変数があると思うんで、一概になんとも言えないけど』としながら『基本的には大きな影響はない』と説明した。

また、『楽しみにされてる方にとってはやっぱりちょっと物足りないっていう所もあるでしょうし』と視聴者の心情を推察しつつ『(松本が)いらっしゃらなくても、この番組はこういうことをやってるから好きっておっしゃる方もいる。目に見えてそれが顕著に影響しているかと言われたらそれに関しては特に見当たりません』とした」

テレビでも松本の存在感は日に日に薄れていっているようである。

■「存在していなくても、芸能界は成立しています」

また、松本の所属事務所である吉本興業の中でも、松本人志に対しては冷たい対応だとFLASH(7月18日)が報じている。

「裁判が終わったからといって、本人が思うように元どおり復帰できるかといえば、それは難しいでしょう。すでに、テレビ局の編成のなかに松本が存在していなくても、芸能界は成立していますから」

一日でも早くこの裁判に決着をつけてテレビに戻りたい。視聴者に見捨てられ、忘れ去られるのは死ぬよりもつらい。そう考えているのではないか。

文春のいい分(7月18日号)を見ていこう。

松本人志の性加害疑惑で最初の記事が出てから半年あまりたった頃、松本から性加害を受けたと告白したA子さんの身辺にはさまざまな変化があったという。彼女が見ず知らずの男たちに行動を監視されていると気付いたのは2月中旬のことだったそうだ。

「ある日、私は友人と二人で新宿のカラオケボックスに来ていました。夜九時半、L字型のソファで会話していたところ、ドアの左上でコツンという音がしたので目を向けると、一眼レフの黒い影が見えたのです。その後、人影とともにサッと消えていった。レンズと目が合ったことに驚き、私は恐怖で固まってしまった」(A子さん)

■全身黒ずくめの探偵が尾行していた

同じ時期から、自宅前に停車する地方ナンバーの車を見かけるようにもなった。3月以降、A子さんから相談を受けた文春編集部は、継続的に彼女の自宅周辺を監視していたという。4カ月の取材で浮き彫りになったのは、記事掲載後の早い段階でA子さんの自宅が特定され、その後も探偵業者による尾行が付いていたという事実だったそうである。

6月5日、A子さんを尾行する人間たちの動きをつかんだという。

「この日の夕方、東京都内にある彼女の自宅前には地方ナンバーの小型車が停まっていた。(中略)

A子さんが自宅を出て歩き始めると、車内から忙しなく一人の男が飛び出し、五メートル後方から彼女をつけていく。帽子にリュックを背負い、全身黒ずくめの男は左手に携帯電話を持ち、緊張感を漂わせた表情で二十分以上にわたり尾行を続けた。その間、もう一人の男が運転する小型車は、発進と停止を繰り返しながら彼女を追尾する」(文春)

全身黒ずくめで5メートル後ろからついて歩けば相当目立つ。この探偵たちは素人同然なのであろう。取材のプロ、尾行のプロの文春取材班から見れば、彼らに気付かれずに尾行するなどたやすいことだっただろう。

■文春が探偵業者を直撃すると…

「それから約二時間後、A子さんが退店すると、一人の男が再び尾行を開始。自宅近所に先回りし、帰宅するシーンを動画で撮影する。一方、もう一人の男は時間差で退店した男性二人を車内から動画で撮影していた」(同)

その後も文春編集部は、探偵協会の関係者などへの周辺取材を重ねて、この男2人は関東一円に拠点を構える探偵業者Yに所属していることが判明したというのである。

その後も、文春によると、A子さんへの尾行は執拗を極めたという。

夜道をおびえながら歩く女性
写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz

文春は、探偵業者Yの担当者を直撃している。

「――彼女は尾行を嫌がらせと認識している。もし被害を受けたと訴える女性に対し、松本さん側が探偵に監視させ、彼女の生活を脅かしていたとすれば問題ではないか。

『今初めて聞いたので、驚いているっていうのが本音です』

そして、担当者は次第に後悔の色を滲ませた。

『そうした事情を知った以上、今後は受けない形にします。僕らもトラブルはご免というか、巻き込まれたくないので。僕らはもちろん“嫌がらせ屋”でも何でもないので。もちろん、社会のルールに則って行動しているので、そういった事実を知った以上はちょっと問題があるかなと。それを知っていて受けていたら逆に問題かなとは僕は思うんですけど』」(同)

■「反対尋問が成功しないことを自ら認めている」

A子さんに対する尾行・つきまとい行為について、ジャーナリストの伊藤詩織氏の性加害問題で代理人を務めた佃克彦弁護士に見解を求めると、こういったそうだ。

「裁判による真実解明を阻害する悪質な行為であり、本当にアンフェアです。松本氏側は自ら裁判を提起しながら、相手方の立証を妨害している。たとえ松本氏側にとって敵性証人でも、松本氏側は反対尋問をすることによって、真実に近づくことができます。

松本氏側の対応は自分たちの反対尋問が成功しないことを自ら認めているようなものであり、自分たちの主張に自信がないということを露呈している。一般的に、裁判の過程で探偵に依頼する場合はその費用は依頼者が負担します。依頼者(松本氏)の承諾もなく、代理人(田代氏)が独断で探偵を雇うことは考えられません」

吉本興業に取材を申し込むと、「裁判に関することは代理人に一任しております」と答えたが、松本の代理人である八重洲総合法律事務所の田代弁護士は期日までに回答しなかったという。

■相談相手には「不倫しているでしょう」と迫ってきた

田代弁護士というのは、早稲田大学を卒業後、1998年に東京地検検事に任官している。長年、各地検で汚職事件や経済事件などの捜査に従事したそうだ。

「小沢一郎氏の陸山会事件を担当した際、虚偽の捜査報告書を作成したとして、二〇十二年に刑事告発された。その後、嫌疑不十分で不起訴になったものの、減給六カ月の懲戒処分を受けて辞職。弁護士に転身しました」(司法記者)

田代弁護士は、A子さんの相談を受けていたX氏(次の号で実名を出している)という人物にも接触、何とかA子さんを説得して証人に出ないよう説得に来たという。

X氏が拒絶すると、こう迫ったそうだ。

「A子さんと不倫しているでしょう。そのことを雑誌が記事にするらしいですよ。私はその記事を止められますけど、どうしましょうか」

X氏はこう答えたそうだ。

「彼女と不倫なんかしてないし、記事にするならどうぞ」

だが、それから2カ月半後の5月10日、X氏のオフィスに大手出版社に「在籍」する女性週刊誌の元編集長が現れたという。

彼女は記事のコピーを示し、記事の見出しには不倫の文字が躍り、X氏が住む東京都内のマンションのエントランスでA子さんが佇む写真が付けられていたそうだ。

■さらには「五千万円でも一億でも渡せます」

X氏は、何ら疚(やま)しいところはないというと、すかさず元編集長は、「うちの雑誌では掲載を見送ったけど、他社に持ち込めば記事になっちゃいますよ」と返したという。

後日、再びその元編集長がX氏のところへ来て、

「出廷せずに和解すれば、A子さんには、五千万円でも一億でも渡せます」

X氏が金の支払い元を問いただしても、明言しなかったという。

このところ、女性誌、特に週刊女性が、この問題を何度か取り上げている。「独占入手 松本人志(60)告発女性の驚嘆発言『性被害はなかった』」(7月9日号)「『私は上納されてない!』松本人志(60)新証言を独占入手」(7月23・30日号)がそれだ。

それに対してA子さんは文春で次のように反論している。

「文春の記事掲載後、私の友人関係の中で“仲違い”した人など一人もいません。内情を知っている友人とは毎日連絡を取り合い、裁判を応援してくれています。私は(『週刊女性』から)一切取材を受けていません。

彼らは何を根拠に記事を書いたのでしょうか。この記事により、ネット上には『A子は裁判に出廷しない』『性被害はなかった』という書き込みが殺到し、大きな誤解が生まれています。(『週刊女性』は『かねてより取材の過程などに関してはお答えしておりません』と回答)」

■田代弁護士は一転、調査を認めたが…

さらにA子さんは絞り出すようにこういったという。

「今の日本において性被害の告発は、相手の存在が大きければ大きいほど困難を伴い、様々な妨害を受ける。ネットやメディアによる誹謗中傷、探偵の尾行、弁護士からの“脅迫”。今後、さらなる妨害工作を受けても、私が彼らに屈することはありません」

田代弁護士側は、こうした文春側の反論に対して最初、「記事にあるような言動を行ったことは一切なく、全く事実に反する」と声明を出した。だが翌日に会見し、被害を訴えている女性を特定するため、A子さんらを調査会社に調べさせたという文春報道は認めた。スポニチ(7月12日)によると、「調査について『(松本は)当事者ですから知っています。了解なくやりません。お願いします、と言われた』と明かした」という。

インタビューで、それぞれのメディアが録音マイクを向けている
写真=iStock.com/microgen
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/microgen

どうやら文春が報じた田代弁護士側によるA子さんの「出廷妨害工作」はあったようではある。

だが、文春というのは現在のこの国のメディアの中で最も力を持っているといってもいい。その文春が係争中の相手側を一方的に批判する記事を7月18日号で6ページ、次号で「松本人志“出廷妨害”に新証言」を4ページもやることにまったく問題はないのだろうか。

■元女性誌編集長の振る舞いはどうなのか

松本人志も文春ほどではないが、発信力を持ったお笑い芸人ではある。だが文春とは比較にならない。裁判にどのような影響を与えるのかはわからないが、世論に与える影響は大きなものがあるはずである。

大きな影響力を持ったメディアは、そうした発信力を持たない相手に対して、反論の機会を与えてやってもよかったのではないか。

例えば、こうした文春側の記事に対して、松本側の代理人である田代弁護士のいい分を1~2ページ載せてやる。それぐらいの度量が文春にあってほしかった。そう私は思うのだが。

文春側は、田代弁護士に話を聞きたかったが、期日までに返事はなかったから致し方ないというかもしれない。だが、コメントと係争中の相手側の誌面で反論をするというのは、田代弁護士側からすれば受け取り方が違うはずである。

文春の記事は、取材対象と一体化している女性週刊誌の非ジャーナリズム性を炙り出してもいる。

週刊誌に中立公正など求めはしないが、松本側の代理人のような働きをした元女性誌編集長の行動は、私から見ても分を超えた編集者にあるまじき下劣な振る舞いというしかない。

■甘い汁を吸ってきた関係者たちの罪も問われている

件の元編集長は、X氏に記事のコピーを見せて、うちではやらないが他社に持っていけばやるといったという。ということは、単なる原稿ではなく3~4ページ分の特集記事としての体裁は整えていたと思われる。

だとすれば、その人間が所属している社の女性週刊誌編集部が一度は記事にしようとして、最終的にボツになったものではあるまいか。

この元編集長の行動が事実だとしたら、編集者の分を大きく逸脱しているといわざるを得ない。

ちなみに大手出版社が出している女性週刊誌は3誌。週刊女性(主婦と生活社)、女性自身(光文社)、女性セブン(小学館)である。このように松本人志側にベッタリへばりつき、まるで代理人のような行動をした元編集長が在籍しているといわれる出版社は、自社の名誉にかけて事実関係を詳(つまび)らかにして、公表すべきではないか。

私は、松本人志の性加害疑惑裁判で問われているのは、松本の性加害の有無はもちろんだが、彼に阿(おもね)り“お笑い界の天皇”に祀り上げることで、自分たちも甘い汁を吸ってきたテレビ関係者、芸能マスコミ、後輩のお笑い芸人たちの罪だと考えている。

裁判の3回目となる弁論準備手続きは8月14日に行われる予定だという。

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元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)、近著に『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(現代書館)などがある。

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(ジャーナリスト 元木 昌彦)

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