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「バカがバカを育てる」「会議はバカが支配」知らぬ間に会社に増殖するバカを駆除し共同体で処罰与える方法

プレジデントオンライン / 2024年8月2日 7時15分

■絶対的理由1 生産性が大幅低下 会議や習慣、すべてをバカが支配

正論に意味はないと気づけないバカ

自分と違う意見をすぐに否定する「バカ」がいると、周囲は自由に発言できなくなります。会社なら会議や議論の場で意見を言うことが難しくなり、バカの一方的な意見ばかりが通るという不条理なことになって、生産性が大きく下がります。

物理学の視点で人間の行動や社会現象を解明する社会物理学では、さまざまなデータを客観的に計測して、どうすれば集団のパフォーマンスを最適化できるかを研究しています。

それによると、会議の成果が最大になるのは、発言の内容には関係なく、参加者全員が均等に発言している場合だとわかりました。参加者の発言時間をスマホのようなデバイスで計測し、一人が長く話すと警告ランプがつくようにすると、それだけでパフォーマンスが10~20%上がったのです。

自己啓発とは、スキルアップなどで人的資本を大きくすることです。これはもちろん大切ですが、いまより10%パフォーマンスを上げようとすると、かなり大変でしょう。ところが会議の発言時間を均等に分配するだけで、これと同じかそれ以上の成果を簡単に上げることができます。

これを私は「集団啓発」と呼んでいます。社会物理学によれば、リーダーは部下一人ひとりを育てて啓発するよりも、集団が最適パフォーマンスになるようにチューニングしたほうが、ずっと大きな成果を簡単に実現できるのです。

みんなが均等にしゃべると、なぜパフォーマンスが上がるのか。それは、参加者がそれぞれの立場から独自のアイデアを持っていて、それを合計すると一人のアイデアを上回るからです。一人が会議を仕切って、狭い世界観に合う発言しか認めないような状態になると、面白いアイデアがあってもそれを共有しようとは思わないでしょう。

みんなが自由に発言できれば、思いもよらないアイデアが出てくる可能性があります。加えて「同じプロジェクトを手がけた会社を知ってますけど、大失敗していますよ」といった貴重な情報も出てきます。

グーグル社などはそれをよく理解しているので、世界中から多様なバックグラウンドを持つ高知能のスタッフを集めています。自分と異なる文化的な背景を持つ人は、異なる発想をします。国籍や性的指向に関係なく、多様な人材がリベラルな雰囲気の中で自由に発言できるようにすると、優れたアウトプットが生まれやすいことは、数学的にも証明されています。

ところがメンバー内に否定ばかり繰り返す者がいると、まったく逆のことが起こります。その人が他人の意見を批判し始めると、面倒くさいから「黙っておこう」となるからです。チームのトップが「否定バカ」の場合は、みんなが忖度して上司の意向に合わせようとするので、アウトプットの質はどんどん下がってしまいます。

チーム全体のパフォーマンスを上げるために大事なのは、個々の意見を批判しないことです。会議では「これが面白いと思います」「こんな失敗をした会社があります」といった情報をどんどん集めて、最終的に決定する人が判断すればいいのです。

新商品についてどれだけ会議をしても、何が売れるかは誰にもわかりません。「そんなものは売れるわけがない」と言われたものが大ヒットしたりします。つまり、何が正しいかは、ギャンブルのようなものです。会議で誰が正しいかを争っても意味がありません。他人の意見を聞き入れられない人は、自分の正義を貫くことの無意味さに気づけないのです。

では、チームの生産性を上げるために、和を乱す「否定バカ」をどうすればいいのか。これは、人類の長い進化の歴史が教えてくれます。

狩猟採集民の社会では、集団のルールに従わないと村八分にされます。個人的に批判したり罰しようとすると、逆恨みされて殺し合いになってしまうからです。

だからこそ、「あいつはこんなヒドいことをしている」と噂を広め、共同体の全員で処罰するのです。そうなると、相手は誰が敵か特定できません。

みんなで村八分にすれば、その責任もみんなにある。「バカ」に対しては共同責任で対処するべきで、一人で戦うと、ろくなことにはなりません。

■絶対的理由2 ブラック企業化 バカがバカを育て、人が辞めていく

根性論やパワハラが「いいこと」になる

周りを見下す、批評家気取り、大声で怒鳴り散らす――そんな「バカ」が上司になると、その部下も「バカ」を見習うようになります。「自分も同じようにすれば評価される」と考え、それが企業文化として根付いてしまうと、ブラック企業のできあがりです。

個人の能力よりも集団の能力のほうがポテンシャルが高いとすると、個人としては優秀でも、全体の輪を乱すようなメンバーがいると、全体のパフォーマンスは逆に下がってしまうことになります。優秀な1人が成果を上げても意味はありません。

「集団啓発」の重要性に気づいたアメリカのベンチャーの中には、「どれほど仕事ができる社員でも、集団のパフォーマンスを下げる者は解雇する」という方針の会社もあるようですが、日本ではなかなか難しいでしょう。

バカがバカを育てることで企業がブラック化すると、まともな社員はどんどん辞めていきます。いまは人手不足ですから、社員を採用して教育するためには大きなコストがかかります。せっかく戦力になった社員が辞めてしまえば、会社にとっても大損害です。

難しいのは、ここに好き嫌いが関わってくることです。ある人にとってはパワハラ上司でも、別の人は「厳しく鍛えてくれるよい上司」と思っているかもしれません。人事担当者が両者から話を聞いたとすれば、「どうすればいいの?」となるでしょう。誰から見てもモンスターなら早々に排除されていくでしょうが、人によって評価が違うと、いつまでも会社に居座ることになります。

組織をブラック化させるバカたちの多くは、中途半端に仕事ができます。「すべて自分の思い通りにできればうまくいくのに」と思っていて、他人がすることをいちいち批判するので、周囲は面倒くさくなってしまいます。それでも自分が嫌われていることはわかっているので、ますます被害者意識が強くなるばかりです。

日本の会社の大きな問題は、バカほど中間管理職になりたがることです。会社という組織においては出世するほど抱える面倒事が増え、まともな人ほどやりたがらないからで、無理にやらせようとすると辞めてしまう。結果的に、「自分はデキる」と勘違いした社員しか残らなくなってしまうのです。

手遅れになる前に人事をもって対処

根性論やパワハラ、足の引っ張り合いといった、モンスターたちによってつくられたブラック企業文化は簡単には変わりません。「これ以上、社員に辞められたくない」「休職者を増やしたくない」と思っても、モンスターが増殖してしまったあとではもう手遅れです。そうなる前に、人事を巻き込んでモンスター予備軍を“駆除”する以外に方法はなさそうです。

【図表】バカの頭の中 嫌われているとわかっていつつも自分の正義を押し通して部下を教育指導

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月2日号)の一部を再編集したものです。

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橘 玲(たちばな・あきら)
作家
2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎文庫)、『言ってはいけない』(新潮新書)、『バカと無知』(新潮新書)、『シンプルで合理的な人生設計』(ダイヤモンド社)など著書多数。

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(作家 橘 玲 構成=向山 勇)

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