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企業も根負けする…悪質カスハラをするクレーマーバカが和解金をせしめるメカニズムと最強の防御策  

プレジデントオンライン / 2024年8月3日 7時15分

■絶対的理由3 売り上げ大損失 バカが一人で成果を上げても意味なし

実力があってもバカはバカ

職場を腐らせるとわかっていても、そのバカが成果を上げていて、「チームの予算を支えているから」となかなか対処に踏み切れないこともあるでしょう。エースがモンスター社員だった場合、一見、チームに不可欠な存在のように思えても、組織全体で見れば生産性は下がっています。

ハイパフォーマーな「実力派バカ」は、チームワークに向いていないとしても、一人で成果を追求できる仕事では、予想以上にいい結果を会社にもたらすこともあります。

最近聞いた話ですが、人事異動で上司になるとわかったとたん、部下が次々と休職してしまうくらい嫌われていたパワハラ社員が、次の人事で一人で企画を考える部署に異動したところ、そこで目を見張るほどの成果を上げたそうです。一方、その社員が去った部署では全員の幸福度も上がり、チームの生産性が向上しました。まさに適材適所です。

モンスター社員がいると会社の業績が低迷しますが、売り上げが上がらなくなったことで社員が「モンスター化する」こともあります。会社が儲かっていれば、社内のトラブルの多くは自然に解消していきます。商品やサービスがヒットすれば、モチベーションは高くなるし、メディアから取材されたり、取引先から「すごいですね」などと言われ、自己評価も上がります。

逆に売り上げが縮小してくると、「売れなくなったのは誰の責任だ?」と犯人探しが始まります。「あいつの責任だ」と名指しされたくないので、誰もが他人のせいにしようとします。

少子高齢化の日本では、多くの企業が、市場が縮小する中でなんとか生き延びようとしています。そうなると、成果を出すには「他人の足を引っ張らざるをえない」と考える人も出てくるでしょう。「あの人、変わっちゃったね」と言われるケースは、多くはこのパターンでしょう。

円安とインフレで日本はどんどん貧乏くさくなり、それと同時に社会がぎすぎすするようになったのは、「いいひと」がモンスター化している影響もあると思います。

■絶対的理由4 要求がエスカレート 味を占めたバカは図々しさ倍増

味を占めると手に負えない

賢いと自認する「バカ」たちは、自分の権利を強く主張します。自分が公正に評価されていないと感じると、訴訟をちらつかせたり、相応の見返りを求めてきたりします。ようは、クレーマー気質です。

訴訟になれば会社の弁護士が対応することになりますが、それ相応の時間と手間がかります。手っ取り早く問題を収めるべく、和解金を払うなどお金で早期解決を図る会社もあるでしょう。

カスハラ(カスタマーハラスメント)でも、顧客の理不尽な要求に毅然と対処しようとすると、どんどんこじれていくので、相手の言うとおりにしてしまうこともあるでしょう。そうなると相手は味を占めて、より厄介なクレーマーへと進化していきます。

クレーマーは自分の主張が認められたら、いったんは引くものの、ほとぼりが冷めた頃に再び問題行動を起こします。恐喝と同じで、和解金を手に入れたクレーマーはつけあがり、同じことを繰り返したり、どんどん要求が大きくなっていくかもしれません。目の前の面倒くさい問題を解決するために、「コストを支払うのは仕方ない」「お金で解決してしまえばいい」という考え方は、いちがいに否定はできませんが、クレーマーを助長させてしまう負の効果があるのは確かです。

クレームが発生しやすいビジネスであれば、それをコストとして割り切っているわけですが、「バカ」側からすれば、クレームをつけるほど、自分が得できることをどんどん学習していきます。どこかで歯止めをかけねば、クレーマーの要求がエスカレートします。

最近はカスハラが大きな社会問題になって、政府が法律をつくるという話になっています。「おまえになんの権利があるんだ」はクレームの定番ですから、「法律で決まってますから」と対応できるようになるのは、ひとつの解決策だと思います。

【図表】バカの頭の中 不利益に対して相応の対価を主張

■絶対的理由5 人生の幸福度低下 バカの因縁ほど無駄なものはない

当たり屋バカにはかかわらないのが吉

「バカ」にとっては自分の主観こそが正義で、意見が合わなかったり、ステータスを脅かす相手はすべて悪です。バカの多くは「世直し」の如く、自己中心的なSNSの投稿を繰り返し、他人の投稿に対して、批判的なリプライ(返信)をするケースも少なくありません。「あなたの意見はおかしい」「もっと勉強しろ」などと、不毛なコメントを送り続けます。なんの意味もない争いに巻き込まれて消耗するのは、まったく人生の無駄です。

多くの人は、「正しい主張をすれば、相手は納得して反省するだろう」と素朴に思っているようですが、現実にはそんなことはぜんぜんありません。反論されると、それが論理的にどれほど正しくても、相手はさらに反発して、自分の主張に固執するようになります。それが人間の心理なので、論破は逆効果にしかなりません。

世の中には5%ぐらい「面倒くさい人」がいて、1%ぐらいは「とんでもない人」でしょう。10人中9人はまともな人でしょうが、「面倒な人」や「とんでもない人」に関わり合うと、人生の幸福度は大きく下がります。逆にいえば、この人たちを避けるだけで、人生の幸福度は劇的に上がります。

とはいえ、上司や部下、同僚など、避けることが難しい人間関係もあるでしょう。ほんとうに耐えられないと思ったら、「嫌われる勇気」で頑張るのではなく、転職などで物理的にバカから離れる以外にありません。

【図表】バカの頭の中 傷ついた分、誰かを傷つけて幸せを補っている

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月2日号)の一部を再編集したものです。

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橘 玲(たちばな・あきら)
作家
2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎文庫)、『言ってはいけない』(新潮新書)、『バカと無知』(新潮新書)、『シンプルで合理的な人生設計』(ダイヤモンド社)など著書多数。

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(作家 橘 玲 構成=向山 勇)

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