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なぜか人事評価5段階で3の社員へのクレームが多い…弁護士橋下徹が教える評価1~2社員を適切に撃退する法

プレジデントオンライン / 2024年8月7日 8時15分

橋下徹氏(撮影=的野弘路)

■【グループ 他人を尊重できない】自己中心タイプ

社会生活で重要な「3つの軸」

たいていの仕事はチームで進めるものです。その中に、成功したらすぐ自分の手柄にしようとする人や、まわりのサポートを一切しない自己中心的な人がいると、まわりはいい迷惑。

ただし、そのような人を排除しようとすぐに動くのは危険です。その人が本当に自己中心的なのかを確認してから動かないと、かえって自分が組織から弾かれるおそれがあります。

自分が上司や同僚、部下に下す評価と、組織がその人に下す評価は、必ずしも一致しません。

僕が首長を務めた大阪府庁には約1万人、大阪市役所には約3万6000人の行政職員がいました。僕はその両方で職員に対して「何かあったら僕に直接メールを送っていい」と、オープンな環境をつくりました。実際、職員からは山のようにメールが届きました。

その中で多かったのが、他の職員についてのクレームです。ただ、よく読んでみると、組織の人事評価で5段階中3くらいの人を指して、「あの上司は自己中心的だ」と文句を言っているケースが多かった。同僚に文句を言う職員の多くは、相手のことを人事評価が1〜2の程度の低い職員だと過小評価しており、組織が付与する評価との乖離が大きいのです。

僕は常々、「自分軸」が大切だと言っています。ただ、それは自分の内面の話です。逆風が吹く中でファイティングスピリッツを失わないようにするために、自分軸を持つのです。一方、まわりの人とコミュニケーションを取るときは、「社会の軸」「組織の軸」を意識すべきです。社内における他者への評価も同じで、自分軸による評価ではなく、組織の軸による評価をもとに対応を考える必要があります。

自分の基準で自己中心的だと思った相手が組織の基準で平均以上なら、気にしたり腹を立てたりしても無駄。そもそも人間性に多少の難があっても、仕事ができれば問題ないというのが僕の考えです。

厄介なのは組織の人事評価で1〜2のケース。自分軸でも組織の軸でも低評価な人に対しては、チームで円滑に仕事を進めるための対策が必要です。

自分が上司の立場で、自己中心的な部下がいるならば、強権的なパワハラ的指導は絶対にやめて、人事権、指導権を適切に行使すべきです。いきなり降格させると独裁者だと思われるので、あくまで組織の評価基準をもとに何度か指導を重ねて、それでも改善が見られなければ人事権を行使するというプロセスを踏んでください。

相手が上司や同僚の場合は、指導や人事権の行使ができません。上司の上司に掛け合うのも手ですが、日本の企業でそこまで風通しがいい組織は少数派。人事部に掛け合って、組織的に対処してもらったほうがいいと思います。

気をつけたいのは一人で動かないこと。組織評価の基準で1〜2の自己中上司がいても、一人で人事部に駆け込むと主観的な評価だと判断されます。客観性を持たせるには、同じ立場にいる人を複数集めて、証言や証拠を固めることが大切。複数の声が集まれば、人事部も無視できません。自己中心的な人は他のメンバーにも迷惑をかけている可能性が大。まずは一緒に動く仲間を集めましょう。(橋下)

【図表】自己中心タイプの思考パターン、弱点、対処法
単独で戦うのは危険! まずは仲間を集めるといい

■【グループ 他人を尊重できない】根性論タイプ

根性論や精神論自体が悪いわけではない

根性論や精神論と漢字で書くと、見るからに泥臭く、昭和の悪しき習慣という印象を受けます。ただ、私自身は根性論にも精神論にも、大いに賛成する立場です。

川端克宜氏
川端克宜氏(撮影=宇佐美雅浩)

ビジネスにおいても人生においても、そもそもの前提として必要なのは、自分がどういう仕事をしたいのか、どういう人生を生きたいのかという強い動機です。精神的な働きを抜きに、いい仕事をするのは難しいし、人の心は動かせない。仕事をするうえでの原動力となるものです。

仕事の現場で精神的な側面に焦点を当てること自体も、「アチーブメント(達成)」や「パッション(情熱)」と英語で表現すれば、それほど悪いものにも古いものにも見えません。

では、どうして根性論や精神論が悪者扱いされてしまうのか。それは、組織が上手くいっていない理由を説明できない管理職が、簡単に使ってしまうからなのかもしれません。

高い目標を課しておきながら、「気合が足りない!」「おまえらがやらないから未達なんだ」と精神面を理由に怒鳴り散らす。解決策を示さず、根性だけで乗り切ろうとする。こうした上司に辟易するのは、当たり前です。

本来、組織としてどのような目標を立てるのがよいかは明確な答えがありません。なぜなら、目標設定は組織とのコミュニケーションの手段であり、メンバーや会社の性格に大きく依存するからです。

チームの中で、「こんな目標、絶対無理」としらけた空気が充満していたら、成果を上げるのは難しいでしょう。むしろ、低い目標を掲げて、「この目標なんて、100%は超えて当たり前」と思わせるほうが、同じ結果が出てもチームのモチベーションを維持できることもあります。

管理職の役割は、なぜその目標設定をしているのか、会社の性格やチームの構成をどう考慮したのか、きちんと説明することです。立てた目標が「高い目標」だとわかっているならば、部下たちが腹落ちするように話をしなければなりません。部下を納得させられない上司は信頼を失い、結果的に組織の士気を下げてしまうからです。

それでも根性論を振りかざしてしまうのは、上司自身がなぜその目標が設定されたのか理解できていないか、部下に目標設定の理由を説明してはいけないという勘違いがあるのかもしれません。

経営者としては、部下に会社の指針や目標設定の狙いを説明できる人材を管理職にしているつもりですが、うまくいかない場合もあります。自分の部下が根性論ばかりで問題解決や説明責任を果たせていない場合は、役割を変える必要があるでしょう。

自分が部下の立場だとしたら? 困った上司に直接、物申すのはなかなか難しいでしょう。人事権を持つ上の立場の人間の耳に、何とか不満の声を届けるしかありません。オフィスやエレベーターで経営者に会ったタイミングで、愚痴を漏らしてもいいでしょう。

優れた経営者であれば、かしこまった会議の場では職場の悩みを聞き出せると思っていません。平場で話す愚痴の中に本物の悩みがあると理解しているはず。彼らに助けを求めるのが、一番の解決策になるでしょう。(川端)

【図表】根性論タイプの思考パターン、弱点、対処法
上司の上司に、こっそり愚痴ってみるといい

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月2日号)の一部を再編集したものです。

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橋下 徹(はしもと・とおる)
元大阪市長・元大阪府知事
1969年生まれ。大阪府立北野高校、早稲田大学政治経済学部卒業。弁護士。2008年から大阪府知事、大阪市長として府市政の改革に尽力。15年12月、政界引退。北野高校時代はラグビー部に所属し、3年生のとき全国大会(花園)に出場。『実行力』『異端のすすめ』『交渉力』『大阪都構想&万博の表とウラ全部話そう』など著書多数。最新の著作は『政権変容論』(講談社)。

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川端 克宜(かわばた・かつのり)
アース製薬 社長CEO
1971年、兵庫県生まれ。94年に近畿大学商経学部(現・経営学部)卒業後、アース製薬に入社。広島支店長、大阪支店長、取締役ガーデニング戦略本部本部長などを経て、14年に代表取締役社長就任。21年より現職。

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(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹、アース製薬 社長CEO 川端 克宜 構成=村上 敬(橋下徹氏)、渡辺一朗(川端克宜氏))

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