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環境省の推奨する室温「夏季28℃、冬季20℃」は仕事に不向き…集中力を維持する「部屋の温度」は何度か

プレジデントオンライン / 2024年8月2日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AndreyPopov

集中したいときに、最適な温度設定は何か。研修会社らしさラボ代表の伊庭正康さんは「環境省のホームページに省エネの観点から推奨されている『夏季28℃、冬季20℃』という室温の設定は、集中力を高めたいのであればNGである。多くの研究で、おおむね22℃から26℃の範囲にしないと、集中力が削がれることが明らかになっている」という――。

※本稿は、伊庭正康『やる気ゼロからフローに入る 超・集中ハック』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

■視界に占める緑の割合10〜15%で集中力を回復させる

環境を変えるだけで集中力が高まる、といった経験はないでしょうか。

本稿では、「集中できる環境づくり」について紹介します。

実は、集中力を高める環境づくりは、大学などの研究機関だけではなく、多くの企業が検証を行っています。それほど、集中力を維持する上で、環境づくりは大きな鍵を担っているのです。

本稿では、エビデンス(効果の証明)のあるメソッドで、かつ私が実践して、本当にオススメできるものに絞って紹介します。

最初に紹介したいのが、「緑視率」の効果です。

デスクやフロアに植物を置いてみてください。それだけでも、集中力を高める効果があります。

この「緑視率」とは、人の視界に占める緑の割合のこと。

「緑視率」を高めることで、集中力が高まることがわかっており、集中力を高めるには10~15%の緑視率がベストと言われています。

緑のある空間では、ストレスを感じた際に分泌されるストレスホルモンである「コルチゾール」の増加が抑制されます。そのため、集中力が回復しやすくなり、集中力をキープできるのです。

■もっともストレス軽減効果が高い植物の置き方

コクヨ、JINSなどからなるプロジェクトが経産省に提言した「ワークスタイル変革モデル事業のレポート」(H30年)には、とても示唆に富むデータが紹介されています。

植物を最適配置した部屋で仕事をすると、集中力が8%も向上する検証が得られたのです。

さらに、メルボルン大学の研究にこんなものがあります。

退屈なタイピング作業の途中で40秒間の休憩を挟み、緑あふれる屋根の画像を見ながら休憩を取ったグループは、オフィス街のコンクリート屋根の画像を見ながら休憩したグループより、タイピングのミスが減り、集中力が回復する効果が高くなるとの検証も得られたのです。

さらに、植物の配置についての面白い検証もあります。

ある研究では、「植物を左右対称に設置するレイアウトがもっともストレス軽減効果が高い」ことがわかっています。

緑視率を10~15%にすると集中力がUP
出所=『やる気ゼロからフローに入る 超・集中ハック』

なので、リモートワークをする際、PCの横に小さな観葉植物を置くだけでも、ストレスが軽減でき、集中力を持続しやすくなるのです。

私もデスクの横に、フェイクグリーンを置いています。見た目は、本物と区別がつかないほどに精巧です。

それでいて、光触媒による脱臭効果もありますし、何より手間がかからないのが気に入っています。

■「家のニオイ」が集中力を下げる

リモートワークの時、なぜか集中力を維持できないということもあるでしょう。

要因の1つに「ちょっとした家のニオイ」が影響していることも少なくありません。

脳波研究の第一人者、杏林大学の古賀良彦名誉教授はこう言います。

「本人が意識しない家のニオイが脳にマイナスの影響を与えている可能性がある」と。

実際、教授とP&Gの実験において、汗、体臭のニオイを感じる状況では、集中力の指標となる脳波が10.8%も低下したそうです。

そこで、オススメの方法があります。

リモートワークで集中力を高めたい時は、アロマを香らせてみてください。

香りをかぐと「よし、仕事モードに入るぞ」との合図になるからです。

前項でも紹介した「ワークスタイル変革モデル事業のレポート」(H30年)によると、仕事空間に入る前にアロマディフューザーを置いたところ、集中力が5%も向上したことがわかったのです。

■自分に合うアロマの香りで1日を豊かに過ごせる

私もワークスペースの香りは、かなり気にしています。

自分に合う香りを求め、数々のアロマディフューザー、ルームコロン、お香、などなど試しに試してきました。いずれも効果を実感しています。

今、私のブームは、ドラッグストアで買った「ハッカ油」をティッシュペーパーに湿らせ、デスクに置いておく芳香浴法という方法。これ以上はない、と私が思うくらいにダイレクトな香りで、効果はてきめん。

朝の体が“だる重い”時でも、一気に目が覚め、集中モードに入れます。

とはいえ、かなりマニアックですので、万人にはオススメしません。

オススメは、レモン、ペパーミント、ローズマリー、ユーカリなど、集中力を高める作用のある香りです。

アロマの香りで集中力のスイッチが入る
出所=『やる気ゼロからフローに入る 超・集中ハック』

「アロマスプレー」をふりかけるのもよし、精油をティッシュペーパーに1~2滴垂らす「芳香浴法」もよし、いろいろと試してみてはいかがでしょう。

香りにこだわると、集中できるだけではなく、1日の過ごし方が豊かになる感覚を得られますよ。

■無音よりもおすすめなBGMの最適解

「BGMがあった方が集中力は高まる」とよく言われますが、ちょっと注意が必要です。実は、人によっては、BGMが集中力を下げることがわかっているからです。

まず、作業中に音楽を聞く習慣がない人は、BGMがない方が集中できます。

和歌山大学の研究では、作業中に音楽を聞く習慣がない人は、音楽を聞きながら勉強すると集中しづらいことがわかったのです。しかも、作業中に音楽があると、むしろイライラするとの考察も得られています。

では、私のように作業中にBGMを聞く習慣がある人は、どうなのでしょう。

この研究では、集中しづらいということはないものの、意外なことに「集中力が高まる効果はない」との検証が得られています。

だったら、シーンとした無音の状態がいいかというとそうでもありません。

オススメは、「環境音」をBGMにすることです。

「環境音」とは、波の音や雨の音、焚火の音、カフェのざわつきなどのことです。

無音だと、どうしても周囲の話し声や、自動車の音などが際立ってしまうことから、ちょっとした音が気になることも少なくありません。

この「環境音」は周囲の雑音をかき消してくれる“マスキング効果”もあり、集中したい時には最適なのです。

■音楽を賢く取り入れて、心地よい環境作りを

「環境音」の効果はそれだけではありません。

集中力を高める音のゆらぎ“1/fゆらぎ”が含まれているのです。

ちなみに1/fゆらぎは、「規則性」と「不規則性」の両方を兼ね備えた音を指します。

例えば波の音や雨の音は、たしかに規則的ではあるものの、不規則な音も混じっているので、1/fゆらぎが発生するわけです。

BGMでは集中力は上がらない。しかし、環境音は効果あり!
出所=『やる気ゼロからフローに入る 超・集中ハック』

私は25分の作業をし、5分休憩を繰り返すことで集中力を維持する「ポモドーロ・テクニック」を行う際、YouTubeの「ポモドーロ・テクニック用」の「環境音」、特に波の音を好んで聞いています。心地よく、しかも集中できる効果を感じています。

でも、こう思われたかもしれません。「環境音だけでは、あまりに退屈だ」

だとすれば、普段、音楽を聞きながら作業をする習慣がある人に限っては、音楽を聞いてもいいでしょう。集中力を高めるわけではありませんが、リラックス効果を得られるので心地よく作業ができます。

「集中するためだけに環境音しか聞かない」、人はそんなにストイックではいられません。心地よさも大事でしょう。音楽をうまく取り入れるのも賢い選択です。

■集中したい時は、22~26℃の範囲にエアコンを設定

環境省のホームページには、このような記載があります。

「環境省では、快適性を損なわない範囲で省エネルギーを目指すために、室温を夏季28℃、冬季20℃とすることを推奨しています」

もちろん、省エネの観点から考えるとそうしたいのは山々ですが、集中力を高めたいのであれば、その設定はNGと言わざるを得ません。

多くの研究で、おおむね22℃から26℃の範囲にしないと、集中力が削がれることが明らかになっています。

まず、集中したい時は、22~26℃の範囲にエアコンを設定しましょう。

その根拠となる研究を次にいくつか紹介します。

・室温を20℃から25℃に上げることで、タイピングミスが44%減少し、文字量も150%増加した。(コーネル大学アラン・ヘッジ教授らの研究)

・もっとも仕事の生産性が高い温度22℃。(ヘルシンキ工科大学、ローレンス・バークレー国立研究所の共同研究)

・室温として一般的なオフィスで推奨されるのは26℃。

約100人のオペレーターが扱った年間1万3169人分のコールデータを対象に、室内環境と生産性の関係を分析したところ、25℃から28℃に上がると6%も生産性が低下した。(早稲田大学理工学術院田辺新一教授)

・25℃の時と比較して、28℃で8時間作業をすると、最後の1時間では15%くらいパフォーマンスが落ちた。(東京疲労・睡眠クリニック院長梶本修身)

集中したい時は、22~26度の範囲に設定
出所=『やる気ゼロからフローに入る 超・集中ハック』

数値にはバラツキがあるのですが、集中力を維持する上では、22~26℃が最適であるとまとめられます。

研修講師としても、室温の重要性を強く感じています。

伊庭正康『やる気ゼロからフローに入る 超・集中ハック』(明日香出版社)
伊庭正康『やる気ゼロからフローに入る 超・集中ハック』(明日香出版社)

室温を省エネの観点で28℃に設定されているオフィスもあるのですが、研修開始から3時間程度たつと、受講者に疲労の色が見えてくるのです。

その際、受講者のみなさんに「少し暑い人はいますか?」と聞くことがあります。1/3程度の人が、“少し暑い”と回答されます。

その後、室温を25℃前後に調整すると、受講者の注意力が回復するのが、手に取るようにわかります。

集中したい時に限っては、室温を22~26℃の幅で設定することをオススメします。

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伊庭 正康(いば・まさやす)
らしさラボ代表
1991年、リクルートグループ入社。営業部長、フロムエーキャリア代表取締役を歴任後、2011年に研修会社らしさラボを設立。YouTubeチャンネルでも営業のノウハウを配信中。近著に『超効率的に結果を出す テレアポ&リモート営業の基本』(日本実業出版社)がある。

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(らしさラボ代表 伊庭 正康)

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