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「フォントが前のと違う」やり直し命じる上司の末路…和田秀樹「全教科底上げ目指す完璧主義に東大合格はムリ」

プレジデントオンライン / 2024年8月8日 8時15分

和田秀樹氏

■【グループ 仕事の足を引っ張る】完璧主義タイプ

出世した財務官僚の頭のいい働き方

几帳面で職人肌、完璧主義……こうしたタイプのビジネスパーソンの評判は、案外悪くないものです。仕事では細かいところまで手を抜かずにしっかりと仕上げるので、アウトプットの質がよく、仕事相手の満足度が高いからです。

ところが、マネジャーになると評判を落としてしまうケースが少なくありません。なぜなら、仕事に厳しく、自分の仕事と同じ完成度を部下にも求めるので、部下がオーバーワークになってしまい、不平不満が溜まっていくからです。社内のほかのチームが帰宅したのに、完璧主義タイプのチームだけは全員が残業しているといった光景も珍しくありません。

働き方改革が叫ばれ、生産性が重視される現在、完璧主義のマネジャーは企業にとってもお荷物になるリスクが高いでしょう。チームが費やす時間に対して、仕事の質や量をいかにして引き上げるか。コストパフォーマンスの追求は、管理職にとっても重要なミッションです。場合によっては省いてもいい業務を決めるといったことも、当然しなければなりません。にもかかわらず、1から100まですべてを求める完璧主義タイプは、「仕事の要領が悪い」とも言えるでしょう。

もし完璧主義タイプの上司に仕える羽目になったら、部下はどうしたらいいのでしょうか。

私だったら、「合格ラインギリギリのレベルまでしか仕事をしない」という道を選びます。いつしか上司も諦めて、仕事を回さなくなるでしょう。ただし、「どうして君の仕事は、いつもいい加減なんだ」「いつまでたっても、成長しないじゃないか」といった上司の叱責を甘んじて受け入れる我慢強さと、「申し訳ありません! これが私の限界です」と平謝りし続ける図々しさが必要です。勤務評定も最低レベルを覚悟しなければなりません。

それでも仕事の手抜きをするのは、なぜ得策といえるのでしょうか。答えは簡単で、完璧主義の上司は、「出世しない」からです。経営層は、そうした上司の生産性の低さや評判の悪さをしっかりと把握しているはず。完璧主義にこだわっているのが仇になり、仕事で自分の首を絞めてしまう可能性も大きいでしょう。つまり、完璧主義の上司に頑張ってついていっても、いいことがない。

私の知り合いのある財務官僚は、出世しそうな上司の下では、一生懸命仕事をしてアピールし、出世しそうもない上司の下では、徹底してサボタージュしていました。結果はどうなったか。財務省のトップクラスに気に入られ、彼自身もかなり出世しました。

営業、総務といった具合に、ジョブローテーションをしている間、自分の適性を見極め、「合っている仕事」だけに力を入れるのも手です。

意外かもしれませんが、全教科を底上げしようとする受験生は、東大には受かりません。東大合格者のうち「要領のよさ」を用いて、得意科目を集中して伸ばし、不得意科目は必要最低限しか勉強しないタイプがその後成功するものです。まさに好きこそものの上手なれ。仕事も同じです。自分に適した分野だけにこだわれば、生産性は上げやすい。会社の上層部に仕事ぶりを認めてもらうことにも繋がるでしょう。(和田)

【図表】完璧主義タイプの思考パターン、弱点、対処法
ギリギリ合格ラインの仕事で十分。なぜなら……

■【グループ 仕事の足を引っ張る】大言壮語タイプ

なぜ誇大妄想的な人がいなくならないか

皆さんの会社にも、大風呂敷を広げてばかりの人がいないでしょうか。

単なる景気づけで、大口を叩いているだけだと自他ともにわかっているのなら、その場で話が終わってしまうので問題にはならないでしょう。しかし、営業担当者が、「ライバルとの競争に勝ちたい」「社内で目立って出世したい」といった功名心から、高すぎる目標を本気で掲げているケースもままあります。その目標が、もし会社も公認して経営目標になってしまうと、周囲の社員が巻き込まれ、現場も達成不可能な数字に振り回されることになります。

例えば、メーカーの営業担当者の主張が通って、新製品の販売目標が「前年比50%アップ」に設定されたとしましょう。工場は当然、増産体制を敷かなければなりません。生産管理や調達、物流の担当者は大忙しです。総務や人事、財務といった管理部門も、人員補充や資金の手当てに走り回ることになります。マーケット開拓のため、宣伝部門が新しいCMを打つこともあるでしょう。

ところが、販売実績が目標を大幅に下回ると、今度は在庫整理などで、全社がまた尻拭いに追われる羽目になります。赤字がかさんでしまうと、社員の賞与が減額されたりすることもあるでしょう。チームのメンバーも重すぎるノルマを課され、疲弊した揚げ句、失敗すれば、連帯責任まで負わされるリスクがあります。

では、「誇大妄想狂」のような人物と仕事をする場合、どう対処すればいいのでしょうか。普段から接しているあなたは、本人の仕事ぶりや人となりをよく把握しています。しかし、組織が大きくなると、立場が遠い人ほどどのような人物か理解しにくくなります。とりわけ、経営層の中には、「失敗は成功の母。若い者は失敗を恐れずに、チャレンジするぐらいの元気があったほうがいい。向こう傷は問わない」と考える人もいるので、誇大妄想的な担当者でも生き残ってしまう可能性があります。

上司が誇大妄想的な場合は、とくに警戒が必要です。上司は、自分の欲得で高すぎる目標を部下に押し付けておきながら、達成できないと、「おまえの能力や意欲が足りなかったからだ!」と、部下に責任を転嫁してくる恐れもあります。部下同士はもちろん、ほかの部門の社員、斜め上の上司などとも連携し、上司の「営業の目標設定」に問題があったことを、周知させていきましょう。「あなたにとって困った人」が「みんなにとっても困った人」だということを、社内の共通認識にしていく必要があります。

女性社員の業績に不満を抱く怒っている女性上司
写真=iStock.com/ciricvelibor
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ciricvelibor

ほかの部門であれば、自分たちの担当業務への悪影響をなるべく避けつつ、深入りせずにドライに付き合うことが肝心です。現実離れした目標を立てたら放置して、自滅するのを待ちましょう。「立てた目標をクリアできない」ことを、公然と実証させるのです。目標未達という「マイナスの実績」を積み上げていけば、「オオカミ少年」のように信用を失い、社内の誰も耳を貸さなくなるでしょう。

「意見して、何とか改心させられないものか」などと、下手に情をかけてはいけません。大風呂敷を広げる人物に振り回されるだけです。(和田)

【図表】大言壮語タイプの思考パターン、弱点、対処法
失敗しても助けない。ただただ自滅を待てばいい

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月2日号)の一部を再編集したものです。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹 構成=野澤正毅 撮影=宇佐美雅浩)

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