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「自分の部下はアホばかり」と嘆くのは大間違い…有能なリーダーの周りにはアホが集まりやすい納得の理由

プレジデントオンライン / 2024年8月12日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PonyWang

■部下の力を引き出せずアホ認定していないか

遅刻ばかりする、マナーがなっていない、結果を出してくれない、何を考えているのかわからない――。

そんな「自分の思うように動いてくれない部下」に頭を悩ませるのは、古今東西変わらない上司の宿命、とも言えるのではないでしょうか。

自分は「部下ガチャ」に外れ、デキの悪い部下を引き当ててしまった運の悪い上司……そんなふうに思ってしまうときもあるかもしれません。しかし、本当にそうなのでしょうか?

上司である自分が部下の能力を引き出せなかった、活躍できる環境をつくってあげられなかった、ということは考えられないでしょうか。相手をいわゆる「アホな部下」にしてしまったのは自分、ということも大いに考えられるのです。

上司たるもの「チームの先頭に立ち、時に厳しく指導しながら部下たちを引っ張っていかなければならない」といったイメージは過去のものとされ、傾聴力や共感力が上司の必須スキルとして語られるようになりました。上司と部下の関係も大きな変曲点を迎えていると言えます。

そのようなビジネスシーンにおいて、チームマネジメントを成功させ、結果を出せる人材を育成するには、部下を「アホ」にさせないための見極めと、自分が「アホな上司」にならないための心得の両方が必要なのです。「アホな部下」が、もともとアホとは限りません。部下をアホにしない、そして自分もアホな上司にならないために意識したい点を5つご紹介します。

■相手に期待しないこと これをすべての前提に

①相手に期待しすぎない

そもそも、アホな部下とはどのような部下を指すのでしょうか。冒頭で「自分の思うように動いてくれない部下」と例を挙げましたが、部下を自分の思い通りに動かそうと考えているのであれば、その思いはできるだけ早く手放したほうがよさそうです。

なぜなら、自分の理想を相手に押しつけ、期待しすぎてしまうことによって、相手を「言う通りにできないアホな部下」と勝手にアホ認定してしまうから。結果として、「部下が思うように動いてくれない」という悩みを自ら増やしているだけなのです。

そこではじめに身につけたいのは、「期待値コントロール」のスキルです。自分を含め、誰もが不完全であり、世の中に完璧な人はいないと理解し、「人も物事も自分の思い通りにはならない」と受け入れることから始めると、気持ちがラクになれます。

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②チームの目標達成が大前提

アホな部下かどうかは「勤務態度や言葉遣い、性格の良さ」といった要素で判断してしまいがちですが、上司であるあなたがもっとも重視すべきは、チームのプロジェクトをリードすること。チームの業績アップや目標達成に対し、その人の貢献度が高いならば、ちょっとした無礼や意見の相違ぐらいでアホ認定せず、数字や結果だけにフォーカスしながら共に取り組むべきです。そうすることでお互いが成長でき、評価し合えるようになります。

でも万が一、その人にチームの目標達成を阻むような能力的な問題があるならば、話は別。あなたの上司や経営陣に話し、部署異動や業務変更を検討すべきかもしれません。メンバーの性質を見極め、適材適所で最大限の成果を出す設計をしていくのが、リーダーであるあなたの役割だからです。

そのときに大切にしたいのが、相関をビジュアル化して考えること。遅刻しがちだけど、会議や営業では成果を発揮する人もいれば、時間はしっかり守るけれど、チームの成果には貢献していないという人もいます。

その人の行動や態度、目標設定への近づき方にどのような相関があるかをデータやチャートで見える化し、目標の実現にどう貢献しているかを評価するのもおすすめです。

■できない部下を見てイライラするのではなく省察も

③アホを生む環境になっていないか

できない部下を見てイライラするのではなく、「相手は自分の鏡である」という視点で接することも大切です。

人は影響を受け合う生き物です。長い時間を共に過ごす人とは、お互い影響し合って似てくることがわかっています。組織も同じで、相手に嫌なところがあれば、環境がそうさせているのかもしれないし、自分がそのきっかけをつくっているかもしれません。さらに、嫌だと思われることを自分もほかの誰かにしてしまっていることも考えられるのです。

部下はもちろん、同僚や友人、家族を鏡にして自分を振り返るのもいいでしょう。私の場合は、まさに子どもがいい例です。子どもを見ていると、自分の嫌なところをそのまま突きつけられるようで、時に残酷でもあるのですが、学びは大きいです。

【図表】「自分がアホになっていないか?」 セルフチェック表
④有能すぎる上司はアホを集める

「アホな部下をつくらないために、立派な上司になりたい」。そう思ってこの記事を読んでくださっている方も多いでしょう。しかし残念ながら、「有能すぎるリーダーの周りにはアホが集まりやすい」こともお伝えさせてください。

その理由は、立派な上司は何でも自分でやってしまうから。何でもうまく回してしまうので、部下は「おんぶに抱っこ」状態となってしまい、成長の機会を失ってしまうのです。

仕事の遂行能力と、人材の育成能力はまったく別のスキルです。スポーツの世界では「名選手が名監督になるとは限らない」という言い方をすることがありますが、ビジネスでも同じことが言えます。

ただし、優秀な仕事ぶりを背中で見せることは有効です。仕事への向き合い方や進め方を理路整然と話したところで人は動きません。しかし、本人が背中で事例を見せることは、人を動かすこのうえない説得材料になります。

⑤関係性の変化を受け入れる

私はシンガポールの大学で教鞭を執っていますが、以前に比べると、教師と生徒の関係はずいぶんと変わったと感じます。かつては、生徒が知らない知識や経験を教えるのが教育であり、教師の言うことは絶対という、確固たる上下関係がありました。その点は、日本の教育現場ではより顕著かもしれません。

しかし、最近は若い世代がインターネットやSNSを使いこなし、プログラミングやChatGPTなどの最新テクノロジーにも精通しています。そうして常に情報をアップデートしているため、知識量や情報収集能力という点で一概に教師のほうが長けているとは言いにくくなっています。

このように指導や教育のあり方が変化を見せるのは、ビジネスの現場も同様です。上司がすべきは、指導や育成というよりも「コーチング」。仕事として結果や業績を上げるために、課題設定をし、そのために力を合わせ、お互いが「フィードバック」をしていくことが重要になっているのです。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月2日号)の一部を再編集したものです。

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田村 耕太郎(たむら・こうたろう)
エンジェル投資家、国立シンガポール大学リークワンユー公共政策大学院兼任教授
1963年生まれ。鳥取県出身。一橋大学ビジネススクール客員教授。早稲田大学商学部を卒業後、慶應義塾大学大学院(MBA)、デューク大学法律大学院(LLM)、イェール大学大学院(MA)各修了。山一証券会社にてM&A仲介業務に従事。米国留学を経て大阪日日新聞社社長。2002年参議院議員に当選し、2010年まで参議院議員。著書に『頭に来てもアホとは戦うな!』、『頭に来てもアホとは戦うな! 賢者の反撃編』(ともに朝日新聞出版)、『地政学が最強の教養である』(SBクリエイティブ)などがある。

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(エンジェル投資家、国立シンガポール大学リークワンユー公共政策大学院兼任教授 田村 耕太郎)

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