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一流リーダーが実践する"幽体離脱"のやり方…「アホ部下と不条理ばかりの世の中」に心を絶対乱されないワケ

プレジデントオンライン / 2024年8月12日 7時16分

■ミスの指摘は迅速に 感情的になるのはNG

相手へのフィードバックやコーチングが大切なように、自分を内省することも大切です。「自分がアホな上司になっていないか、アホな部下になっていないか」という自問自答は、常に続けるとよいでしょう。セルフチェック表にまとめていますので、ぜひ試してみてください。

どんなに「アホ」な部下であっても、チームメンバーである以上、共に目標達成へと進んでいかなければいけません。そのために「フィードバック」は欠かせない作業になります。

フィードバックとひと口に言っても、さまざまなケースがあります。ここで考えたいのは、部下がミスをしたときの指摘の方法と寄り添い方。

ポイントは「早いうちに指摘すること」。特にミスをしたときのフィードバックは、早いに越したことはありません。なぜなら、時間が経てば、本人のミスをしたという実感が薄れてしまいますし、「指摘されないということは、大したミスではなかったかもしれない」という誤解を抱かせてしまうからです。

また、その後に事態が好転して、「結果オーライ」になった場合、あとで問題を指摘されても「どうして今さら?」という不信感につながってしまうこともあるでしょう。

良い点を褒めるフィードバックに比べて、ミスやいけなかった点を指摘するフィードバックは気が引けるかもしれませんが、何も言わないのはOKを出したことと同じになってしまうと心得ましょう。

しかし、その部下のミスが業績を大きく左右するような大きなものや、注意不足といった事前に防げるものだった場合はどうすればいいのでしょうか。

この場合、絶対にしてはいけないのは、感情に任せてしまうこと。声を荒らげてしまいたいほどの怒りが込み上げたとしても、不安定な感情をぶつけてはいけません。

怒りに任せてしまえば、たとえあとで謝ったとしても、相手の気持ちはこちらが望まないほうへ向いてしまい、結果、自分の首を絞めてしまうことになりかねません。「キレたらゲームオーバー」と肝に銘じておくべきでしょう。

一方で、「相手に好かれたい」という気持ちは捨ててしまって構いません。ビジネスでもっとも大切なことは目標を達成することであり、ミッション遂行のための人間関係が築けるかが重要で、人としての好き・嫌いの関係は意味がないからです。

■部下へのコーチングはリスペクトを持って

「最近、結果を出せていない」「なんとなく元気がない」。そんな部下にさりげなく声をかけ、感情の機微を引き出す「コーチング」も、上司が備えておきたいスキルのひとつです。

コーチングもフィードバックと同じで、感情を一定に保ちつつ、「大丈夫かな?」と思ったらすぐに声をかけること。そして、「まだあの失敗を気にしているの?」などと部下の行動や課題を指摘する前に、自分やほかの誰かの体験や失敗を話してみるといいと思います。そうすることで、部下は気持ちを打ち明けやすくなり、あなたの言葉にもしっかりと耳を傾けてくれるようになるはずだからです。

プレジデントオンラインアカデミーはこちらから
動画でも学ぶ「実践! 職場のバカの撃退法」
プレジデントオンラインアカデミーでは、田村耕太郎さんによる「できたら名リーダー! アホな部下を戦力にする方法」のレッスンをご覧いただけます。

常に味方であることを伝え、一緒に成長したい、お互いをより良くしていきたいというリスペクトの気持ちを持ちながら、部下の言葉に耳を傾けることを心がけてみてください。フィードバック、そしてコーチングに共通するのは、声かけは早めにすること。そしてもうひとつは感情的にならないことです。

とはいえ、感情のコントロールやアンガーマネジメントを完璧にできる人なんてそう多くはいません。わかっていても、つい大きな声を出してしまい後悔するという経験は、私にも数えきれないほどあります。

感情を一定に保つには、まずは先ほど紹介した「期待値コントロール」で期待値を下げておくことです。相手に対する期待値が高ければ高いほど、期待と逆の結果が出たときに怒りが増してしまうからです。

次に、ありきたりですが「気にしない」こと。世界共通で高い評価を受けるのは、「あいつはいつも感情が一定」と思われることです。そうすれば人徳があり、能力に自信がある人間だと思われます。どうしてもたまるストレスには趣味や美味しいものを食べることなど、自分なりの「ガス抜き方法」を見つけておくことをおすすめします。

それでもどうしても「アホな部下」に心を乱されるときは、「幽体離脱」してみてはどうでしょうか。

つまり自分を客観視する「メタ認知」です。アホとの不毛なやりとりに辟易したら、客観的に上から眺めてみて「ああ、感情的になっているなあ」「本当は怖いから強がっているだけじゃないか」などと状況を冷静に見ることが気づきの第一歩。そこから深呼吸して6つ数えると、感情は人間を支配する力を失うので、そこからもう一度目的にフォーカスし直せばいいのです。

時には、信頼できる友人や家族に弱音を吐いたり、愚痴を言ってみるのもアリ。私はスーパービリオネアたちと話すことがありますが、彼らは「スーパービリオネアになる秘訣」として真っ先に「自分がつらいときに本気で弱音を吐ける友人を3人以上持っていること」を挙げていました。嫌なことをためこまずに口にできる友人は、アホと付き合うストレスを軽減し、冷静に付き合うための助けとなるでしょう。

【図表】「アホな部下」の活用法3カ条

それでももし怒りをあらわにしてしまった場合は、その失敗の経験を自分の学びとし、次の機会に生かすこと。失敗をしない人はいませんが、失敗を失敗のままにするのか、もしくは失敗を勉強材料としてしっかり生かすのかで、のちに大きな差となって自分に返ってきます。そう考えると、部下が犯した失敗も、学びの材料として導いてあげられるのではないでしょうか。

■「忍耐強くある」ことが現代を生き抜く術

私たちは不条理がまかり通る世の中で生きています。「自分の思い通りにいかないのが当たり前」という前提を忘れないことが、部下をアホにせず、自分もアホな上司にならないためのもっとも重要なポイントです。

そのうえでもうひとつ、意識したいのが「変曲点にある時代を受け入れ、楽しむ」ということ。AIなどのテクノロジーがどんどん発達していく今を生きる我々は、人類史上最大の変曲点にいると言っても過言ではありません。競争条件やライバルが次々と変わるなかで、変わらないのは、それぞれの目標を達成し、成果を出すことが最重要だということです。チームメンバーが力を合わせて目標に立ち向かうには、非常に面白い時代だと言えるのではないでしょうか。

最後に、私がもっともお伝えしたいのは、ビジネスパーソンは「忍耐強くあるべき」ということ。フィードバックやコーチングの際に、感情をコントロールするという忍耐強さはもちろん、一見すると「アホ」な部下にも注意深く向き合い、成長を見守ることにも忍耐強さが必要です。また、ビジネスで目標を達成するためにも、忍耐強さや粘り強さはとても重要な要素です。

世の中はスピード感が重視され、決断も行動も速く、最短で結果を出すことがもてはやされるような風潮があります。その点、私の言う「忍耐強さ」は地味で軽視されてしまいがちな価値観かもしれません。それでも私は、リーダーにこそ目標に向かって進み続ける忍耐強さに価値を見出していただきたいと願っているのです。

かくいう私も、かつては典型的な「アホな上司」で、今思えば恥ずかしくなるような失敗をたくさんしてきました。声を荒らげたり、ひどい言葉を使ったり、ここでは恥ずかしくて例に出すこともできません。だからこそ、自分の経験をもってこのような機会や書籍を通してお伝えしています。

アホ=個性と認めるべき点は認め、自分と違う常識を持っている人をリスペクトしながら、話に耳を傾け、持っている力を存分に発揮してもらえる環境を整えるのが「上司」の役割。亀の歩みでもいいから忍耐強く、目標に向かって前進し続けることです。

それでしか、ビジネスにおける本当の成功や勝利、目標達成は実現できない。私はそう考えています。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月2日号)の一部を再編集したものです。

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田村 耕太郎(たむら・こうたろう)
エンジェル投資家、国立シンガポール大学リークワンユー公共政策大学院兼任教授
1963年生まれ。鳥取県出身。一橋大学ビジネススクール客員教授。早稲田大学商学部を卒業後、慶應義塾大学大学院(MBA)、デューク大学法律大学院(LLM)、イェール大学大学院(MA)各修了。山一証券会社にてM&A仲介業務に従事。米国留学を経て大阪日日新聞社社長。2002年参議院議員に当選し、2010年まで参議院議員。著書に『頭に来てもアホとは戦うな!』、『頭に来てもアホとは戦うな! 賢者の反撃編』(ともに朝日新聞出版)、『地政学が最強の教養である』(SBクリエイティブ)などがある。

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(エンジェル投資家、国立シンガポール大学リークワンユー公共政策大学院兼任教授 田村 耕太郎)

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