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この「一文字」を換えるだけで国語が一気に伸びる…国語教師が教える「花マルがつく文章」のコツ

プレジデントオンライン / 2024年8月3日 8時15分

読み手に対する意識が薄い(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/ikuyan

「文章力が低い」と思われる文章はどこに原因があるのか。横浜国語研究所代表取締役の福嶋隆史さんの書籍『塾へ行かなくても得点力がぐ~んと上がる!ふくしま式で身につく!国語読解力』(大和書房)より、わかりにくい文章の特徴についての解説をお届けする――。

■読み手に対する意識が薄い

日々子どもたちの文章を添削していると、ある種の共通性が見えてきます。それは、「読み手に対する意識が薄い」ということです。

たとえば、こんな文。

(A)思い通りに試合で勝ててうれしくて、あいさつをする前についガッツポーズをしてしまって後からコーチに注意された。

一見して分かるのは「て」の多さです。私はこれを、「ててて文」と呼んでいます。

次の文とくらべてみてください。

(B)思い通りに試合で勝つことができたため、うれしくなり、あいさつをする前についガッツポーズをしてしまった。そのせいで、後からコーチに注意された。

ちょっとカタい印象は受けますが、これが「読み手を意識した文」であり、書き言葉とはこういうものでなければなりません。

■「関係を意識しているかどうか」が違う

さて、何が違うのでしょうか。

端的に言うと、「関係を意識しているかどうか」の違いです。

思い通りに試合で勝つことができた
 だから ↓ …………(できたため)①
うれしかった
 だから ↓ …………(うれしくなり)②
あいさつをする前についガッツポーズをしてしまった
 だから ↓ …………(そのせいで)③
後からコーチに注意された

先の短い文の中に、実は①~③の3つの因果関係があります。

■採点者は好意的に読んではくれない

Bの文は、原因と結果という「関係」を意識して書かれたからこそ、分かりやすい文になっているのです。

たしかに、Aの文でも、読み手が好意的に解釈すれば、そこにある因果関係を推測できます。

しかし、多くの読み手は通常、好意的ではありません。

とりわけ、読解問題の採点者は、記述解答を好意的に読んではくれません(むしろ、その逆です)。

否定のポーズをとるビジネスマン
写真=iStock.com/masamasa3
採点者は好意的に読んではくれない(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/masamasa3

■「ので」「ため」「から」をつければよいというものではない

ここで、ひとつ例題を挙げておきましょう。

次の文を、因果関係がはっきりした文に書きかえます。

バスで行くとお金がかかりそうで、自転車で行くことにした。

真ん中の「で」の部分がポイントですね。答えは次のようになります。

バスで行くとお金がかかりそうなので、自転車で行くことにした。

ただし、何でもかんでも「ので」「ため」「から」などをつければよいというものではありません。つけ過ぎは禁物です。

たとえば、次の文。

朝がきたので明るくなったので、目が覚めた。

朝がくれば明るくなるのは当然ですし、明るくなれば目が覚めるのも自然なことです。このように、あえて因果関係を説明するまでもない自明の内容には、「ので」などをつける必要はありません。次のような文で十分です。

朝がきて明るくなり、目が覚めた。

■「くどい文章」を読みやすくするテクニック

ちなみに、この「なり」の使い方は、先の例の②「うれしくなり」の使い方と同じです。ある程度の因果関係をさりげなく残す際に使える、「であり」のパターンです。

「AなのでBなのでC」といった“くどい文”は、「AでありBなのでC」などと、一カ所を「であり」などの自然な形にすることで、ある程度の因果関係を感じさせつつも読み手にとって「読みやすい文」にすることができるのです。

黒板に手書きのアルファベットABC
写真=iStock.com/hxdbzxy
「AなのでBなのでC」といった“くどい文”を読みやすくする(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/hxdbzxy

■「~ので」を置き換えると読みやすくなる

少し練習してみましょう。

次の文の一部の「~ので」を他の表現に直し、読みやすくしてください。

①その日は強風だったので、傘がほとんど役に立たなかったので、ずぶぬれになってしまった。
②電車の影響とはいえ、待ち合わせに遅れてしまったのは事実なので、おわびすべきだと思ったので、後日あらためて電話を入れた。
③コーヒーをこぼしてしまったのでシャツが汚れたので、洗濯した。

さて、いかがでしょうか。それぞれの直し方の例です(他にも直し方はあります)。

①その日は強風であり、傘がほとんど役に立たなかったので、ずぶぬれになってしまった。
②電車の影響とはいえ、待ち合わせに遅れてしまったのは事実であり、おわびすべきだと思ったので、後日あらためて電話を入れた。
③コーヒーをこぼしてしまいシャツが汚れたので、洗濯した。

■「て」の使用に注意する

③は、「コーヒーをこぼしてシャツが汚れたので、洗濯した」でも問題ありません。

しかし繰り返しますが、「コーヒーをこぼしてシャツが汚れて洗濯した」のように、「ててて文」になりがちですから、「て」を使うことにはいつも注意を払う必要があります。

いずれにせよ、ぜひ、同様の文をいくつも書いて練習するよう、アドバイスしてあげてください。

■まずは「一文を短く書く」

書くという作業をあまり苦にしない子がいます。アイデアをたくさん持っており、楽しそうに次々と書いていくような子です。それはもちろん、素晴らしいことです。

ただ、その素晴らしいアイデアを、読み手に伝え切れていないケースが目立ちます。

その最たるは、「一文が長い」ケースです。たとえば、次のような文章です。

(A)船で世界一周旅行をするのと飛行機で世界一周旅行をするのをくらべると、大きな客船で旅行するほうが中でホテルのように泊まったりできるのと、ゆったりした生活が楽しめるので、飛行機のような速さはないけど、その分、旅を長く楽しめるはずだ。

一文を短くすること。これは、読み手に伝わりやすい文章を書くための必須条件です。

ねじれた線でつながったA・Bとまっすぐな線でつながったA・B
写真=iStock.com/IvelinRadkov
一文を短くする(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/IvelinRadkov

今の例ならば、次のようになるでしょう。

(B)世界一周旅行をするなら、飛行機よりも船で行くほうを選ぶ。
大きな客船なら、中がホテルのようになっている。宿泊しながら、ゆったりとした生活ができる。
たしかに、飛行機のような速さはない。しかし、その分、旅を長く楽しめるはずだ。

■「一文は短く!」を口ぐせにする

一文を、五文に分けました。すっきりしましたね。

「こんな整然とした文をわが子が書けるはずがない」

そんな声も聞こえてきますが、実は、それほど難しいことではありません。

とにかく、「一文は短く!」を口ぐせにすればよいのです。

ただ、それだけではやや不親切ですから、次のような観点を与えるとよいでしょう。

・こうすれば、一文は短くなる

①「まず結論、次に理由」の順序を意識する。
②接続語を入れながら、どんどん文を切る。

・①について

一文が長いと、文の述部(=結論)になかなかたどり着けないことになります。

ア 「コーヒーは苦いから嫌いだ」
イ 「コーヒーは嫌いだ。苦いから」

アとイの結論はどちらも「嫌いだ」です。

この結論に、より早くたどり着いているのは、どちらですか? そう、イですね。

もし、「苦いから」という「理由」の部分がもっと長くなったら、結論に到達できるまでの時間には歴然と差が出ます。それだけ、読み手の負担が増えてしまいます。

先の例でも同様です。船のほうがいい、といった結論が読み手に届くまでに時間がかかるAの文よりも、ズバリ最初に伝えているBの文のほうが優れていると言えます。

日本語における文の意味は、述部で確定します。できるだけ早く述部を読み手に伝える文こそが「分かりやすい文」であり、それは必然的に「短い一文」になるのです。

■受験では「長い一文」も必要

・②について

Aの終盤の「飛行機のような速さはないけど、……」の部分が、Bでは、「飛行機のような速さはない。しかし、……」と書きかえられています。

「けど」を「しかし」に置きかえて、文を二つにしたわけです。

福嶋隆史『塾へ行かなくても得点力がぐ~んと上がる!ふくしま式で身につく!国語読解力』(大和書房)
福嶋隆史『塾へ行かなくても得点力がぐ~んと上がる!ふくしま式で身につく!国語読解力』(大和書房)

たったこれだけのことを意識し続ければ、文を短くすることができ、自おのずと分かりやすい文章になっていくのです。

ただ、残念なことに、読解問題の記述式設問の多くは、解答を「一文で」書かなければならないという暗黙のルールのもとに作られています。

80~100字といった長さであっても、です。これは、子どもの文章力向上を阻害する要因だと私は常々考えています。

とはいえ、受験に勝つには、そのような「長い一文」を意識して組み立てる力をも、身につけなければならないのです。

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福嶋 隆史(ふくしま・たかし)
ふくしま国語塾主宰、横浜国語研究所代表取締役
1972年、横浜市生まれ。早稲田大学第二文学部を経て創価大学通信教育部(教育学部)卒業。公立小学校教師を経て、2006年「ふくしま国語塾」を創設(JR東戸塚駅・徒歩2分)。「ふくしま式」問題集シリーズ(大和出版)など著書多数。

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(ふくしま国語塾主宰、横浜国語研究所代表取締役 福嶋 隆史)

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