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わが子の聞き役に徹すると、むしろ子供をダメにする…賢い親が家でやっている「魔法の言葉あそび」

プレジデントオンライン / 2024年8月7日 8時15分

「親子の会話」は一番手っ取り早いトレーニング(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/takasuu

子どもは親子の会話を通じて言葉を習得すると言われている。どのような会話をすればいいのだろうか。横浜国語研究所代表取締役の福嶋隆史さんの書籍『塾へ行かなくても得点力がぐ~んと上がる!ふくしま式で身につく!国語読解力』(大和書房)より一部をお届けする――。

■「親子の会話」は一番手っ取り早いトレーニング

言葉というものは、もともと、「話すこと」を通して習得するものです。

幼児期がその最たる例です。幼児期の言語習得手段は、読み書きではありません。

どの子も、自分の最も身近にいて最も長時間関わっている人物――親――と話すことを通して、言葉というものを学びます。

話すことで学ぶのは幼児だけではありません。小学生以上の子も同様です。

たしかに、小学生にもなれば読み書きから学ぶことも増えていきますが、それでもやはり、会話から学ぶ量のほうが圧倒的に多いはずです。

論理的思考力習得の基礎段階においても、親子での会話(※)が一番手っ取り早いトレーニングになります(※特に意識的に一対一で行うものは「対話」と呼びます)。

■口ぐせにするべき言葉

さて、その対話型トレーニングのうち、「言いかえる力」(抽象化・具体化の力)を高めるために今すぐできる習慣があります。

それは、「つまり?」「たとえば?」を口ぐせにする、ということです。

「ねえお母さん、今日ね、アヤコがね、私のほうをずっと見てくんの、でね、何、って言ったらね、別に、とか言ってね、それでね、……」

たとえば、延々と続くこういった子どもからの訴えを、あなたはどう受け止めますか。

「ふーん」とうなずいている“だけ”では、子どもの国語力は育ちません。

いわゆるカウンセリング・マインドを発揮して、とにかく「聞き手に回る」という態度は、言語技術育成の観点では必ずしも好ましいものではありません。

■積極的にまとめてあげる

もちろん、子どもがひと呼吸するまでは聞いてあげましょう。でも、そのあと忘れずにこう言います。

「つまり、なんだかよく分からない理由で、アヤコとけんかになっちゃったってこと?」

こんなふうに、積極的にまとめてあげるのです。

積極的にまとめてあげる
写真=iStock.com/takasuu
積極的にまとめてあげる(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/takasuu

最初のうちはこれを繰り返しますが、徐々に、その抽象化を子どもに任せていきます。まとめてあげるのではなく、「つまり、どういうこと?」と問うだけにし、自分でまとめさせるようにするわけです。

■要求されなくても言い始めるようになる

このように、いつも「つまり」をさりげなく要求していれば、そのうち、要求されなくても子どもみずから「つまりね、……」と言い始めるようになります。

ただし、今挙げた例は、比較的長い「文」の抽象化になっていますから、なかなかうまくいかない場合もあるかもしれません。

その場合は、語句レベルでの言いかえを対話で練習します。

目の前にあるモノを、何でも題材にすることができます。

「鉛筆、消しゴム、ノート。つまり何?」
「えーっと、文房具?」
「正解。じゃあ、たんす、いす、机。つまり何?」
「えーっと、家具?」
「そう。じゃあ、文房具、家具って、つまり何?」
「えーっと……あ、分かった! 道具?」
「正解!」

ここまで練られた問題にできなくとも、身近なところにいくらでも題材は転がっていますから、どんどん試してみてください。

■“つまり・たとえばゲーム”を一日一回はやる

今のやりとりを正反対にし、「家具って、たとえばどんなもの?」などとすれば、具体化の練習になります。

子どもからの訴えにしても、「あ~あ、今日、いやなことだらけだった」などと抽象的にしか言わない子には、「たとえば?」と問えばいいわけです。

もちろん、話したがらない場面もあるでしょう。そうなりそうなときは、先手を打ちます。

「“つまり・たとえばゲーム”を一日一回はやることにしよう」とあらかじめ合意しておくのです。それだけのことで、「面倒だな」と感じさせずに済むはずです。

「良い習慣を身につける」をモットーにした木のブロック
写真=iStock.com/Andrzej Rostek
“つまり・たとえばゲーム”を一日一回はやる(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Andrzej Rostek

子どもにも向上心は必ずあります。続けるうちに自分の思考力が徐々に高まるのを実感すれば、子どものほうから“ゲーム”を始めるようになることでしょう。

■「書きかえ力」が不足している

日々子どもたちに文章指導をしていて痛感するのは、子どもたちの“書きかえ力”不足です。

ここで言う“書きかえ力”とは、「甘い感じ」を「甘み」にする、あるいは、「カエルが泳いでいる」を「泳いでいるカエル」にするといった程度の、単純な「名詞化」の力です。

「名詞化」は、「言いかえる力」のひとつです。

ただし、ここでの「名詞化」には抽象度の変化がありませんから、単なる“書きかえ”に近い技術であると言えます。

さて、まずは、「甘み」の類題から見ていきましょう。

■「言いかえる力」トレーニング

Aと同じ意味になるように、Bの空欄を埋めます。

(A)「リーダーは責任が重いと感じた」→(B)「リーダーの責任の( )を感じた」

答えは「重さ」となります。

一般に、「み」による名詞化は主観的になり、書き手個人の感覚が反映されます。

人のアイコンが描かれた沢山の木製キューブの中から赤いものをルーペで見る人
写真=iStock.com/Kenishirotie
主観的になり、書き手個人の感覚が反映される(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Kenishirotie

数値化することのできないような、あいまいなイメージがあります。

一方、「さ」による名詞化は、「み」の場合よりは客観的になります。

個人の感覚を離れ、状況によっては数値化も可能になります。

■「み」をつければ名詞化できる

さて、類題を少しご紹介します。

①「深いところにはまって動けなくなる」→「( )にはまって動けなくなる」

②「親しくなれそうな感じがした」→「( )を感じた」

③「議論の結果、問題が明らかになった」→「議論の結果、問題が( )に出た」

④「高いところから眺めると全体が分かる」→「( )から眺めると全体が分かる」

⑤「退院後はまた泳げたら楽しいと思う」→「退院後は泳ぐのが( )だ」

⑥「苦しい気持ちを分かち合えるのも友達のよさだよ」→「( )を分かち合えるのも友達のよさだよ」

⑦「試合終盤の投球前の大谷翔平の表情はすごかった」→「試合終盤の投球前の大谷翔平の表情には( )を感じた」

答えは、①深み、②親しみ、③明るみ、④高み、⑤楽しみ、⑥苦しみ、⑦すごみ、となります。③だけ、元の言葉が形容動詞(「明らかだ」)ですが、意味は同様ですから特に気にすることはありません。

この程度の名詞化練習は、日常の中でいくらでもできますね。

大切なのは、「み」をつければ名詞化できるんだ、ということを「意識」させることです。この意識こそが、作文や読解記述の成否を分けます。

■「一文の書きかえ」トレーニング

さて、次は一文の書きかえです。

「草原の真ん中に木が立っている」
この文を、次のそれぞれの言葉で終わるように書きかえてください。
①「木」 ②「草原」 ③「真ん中」

答えは、次のようになります。

①「草原の真ん中に立っている木」
②「真ん中に木が立っている草原」
③「木が立っている、草原の真ん中」

■誤読しない語順にする

もうひとつ。

「卒業式が始まる前から、チサトは泣いていた」
この文を、次のそれぞれの言葉で終わるように書きかえてください。
①「チサト」 ②「卒業式」

答えは、次のようになります。

①「卒業式が始まる前から泣いていたチサト」
②「始まる前からチサトが泣いていた卒業式」
福嶋隆史『塾へ行かなくても得点力がぐ~んと上がる!ふくしま式で身につく!国語読解力』(大和書房)
福嶋隆史『塾へ行かなくても得点力がぐ~んと上がる!ふくしま式で身につく!国語読解力』(大和書房)

②はちょっと難しいですね。「チサトが始まる前から泣いていた卒業式」でもよさそうですが、「チサトが始まる」と誤読してしまうため、「チサトが、始まる前から泣いていた卒業式」と読点を入れる必要があります。

また、元の文の「チサトは」の「は」を「が」にする点にも注目しましょう。この②は、実際には使わないような語順ではありますが、読んで違和感のない語順に変換するというのは、いずれにせよ大切な能力だと言えます。

こうした練習は、お子さん自身に文を作らせても十分行えるはずです。一日一つでもかまいませんから、ぜひ試してみてください。勉強というより、ちょっとした言葉遊びの感覚で取り組めば、無理なく力がついていきます。

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福嶋 隆史(ふくしま・たかし)
ふくしま国語塾主宰、横浜国語研究所代表取締役
1972年、横浜市生まれ。早稲田大学第二文学部を経て創価大学通信教育部(教育学部)卒業。公立小学校教師を経て、2006年「ふくしま国語塾」を創設(JR東戸塚駅・徒歩2分)。「ふくしま式」問題集シリーズ(大和出版)など著書多数。

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(ふくしま国語塾主宰、横浜国語研究所代表取締役 福嶋 隆史)

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