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「僕はお父さんをがっかりさせているんだ」…高学歴親ほどやってしまう中学受験"逆効果サポート"の中身

プレジデントオンライン / 2024年8月6日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/years

中学受験において親は何をするべきなのか。プロ家庭教師集団名門指導会代表の西村則康さんは「親のサポートは不可欠だが、勉強は教えないでほしい。親が教えると必ずといっていいほど成績が下がってしまう」という――。

■「私がなんとかしなきゃ!」が不幸の始まり

中学受験には親のサポートが不可欠だ。そう言うと、「私は勉強を教えられる自信がない……」と下を向く親がいる。心配しなくていい。中学受験で親が勉強を教える必要はない。中学受験のプロ家庭教師である私から言わせてもらえば、「できれば教えないでほしい」というのが本音だ。なぜなら、親が教えると必ずといっていいほど成績が下がっていくからだ。

中学受験の指導に携わって40年以上がたつが、親が自分で勉強を教えたくて教えているというケースはほとんどない。多くの場合、「わが子が塾の授業についていけないのでは……」と思い込み、「親である自分がなんとかしなければならない」と義務感に駆られ教え始める。冒頭の発言のように、教えることに自信がない親は、個別指導塾を併用したり、家庭教師を付けたりするなど第三者の力を借りようとするが、自分の学力に自信がある親は、その発想が生まれにくい。今の中学受験は難しいと言われているけれど、しょせん小学生の勉強。自分に教えられないわけがない、そう高をくくっているのだ。

■文系母「国語なんて勉強をしなくてもできる」

中学受験は国算理社の4教科の総合点で合否が決まる。子供に勉強を教える場合、算数・理科の理系科目は父親、国語と社会の文系科目は母親と分担されがちだ。実際、子供に勉強を教えようとする親は、難関大の理系出身の父、難関大の文系出身の母という構図が多いように感じる。親が高学歴なら勉強も教えられるし、子供の受験に有利に働くのではないかと思う人は多い。しかし、私の経験からすると、親が高学歴であればあるほど、勉強は教えない方がいいと思っている。なぜなら、わが子の「できない」「分からない」理由を理解しようとしないからだ。

特に文系出身の母親は、わが子がなぜ国語ができないのか、理由がまったく分からない。「国語なんて勉強をしなくても、できるでしょう? 塾に通っているのに、なんでこんな点しか取れないのか理解できない」と平気な顔で言う。そういう人は、国語はセンス、またはパターンで覚えればいいと思っている。

しかし、小学生の場合、そもそも文中に出てくる言葉を知らなかったり、文章の読み方を知らなかったりする。また、子供は一つでも知らない言葉があると、途端に全体が分からなくなってしまうこともある。大人のようにこれまでの知識や経験を結びつけて理解するには、圧倒的に知識も経験も足りないからだ。こうしたことを知らずに、「なぜできないの?」「なぜ分からないの?」という言葉を何度も、何度も子供に投げる。

■理系父は「禁断の方程式」を教えてしまう

理系出身の父親は、自分のやり方を押しつけてしまうケースが多い。一番やってはいけないのが、禁断の方程式を教えてしまうことだ。中学受験を経験していない親は、受験算数というものがどういうものかを知らない。問題を前に図を書いたり、数字を全部書き出したりして、ああでもないこうでもないと頭をひねっているわが子を見て、「一体、いつになったら答えが出るんだ!」としびれを切らし、「こんな問題、方程式で解けばいいじゃないか!」と効率を押しつける。

だが、抽象理解がまだできていない子供には、xやyといった記号は、何か得体の知れないものに感じられ、「よく分からないけれど、これを使うと解ける」となってしまう。しかし、実際のテストや入試では、それと同じように解けるものは少ない。なぜなら、設問者は小学生の子供が今ある知識を総動員させて答えが出せるように、あえて考えさせる問題を作っているからだ。それを知らずに、親である自分が成功できた方法を教えても、成績は上がらない。かえって、子供を混乱させる。

勉強中に頭を抱える女の子
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

一度教えたのに、できない。なぜだ?

親にこの感情が湧き上がると、負のスパイラルの始まりだ。

■親が自分の感情をコントロールできなくなる

子供に勉強を教えてはいけない理由──。それは、親も子も気持ちのバランスがガタガタと崩れてしまうからだ。

中学受験の勉強は、それを専門に指導する塾やプロの力が不可欠だ。なぜなら、発達が未熟な小学生の子供に、難度の高い学習を進めていくには、勉強面だけでなく精神面からのアプローチも必要になるからだ。こうしたスキルを身につけている親であれば、子供の勉強を教えてもいいだろう。しかし、多くの場合はこうしたスキルを持っていない親が、自分のやり方とペースで教え込もうとする。

ところが、子供はちっとも理解してくれない。はじめは「なぜだろう?」という気持ちで収まっているが、それが続くと「なぜ」の理由を探す気持ちがうせて、「どうして教えたことが分からないのだ?」「何度言えばできるようになるんだ!」といったイライラの感情が溢(あふ)れ出てくる。すると、自分の感情をコントロールできなくなり、どのように懲らしめてやろうかという悪意が芽生え、もっときつい言葉を投げるようになる。

■子供は自分の能力に対して自信が持てなくなる

そのイライラを浴びせられた子供は、「僕はお父さん、お母さんをがっかりさせてしまっている」「お父さん、お母さんの言うことを理解できない自分はバカなのかもしれない」とヘンに反省をしてしまうのだ。すると、自分の能力に対して自信が持てなくなってしまう。そして、勉強のやる気の源となる自己肯定感がみるみると急降下していく。こうなってしまうと、なかなか成績は上がっていかない。

勉強したくない娘を監視する母
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

一方、高学年になると、親の言うことを聞かなくなる子供も出てくる。反抗期かもしれないと流してしまいがちだが、そういう子でさえも親から浴びせられたイライラは心に傷を刻む。親の言葉をシャットアウトしようとするのは、自分を守るためでもあるのだ。親から見れば反抗期と映るその姿は、実は防衛本能の表れだったりする。どんな子供でも、親の言葉のナイフは深い傷を負う。

■成績が上がらない時にやるべきことは「分析」

中学受験をさせようと思った理由──。それは、子供を傷つけるためではない。わが子の幸せを願って選択したはずだ。であれば、なかなか成績が上がらない子供を責めるのではなく、「どうすればうまく進めていけるか」を考えることに力を入れてほしい。テストの結果に一喜一憂するのではなく、その中身をしっかり分析する。それこそが、中学受験親に求められるサポートだと私は思っている。

まず、子供が勉強でつまずいていたら、その理由を分析してみよう。塾に行ってはいるものの、単純に授業中遊びほうけているかもしれないし、そもそも新しい単元を理解するための基礎学力が備わっていないこともある。もしくは、テストでは点が取れていないけれど、実はちゃんと理解できていることだってある。そそっかしい単純ミスで点を落としているだけかもしれないし、本番に弱いというだけかもしれない。

成績が上がらない理由は、勉強不足に限らない。そうやって、まずは何が原因で点が取れないのかを探ってみることだ。そして、対策を考えてみる。自分が仕事をしていてそこまで時間をかけられない、または自分にはそういうことを見る目がないと思うなら、そこは塾なり、家庭教師なり第三者の力を借りてもいいだろう。大事なのは、うまくいかない理由を放置しておかないことだ。

■「塾帰りの会話」で子供の理解度が見える

塾の授業がきちんと理解できているかどうかを確かめるのは、親子で会話をするのが一番だ。塾の授業があった日は、必ず振り返りをしよう。そう言うと、授業で習ったことを解き直すことだと勘違いしやすい。塾があった日は帰りが遅く、すでに子供は疲れている。ここで勉強をさせてもあまり効果はないだろう。それよりもぜひやってほしいのが、会話の中での振り返りだ。塾のお迎えの帰り道でもいい。今日は塾でどんなことを習ったのか聞いてみてほしい。

黒板に書く先生
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

そのとき、「今日は塾で何を習ったの?」とストレートに聞くよりも、「今日は塾で何か面白いことあった?」「○○先生のネクタイの柄は何だった?」といったたわいのない話から入ってみるといいだろう。こうした会話を続けていくうちに、子供はその日の授業風景を再現していく。大事な部分の記憶を直接掘り起こすのではなく、周辺の記憶から呼び起こしていくイメージだ。

そして、徐々に思い出してきたところで、「今日は塾で何を習ったの?」と聞いてみると、「あ、そうそう。今日は先生、こんなことを話していたよ」「ここが大事って言っていたよ」と、次々に思い出す。そうやって、その日の授業を振り返ることで、子供の理解度が見えてくる。

■中学受験で親がすべき「本当のサポート」

もし、子供が会話を嫌がるようだったら、授業をちゃんと聞いていないか、授業についていけない状況なのかもしれない。そうやって親子の会話を通じて、子供の現状を把握する。その対策自体は塾に相談すればいい。

中学受験における親のサポートは、学習スケジュールの管理であったり、丸付けであったり、子供の現状を把握することだ。親である自分が勉強を教えなければと力を入れる必要はない。親が教えることで、子供の自信を奪うのなら、教えない方が絶対にいい。それよりも、どうしたらわが子が気持ちよく勉強に向かえるかを考えてみてほしい。子供を傷つけるのが親の言葉であれば、子供を気持ちよく勉強に向かわせるのも親の言葉の力にかかっている。どうか子供が前向きになれる言葉をどんどん渡してあげてほしい。それこそが、中学受験における親の一番の役割だと思う。

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西村 則康(にしむら・のりやす)
中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
40年以上難関中学受験指導をしてきたカリスマ家庭教師。これまで開成、麻布、桜蔭などの最難関中学に2500人以上を合格させてきた。新著『受験で勝てる子の育て方』(日経BP)。

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(中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康 構成=石渡真由美)

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