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新宿、渋谷にはない「衣食住」が揃っている…不動産のプロが「今が買い」と太鼓判を押す「サブカル街」の名前

プレジデントオンライン / 2024年8月7日 10時15分

「港区のタワマン」は高くなりすぎた(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/CHUNYIP WONG

都心部の新築マンション価格が高騰しているが、買うべきだろうか。不動産エージェントの山本直彌さんは「都心3区の新築マンション価格が高止まりし、買えないという声が聞こえている。値上がりを期待して買うなら別の街を模索することも一つの選択肢」という――。

■「港区のタワマン」は高くなりすぎた

都内で資産価値が落ちないマンションといえば、港区や千代田区、中央区のタワマンというのが近年の常識でした。ただ最近はそれが崩れてきているようです。

都内のマンション価格は相変わらず高止まりしており、不動産経済研究所が発表した2024年6月の東京23区新築マンションの平均価格は1億1679億円と、1億円を超える水準が続いています。

歴史的な円安を背景に、低金利・外国人富裕層によるインバウンド需要が、都心部新築マンションの価格を牽引しています。

また「麻布台ヒルズ」など都心部の新たなランドマークとなるような大型開発が相次いだことも、新築マンション価格を押し上げています。

■日本人パワーカップルが買えなくなってきている

ただ、今後この流れが変わりそうな気配も出てきていいます。

都心3区のマンション価格は高くなりすぎてしまい、一般の人にとってはもはや「贅沢品」。ファミリー向けの70m2超のマンションには引き続き問い合わせが多い状況ですが、DINKS向けの40~60m2くらいの物件については、販売から契約までの期間が長くなる傾向が見られてきています。

先述の不動産経済研究所が5月に実施した調査によると、初月契約率は56.0%と前月比で6.4ポイント低下しています。その後の6月の調査では66.4%と、10.4%改善しましたが、依然70%割れが続いていて販売の減速傾向が見てとれます。マンション発売戸数も12.8%の減少と、やはり弱含みの展開です。

期間が長くなるイコール、ニーズの低下が懸念される状況ということ。これまでタワマンのメイン購入層だった日本人パワーカップルが、都心3区の新築マンションの価格高騰により買えなくなってきている状況だと推察されます。

実際、私が勤務するらくだ不動産でも、「都心3区は高いから、少し外れた場所でマンションを探したい」という相談をいただくことが増えています。

新築マンション価格が高騰している都心3区ではなく、少し外したエリアの物件を探す人が増えているのです。

■街自体を変える「再開発プロジェクト」

中でも特に問い合わせが急増している街が、「中野」です。

中野は新宿から中央線快速で1駅という好立地ですが、これまで不動産業界としては都心とは違った街として見られてきました。

「サブカルの聖地」とも言われ、駅北口には商店街があり、飲食店が密集していて非常に魅力的な街ではありますが、地元の方や、中野に用があって来る人が多い街であり、都心3区ほど、不動産が活発に売買される街ではありませんでした。

そんな中野のイメージを変えつつあるのが、目下進められている再開発プロジェクトです。

マンションや商業施設の開発だけでなく、中野サンプラザや中野区役所の建て替えも含めた、官民一体の一大プロジェクトです。

プロジェクトがひと段落した「渋谷再開発」や、目下建設が進んでいる「新宿再開発」に続く巨大プロジェクトとして、不動産業界では早くから注目されていました。

再開発でイメージが変わりつつある
写真=iStock.com/CHUNYIP WONG
再開発でイメージが変わりつつある(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/CHUNYIP WONG

■高所得者層が新規流入する

再開発で中野の街はどう変わるのでしょうか。

一言で言うと、人の流れや居住者層が大きく変わると予想されます。

中野は新宿まで1駅の中央線沿線という立地もあり、比較的単身者向けの物件が多い街でしたが、今後は多数のファミリー向けタワーマンションが新たに建設されます。

再開発によって、現在建設中のタワーマンションはすでに売り出しが始まっているのですが、大きめの部屋はほぼ1億円以上の「億ション」となっています。また、「プレミアムフロア」という4億円を超える物件も用意されています。

これまでの中野エリアの不動産相場よりも、かなり高額に設定されており、ターゲット層はこれから中野に新規流入する高所得層や、外国人富裕層であると予想できます。

つまり、こうした高級物件を購入できる、外国人を含めた富裕層やパワーカップルなどがこれから中野に流入してくるわけです。

■ファミリーが住むなら港区より中野と考える理由

新宿や、渋谷にもタワーマンションはありますが、これらの街は多くの人が集まる繫華街であり、住宅が中心ではありません。住むにあたっても良いことばかりではなく、環境や治安など不安な面もあります。

一方、中野には商業施設やコンサートホールもあり、各種学校も集まっていて、衣食住すべてがそろう街、中野だけで生活が完結する街へ変貌する予定です。特にファミリーには非常に住みやすい街だと思います。

そういった、港区や新宿・渋谷にはない中野の魅力に惹かれて、多くの人がこれから流入してくることになります。

そうした新規流入者が、これまでの中野住民とは違う層を形成することになります。

新しい住民に向けたお店もできるでしょうし、JR中野駅周辺の経済活動がこれからますます活発になっていくと予想されます。

ファミリーが住むなら港区より中野
写真=iStock.com/TATSUSHI TAKADA
ファミリーが住むなら港区より中野(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/TATSUSHI TAKADA

■中野は「武蔵小山」のようなイメージに

イメージ的には東急目黒線「武蔵小山駅」周辺のような発展が期待されます。武蔵小山はもともと地元民に愛される商店街があったところに、駅周辺の再開発でタワーマンションが建設され、伝統的な街の良さを残したまま、近年変貌を遂げた街です。

中野も同様にこれまでの良さをとどめたまま、新たな発展を遂げていくと思われます。

中野の不動産価格も、ますます評価が上がるでしょう。

これまでは新宿近郊の中央線沿線の街として価格が設定されていましたが、今後は都心5区(港区、中央区、千代田区、新宿区、渋谷区)並みに評価されるのではないでしょうか。

■坪350万円のマンションが坪700万円に爆上がり

その兆しはすでに表れています。

中野駅の南口には既に建っているランドマークのタワーマンションがあります。入居後間もなくの売買価格は坪あたり350万円程度でしたが、分譲以降、徐々に価格が上昇しており、再開発が本格化したここ1年くらいでは坪700万円を超える取引も出てきているようです。

マンション価格の高騰や再開発計画の期待などによって、築10年以上のマンションが2倍以上に値上がりしているのです。

中野の再開発プロジェクトが完了するのは2030年ごろの予定です。今後、再開発が進みマンションが増えていく過程で、さらに値上がりする可能性もあります。

再開発によって、新築マンションだけでなく中野駅周辺の既存のマンション価格も押し上げられていく可能性が高いと見ていいでしょう。

「今後中野の不動産価格が上がる」と見る人が増えることで、中野の不動産価格が押し上げられるという好循環が起きつつあります。

すでに価格が高騰しているエリアのタワマンより、中野のほうが値上がりする、と見る人が増えているのです。

■「築10年くらいの中古マンション」が狙い目

では中野のどんな物件が「狙い目」なのでしょうか。

基本的には中野駅周辺の不動産は比較的再開発の恩恵があると思います。ただ、一戸建ての場合、マンションほど値上がりの恩恵は期待できないかもしれません。

基本的に一戸建てとマンションは別の市場と考えたほうがいいでしょう。近年、外国人富裕層などによる不動産価格の上昇はマンションのほうが顕著に表れています。

一方、一戸建ての需要はコロナ禍で一時上昇しましたが、マンションほどには上がっていない状況です。今回の再開発計画でも、駅近物件はマンションの方が総数が多いため、一戸建てにはマンションほどの影響はないと考えられます。

ではどんなマンションなら値上がりが期待できるでしょうか。

再開発計画で新たに分譲されるマンションは、価格設定が当初から高くなっています。そのため、新築マンションを買っても、値上がりの「率」はあまり大きくならない可能性もあります。

むしろ中古マンションのほうが安く買えて、キャピタルゲイン(売却益)を狙いやすいかもしれません。

ただ、旧耐震基準で建てられたマンションの場合は、住宅ローンの利用が限定されるなどの理由により、値上がりしない可能性もあるので、注意が必要です。

旧耐震基準で建てられたマンションだと難しい
写真=iStock.com/Masaaki Ohashi
旧耐震基準で建てられたマンションだと難しい(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Masaaki Ohashi

一般的にはマンションは築年数が浅い方が流動性は高いのですが、、今回の中野再開発にあたってキャピタルゲインを狙う場合は、築10年くらいの中古マンションが狙い目かもしれません。

■「中野」ならどこでもいいわけではない

最も注意しなければならないのは、JR中野駅からの「距離」です。

都内にお住まいの方はよくご存じだと思いますが、新宿の西側には「中野坂上」「東中野」「新中野」など、「中野」とつく街がたくさんあります。

また、中野駅に近い西武新宿線の「新井薬師前」駅も、広い意味での「中野エリア」とされることがあります。

ただ、中野再開発のメリットが波及するのは、あくまで駅周辺地域に限られます。

「中野坂上」などのエリアや、西武新宿線沿線はそれぞれ別の街として、まったく違う相場が形成されています。中野再開発計画はあくまでJR中野駅周辺の再開発であり、それ以外の地域まで影響することは考えづらいと思われます。

できれば「JR中野駅から徒歩7分圏内」、最低でも「徒歩10分圏内」のマンションを狙うとよいでしょう。

■「ワンルーム」を狙ってはならない

中野の新築マンションを買えば「今すぐ」儲かる、という話ではないことにも注意が必要です。

先述した坪単価が700万円まで上昇したケースは、急に上昇したのではなく、10年以上取引を重ねた上で価格上昇しているわけです。

そのため、短期でキャピタルゲインを狙うと失敗する可能性もあります。あくまで中長期的に保有することを前提に考えていただけたらと思います。

ほか、中野に多い単身者向けのワンルーム物件は、競合となるマンションも多いため、再開発の恩恵を受けにくいと思われます。

値上がりを狙えるのは、基本的には再開発で新規流入が起きるDINKS向け~ファミリー向けの物件だけ、と考えるほうがいいでしょう。

不動産業界から熱い視線が注がれる中野。今後の発展に大注目の街だと言えるでしょう。

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山本 直彌(やまもと・なおや)
不動産エージェント、らくだ不動産副社長執行役員
不動産仲介会社、大手マンション管理会社を経て、2020年よりらくだ不動産に参画。現在、副社長執行役員を務める。各種媒体への寄稿・情報提供のほか、Youtubeチャンネル「らくだ不動産」でも情報発信をしている。

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(不動産エージェント、らくだ不動産副社長執行役員 山本 直彌)

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