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「自転車レーン」を駐車中のクルマが通せんぼ…ルールを守る人を危険にさらす「道路の邪魔者」トップ3

プレジデントオンライン / 2024年7月30日 8時15分

【画像1】都道317号に設けられたEV給電施設 - 筆者撮影

■カオスな都知事選の果てに現職3選

七夕選挙の都知事選、色々あった末に小池百合子都知事3選に収まったわけだが、いやはや今回の都知事選のカオスぶりはスゴかった。掲示板見ても、犬や、猫や、同じ人や、一夫多妻制主義者や、そんなのばっかり。

ある人は「あからさまにアウト」だし、別の人は「言ってることは分かるけど、アンタが通るわけない」だった。そんなこんなで。蓋を開けたら現職の当選だ。まあ仕方ない。

仕方ないので、都知事選の間、封印していた現職の批判でもしてみよう。

話はもちろん自転車の話。そもそもこのウェブ連載のタイトルが「漂流する自転車行政」なんだから。

そして、あらゆる都道府県の中で、東京の自転車行政が一番、漂流している。それを象徴するのが、都道317号線の「公道上EV給電施設」だろう。

■車道にドカンと据えられたEV給電施設

小池都知事が2期目あたりからエレキ(電気)に関してやたらご執心になっていたのはご存じの通りだ。特に太陽光パネルに対しての義務化ほか、エコだエコだと称して、ワケの分からないエレキ化義務化やばら撒きを推進してきたわけだが、その中のひとつがEVすなわち電気自動車の振興策だ。

私が呆れ返りながら見ているのが、そのEVの給電機のことなのである。

代官山の都道317号(旧山手通り)に「公道上EV給電施設」というものがある。画像1を見れば分かるが、一般公道(都道)左端にそのまんま枠を描いて、路上駐車、給電OKとした。

もちろん車道左端は自転車にとっての走行スペースである。ここにEVがある限り自転車は車道側に膨らんで走らざるを得ない。

だが、それがどんなに危険なことか。

■自転車乗りの命と引き換えに充電している

EV給電車は、給電完了まで30分や40分はそこに居続け、後続自転車の“通せんぼ”をし続けるわけだ。要するに当該のEVは自転車乗りの命や安全性と引き換えに、チュウチュウ電気を吸っているのである。それを都の事業として後押しするという駄目さ加減。

現在「社会実験中」らしいが、延長延長を繰り返して今に至る。間違いなく「なし崩し的に認めさせる」ことを目論んでいるのだろう。

「社会実験実施中」と書かれた看板
筆者撮影
「社会実験実施中」と書かれた看板。当初の実験期間は過ぎたのに、まだやっている - 筆者撮影

EV路上給電が許しがたい理由はこうした自転車の安全性以外にも、もうひとつある。それは「なんのため?」という根源的な部分だ。

EVを普及させようというのは、もちろん二酸化炭素を出さないエコビークルだからだろう。いや、最近はそれすらアヤシいが、それはまあ今回はおいておこう。「まあまあエコ」としておこうか。しかし、その「まあまあエコ」のために、自転車のスペースを潰すのが分からない。

■EVよりエコな自転車の邪魔をしている

EVと自転車のどちらがエコかといえば、誰がどう考えても自転車だろう。完全無欠のエコビークルである自転車の邪魔をしてEV、ということになると、最初から「エコのため」というのがウソなんだな(笑)というのが丸わかりだ。

全般的に言って、小池都政はこういう整合性のなさというのが致命的な欠点だ(太陽光パネルもそう)。だいたい国(国交省)はガイドラインを定めて、こういう自転車などの走行車両の通行を邪魔するようなEV給電機設置はやめろと言っている。

【画像】国のガイドラインが示す充電スペースの標準的な設置場所
【電気自動車等用充電機器の道路上での設置に関するガイドライン】より

それなのに小池都政は「東京だけは別ですわよ、ふふん」とかいいながら、今でも(2024年7月現在)社会実験継続中だ。

■自転車レーンにはトラックや車がずらり

次にこれまた都道の314号線、通称「川の手通り」のことだ。写真4にあるとおり、青く塗られた「自転車専用道(自転車レーン)」には、トラックや営業車が平気の平左でいつまでも駐まっている。

都道の314号線の自転車レーンに駐車しているトラック。自転車は車道にはみ出して走行するしかない
筆者撮影
【写真4】都道の314号線の自転車レーンに駐車しているトラック。自転車は車道にはみ出して走行するしかない - 筆者撮影

こうした状態が常態となっているのが誰もが知る都道の現状だろう。この314号線だけじゃない。駒沢通り(都道416号)だって、外堀通り(都道405号線)だってみんなそう。自転車レーン上に違法駐車がずらり。営業車両の中を見ると、運転席でドライバーが弁当を食べている。

都道405号の邪魔な車
筆者撮影
都道405号(新宿通り部分)の邪魔な車 - 筆者撮影
筆者撮影
完全に駐車場状態となっている都道405号線(国会通り部分)の自転車レーン - 筆者撮影

これも自転車にとっては本当に危ない。そんなこと素人が見たって分かる。それなのに放ったらかしだ。

■「駐車禁止」ではなく「駐停車禁止」にすべき

こんなの話は簡単で、こうして自転車レーンを設置するなら、その道路は「駐停車禁止」にすればいいというだけだろう。それなのに自転車レーン付きの都道は必ず「駐車禁止」でしかない。これは私の知るかぎり、100%そうだ。

だから、自転車レーンに駐まったクルマは「5分以内の積み下ろしだからOK」「あ、ドライバーがいるからすぐによけます、だから大丈夫」と言い訳しつつ、ずらりと違法駐車しっぱなし。

都道管理者、つまり東京都は「これでいいんですわよ、ふふん」とばかり何もしない。本気で何もしない。

都道418号外苑西通り。駐車スペースが突然、自転車レーンに切り替わる
筆者撮影
外苑西通り(都道418号)。自転車ピクトグラムとパーキングが同じ場所に描かれている - 筆者撮影

■「電柱ゼロ」はまったく実現していない

よく言われるように小池都政は「公約は蔑ろにして、しなくてもいいことをする」という側面がある。選挙期間中は、いろいろ誤魔化していたけれど、間違いなく事実だろう。目の前の電柱を見れば分かる。

公約の電柱ゼロ? 8年間でそうなりましたか? まったくなってない。

たとえば私の家の近所に日赤通りってのがあるんだが、そこを通る子供の自転車、歩行者は、電柱が邪魔して、まともに走る(歩く)ことができない。ここは日赤病院があることから、救急車がしょっちゅう走り、おまけにバス通り。じつに危険なのだ。

日赤通りの危ない電柱
筆者撮影
日赤通りの危ない電柱。これがある限り、自転車レーンなど到底不可能だ - 筆者撮影

こういうところこそ電柱埋設の一丁目一番地だと思う。しかし手をつけない。自転車レーンなど夢のまた夢だ。

■自転車側にも責任はないとは言わないが…

小池都政が昔も今も「公約無視」「自転車無視」あるいは「軽視」であることは、こういうところからも明らかだろう。

自転車のマナーが云々言うヒトは多い。そして、その指摘は事実だ。歩行者気分で安易に自転車に乗る人の多いこと。しかし、こうした状態ではマナーもヘチマもないというのも、一方の事実なのだ。自転車レーンを? 走れるものなら走ってみろ。

今回の都知事選の投票率は(東京としては珍しく)60%を超えた。多くの人は小池都知事に信託を付与したということだ。そこを否定はしない。しかし、今回の信託は、正直申しあげて「他の連中に較べたら、ユリコの方がマシに見えたから」に過ぎない。そこを忘れないでいただきたいのだ。

小池都政のこれまでに関して、納得しかねる部分はいくつもある。そのダメ部分が一番顕著に出たのが、こうした自転車がらみだろう。そして、その自転車がらみ都政こそ、知事が本当に市民生活に向き合っているかが出る部分だと思えるのだ。

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疋田 智(ひきた・さとし)
自転車評論家
1966年生まれ。東京大学工学系大学院(都市工学)修了、博士(Ph.D.環境情報学)。学習院大学、東京都市大学、東京サイクルデザイン専門学校等非常勤講師。毎日12kmの通勤に自転車を使う「自転車ツーキニスト」として、環境、健康に良く、経済的な自転車を社会に真に活かす施策を論じる。NPO法人自転車活用推進研究会理事。著書に『ものぐさ自転車の悦楽』(マガジンハウス)、『自転車の安全鉄則』(朝日新聞出版)など多数。

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(自転車評論家 疋田 智)

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