「ひらがな1文字」を加えるだけで"伝わる文章"に変わる…説明上手な人が使っている「CM的な説明術」の極意
プレジデントオンライン / 2024年8月3日 16時15分
※本稿は、ひきたよしあき『ひと目でわかる、すぐに身につく [イラスト図解]5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』(大和出版)の一部を再編集したものです。
■字数を制限して書く練習をするといい
●短く書こうとしているのに、文章が長くなってしまう
●要約力がなくて、短くまとめるのが苦手
●誰もが読みやすい文章量の目安を知りたい あなたへ
あれもこれも漏らさず書こうとして文章が長くなる。結果、論点がわからない文章を書いてしまう。そんな経験はありませんか? そんな人には、字数を制限して書く練習をおすすめします。
字数は40字です。字数制限が40字であるにはわけがあります。子どもの頃、原稿用紙に書いた一文が、句点もなく3行続くと長く感じられました。もちろん、長い熟語や外来語もあるので目安でしかありません。
しかし、原稿用紙2行分(=40字)に字数を収めれば、ひきしまった文章になります。なぜなら、40字程度の文章は、息継ぎをしなくてもひと呼吸で読める。一気に読めるから、人の記憶に残りやすいのです。
ちなみに冒頭から、ここまでの文章はすべて一文が40字以内です。「しかし、原稿用紙2行分(=40字)に字数を収めれば、ひきしまった文章になります。」これが最長で39字。40字以内で書くと、読みやすいリズムが生まれるのです。
■40字以内で、内容を完結させる
一文を40字以内に収めて書くクセがついたら、次は「伝えたい内容」を、40字以内に収めてみましょう。例えば、
●先日のプレゼンに負けました。勝ったのはA社です。今、敗北の原因を探っています。(39字句読点を抜いて35文字)
40字にまとめようとする気持ちがあれば、自ずと一文は短くなります。要約力も、このトレーニングでつきます。私は、ゲーム感覚で40字にまとめる文章をつくっています。ノート型の原稿用紙を持ち歩いて、俳句でもつくる気分で40字文を書いています。
POINT① 「新聞の見出し」「原稿用紙2行分」がよい目安
『記者ハンドブック』(第10版 共同通信社)によれば、ニュース記事の主見出し、脇見出しとも12字以内。リードの書き出し(一文)は11字以内。足せば35字です。40字文は、ちょうど新聞の見出しを見ているようなわかりやすさです。
![40字文以内ならどういうニュースかすぐわかる](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/3/1200wm/img_a30aa50ce23fb359aa998f1d81e4dcd0616685.jpg)
POINT② 単語を削ぎ落す過程が、語彙を増やす
「グローバルリンクする」「ブラッシュアップする」のような長い言葉がきたら、40字文は成立しません。こういった言葉は、「世界規模で繋がる」「練り上げる」と短くする努力をする。文章を短くする意識を持つことで、ムダな文章や単語を削ぎ落とす力がつきます。「もっと短い単語はないか?」とあれこれ考えるために語彙も増えていきます。
![長い言葉は短くする](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/b/1200wm/img_8b99c2c54fbf5b5d6b2bafa387830b1f604710.jpg)
■動詞までしっかり語らないと、伝わらない
●必死に語っても、誰も行動に移してくれない
●相手に決断や判断を迫ることができない
●言葉に力強さがなく、人を動かすことができない あなたへ
人を巻き込む話し方のできる人は、「動詞」の重要性を知っています。それを知るために、まずは英語と日本語を見比べてみましょう。
麻菜は、彼女の娘と松山に行った。
英語は、主語のあとすぐに動詞が来るのに対し、日本語は最後。だから「麻菜は、彼女の娘と松山に……」と語ると、聞き手は「あぁ、一緒に行ったんだな」と文脈から推測できてしまいます。私たちのふだんの会話は、「ねぇ、お塩」といえば「お塩をとってほしい」ことだと伝わる。動詞を軽んじた話し方をしているのです。
動詞を抜いた話し方は、仲間同士なら通用します。しかし、これだけ価値観が多様化した社会では「~する」「~したい」「~しろ」という動詞の部分をしっかりと語らないと伝わりません。
○「得意先に、謝罪に行きましょう」
×「山田くん、どうかな」
○「山田くん、意見か感想か話してください」
人を巻き込む話し方をする人は、相手に不快な思いをさせないように、さりげなく動詞を入れた会話ができます。
![オフィスで会議をする人たち](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/c/a/1200wm/img_ca436c7479b5d0c1bbc3891490cbec8f387896.jpg)
■ここぞというときに、相手から動詞を引き出す
しかし、動詞を多用しすぎると、上から目線に感じられます。これを避けるために、相手から動詞を引き出す方法があります。「どう動けばいいですか」「どうすればいいですか」と、相手が「やめよう」「行こう」「決めよう」と動詞を口にするように促す。相手が「動詞」を語れば、それが相手の行動宣言になります。相手を動かすことができます。
POINT① 「動詞」を相手にきちんと示す
「動詞まで言うと、強い印象を与えてしまう」と日本人は謙虚に考えがちです。しかし、なかなか相手が動かないのは、あなたが曖昧な語り方、察してもらおうとするしゃべり方をしているからかもしれません。「動詞」をはっきりと語ったほうが、意思疎通がスムーズにできて、相手にとっても、わかりやすい会話になるのです。
![「動詞」を相手にきちんと示す](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/1/1200wm/img_71708aa626ab1aadd03086b7bab5ccfd547981.jpg)
POINT② 結論を迫るのではなく、アドバイスを求めるように
相手から動詞を引き出すように質問する。ただし頻繁に使うと、相手を圧迫し「自分で考えろ!」と言われてしまうことも。それを防ぐためには、悩みを共有したうえで、「○○さんなら、どう動きますか」とアドバイスを求めること。このように語ると、相手も「私に答えを迫っているのではなく、アドバイスを求めているんだ」と思えます。気軽に「動詞」で語ってくれるはずです。
![悩みを共有し、アドバイスを求める](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/4/1200wm/img_a41eb46f9093acae73facd6dbb91f8de564641.jpg)
■人の心にひっかかり、強く印象を残す文章とは
●教科書のような文章でつまらないと言われる
●「あなたの文章は、思いが伝わってこない」と言われる
●正しいけれど、誰でも書ける文章しか書けない あなたへ
文法的には間違っていないけれど、平凡でつまらないと言われる。学生時代に国語が得意だった人によくある悩みです。
公的なメール文などには「文法上正しい、常識ある日本語」は必要です。しかし、ネットで検索すればいくらでもそのサンプルがある時代。少し学校で習った国語を忘れて、ここでは人の心にひっかかり、強く印象を残す文章の書き方を学びましょう。
近年、大学生に「よい日本語とは何か」と尋ねると「google 翻訳がきれいにできる文章」という答えが返ってきます。SNSが世界に発信されるとき、世界の言語にすぐ翻訳される言葉のほうが波及力がある。
そう考える人が増えるのも当然でしょう。正しい日本語の概念は日々変わっている、まずはそれを認識しましょう。例えば、AppleのHPでは、「~してまいります」「~致します」といった敬語はほとんど使いません。「~します」「~を目指します」と言い切る文章が多いので、強い意思を感じることができます。
![オフィスで話をする3人](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/c/c/1200wm/img_cca2f35e7d219e372f4d4d8a4747fe4f234080.jpg)
■時制をまぜて、文章に独特な動きをつける
私たちは、英語の授業で「過去形と現在形をまぜてはいけない」と学びました。その影響で、過去を語るときに現在形を入れるのは間違いのように思い込んでいますが、そんなことはありません。樋口裕一先生は「実際の行動を書いた文は過去のままで。様子を説明するときは現在形で書く」(『頭がいい人の文章「すぐ書ける」コツ』三笠書房)と言っています。
![ひきたよしあき『ひと目でわかる、すぐに身につく [イラスト図解]5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』(大和出版)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/3/1200wm/img_f375d6e18b667ae1c7616f3c3684f745347792.jpg)
これに従えば、「飼い犬のポチが逃げた(過去)。私は、近所を探し歩いた(過去)。雨がしきりに降っている(現在)。車が通ると、水しぶきがあがる(現在)。私は、歩く速度を早めた(過去)。『ポチ!』と小さく叫んだ(過去)」。現在形と過去形をまぜれば、文章に動きがでます。
POINT① 企業HPから「読まれる文章」を学ぶ
企業HPやWebサイトを見てみましょう。わざとひらがなを使って簡単な印象を与えたり、改行の代わりに一段スペースを空けて余白をつくっている。過剰な敬語を抑えて強い意志を示したり、親しみを出そうとするケースもあります。
現在は、パソコンですぐに漢字変換できるため、若い人を中心に難しい漢字を使う傾向にありますが、「どうすれば読んでもらえるか?」という視点を忘れないようにしましょう。
![企業のWEBサイトを参考に自分の文章を書きなおしてみる](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/e/1200wm/img_1e8fe7d040d38a8bc2b0f88a561c1dbb427422.jpg)
POINT② 時制をまぜると、臨場感が出る
過去の出来事を伝える場合、「現在形」と「過去形」を織りまぜると文章がいきいきします。なぜなら、文末が単調ではなくなりリズムが生まれるから。現在形を入れると、状況に巻き込まれたような臨場感が生まれる。つまり、視点が増えるわけです。過去の出来事だからといってすべてを過去形にするのではなく、そこで見えた景色などは現在形で書いてみましょう。
![過去の出来事を伝える場合「現在形」と「過去形」を織りまぜる](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/e/1200wm/img_7e6905b080f97a3156f145eed1c78db0664402.jpg)
■上司に学んだ「CM的説明話法」
●相手に情景やその場の雰囲気を伝えるのが苦手
●「見てほしいのはここだ!」と思っているのに伝わらない
●ありありと具体的に、文章を書くことができない あなたへ
出張で見た現地の様子を上司に説明するとします。あなたは、上司が「自分自身が訪れた」と勘違いするほど、リアルに情景を伝えることができますか? 伝えるのが上手な人は、これが得意です。上司の脳内スクリーンに、現場の状況・雰囲気・温度感までをも伝えることができます。伝え方上手な人は、五感に訴える力をもっているのです。
「自分の言いたいことを、相手の頭上に白いスクリーンがあると思って、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚、全部を使って映像化しろ」。これはCMプランナーになりたての頃、上司に学んだ「CM的説明話法」です。
○「メガネがくもるような白い湯気の出る丼に、顔をつっこんでハフハフ言いながらうどんを食べた」
スクリーンにどちらのほうが、情感をもって伝わるかは一目瞭然です。ここで、色・音・匂い・味・触り心地を入れます。広告の世界では、ステーキ肉がジュージュー焼ける音を描写して相手の食欲を刺激するのが伝え方の鉄則。このときの「ジュージュー」という音を「シズル」と言います。
■「の」を使って、見る対象にズームする
次は「『の』ズーム」という手法です。長く子どもの作文を見ている私は、文章が上達する子には法則があることを発見しました。
○「水族館にいたイルカの目が、かわいかった」
「~の~」と「の」で対象にズームしています。「イルカがかわいい」は誰でも書ける。しかし「イルカの目がかわいい」となるとその子オリジナルの視点がある。このわずかな違いが、相手に情景を的確に思い起こさせる差になるのです。
POINT① 相手の頭上のスクリーンに向かって話す
相手の頭の上に白いスクリーンがあると考える。そこに五感を使って「シズル感」のあるCMを映し出すように語る。これができると、文章から音がする、匂いがする、注目するポイントが目に飛び込んでくる。臨場感のある文章が書けるようになります。
![相手の頭上のスクリーンに向かって話す](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/c/2/1200wm/img_c233a73a863a6f7dfc3fe9e3bce8cb98551739.jpg)
POINT② 「の」ズームで、あなたの考えが伝わる
対象物を「の」でぐっと近づけることで、伝えたいものがはっきりします。「このコートが好き」→「このコートの襟元が好き」、「ここのラーメンが好き」→「ここのラーメンのスープが好き」、「この町が好き」→「この町の空の広さが好き」とズームすることで、好きなポイントがわかる。あなたが何を考えているか相手に具体的に伝わります。
![対象物を「の」で近づける](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/3/1200wm/img_734c3d757665ed80b6698e3b2c108a25659779.jpg)
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コミュニケーション・コンサルタント スピーチライター
大阪芸術大学芸術学部放送学科客員教授。早稲田大学法学部卒業。博報堂に入社後、クリエイティブディレクターとして数々のCM を手がける。スピーチライターとしても活動。著書に『5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』(大和出版)、『大勢の中のあなたへ』(朝日学生新聞社)、『トイレでハッピーになる366の言葉』(主婦の友社)などがある。
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(コミュニケーション・コンサルタント スピーチライター ひきた よしあき)
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