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「女子生徒の着替え盗撮」はすべての学校で発生している…「子供の撮影罪」が大人以上に悪質な理由

プレジデントオンライン / 2024年8月2日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

■盗撮そのものを取り締まる法律がようやくできた

性的な撮影による未成年者の被害が増えています。加害者も未成年者であるケースも増えています。夏休みに入ると、未成年者の性被害は増えます。性的な自画撮りの被害等も増えることが想定されます。そこで、性的な撮影にまつわる問題について考えてみたいと思います。

盗撮を刑法犯で処罰する法律が施行されて1年たちました。正式名称は「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」です。とても長い名前なので、ここでは「撮影罪」ということにします。

盗撮は、被害者に大きなダメージを与える重大な犯罪です。これまで真正面から盗撮を取り締まる法律はなく、被害者は泣き寝入りを強いられ、加害者は安心して犯行を重ねることができました。しかし、従前と比べて格段に刑が重い撮影罪ができたことが抑止力となることが期待されます。

■「すべての学校に盗撮事件がある」といってもいい

盗撮にはさまざまなパターンがあるのですが、私が特に危機感を抱いているのは、「加害者も被害者も未成年者」というケースです。学校の部活の更衣室に隠しカメラやスマホを設置して盗撮したり、修学旅行先で入浴中の女子生徒を盗撮したりする行為等です。学校の教室の中でも盗撮は行われています。

「○○県の中学校の修学旅行先の風呂場で、女子生徒10人以上が盗撮被害。盗撮画像は複数の男子生徒に拡散」
「○○県の高校の宿泊授業で、男子生徒が盗撮。被害者の女子生徒は数十人」

などという報道が目につきます。しかし、これは氷山の一角です。

「すべての学校に盗撮事件がある」といっても過言ではないと思います。ここでいう「学校」というのは、小学校から中学校・高校・専門学校・大学まで含みます。盗撮は、被害者が被害に気づきにくいというのが最大の特徴です。他の性犯罪と違って「触らない犯罪」だからです。

スマホの普及で、盗撮はとても簡単にできてしまう犯罪となりました。今の子どもたちは、生まれた時から生活の中にスマホがあるので、写真を撮るのは日常の一部です。更衣室や風呂場で盗撮するのもその延長で、あまり罪の意識はないようです。

■未成年者でも盗撮、ネットへの流出は逮捕される

撮影罪は刑が重い犯罪です。盗撮した場合、「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」に処せられます。それをネットに流すと「5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金、又は併科(拘禁刑と罰金の両方)」です。当然、未成年者であっても逮捕される場合はあります。14歳以上であれば、少年審判を受けたり、悪質な場合は大人と同様の刑事裁判の被告人として裁かれることになります。

盗撮行為に悪気はない一方で、被害結果はとてつもなく重大です。盗撮は、単に更衣室で着替えている場面や風呂場をのぞいた、ということにとどまりません。もちろん、そのこと自体も悪質で被害者を傷つける行為ですが、撮影されて画像や動画に残るという恐怖は、単なるのぞきと比べものになりません。

大人の盗撮犯の場合、「撮影することにスリルを感じる」というタイプの人が一定数いて、そのような人は、盗撮に成功するとすぐに削除してしまうそうです。家族や会社にバレると大変なので、盗撮していることは誰にも言っていない、ということも多いです。

■「見せびらかしたい」からどんどん拡散していく

しかし、未成年者や大学生は違います。特に年齢が低いほど「誰かに見せびらかしたい」という気持ちが大きいのです。だから、すぐに友達に拡散します。拡散された人もまた誰かに拡散します。その結果、発覚した時は、相当拡散しているというリスクがとても高く、そうなると削除も難しくなります。

学校で友達とスマホを見ている女子生徒
写真=iStock.com/ferrantraite
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ferrantraite

盗撮被害に遭うと、被害者は日常生活を送ることが困難になります。まず、いつ盗撮されていたのか自覚がないので、いつでもどこでも盗撮されているかもしれない、という不安に苛まれます。家から出られなくなる人もいます。画像が流出しているかもしれないと不安になり、ネットで自分の画像を検索し続ける毎日を送る人もいます。世界中に自分の裸を見られたと感じ、髪型や洋服の趣味を変え、時には整形したりして別人になって生きようとする人もいます。

特に学校関係の場合、加害者と被害者が身近な関係にあります。「たくさんの同級生や先輩が私の裸を見たかもしれない」という気持ちから、学校に行くこと自体が苦痛になることは当然です。

■「ダミーのスマホ」を教師に渡す生徒も多い

ところが、学校側が、「加害者にも未来がある」などと言って、適切な指導をしない場合があります。被害者は抗議したくても、「内申点に影響するかもしれない」「受験の推薦をもらえないかもしれない」などの恐怖心から、泣き寝入りせざるを得ないことがあります。そうすると、加害者は反省や更生の機会を失い、盗撮を繰り返すようになります。より悪質な犯罪者に成長し、つらい人生を送ることになるのです。

繰り返しになりますが、「すべての学校に盗撮事件がある」と考えて対策を講じることが重要です。「スマホを教室に持ち込まないように預かっている」というルールがある学校は多いのですが、ダミーのスマホを提出して、教室にはいつも使っているスマホを持ち込んでいる子どもはたくさんいます。目先の対策では意味がありません。

上谷さくら『新おとめ六法』(KADOKAWA)
上谷さくら『新おとめ六法』(KADOKAWA)

盗撮は軽い犯罪ではありません。「触らない犯罪」のため、盗撮加害者の中には、「レイプのような凶悪犯罪ではない」という開き直った弁解をする人もいます。しかし、被害者がなぜ傷つくのか、想像力や共感力を正しく働かせば、そんなに簡単な問題でないことは、すぐにわかるはずです。

盗撮だけでなく、性的ないじめにもスマホは使われています。複数の女子生徒が、いじめのターゲットの女子生徒を裸にして写真を撮影し、仲間に拡散するような事件も起きています。「女子校だから安心」ということはありません。

また、性的な自画撮りを交際相手やSNSで知り合った大人に気軽に送ってしまう未成年者も後を絶ちません。「誰にも見せないからお願い」などという言葉を安易に信じてしまうのです。

■スマホ以外にも盗撮機器はたくさんある

そのような画像は、仲間内で拡散されたり、ネット上で売られたりします。「言うことを聞かないとばらまくぞ」などと脅され、性的行為や金銭を要求されることもあります。北海道旭川市で女子中学生が性的画像を送るように脅され、それをきっかけにいじめがエスカレートして自死してしまうという痛ましい事件も起きています。

保護者は、子どもにスマホを渡す時、なぜ盗撮や自画撮りの送信を要求するのがいけないことなのか、被害者がどんなふうに傷つくのか、という問題をしっかりと話していただきたいと思います。

この夏休みの間に、一度親子で真剣に話し合ってみてはいかがでしょうか。親から見たらまだまだ幼い子どもだと思っていても、スマホの中身は大人顔負けの酷いことになっているかもしれません。未成年者は、簡単に加害者にも被害者にもなってしまうのです。

「撮影罪」は成立しましたが、盗撮自体は年々巧妙になっています。スマホ以外にも、一見それとはわからないような盗撮機器がたくさんあります。

さまざまな盗撮機器のイラスト
出典=『新おとめ六法』

盗撮以外に使いようがない物の取り締まりの強化や、こういった商品について情報収集することも重要です。盗撮被害の被害者に何の落ち度もありません。しかし、盗撮する人は相当数いると思われ、急にいなくなることはありません。「被害者が気づきにくい犯罪」であるからこそ、自分や大事な人が被害に遭わないよう、身を守る行動をすることも重要です。

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上谷 さくら(かみたに・さくら)
弁護士 第一東京弁護士会所属
福岡県出身。青山学院大学法学部卒。毎日新聞記者を経て、2007年弁護士登録。犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長。第一東京弁護士会犯罪被害者に関する委員会委員。元・青山学院大学法科大学院実務家教員。保護司。

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(弁護士 第一東京弁護士会所属 上谷 さくら)

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