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「がんが消える」「血液サラサラ」を信じてはいけない…専門家が指摘「買ってはいけない健康食品」を見分ける方法

プレジデントオンライン / 2024年8月5日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SDI Productions

健康食品で本当に健康になれるのか。岐阜医療科学大学薬学部の宗林さおり教授は「『健康食品』の中には、信頼できる根拠が乏しいのに曖昧な機能性があるとうたっているものも多い。国が認めたトクホや機能性表示食品であっても、GMPマークがあるかどうかを必ず確認してほしい」という。NPO食の安全と安心を科学する会理事長の山﨑毅さんが聞いた――。(第1回)

※本稿は、小島正美、山﨑毅『食の安全の落とし穴』(女子栄養大学出版部)の一部を再編集したものです。

■「健康食品」という法律上の定義はない

食品の法令上のカテゴリーとして「健康食品」なるものはない。だが、食品の機能性を謳ってもよいと国が認めているものとしては保健機能食品があり、テレビコマーシャルでは、トクホや機能性表示食品など、健康への効果を謳ったものが毎日宣伝されているが、「医薬品」ではない(疾病に対する効能・効果はない)ということに要注意だ。

また、健康になると思われている食品が、逆に健康を害する場合も多数報告されている。2024年3月には、紅麹サプリによる健康被害の問題も起きている。

消費者からの苦情の声を国民生活センターで長年調査してこられた宗林さおり先生に、健康食品のリスクの実態を、そして健康にとって期待できる部分についてもお話しいただいた。

――最近「サプリメント」という用語もよく聞きますが、「健康食品」と同じことでしょうか? ビタミンやミネラルなどの栄養素を毎日摂るイメージなのですが、いかがでしょうか。

「サプリメント」とか「健康食品」はイメージとしてはわかりやすい言葉ですが、法令上定められた定義はありません。

ただサプリメント自体が「補完する」「補充する」などの英語なので、ビタミンとかミネラルを栄養補助するというイメージが、最も近いかもしれません。なお、「サプリメント形状の健康食品」という場合は、通常、医薬品のような錠剤やカプセル剤のものを指します。

■信頼できる臨床データがない「健康食品」もある

――「健康食品」でも、保健機能食品に該当しない食品のテレビコマーシャルをよく見ます。

「いわゆる健康食品」というように「カッコ」がついているときは、国が機能性表示を認めた保健機能食品以外の「いわゆる健康食品」のイメージですが、機能性の根拠が乏しいものが多く含まれており、国も機能性表示自体を認めていないものの、イメージで健康を訴求した食品となります。

「保健機能食品」以外の「いわゆる健康食品」については、結局、機能性関与成分すら不明のものが多いので、ヒトでどのくらい摂取したら、どのような機能性が発現するのか、信頼できる臨床データもないケースがほとんどです。

天然の成分だから健康によいなどと謳ったり、個人の感想だけでスッキリ効果を謳っているものもありますね。その意味でも、消費者は保健機能食品(トクホや機能性表示食品)であることを確認のうえ、最低限、機能性表示の根拠となる臨床データがあることが確かな商品を、選んでいただきたいですね。

■“紅麹サプリ”の問題点は何だったのか

――ただ、2024年3月に報道された小林製薬の紅麹サプリによる食中毒事故では、当該製品が機能性表示食品だったにもかかわらず、腎障害による死者や入院患者まで引き起こして社会問題となりました。機能性表示食品制度の欠陥ではないかとの論調も多いようですが、宗林先生はどうお考えですか?

機能性表示食品の安全性はガイドラインで、機能性成分だけの食経験で見るとされてきました。ですが、紅麹の例では、機能性成分以外で毒性のある物質ができていたので、商品全体で見ていく必要があり、また今より長期で年数を決めての食経験が必要です。

また、製造工程管理(GMP)についても強く推奨されていましたが義務化ではありませんでした。

チェックするポイントについても最終的な製品となる打錠工場だけではなく、原料段階、紅麹の件では紅麹を発酵させていた工場においての品質管理がなされていないといけません。

毎回機能性成分の量が異なってしまうなど原料が安定していないのは問題ですので、原料から最終製品までのGMPの義務化が必要でしょう。

紅色のサプリメントの錠剤
写真=iStock.com/loveshiba
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/loveshiba

■“オーガニック”なら無害で安全なのか

――ここからは一般消費者からのよくある質問について伺っていきたいと思います。「とにかくお医者さん嫌いで、医薬品やワクチンも怖い。自然食品やオーガニックが好きで、健康食品なら安全で信用できると思っています。薬は副作用が心配だが、健康食品は有害な作用がないというのは本当でしょうか?」

医薬品よりは作用も弱いので副作用も相対的には少ないと思いますが、「食品だから安全」とは言えません。特に最近の健康食品は形状が錠剤やカプセルのものも多いので、食事の他に薬を飲むのと同じ感覚で毎日のように摂取しますよね。

そうすると自分の体質に合わない場合もあり、たとえば薬物性肝障害といって、自分の体質に合わなくてアレルギーのような反応をして肝機能の数字が悪くなることもあります。厚生労働省の調べでも薬物性肝障害の9%が健康食品が原因だった、という調査結果が出ています。健康食品を摂取して体調が悪くなるようなら、まずは摂取をやめてみて、体調が戻ってくるかどうかを見極めましょう。体調をくずしたのに、無理に飲み続けてはいけません。

■「健康食品」を多めに摂って体調不良になることも

――健康食品が原因で肝障害とは衝撃的な事実ですね。別の消費者からのご質問です。「お薬とは違って1日3回1錠ずつ飲みなさいというわけではないので、健康食品ならある程度多めに摂っても大丈夫でしょうか?」

健康食品については逆に、機能性成分の含有量も商品によって大分違いがありますし、錠剤やカプセルの形をしていると、どうしても食事にプラスオンしていくお薬のような飲み方になります。

ですので、長期にわたって多めに摂取したら体調変化等が起こらないとも限りません。

たとえば、「便秘の人によい」といった健康食品を多く飲めば、下痢になる可能性が容易に考えられますよね。あと健康食品は、医薬品ほどその現品で成分含量を厳しくチェックされていませんから、少なくとも多めに摂取するのは避けるべきでしょう。

「定期購入してしまい、次々と届くので多めに飲んだら体調不調になった」という話は、意外にありがちな事例です。国民生活センターに寄せられる消費者からの苦情データがPIO-NETという制度で収集されておりますので、ここ最近の有害事象件数を図表1でご確認ください。

【図表】危害情報の上位10商品・役務等の推移
図表=『食の安全の落とし穴』より

■健康食品には「被害救済制度」が存在しない

――こちらも、健康食品についてよくある質問です。「友人がネット広告を見て、ダイエット食品をたくさん購入しているとのこと。仕事が忙しいので、普通に食事して運動もしないで体重が減った、筋肉も増えたと喜んでいますが、そんなに簡単に健康食品で痩せるのでしょうか?」

痩せるかどうかは、体に取り入れるエネルギーと消費するエネルギーで決まります。ですので、これだけ飲んでいれば激的に痩せるというような話はありません。

抗肥満薬というのは今でも医薬品がありますが、基本的には気持ちが悪くなって食欲抑制剤として働くものが多いようです。

――他の消費者からのご質問です。「輸入もののダイエット食品は危険という情報を見たことがありますが、自然食品なので副作用までは心配無用でしょうか?」

輸入のものだから安全性に問題があるということはありません。

ただ、各国で規制も異なるため、本来は日本で輸入品として流通できない医薬品成分が個人輸入等で入ってくることもあります。その場合は未承認の医薬品を入手してしまうことになりますが、医薬品は作用が強いので注意が必要です。

厚生労働省のサイトにも、2022年6月にSNS等で購入したダイエット用健康食品を摂取した消費者から、ほてりや動悸などの有害事象報告があり、医薬品のシブトラミンが検出されたとありますが、シブトラミンの他にも比較的よく個人輸入による事例を見かける成分があります。

また、本人は個人輸入だと自覚しないで、個人輸入代行のサイトから未承認の医薬品を購入してしまっている例もあり、危険です。「自然食品」という言葉はいい響きではありますが、どんなものでも摂り過ぎると悪影響が出始めます。

「自然食品=悪影響がない」とは言いきれません。なお、図表2の通り医薬品の場合には運悪く副作用が出てしまって健康被害に遭った場合に国の救済制度がありますが、健康食品の場合には被害救済制度がありません。

【図表】医薬品の副作用救済制度
図版=『食の安全の落とし穴』より

■「好転反応」に気を付けるべき理由

――さらに別の消費者からのご質問です。「母親がサプリメントを摂り始めたら発疹が出たので、販売会社に電話で問い合わせをしたら「それはサプリメントが効いている証拠で、その体調不良はよくなる過程で起こる現象、いわゆる「好転反応」だ」と言われたそうです」

「好転反応」という医学用語、実はないのです。「効果のある証拠ですよ」と、まるで効果のことを示す言葉として「好転反応」を使用するのは明らかに間違った説明です。そのとき体調が悪くなっているわけですから、すぐ摂取をやめることが大切です。

――さらに別の質問ですが、血液をサラサラにする医薬品をお医者さんから処方されている患者さんが、安全で飲みやすい青汁があるからと一緒に摂っているそうです。一緒に飲んでも問題ないのでしょうか?

血液を固まらせるにはビタミンKが必要です。血液サラサラの薬は逆に血栓ができないように働くわけですが、青汁のようにビタミンKが多く入っていると、血液サラサラの薬であるワーファリン等の働きを弱くしてしまうので、飲み合わせという観点では悪い組み合わせになります。

青汁やクロレラや納豆もビタミンKを多く含んでおりますので、同様にワーファリンなどと一緒に飲むのは避けるべきですね。このあたりは、ぜひかかりつけのお医者さんや薬剤師さんにご相談ください。

■“がんに効く”は「個人の感想レベル」のエビデンスしかない

――がん患者のご家族からのご相談です。「父親が1年前に前立腺がんが見つかったのですが、病院で治療すると副作用で早死にするという本を読んでから、高額の健康食品にばかり頼っています。病院で治療を受けてほしいのですが……」

前立腺がんは罹患(りかん)する人も少なくないですが、それなりの治療法が病院では確立しています。手術したり、進行の遅い高齢者ではホルモン療法で過ごしているかたもいらっしゃいます。

民間療法は、きちんとしたエビデンスもあるわけではなく、知人に聞いてとか、雑誌等で読んでということで、民間療法に飛びつくのはたいへん危険です。まずは専門医に相談しましょう。

――健康食品で痛みを軽減したり、がんを治療したりすることが可能なのでしょうか? 芸能人のAさんがキノコの健康食品を飲んで、がんが消失したという話もあります。

民間療法は、個人の感想のレベルのエビデンスしかない場合がほとんどです。逆に病院での標準治療を受けなかったことで、早く亡くなってしまった芸能人の記事を見かけますが、教訓としましょう。我々の身体は免疫機能を備えているからこそ、風邪をひいても医薬品なしでも回復します。がんが偶然治ったサクセス・ストーリーは、そのかたの特別な状況だと理解しましょう。

がん細胞にターゲットを定めているイメージ写真
写真=iStock.com/wildpixel
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/wildpixel

■飲んで体調が優れなければ摂取をやめるべき

――最後のご質問です。「仕事がら不規則な食生活になるし、運動や睡眠の時間も十分とれません。健康食品により病気の予防につなげたいのですが、どうすればよいでしょうか?」

小島正美、山﨑毅『食の安全の落とし穴』(女子栄養大学出版部)
小島正美、山﨑毅『食の安全の落とし穴』(女子栄養大学出版部)

よーく気持ちはわかります。そして機能性表示食品等を活用していくことは悪いことではありません。機能性をうまく引き出せるような摂取方法、何を摂取していくのか、考えることもリテラシーの向上になりますし、信頼できる情報が掲載されているところで調べるのもいいでしょう。

紅麹サプリによる健康被害の問題を受けて、消費者庁では「機能性表示食品を巡る検討会」を立ち上げ、短時間にGMPと健康被害報告について今までより厳密なものになっていくと思われます。

利用する際には、機能性成分やその量を確認して、不安があればメーカーの問い合わせ先の記載があるので自分で聞いてみましょう。また、GMPマークがついているか、今服用している薬との飲み合わせはないか。また食品なのだから大丈夫と思わず、飲んでみて調子がすぐれないようであったらまずは摂取をやめることが鉄則でしょう。

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宗林 さおり(そうりん・さおり)
岐阜医療科学大学 薬学部教授
愛知県生まれ。1981年国民生活センター入所、2012年消費者庁消費者安全課長、2015年 独立行政法人国民生活センター理事。2021年10月より現職。専門はセルフメディケーション(食品から医薬品まで)。厚生労働省薬事審議会部会委員、消費者庁消費者事故調査委員会委員、機能性表示食品を巡る検討会座長代理。

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山﨑 毅(やまさき ・たけし)
NPO食の安全と安心を科学する会(SFSS)理事長
1960年広島市生まれ。83年東京大学農学部卒業、85年同大学院修了。同年湧永製薬入社、6年間米国にてサプリメントR&Dに従事。99年獣医学博士号取得(東京大学)。2011年NPO法人食の安全と安心を科学する会(SFSS)を創立、理事長に就任。

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小島 正美(こじま・まさみ)
食品安全情報ネットワーク共同代表
1951年愛知県犬山市生まれ。愛知県立大学卒業後、毎日新聞社入社。松本支局などを経て東京本社生活報道部に所属、食や健康・医療・環境問題を担当。2018年退職。食生活ジャーナリストの会(JFJ)前代表。現在、食品安全情報ネットワーク共同代表。主な著書は『フェイクを見抜く』(共著、ウェッジ)など多数。

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(岐阜医療科学大学 薬学部教授 宗林 さおり、NPO食の安全と安心を科学する会(SFSS)理事長 山﨑 毅、食品安全情報ネットワーク共同代表 小島 正美)

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