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「うちは貧乏だから」と気軽に言ってはいけない…子どもの金銭感覚を狂わせる「親のあぶない口癖」

プレジデントオンライン / 2024年8月2日 16時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Nadezhda1906

家庭で子どもに「お金の教育」をするにはどうすればいいか。金融教育家の上原千華子さんは「子どものお金の価値観は親からの影響を強く受ける。『うちにはお金がない』といったネガティブな言葉は、必要以上にケチケチするマネー習慣を植え付ける可能性があるので、オープンでポジティブな対話を心がけるのがおススメだ」という――。

■12歳までに脳は「完成」する

「お金は人を幸せにするもの」「お金は不幸のもと」人によってお金に対するイメージはさまざまです。「お金とは○○だ」といったお金の価値観は、どうやって作られるのでしょうか? まずは、一般的な価値観の形成プロセスを見ていきましょう。

子どもの脳は、幼少期に驚くべきスピードで発達します。スキャモンの発育曲線によると、6~9歳までに脳を含む神経回路の9割、12歳までに残りの1割が完成するといわれています。

この時期に形成されるのは、知識やスキルだけではありません。「非認知能力」と呼ばれる心の土台も大きく発達します。「非認知能力」とは、自己肯定感や自制心、協調性や共感力などの能力です。スポンジのように周りの出来事をグングン吸収していくため、両親や身近な人の行動が子どもに大きく影響を与えると考えられます。

【図表1】スキャモンの発育曲線
出典=上原千華子『「お金の不安」をやわらげる科学的な方法 ファイナンシャル・セラピー』(日本能率協会マネジメントセンター)より

■「ダメな子だ」という言葉が残す“傷”

社会学の観点からも見てみましょう。モリス・マッセイ(Morris Massey)博士の研究によると、人の価値観は21歳までに作られます。特に7歳までの影響が一番大きいといわれており、以下の3つの時期に分けて価値観が形成されます。

・刷り込み期(0~7歳)

7歳までは、親や家庭環境からの影響を非常に強く受けます。子どもは親の言動を通して見たこと、聞いたこと、感じたこと全てから、価値観や思い込みを作り上げていきます。プラスの体験なら、ポジティブな価値観が作られて自己肯定感が高まります。ネガティブな体験は要注意です。「ダメな子だ」と言われて育った子どもは、深刻なトラウマを抱えることになります。

・モデリング期(8~13歳)

小学2年生~中学1年生くらいになると、子どもは親以外の大人やメディアからも影響を受け始めます。これをモデリングといいます。友達や学校の先生、テレビやインターネットなどから情報を取り入れ、自分に合う価値観や立ち振る舞いを吸収していきます。同時に、あまり好きではない価値観も明確になってきます。

・社会化期(14~21歳)

中学2年生~21歳は、主に仲間から大きな影響を受けます。社会の一員としての自覚を持ち、自立への準備を進める時期でもあります。自分と似た価値観の人とつき合いながら、さまざまな価値観に触れていきます。

■冗談で「うちは貧乏だから」と言うリスク

お金の価値観も同様で、親からの影響を強く受けます。ネガティブな価値観は、子どもに経済的な不安を植え付け、お金のコンプレックスを生み出します。時には、進路やキャリア形成においても大きな障害となるでしょう。ここでは「うちは貧乏だから」という親の口癖を掘り下げて解説します。

家計の状況が苦しい場合は、思わず言ってしまうことでしょう。厄介なのは、さほど経済的に困っていないのに言ってしまう場合です。たとえば、過去に経済的に困窮した経験から「ない状態」に意識を向け続けます。

このような欠乏感に囚われていると、「お金に縁がない」といったネガティブな価値観が形成されていくのです。また、お金とセルフイメージを結びつけて、「どうせ私は貧乏人の子だから、この程度の職業・住環境・服装でいい」など、自分の価値を低く見積もったり、将来の可能性を限定したりすることがあります。

そして、お金を使うことに対して過度な罪悪感を抱き、必要以上にケチケチするマネー習慣が身についていきます。またセール品を見ると、「安いから買わなければいけない」という強迫観念にかられ、結果的に浪費してしまう人もいます。

■「お金=ネガティブ」と刷り込む口癖

「うちは貧乏だから」以外にも、気をつけたい口癖の例をご紹介します。

「お金があると不幸になるのよ」
口癖の背景:金銭感覚の違いで両親が不仲、離婚したなど
お金の価値観:お金は不幸のもと
マネー習慣:お金を持っていたくない


「お金、お金って恥ずかしいわ」
口癖の背景:お金は汚いものとして育てられたなど
お金の価値観:お金は諸悪の根元
マネー習慣:お金の話題を避けたがる

親自身がロールモデルとしてお手本を示すことが、最も効果的です。自分のお金の価値観を見直し、マネー習慣を整えることから始めましょう。

口癖はつい無意識に出てしまうもの。そもそもの考え方を改めなければ、根本的に直すのは難しいものです。そのためには、その癖はどこからきているのかを突き止めると、改善しやすくなります。

■両親の価値観が影響しているかもしれない

まず、「両親とお金との関係」を振り返って、自分がどのような影響を受けたのかを知ります。次に、お金に関してケチケチしすぎ、使いすぎ、こわがりすぎなど、大まかなお金ぐせの傾向を振り返ってみます。

そしてなぜその癖がついたのか、具体的なエピソードを思い出せると、より深くお金の価値観を見つめ直すことができます。

詳しくは、拙著『「お金の不安」をやわらげる科学的な方法 ファイナンシャル・セラピー』のお金のインタビューや価値観ワークを試してみてください。

例えば、「父はとても堅実で、お金を大切に使う」「母はお金を持つとハッピーになり、パッと使ってしまう」と答えた人は、自分も似たような価値観を持っていることに初めて気づくかもしれません。

あなたの両親とお金との関係は、どのようなものでしたか?
出典=上原千華子『「お金の不安」をやわらげる科学的な方法 ファイナンシャル・セラピー』(日本能率協会マネジメントセンター)より

■「家計は苦しいけど準備はしている」とアピール

次に、マネー習慣の整え方です。

難しく考える必要はありません。「使う、増やす、管理する」の3つのマネー習慣を整えるだけです。具体的には、必要なものとほしいものを明確にして、計画的にお金を使う、先取り貯蓄をする、家計簿アプリでお金の収支や借入をざっくり管理するだけで十分です。

親も人間。うっかりネガティブな口癖を言ってしまったり、お金のことで家族ともめたりすることもあるでしょう。その時は、子どもの前で失敗を修正するプロセスを見せることが大切です。特に13歳までの子どもの前では、意識して実践したいところです。

たとえば、「うちは貧乏だ」と言いつつ、実際にはお金の対策をしているとします。定期預金や保険、積立投資など、実は将来に向けてお金の準備をしていると伝えましょう。

私は幼少期に、たびたび母が「家計が苦しい」といっていました。一方、父は金額は見せないものの、家族全員分の定期預金通帳を見せていました。家計のやりくりは大変だけど、父がコツコツとお金を貯めている事実が、「必要なお金はちゃんとある」という思い込みを作ってくれました。

また、夫婦でお金をめぐるけんかをしたら、仲直りと再発防止策を決めるところまで見せましょう。子どもは、親の言動を無意識に刷り込んでいくことで、失敗からの修正をイメージしやすくなるでしょう。

■お金についてはオープンかつポジティブに話す

また、子どもに対してお金の話題をタブーにせず、オープンでポジティブな対話を心がけるとよいでしょう。

たとえば、銀行員だった私の父は、家族団らんの時間に、銀行預金の利率や預金の税制優遇の話をしていました。また、小学生の頃にお年玉を銀行に預けに行く経験もさせてくれました。今振り返ると、自分の金銭感覚やマネー習慣は、親とのコミュニケーションや貯金体験が元になっていると感じています。

お金の教育は、早ければ早いほどよいという訳ではありません。未就学児に現金を与えたら、お金に執着し過ぎて兄弟げんかになったり、お手伝いのたびに報酬を与えていたら、よい行いをすれば誰でもお金をくれると勘違いする子もいるようです。

母親が手に持っている貯金箱にお金を入れる女の子
写真=iStock.com/simon2579
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/simon2579

■8歳前後から「お金の教育」スタート

子どもへのお金の教育は、モデリング期に入る8歳前後からでよいでしょう。まずは、少額のお小遣いを与えて管理させます。いきなり自分で管理するのは難しいので、①買う目的をはっきりさせる、②必要なものとほしいものを区別する、③おこづかい帳をつけるなど、ステップを踏んで親がサポートするとよいですね。

次にお金を貯めるには、まず貯金をしてから残ったお金を使う「先取り貯蓄」の概念を身につけたいものです。

高度なお金の教育については、無理に家庭で行わなくても、専門家に任せればよいでしょう。というのも、子どもは小学校から高校まで学校でお金の教育を受ける機会があるからです。

一方、肝心の大人は、なかなか金融教育を受ける機会がありません。書籍やセミナーで勉強したり、FPなどの専門家に相談したりする方法もありますが、多くの人にとってはハードルが高いかもしれません。J-FLEC(金融経済教育推進機構)が4月に設立され、8月から本格始動します。大人も勤務先で気軽に金融教育を受ける機会が増えるとよいですね。

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上原 千華子(うえはら・ちかこ)
金融教育家
金融教育家。欧米投資銀行勤務歴17年、個人投資家歴26年。証券外務員一種、最新の心理学NLPを使ったマネークリニック®認定トレーナー。2018年、ウェルス・マインド・アプローチ創業。資産運用講座を実施し、2022年より「3ヶ月マネー実践講座」を提供開始。ライフプランから資産運用までマンツーマン指導。

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(金融教育家 上原 千華子)

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