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だから書類選考で落とされる…就活・転職で面接試験にたどり着けない人の残念な共通点

プレジデントオンライン / 2024年8月3日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

昇進試験や就活で受かる文章を書くには、どうすればいいのか。元NHKアナウンサーでウェブ小論文塾代表の今道琢也さんは「最も注意すべきは“問題文の意図”を正確に理解することだ。浅い理解で書き始めれば、ズレた解答になってしまう」という――。

※本稿は、今道琢也『人生で大損しない文章術』(新潮社)の一部を再編集したものです。

■文章を書く前に「読む」ことが重要なワケ

本書で扱う文章は、小論文やエントリーシート、履歴書、各種申請書などの、「実用文」を対象とします。これらの文章を書くときに最も気をつけなければいけないことは何でしょうか。

こう聞くと、「主語を明確にすることだ」「結論をはっきりさせることだ」といった答えが返ってきます。それも必要なことですが、もっと大事なことがあります。まず、次の文例を見てください。

【問】
業務におけるコミュニケーションの重要性について述べてください。
【解答】
私は日々の業務において、積極的にコミュニケーションをとるように心がけている。
例えば、仕事で発生したトラブルについてはすぐに上司に伝えるとともに、現場のメンバーとも情報を共有している。
また、日ごろから職場のスタッフに対して、何かあったらいつでも相談するように伝えているし、相談がなくとも気になるスタッフがいたらこちらから声をかけるようにしている。
このように、私は常にコミュニケーションをとりながら、業務を進めていくことを心がけている。

昇進試験で出てきそうな問いかけですが、この文章を読んでどのような印象を持ったでしょうか?

「私は」と主語は明確にできていますし、「私は常にコミュニケーションをとりながら、業務を進めていくことを心がけている」と、結論もはっきりしています。日本語表現としても的確で、自然な文章です。

しかし、私の目から見ると決定的におかしいところがあります。それは、「問題文をきちんと読んでいない」ということです。このことについて掘り下げて考えてみましょう。

■「重要性について述べよ」に答えられているか

問では、何を聞いているのでしょうか。「業務におけるコミュニケーションの重要性について述べてください」とあります。この意味をよく考えてみましょう。「業務におけるコミュニケーション」については、分かります。

例えば、仕事をする上で、報告を密にしたり、問題が起きたら相談したりすることです。それが、「業務におけるコミュニケーション」です。

では、その後に続く「重要性について述べてください」はどうでしょう。これは何を意味しているのでしょうか。いざ説明せよと言われたら、意外に難しいかもしれません。分かりやすくするために別の文例で考えてみましょう。

【問】
目標を持って生きることの重要性について述べてください。

この場合はどんな解答になるでしょう。ごく簡単な解答例を考えてみます。

【解答】
目標を持つと、意欲がわき、活き活きした人生を送ることができる。
つまり、目標があることで人生が豊かになるので、目標を持って生きることはとても重要なのだ。

こんな解答になるはずです。つまり、「重要性について述べる」とは、「それがどれほど重要なのかを説明する」ということです。

従って、「業務におけるコミュニケーションの重要性について述べてください」とは、「業務においてコミュニケーションをとることがどれほど重要なことなのか、それを説明してください」という意味です。

ノートを書く女性
写真=iStock.com/andresr
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/andresr

■「私がどうしているか」だけでは答えになっていない

では、初めの答案はそのような意味のことを書いているでしょうか。初めの答案に書かれていることは、「私はこのように業務でコミュニケーションをとっています」という、「私のコミュニケーションの実践」です。

「私はこのようにコミュニケーションをとっています」という点については分かりましたが、「業務においてコミュニケーションをとることがどれほど重要なことなのか」については何も言及がありません。その点が決定的におかしいのです。

問題の答えになっていない、言い換えると、問題文をよく読まないままに書いている答案なのです。

大抵の人は、初めに出題を見たときに「はいはい、業務上のコミュニケーションについて書けばいいのね」と、浅い理解のまま文章を書こうとします。その結果、先に見たような方向性のズレた答案になってしまうのです。

では、問題文を正確に理解した上で書くと、どのような答案になるのでしょうか。

【問】
業務におけるコミュニケーションの重要性について述べてください。
【解答】
業務を進める上で、コミュニケーションをとることはとても重要である。
なぜなら、業務は、職場の上司、同僚、部下、顧客、取引先など様々な人との関係で成り立っており、円滑に業務を進めるためにコミュニケーションは欠かせないからである。
例えば、トラブルが発生したときは、すぐに上司に伝えるとともに、現場のメンバーとも情報を共有することで、ダメージを最小限に抑えることができる。
また、日ごろから職場のスタッフに対して、何かあったらいつでも相談するように伝えたり、気になるスタッフがいたらこちらから声をかけたりすることで、スタッフが安心して働くことができる。
このように、コミュニケーションをとることは、業務上、極めて重要な意味を持っているのである。

少し書き方を変えただけですが、これならば、「業務においてコミュニケーションをとることがどれほど重要なことなのか」が書けています。

■具体例は“重要性”を説明するために使う

「重要性について述べる」とは、言い換えれば、「重要性の程度(高いor低い)」を答えるということです。二つ目の解答は「とても重要」「業務上、極めて重要」というように、「重要性の程度(高いor低い)」がはっきり書かれています。

また、初めと後の二つの解答では、業務上のコミュニケーションに関して、同じ例が挙げられていますが、書き方が違います。

【初めの解答】
仕事で発生したトラブルについてはすぐに上司に伝えるとともに、現場のメンバーとも情報を共有している
また、日ごろから職場のスタッフに対して、何かあったらいつでも相談するように伝えているし、相談がなくとも気になるスタッフがいたらこちらから声をかけるようにしている。
このように、私は常にコミュニケーションをとりながら、業務を進めていくことを心がけている

初めの解答は、「私はこういうことをやっています」という、実行例を挙げたに過ぎません。後の答案は、具体例の取り上げ方が違います。

【後の解答】
トラブルが発生したときは、すぐに上司に伝えるとともに、現場のメンバーとも情報を共有することで、ダメージを最小限に抑えることができる
また、日ごろから職場のスタッフに対して、何かあったらいつでも相談するように伝えたり、気になるスタッフがいたらこちらから声をかけたりすることで、スタッフが安心して働くことができる
このように、コミュニケーションをとることは、業務上、極めて重要な意味を持っているのである。

ここでの具体例は、「コミュニケーションをとることで、トラブルのダメージを最小限に抑えることができるし、スタッフが安心して働くことができる。だからコミュニケーションをとることは、業務上、極めて重要なのだ」というように、「コミュニケーションをとることがどれほど重要なことなのか」を説明するために挙げられています。

これならば、答案全体が「業務におけるコミュニケーションの重要性について述べてください」という問いかけの答えになっています。

■“問いかけに答えていない”小論文やエントリーシートは通らない

小論文にしてもエントリーシートにしても、あるいは、履歴書や各種申請書にしても、「……について述べよ」「……を記しなさい」といった指示があります。先方は「このことを聞きたい」という意図を持って問いかけているのです。

先方が「聞きたいこと」と、書かれている内容が違っていれば、「そんなことは聞いていないのに」という反応になります。実際、大手メーカーの人から聞いたことですが、「大学生から送られてくるエントリーシートを読むと、聞かれていることと違うことを書いている人が多い」のだそうです。

そうなると当然のことながら印象はよくないですし、本来伝えるべき自分の思いが伝えられません。中には「問いかけ」からそれていることを書いていても、中身がとても良かったので、先方の目に留まった、というケースもあるにはあるでしょう。

ただ、それはまれなことでしょうし、そのために、問からそれたことを書くのはリスクが高い行為です。わざわざそういうことを狙う必要はないでしょう。

特に、大学入試や公務員・教員試験は、公的な試験です。公平性が重視されますから、「聞いていることと書いていることは全然違うけれど、面白いことを書いているから合格させよう」という恣意的な採点はできません。

書いていることが出題の趣旨からそれていれば、減点になります。採点基準として、「出題の趣旨を理解できているか」ということが明示されている場合もあります。ですから、出題に沿って書くことが基本です。

このように、文章を書く上では、問題文をよく読み、内容を正確に理解するということがとても重要なのです。

履歴書
写真=iStock.com/laymul
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/laymul

■“問題文の理解”こそが文章作成のカギである

私は、これまでに何千人もの文章指導を行ってきましたが、そのうちの半数以上が、「問題文をよく読まずに書いた答案」です。毎日毎日「問題文をよく読まずに書いた答案」が届きます。

ある人に、「この答案は問題文をよく読まずに書いていますから、しっかりその意味を考えて答案を書いてください」と指導しても、別の人から届いた答案は、また、「問題文をよく読まずに書いた答案」です。その人に同じような指導をしても、また「問題文をよく読まずに書いた答案」が届く……という具合です。

中には驚くようなことを言う人もいます。答案だけ送ってきて「この答案を採点、添削してほしい」というのです。

「問題文がついていませんが、どこにあるのですか?」と聞くと、「どういう問題が出るかは本番にならないと分からないが、この答案を出すつもりなので指導してほしい」と言います。

思わず耳を疑ってしまうのですが、私が「いえいえ、順番が逆で、問題文を読んでそれに沿って答案を書くのですよ。問題文がなければ採点も指導もできませんよ」とお伝えしても、すぐには理解してもらえません。

そこで、私はこうお話しします。「例えば数学の場合、X=10という答えだけ持ってきて、『これでいいか採点、指導してください』と言われてもできないでしょう? 問題文がなければ何もできないはずです。

それと同じで、小論文も問題を見た上で、はじめてどうすれば良いか指導ができるのですよ」と説明して、「ああ、そういうことだったんですか」と、やっと分かってもらえます。こういうことも、決して珍しい話ではないのです。

■文章を書く「テクニック」より大事なこと

このような状況が明らかになるにつれ、私は、「問題文の意味を正確に理解する」ということが、文章指導の核であると考えるようになりました。すでに述べたように、それができていない人があまりにも多いからです。

そして、問題で聞かれていることからそれた答案は、決定的に評価が下がるからです。他のなによりも、この点を解決しなければ、いい文章を書けるようにはなれません。

世の中にある文章術の本を見ると、多くは「文章の型を覚えたらすぐ書ける」「結論を先に書くことがポイント」といったように、「書くこと」ばかりに注意を向けています。

しかし、私は、まずは「読むこと」から始めなければいけないと考えています。問題をよく読んでその趣旨を正確につかまなければ、どんなに文章の型を整えても、結論を先に書いても、「聞かれていることと違う見当外れの答案」であるという状態は変わらないからです。

今道琢也『人生で大損しない文章術』(新潮社)
今道琢也『人生で大損しない文章術』(新潮社)

従って、私が文章の指導を行う際には、「問題文を正確に理解できていないまま書いていたら、いつまでたっても合格できません。問題文の意味を理解することを心がけてください」と指導することから始めます。

そうすると、サッと要領をつかんで、すぐにできるようになり、「合格しました」という連絡をくれる人もいます。

一方で、5回、6回と指導してもなかなか身につかない人もいます。もちろん、「問題を読む」こと以外のさまざまな指導も行うのですが、「問題をよく読む」ことをクリアしなければ、評価を下げている根本原因が解決しません。

高評価を得られる文章を書くためには、この点が最大の鍵であることは間違いありませんので、私は徹底してこの点を指導しています。

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今道 琢也(いまみち・たくや)
「ウェブ小論文塾」代表
1999年京都大学文学部卒(国語国文学専修)、NHK入局。アナウンサーとして15年間勤務後独立し、文章指導専門塾「ウェブ小論文塾」を開講。『落とされない小論文』など著書多数。

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(「ウェブ小論文塾」代表 今道 琢也)

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