「プレゼンがうまい人」は必ず使っている…『1分で話せ』著者が愛用する、聴き手をうならせる"3文字の言葉"
プレジデントオンライン / 2024年8月7日 10時15分
※本稿は、YouTubeチャンネル「Bring.」の動画「『1分で話せ』の著者とプレゼンの神が明かす、「思い」の伝え方。結論・根拠・例えの3点セットで人を動かせ」の内容を再編集したものです。
■「スムーズに話すこと」はそこまで重要ではない
【澤円】僕は世間からプレゼンの専門家だと見られていますし、(伊藤)羊一さんも著書『1分で話せ』(SBクリエイティブ)がベストセラーになったこともあって、お互いに「話し方」についてよく相談を受けますよね。
【伊藤羊一】それらの人は、「うまく話す」ということに縛られているように感じています。「うまく話すにはどうすればいいですか?」と相談されるたび、僕は「その『うまく話す』ってどういうこと?」と相手に訊ねるのです。その答えが「『あー』とか『えー』とかいわずに、スムーズに話すこと」ならば、「そこはあまり重要ではないよ」と伝えます。
プレゼンでも商談でも、ビジネスにおいて話すことの目的はどこにあるのか? それは、こちらが目指すゴールに相手をいざなうことですよね。それさえできるのなら、「立て板に水」で話す必要などありません。そこだけは見失わないようにしてほしい。
【澤円】結局のところ、よどみなく話すというのはあくまで手段のひとつに過ぎません。そうできることを否定する必要はないけれど、最終的に相手を動かすことができなければ意味がありません。
■プレゼン前にオーディエンスと会話する
【伊藤羊一】だから僕の場合、話すこと以外にもできることはすべてやります。それこそプレゼンに慣れていなかった頃は、講演会場に早めに行ってオーディエンスに話しかけていたほどです。そうした雑談によってオーディエンスをほぐしておくことで、プレゼン後の拍手も増えていきました。
【澤円】それは確かに有効な方法だと思います。雑談によって心理的な距離を縮めておけば、オーディエンスの参加者意識も満足度も高まりますからね。
【伊藤羊一】プレゼンというと、プレゼンターとオーディエンスのあいだで空間がわかれているように捉えられがちですが、そんなことはありません。「プレゼンターである僕がひとまず話題を提供しますから、それを笑うでも首をかしげるでも質問をするでもいいので一緒にやりましょう」という意識を僕は持っています。
■話すことに必要な3要素
【澤円】表面的な話し方のスキルを磨いてどうこうなるものではないということを前提として、あえて話し方というものにフォーカスをあてるなら、やはり羊一さんは「1分で話す」のですよね(笑)?
【伊藤羊一】あの本を出してからもうネタのようになっていますけど(笑)、なぜ僕が「1分で話せ」といっているかの真意をあらためてお伝えします。話すということにおいて必要なものは、大きく3つだと僕は考えます。
それは、「結論」と「根拠」、さらに根拠を説明する「例えば」です。そのなかの根拠が3つくらいあると仮定すると、簡潔にまとめて全体で1分くらいになるだろうということから、「1分で話せ」といっているのです。
そもそも結論をいわないとなにもはじまりませんし、話すことにおいて結論は不可欠なものです。そして、なぜその結論に至ったのかという根拠も必要ですよね?
「Aというキャンペーンをやりましょう」が結論だとしたら、根拠は「売上が上がる」「ほとんどコストがかからない」「なにより会社の未来につながる」といったようなことです。根拠を示さなければ、ただ自分の意見を押しつけようとするわがままな人間だと自己紹介をしているようなものです。加えて、根拠をより具体的に説明する「例えば」があれば意見の説得力が増します。
■プレゼンは「音楽コンサート」のようなもの
【澤円】そのような、いわば「型」があると、先のお話にあったゴールを見失わないことにも通じますが、「なんのために話しているのか」ということに対して自分自身も納得しやすいですよね。
【伊藤羊一】澤さんも、そういったなんらかの型を持っているのですか?
【澤円】プレゼンに関してミクロな話でいうと、「1スライド1メッセージ」ということは徹底しています。なぜなら、それ以上の情報量を詰め込むとオーディエンスが混乱してしまうからです。「このスライドはなんのためにあるのか」ということが、相手にすぐわかる状態にしておくわけです。
【伊藤羊一】マクロの視点から、全体のストーリーをつくる際に意識していることはありますか? 僕の場合だと、「最初はこうやって盛り上げる」「ここでこうやって落とす」「最終的にドーンといく」というように、音楽のコンサートをつくっているような感覚で本能的につくっています。
【澤円】僕も近い感覚ですね。僕の場合は、プレゼン資料をつくっている最中がリハーサルであり、同時にプレゼンテーションが既にはじまっているという感覚です。つくりながら、「こうやって話そう」とやっていると、つながりが悪くて引っ掛かりを感じることもあります。引っ掛かりを感じたらそこにブリッジになるような要素を入れるといった感じで、つねに本番を意識しています。
■場数をこなし続ければ緊張はしなくなる
【澤円】話すことに関する悩みとして、「緊張する」というものもあります。羊一さんは話すときに緊張しますか?
【伊藤羊一】以前は緊張しましたね。緊張したし、うまくしゃべれなかったし、頭が真っ白になるということもありました。緊張しなくなるための秘訣は、こういうと身もふたもないかもしれませんが、「場数をこなす」「練習をする」ということに尽きます。
僕がはじめて孫正義さんにプレゼンしたときは、「世界の孫さんにプレゼンをするのだから」と事前に300回くらい練習をしました。そのあいだに、妙な感覚を掴んだのです。口が勝手に動いて、自分自身は幽体離脱して自分をコントロールしているかのような感覚です。いわば自分を俯瞰しているような感覚で、それを掴んでからはプレゼンで緊張することはなくなりました。
【澤円】場数を踏むことは大切ですが、注意したほうがいい部分もあります。それは、よくないやり方で100回こなすと、100回分下手になるということ。そういう事態を防ぐためにも、それこそ羊一さんが掴んだ感覚のような、俯瞰して自分を見るメタ認知が大切になります。「このやり方は間違っていないか?」と、自らをつねにチェックするのです。
ただ、僕の場合、幸いにしてメタ認知せざるを得ないことが多いのです。メディア出演なども多いため、自分の出演動画のレビューも必要です。嫌でもその動画を観なければいけないわけで、そうするなかで「次はこうしてみよう」というようにアップグレードすることができます。僕は話すことが専門職なのでそういった機会を得ることができますが、そうでない人はかなり意識的にメタ認知することが求められます。
■会議は常に「主人公」の意識で
【澤円】プレゼンのように事前準備ができるケースならまだいいのですが、会議ではいきなり話を振られたり意見を求められたりすることもあります。会議の場で意識していることはありますか?
【伊藤羊一】会議などの場できちんと話せるようになるには、しっかりと会議に参加する必要があります。ぼーっとしていては、急に意見を求められたようなときに対応できるはずがありません。たとえ発言していないときでも、「会議の主人公」の意識を持って参加するのです。
■普段の生活でも「プレゼンの練習」を意識する
【伊藤羊一】僕の場合、会議中の会話を聴きながら、「この人の意見は自分とは逆かもしれない」「自分ならこう答える」「その意見よくいってくれた!」というように、自分の頭のなかで話し続けています。そうしていれば、いつ話を振られても瞬時に対応できます。
【澤円】その考えには大賛成ですね。最近、海外の大きなイベントに、何千人というオーディエンスのなかのひとりとして参加しました。そして、壇上にいるスピーカーの質疑応答を、僕も頭のなかで仮想的に代行していたのです。「英語でどう話そうか?」とずっと考えていたわけです。
【伊藤羊一】しかも、そういったことは仕事の場でなくてもできますよね。
【澤円】本当にそのとおりで、僕なんてどこでもプレゼンの練習をしています。例えばコンビニエンスストアのレジでだって、「レジ担当の人に、気分よくその後の仕事に戻ってもらうにはどのような接し方ができるか?」と考えてレジに並ぶのだって、プレゼンを含むコミュニケーションの練習になります。
【伊藤羊一】ずっと仕事ばかりしているという意識などなく、生活のなかにプレゼンの練習などのワークを乗せていく感覚ですよね。
【澤円】つねに本番モードでいるのだけれど、それが日常生活のなかに組み込まれているためその本番モードも心理的に楽になっていきます。本番モードがふつうの状態になるのですから、話すことに限らず、仕事をうまく進められることにもつながるでしょう。
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Zアカデミア学長
1967年生まれ、東京都出身。東京大学経済学部卒業。武蔵野大学アントレプレナーシップ学部学部長、LINEヤフー株式会社LINEヤフーアカデミア学長。グロービス・オリジナル・MBA プログラム(GDBA)修了。1990年に日本興業銀行入社。2003年、プラス株式会社に転じ、事業部門であるジョインテックスカンパニーにてロジスティクス再編、事業再編などを担当し、2011年より執行役員マーケティング本部長、2012年より同ヴァイスプレジデントとして事業全般を統括する。2015年にヤフー株式会社(現LINEヤフー株式会社)に転じ、現在はLINEヤフーアカデミア学長としてLINEヤフー株式会社全体の次世代リーダー開発を行う。2021年4月に武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(武蔵野EMC)の学部長に就任。主な著書に、60万部超のベストセラー『1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』(SB クリエイティブ)、『「僕たちのチーム」のつくりかた メンバーの強みを活かしきるリーダーシップ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『FREE, FLAT, FUN これからの僕たちに必要なマインド』(KADOKAWA)などがある。
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圓窓 代表取締役
1969年生まれ、千葉県出身。株式会社圓窓代表取締役。立教大学経済学部卒業後、生命保険会社のIT子会社を経て、1997年にマイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に入社。情報コンサルタント、プリセールスSE、競合対策専門営業チームマネージャー、クラウドプラットフォーム営業本部長などを歴任し、2011年にマイクロソフトテクノロジーセンター長に就任。業務執行役員を経て、2020年に退社。2006年には、世界中のマイクロソフト社員のなかで卓越した社員にのみビル・ゲイツ氏が授与する「Chairman's Award」を受賞した。現在は、自身の法人の代表を務めながら、琉球大学客員教授、武蔵野大学専任教員の他にも、スタートアップ企業の顧問やNPOのメンター、またはセミナー・講演活動を行うなど幅広く活躍中。2020年3月より、日立製作所の「Lumada Innovation Evangelist」としての活動も開始。主な著書に『メタ思考』(大和書房)、『「やめる」という選択』(日経BP)、『「疑う」からはじめる。』(アスコム)、『個人力』(プレジデント社)、『メタ思考 「頭のいい人」の思考法を身につける』(大和書房)などがある。
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(Zアカデミア学長 伊藤 羊一、圓窓 代表取締役 澤 円 構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム) 文=清家茂樹 写真=石塚雅人)
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