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クルマがすれ違えない「酷道」「険道」を案内してしまう…優秀な地図アプリ「Googleマップ」の最短ルートに潜む罠

プレジデントオンライン / 2024年8月9日 8時15分

「Googleマップ」で目的地を検索。充電スポットをはじめ、行きたい場所が即座に探し出せるのが大きな魅力 - 筆者撮影

Googleマップをカーナビとして利用する人が増えている。モータージャーナリストでカーライフアドバイザーの会田肇さんは「欧米生まれのGoogleマップは日本の道路事情に合わせて設計されていない。すれ違うことのできない細い道を案内したり、複雑な交差点では案内がわかりづらいこともあるので、初心者ドライバーは注意すべきだ」という――。

■群を抜く精度・知名度を誇るGoogleマップ

「スマートフォンでカーナビ用アプリは何を使う?」と聞かれて、多くの人が真っ先に挙げるのが「Googleマップ」だろう。Googleマップはそれほど認知率が高く、iPhone/Android端末を問わず使っている人が多いのだ。しかし、Googleマップを使ってみると思いがけないシーンに遭遇して、それに戸惑いを感じた人も少なくないはず。

そこでGoogleマップの使い勝手を改めて検証し、新たなGoogleマップの使いこなし方を提案してみたい。

GoogleマップはGoogleが提供する、カーナビとしても使用できる地図アプリである。2005年2月にβ版が公開され、同年7月には日本語版の提供を開始した。地図データは、当初はゼンリンから提供を受けていたが、2019年3月にはGoogle独自のデータに差し替えられて現在に至っている。

もともとGoogleは単なる地図だけでなく、360度で周辺を再現する「ストリートビュー」を日本全国で実現するために、そのロケーションを取得する“Googleカー”を走らせていた。これによって提供される地図は、航空(あるいは衛星)写真やストリートマップなど多彩な地図表示機能をサポートするなど、その充実ぶりは多くの地図アプリの中でも群を抜く存在となっている。

Googleマップにはこの多彩な地図表現力を活用して目的地までのルートを案内するカーナビ機能が備えられ、ここには独自に収集した交通情報も反映。ルート上に発生した渋滞にもリアルタイムで対応して回避する。また、交差点ごとの車線ガイドや交差点名の読み上げも行うなど、ルートガイドの基本機能はほぼ網羅されていると言っていいだろう。

■音声入力対応、トンネル内でも使用可能

Googleマップの優れた能力は、目的地の検索能力でも発揮される。施設名や住所、電話番号といった単純なキーワードに対応するだけでなく、「お腹減った」「この辺に○○ない?」といった、利用者が思いついたキーワードにも機敏に対応するのだ。しかも、目的地が店舗で営業時間が終了間際だったりすれば「間もなく営業時間終了時刻です」と、教えてくれたりもする。

Googleマップで“名物店”を探したが、そこには閉業していることが反映されている
Googleマップより
Googleマップで“名物店”を探したが、そこには閉業していることが反映されている - Googleマップより

加えて、この検索はキーワードの手入力だけでなく、音声入力にも対応している。そのため、たとえ運転中でもあっても簡単に設定することが可能。近くのガソリンスタンドやコンビニを探す時や、急にトイレに行きたくなった時でも大いに力を発揮するのだ。

そして、見逃せないのが、Googleマップはトンネルなどに入ってGPS信号をロストした状態でも自車位置を正確に反映できることだ。

トンネル内に分岐点がある首都高速・中央環状線「三宅坂JCT」で、案内ルートに逆らって別ルートに進むと、GPS信号をロストしている状態でも自車位置を切り替えた
Googleマップより
トンネル内に分岐点がある首都高速・都心環状線「三宅坂JCT」で、案内ルートに逆らって別ルートに進むと、GPS信号をロストしている状態でも自車位置を切り替えた - Googleマップより

一般的にスマートフォンで使うカーナビ用アプリは測位をGPS信号に頼っており、それ故、トンネルなどの電波の届かないところに入ると測位を停止してしまうか、あるいは動いていたとしてもトンネルに入った時の速度を基に推測走行しているだけとなる。ところがGoogleマップはトンネル内で分岐があっても、クルマの動きにきちんと追従して、正しいルートガイドを示すことができるのだ。

■他のナビアプリはトンネル内ではうまく機能しない

これはトンネル内に分岐点がある数少ない場所として知られる、首都高速の都心環状線「三宅坂JCT」での検証結果で判明した。この場所で、カーナビ用アプリの測位能力を検証するために、案内ルートとは別の方向へあえてクルマを走らせてみると、「Appleマップ」「Yahoo!カーナビ」「COCCHi(コッチ)」「moviLink(モビリンク)」は、いずれもこの動きに追従することはできなかったが、Googleマップだけが追従することができたのだ。

あくまで推測だが、これはGoogleマップがスマートフォン内のジャイロセンサーを活用できているからと思われる。アプリ側がスマホ内の機能を使うにはいろいろ制限があるとされるが、Googleマップはこれが実現できているとしか考えられない。いずれにしろ、この実現によって車載ナビに比べて見劣りしていたカーナビ用アプリの測位能力向上につながっていく可能性が出てきたと言えるのかもしれない。

■Googleマップの弱点

ここまでGoogleマップの優れた点を検証してきたが、一方で泣き所があるのも確かだ。それはカーナビとしてのルート案内機能にある。

その筆頭に挙げられるのが、Googleマップはすれ違うことが難しいような狭い道を案内することが少なくないことだ。そのため、対向車に遭遇するとどちらかが後退せざるを得ない状況もしばしば。ルートを確認してみると、周辺に広い道があるにもかかわらず、無理なショートカットをして案内していることがわかる。特に道幅情報が含まれていたゼンリンの地図データを使わなくなってから、この傾向が強くなった印象を受ける。

筆者の経験でも、中央高速上り線の双葉SAにあるスマートICを目指して国道20号線を走行中、それと並行する県道6号線に突然案内された。案内に従って県道6号線を進んでいくと、今度は旧甲州街道へと案内されてそのまま狭い道をクネクネと通って目的地へとたどり着いた。

あまりに面倒なルートだったので、双葉SAで通ってきたルートを確認してみると、スマートICへは少し遠回りになるものの、狭い道を通らずとも国道20号線から県道6号線を経由するルートで対応できることを発見。他のアプリで同じルートを探索させると、まさにこのルートを案内しているではないか。Googleマップでは、できるだけ最短距離で目的地へ誘導する傾向が強く、それがこの結果を生んでしまったと考えられる。

■施設の反対側で案内を終えてしまう

また、Googleマップは各施設の入口情報が含まれていないようで、これが要因で施設の入口の反対側で案内を終えてしまうことがある。そのため、案内を終了した地点から改めて入口を探すことが必要となるのだ。

東京・六本木にある「東京アメリカンクラブ」へ向かった時、目的地を検索して正しく設定しているにもかかわらず、狸穴坂(まみあなざか)側にあるスタッフ通用口へと案内された。駐車場がある正面玄関を確認して進もうとすると、あいにく狸穴坂は一方通行で、一旦国道1号線へ出てグルッと回り込んで正面玄関へとアプローチするハメに陥った。これは「東京アメリカンクラブ」の入口情報がないために、施設に最も近い道路として狸穴坂側を案内したと考えられる。

最近は大規模施設なら、敷地内までルート案内の対象とすることでこれを防げるようになってきたが、これは一部の施設に限られる。

■Googleマップは欧米の道路に合わせて設計されている

そしてGoogleマップでルート案内を受けていると、曲がるべき交差点で進むべき方向が把握しにくいことに気付く。これは、そもそも欧米と日本とで道路の仕組みが異なることに起因する。

言うまでもなくGoogleマップは欧米で生まれた地図アプリだ。それだけにその機能は欧米の道路の仕組みに基づいて設計されている。たとえば欧米ではすべての通りに名称が付与されているため、交差点では進むべき通り名を案内することが何よりも優先される。

それに対し、日本は通り名が付与される道路は少ないから、交差点での目印となる周辺情報がより重要となる。GoogleマップやAppleマップが、日本のカーナビで搭載されていることが多い交差点拡大図を非搭載としているのは、ここに理由があったのだ。

Googleマップで一般道でのルート案内。車線ガイドはあるが、交差点拡大図がないため、状況把握はしにくい
Googleマップより
Googleマップで一般道でのルート案内。車線ガイドはあるが、交差点拡大図がないため、状況把握はしにくい - Googleマップより

もちろん、Googleマップでも車線ガイドや交差点名の案内は行われるし、それに従って周囲の道路状況を確認しながら進むことはできる。しかし、少し複雑な交差点となれば、この案内では不安は尽きない。それなら日本で生まれた他のカーナビ用アプリを使うべきなのかとも思うが、残念なことにGoogleマップほどの優れた検索機能を備えたカーナビ用アプリは存在しないのが実情だ。

Googleマップでなければ探せないスポットは、「この場所を共有」で他のアプリへ転送できる
Googleマップより
Googleマップでなければ探せないスポットは、「この場所を共有」で他のアプリへ転送できる - Googleマップより

そこでオススメしたいのが、Googleマップで検索した目的地の座標を、案内機能に優れたカーナビ用アプリに転送して使う、いわば“合わせ技”である。

■アプリの「合わせ技」で弱点を補う

すべてのアプリがこれに対応しているわけではないが、これに対応しているアプリの一例としては、トヨタが自社のカーナビ技術をベースに開発した「moviLink」と、パイオニアの「COCCHi」がある。

moviLinkはトヨタ車ユーザーでなくても。誰でも無料で使えるというのがポイント。交差点拡大図はすべて表示されるわけではないが、複雑とされる交差点ではCGイラストを使って進行方向を案内する。地図は3D表示で建物を立体的に表現することができ、主要なランドマークは3Dアイコンとして地図上に描かれる。交通情報はVICSと自社プローブで収集したデータが反映され、渋滞回避ももちろん行われる。

トヨタ「moviLink」をVW・ID.4のインフォテイメントシステムで展開。複雑な交差点ではこのCGで周辺を案内する
筆者撮影
トヨタ「moviLink」をVW・ID.4のインフォテイメントシステムで展開。複雑な交差点ではこのCGで周辺を案内する - 筆者撮影
「moviLink」のスマホ単独で高速道路をルート案内中。高速道路上に施設案内がリスト表示されている
moviLinkより
「moviLink」のスマホ単独で高速道路をルート案内中。高速道路上に施設案内がリスト表示されている - moviLinkより
「moviLink」のスマホ単独で一般道をルート案内中。スマホでは分岐点ごとの進行方向がリスト化して案内される
moviLinkより
「moviLink」のスマホ単独で一般道をルート案内中。スマホでは分岐点ごとの進行方向がリスト化して案内される - moviLinkより

ディスプレイオーディオとの連携も可能だが、スマホで使っている時に表示される交差点リストは表示されなくなる。それでもわかりやすい音声案内は使っていて心地いい。

■「いいとこ取り」で快適なドライブを

COCCHiは有料版と無料版があるが、無料版でもルート案内機能は使え、交通情報もパイオニアが提供する自社プローブ情報が反映される。スマホ上で使うだけなら、無料版で使い始めるのもいいだろう。一方の有料版では、音声案内がより聞きやすい高品質なものになり、駐車場の満空情報やオービス情報がプラスされるほか、交通情報はVICS情報も加えられてより高精度な渋滞回避が可能となる。

パイオニア「COCCHi」を、新型プリウスのインフォテイメントシステム上で展開。スマホとの併用でツインビューが実現できる
筆者撮影
パイオニア「COCCHi」を、新型プリウスのインフォテイメントシステム上で展開。スマホとの併用でツインビューが実現できる - 筆者撮影
パイオニア「COCCHi」は政令指定都市の一部交差点で、このようなリアルなCGを使って進行方向を誘導できる
筆者撮影
パイオニア「COCCHi」は政令指定都市の一部交差点で、このようなリアルなCGを使って進行方向を誘導できる - 筆者撮影

ディスプレイオーディオには有料版のみが対応。この時はディスプレイオーディオ側で地図を表示しながら、スマホ側で分岐点リストを同時表示する“ツインディスプレイ”として活用することもできる。

基本的にGoogleマップの能力はハイレベルであることは疑いがない事実だ。しかし、欧米で生まれたマップだけに、ルート案内となれば日本で生まれたカーナビにはわかりやすさで及ばない。ぜひ、両者のいいとこ取りをして、この夏のドライブでカーナビ用アプリを使い倒してほしいと思う。

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会田 肇(あいだ・はじめ)
モータージャーナリスト
1956年茨城県生まれ。明治大学政経学部卒。自動車雑誌編集者として勤務後、1987年よりフリージャーナリストへ転身。カーナビなどカーAV機器のレポートを行う一方で、自動運転やEVなど新エネルギー車を含む最先端のITS(Intelligent Transport Systems) についての取材も行う。趣味は好きな音楽を聴きながらドライブすること。これがクルマからカーオーディオ、カーナビ、ひいてはITSにまで関心を寄せる礎となった。

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(モータージャーナリスト 会田 肇)

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