「土下座して謝れ」と怒鳴る人は"お客"ではない…悪質クレーマーを一瞬で黙らす「店員のひとこと」
プレジデントオンライン / 2024年8月10日 16時15分
■坂本龍馬から学ぶ「ズルイ解決策」
坂本龍馬がつくった日本初の貿易会社「海援隊」。その持ち船である「いろは丸」は、1867年(慶応3年)4月23日に紀州藩の軍船「明光丸」と衝突事故を起こします。
幸い、龍馬を含む海援隊員は明光丸に乗り移り無事でしたが、いろは丸は沈没してしまい、海援隊は存続の危機に陥ります。
このとき、事故の補償の交渉を有利に進めるために、龍馬はどんな手を使ったでしょう?
答え
紀州藩の人間が知らない国際法「萬国公法」を持ち出して交渉した。
このとき龍馬たちが使っていた「いろは丸」は、実は大洲(おおず)藩(現在の愛媛県にあった藩)から有料で借りていた船でした。
積み荷だけでなく、借り物の船まで沈んでしまい、紀州藩から賠償金をもらわなければ海援隊はおしまいという切羽詰まった状況だったのです。
■分が悪い交渉、しかも相手は徳川御三家
しかも、この衝突事故。どちらかといえば、非があるのは、いろは丸のほうでした。
当時の国際法では、船同士がぶつかる危険が生じたときは、お互いに右に舵を切るのが決まりでしたが、いろは丸は左に舵を切っていたのです。
どう考えても不利な状況。しかも、交渉の相手は徳川御三家の1つである紀州藩です。下手をすると、賠償金をもらえないどころか、賠償金を取られかねません。
この危機を乗り切ったのが、龍馬の奇策でした。
龍馬は、まだ日本に入ってきたばかりで、知る人も少なかった国際法「萬国公法」を持ち出して、交渉にあたったのです。自分たちはよく知っているが、相手はまったくわかっていない国際法という、言わば紀州藩のアキレス腱をつく作戦。
面食らったのは紀州藩です。
■水増しした高額賠償金を支払わせることに成功
はじめは御三家の威光で龍馬側の賠償金の要求を無視していましたが、国際法を持ち出され、それを盾に一歩も引かない龍馬に根負けします。
結局、龍馬へ約8万3000両(現在の価値に換算すると約25億~42億円)もの賠償金を支払うことで決着がついたのでした。
賭けに出た龍馬の勝利。しかし、それだけではありませんでした。
このとき龍馬は、「沈んだいろは丸には、これだけの鉄砲や金塊を積んでいた」と細かな明細を提出しましたが、2006年に行なわれたいろは丸の沈没場所の調査では、龍馬が主張した鉄砲や金塊などはいっさい発見されませんでした。
どうやら龍馬さん、被害額をかなり水増ししていたらしい。
この交渉術、ズルイと言えばそれまでです。
しかし、弱小の中小企業が、徳川御三家という大組織を相手にして、その弱みをつくことで手玉に取ったと考えると、むしろ痛快さを感じてしまいます。
■短刀より、ピストルより、『萬国公法』
これも坂本龍馬の有名なエピソードです。
自分の長い刀を自慢する旧友に、「そんなものは実戦では役に立たない、だんぜん短刀だぜよ」と龍馬。
次に会ったとき、旧友が短刀を見せると、「これからはピストルの時代ぜよ」と龍馬。
次に会ったとき、旧友がピストルを見せると、龍馬は「武器よりも学問。これからはこれぜよ」と言って法律の本を見せた。
このエピソードは実話ではなく、のちの創作であるというのが通説ですが、このときに龍馬が見せる法律の本というのが、いろは丸事件で効力を発揮した『萬国公法』です。
龍馬がこの本を持っていたことから生まれたエピソードなのかもしれません。
「大人の喧嘩」の武器は「相手が知らないもの」
■自転車の無断駐輪をやめさせた貼り紙2選
次の2つは、自転車の無断駐輪をやめさせるために、土地の持ち主が掲示した貼り紙の文言です。どちらも貼り出した途端、無断駐輪が激減した、効果バツグンだったものとなります。
○のなかにはどんな文字が入るでしょう?
【貼り紙1】『店の前に自転車を置かないでください。○○○○○○しりません』
【貼り紙2】『○○○○○置き場』
■無作法者に悩む人が真似すべき「名コピー」
【貼り紙1】『店の前に自転車を置かないでください。どうなってもしりません』
【貼り紙2】『廃棄自転車置き場』
貼り紙1は、大阪にある某店舗のシャッターに掲示されたもの。こんな貼り紙が掲示されていたら、たとえ止めておいた自転車をスクラップにされても文句を言えません。
貼り紙2は、ネットなどで話題になったもので、すでに自転車の無断駐輪に悩む複数の方たちが使っている名コピーかもしれません。これも貼り紙1と同様に、止めておいた自転車を廃棄物として捨てられても、あるいは通りすがりの人に持って行かれても文句を言えません。
熊本県のある病院では、敷地内への無断駐車に対して、こんな文言の貼り紙をしているそうです。
「無断駐車をする方には、注射しちゃいます」
「駐車」と「注射」のダジャレ。お医者さんでなければ成立しないユーモアたっぷりの貼り紙です。まあ、効果のほどはわかりませんが……。
■「凶」のおみくじ付きの傘は盗まれない
コンビニや店舗などで、雨の日に、入口にある傘立てに傘を立てておいて、いざ帰ろうとしたら傘を盗まれていた。そんな経験はありませんか?
ちゃんと、鍵をかけることができる傘立てがあればよいのですが。
問題は、お客が共同で使うタイプの傘立て。傘泥棒は、自分は古いビニール傘で来て、防犯カメラに注意しつつ、傘立てにある高級傘を抜いて、そのまま立ち去ればよいのですから防ぎようがありません。
そんな簡易的な傘立てで、何度も傘の盗難に遭っていたある男性。頭にきて、自分の傘の持ち手にあるものを結びつけたところ、ピタリと盗まれなくなったそうです。
いったい何を結びつけたと思いますか。
なんとその男性、神社で引いた「凶」のおみくじを傘の持ち手にくくりつけたのです。効果はテキメン。たしかに盗んだら、何かすごい罰(ばち)が当たりそうです。
「いじめから抜け出す方法」も同じです。
「いじめから抜け出したければ、大勢が見ている前で、一度本気でブチ切れればいい。『こいつは、いざとなるとヤバい』と思ったいじめっ子は、もう二度と手を出してこなくなる」
そんなことができるくらいなら苦労はしないという感じですが、もし本当にやることができたら効果はありそうです。
やっかいな相手から自分や自分の持ち物を守りたいとき、このように「アブナイ奴」と思ってもらえれば、相手はなかなか手を出せないでしょう。
相手に「これはアブナイ」と思わせれば勝ち
■「土下座しろ」と怒鳴るクレーマーを黙らすひと言
あなたが、コーヒーショップの店員だとして、こちらの落ち度はまったくないのに、悪質なお客から、「なんだ、このコーヒーは。苦くて飲めないじゃないか。土下座して謝れ‼」と、明らかなイチャモンをつけられたらいったいどうしますか?
「悪質クレーマー対応の達人」によれば、そんなお客には、ある言葉を伝えるのがよいそうです。
土下座をせまる悪質なクレーマーに伝えるとよいのは、どんなひと言でしょう?
答え
「土下座を強要されますと、お客様が法的に罰せられる場合もございますのでお気をつけください」と言う。
事実、店員に土下座をさせた画像をSNSなどでアップした人間が処罰されていますので、この言葉、説得力があります。
■当然、店側にもお客を選ぶ権利がある
では土下座ではなく、悪質クレーマーが、「このことをSNSに書くぞ!」と言ってきた場合は、どう言うのがよいか?
その場合は、こう言えばよいそうです。
「ご自由にお書きください。ただし、事実と違うことを書かれた場合は、こちらとして法的な対応をさせていただく場合もございますのでよろしくお願い致します」
おおっ。言葉は丁寧ですが、実に毅然(きぜん)としていますね。
さらに、こういうやり取りをしたお客からは絶対にお代はいただかず、最後にこう告げるのだそうです。
「二度とご来店なされませんよう、お願い申し上げます」
お代をもらわないことで、「店とお客」という関係を断つのがミソです。
たとえ客商売であろうと、お店側にも、「お客を選ぶ権利」があるということ……いや、そもそも、そういう輩(やから)はお客でもなんでもありません。
悪質クレーマー対応の達人によると、悪質なクレーマーに対して、「店とお客」という関係を断つために、お代をいただかないのはよいこと。ただし、明らかな言いがかりをつけてきて(通常のクレームではありませんよ)、「誠意を見せろ!」と言う相手に対して、安易に「お代は結構です」と言うのはNGなのだとか。
■「金品せびり系」の輩の手には乗らない
なぜなら、「誠意を見せろ!」と言ってくる悪質クレーマーの狙いは、最初から支払いをタダにすることだからです。それに簡単に乗ったら相手の思うツボ。「これはいいカモだ」と思われたら、リピーターになってしまいかねません。
そんな、「金品せびり系」のクレーマーに効くのが、次のひと言です。
「お客様のおっしゃる『誠意』とは具体的にはどのようなことなのでしょうか?」
こう言われてしまうと、金品狙いの悪質クレーマーは言葉が出なくなります。自分から「タダにしろ」と言うと「恐喝」になってしまうことを知っているからです。
「言わなくてもわかるだろ!」と言われても、「いいえ、わかりかねます。はっきりおっしゃってください」と返していれば、相手は諦めて「もういい、今度から気をつけるんだな」となると。
「お客様は神様です」という言葉があります。でも、悪質クレーマーは、神様は神様でも疫病神です。毅然とした態度で追っ払いましょう。
たとえお客でも、理不尽な相手には毅然とした態度で。
「法的手段」や理詰めも効果アリ。
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作家
1962年生まれ。子どもの頃から本が大好きで博識。『パネルクイズアタック25』『クイズタイムショック』(テレビ朝日系列)などのクイズ番組に出演し優勝。『第10回アメリカ横断ウルトラクイズ』(日本テレビ系列)ではニューヨークまで進み準優勝を果たす。就職後は約20年間、社内報の編集を担当。その間、社長秘書も兼任。豊富な雑学の知識を生かし、『壁を越えられないときに教えてくれる一流の人のすごい考え方』(アスコム)で作家デビュー。2017年からは専業作家。
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(作家 西沢 泰生)
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