もし100億円あったら何に使うか…ホリエモンが「私なら迷わず全張りする」と断言する新興ビジネスの名前
プレジデントオンライン / 2024年8月7日 17時15分
小型ロケット「MOMO」6号機の打ち上げが成功し、記念撮影に応じる「インターステラテクノロジズ」の稲川貴大社長(中央)と創業者の堀江貴文氏(右)ら=2021年7月31日夜、北海道大樹町 - 写真=共同通信社
※本稿は、堀江貴文『ホリエモンのニッポン改造論』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■日本発「グローバル規模のドコモ」ができる?
宇宙ビジネスは5億、10億の世界ではない。50億、100億の世界だ。もし私が100億円持っていたら、迷わず全張りする。それくらいの資金力をもつ企業はあるだろうに、まだ、その規模の資金提供の声はかかっていない。
さらなる追い風を吹かすことができれば、私は、衛星コンステレーション(※)で「グローバル規模のNTTドコモ」ができるかもしれないと考えている。グローバル規模の衛星コンステレーションのビジネスは、10倍以上の規模になると予感しているのだ。
※編集部註=地球低軌道(LEO=low Earth orbit)と呼ばれる地球から数百キロの距離に小さな人工衛星を大量に並べることで、高頻度で詳細に衛星から地球を観測する手法。
ロケットを製造して打ち上げるのは技術的にハードルが高い。
地球の質量は大きく、重力は強い。その重力に逆らって、大気が濃いところから薄いところまで超強力な出力を使って超高速で飛ばし、地球上の軌道に乗せ、水平飛行させる。もう一度言うが、ロケットは作るにも飛ばすにも、とてつもない技術力を要するのだ。
したがって、ロケットの「製造」「打ち上げ」「衛星システム」を垂直統合できる企業は、そうそう生まれないだろう。言い方を変えれば、もしそれを実現する会社が現れたら、その1社が大変な競争力を持つことになるのだ。
となると、将来的には、ロケット産業にも独占禁止法のような規制法が設けられ、自社のシステムをリーズナブルな価格で開放せよということになるかもしれない。
かつて数社の独占状態だった通信キャリアが、ある程度の値段で新規参入組に基地局ネットワークを貸し出さなくてはいけなくなったのと同じように、だ。
■「ロケットを作って飛ばせる」ことの価値
しかし、もしそうなったとしても、すべてを外部に対して割り当てよということには、さすがにならないだろう。自社のシステムがあったほうが、有利であることは間違いない。
また、私の頭には、衛星メーカーよりもロケット製造企業に圧倒的優位性があるという考えもある。衛星があってもロケットがなければ飛ばせない。そしてロケットの開発には莫大な時間的・金銭的コストがかかる。
したがって、力関係的にロケット製造会社のほうが強くなることは自明だ。宇宙ビジネスのなかで「ロケットを作って飛ばせる」ということには、それだけの競争優位性があるのだ。しかも、仮に将来的に規制がかかるとしても、それまでは打ち上げ放題だ。
将来的には、我がISTのような会社が、衛星メーカーを買収し、宇宙事業の総合企業となっていくかもしれない。
ISTをロケットの製造、打ち上げ、そして衛星システムの3本柱でやっていこうというのは、こうした考えからなのである。かつて私はインターネットの民主化の波に乗ってITビジネスで成功した。今度は宇宙の民主化の波を受け、ロケットと衛星で巨大なビジネスチャンスをつかもうとしているのだ。
■ホリエモンが「オタク」に注目するワケ
本章で繰り返し述べてきたように、宇宙ビジネスの民主化は急速に進み、スターリンクを超える宇宙ビジネスの可能性も拓かれつつある。どんな市場が出現し、何が求められているか。そこには想像をはるかに超えたものもありそうだ。
宇宙ビジネスの民主化の波に乗るのは、どんな人間なのか。そこでは、どんなビジネスが生まれるのか。まだ見ぬ可能性に私は思いを馳せている。
こうした未知の世界で成功するための秘訣は、どこにあるのだろうか。まず、自分でプロダクトやサービスを立ち上げ、ビジネスを創出しなくては、話は始まらない。
そこで私が注目しているのは、「オタク」と呼ばれる人々である。
「オタク」とは、特定の分野に詳しかったり、自分の好きな分野に傾倒したりしている人々のことだ。概して人付き合いが悪く、少し前までは「変人」扱いされることも多かった。
しかし、そのユニークな発想には、ときに目を瞠(みは)るものがある。
たとえば、すでに世間的に認知され、受け入れられている「Vチューバー」なども、オタク発祥の新しいカルチャーである。
2022年6月8日、Vチューバーのグループを運営するエンターテインメント企業「ANYCOLOR(エニーカラー)」が東証グロース市場に上場。2日目となる9日の終値ベースの時価総額は1652億円となった。
■「ニコニコ動画」大流行のきっかけ
アバターを使って「バーチャルなYouTuber」になろうなどという発想は、私には持ちようもない。「顔は出したくない。でもYouTuberとして活躍したい」という願望が理解できないからだ。
しかし、世の中には、顔を出すことで誹謗中傷されるリスクを背負うのは嫌だけど、自分の「出し物」を多くの人に楽しんでもらいたい、目立ちたい、人気ものになりたいと願う人、そしてそれを実際に好んで消費する人たちが意外と多いようなのだ。ANYCOLORの例は、そのことを物語っている。
また、動画配信プラットフォーム「ニコニコ動画」も、かつてはオタクの世界のものだったが、あるきっかけで流行した。
それは、ニコニコ動画上でミュージカル「テニスの王子様」につけられた自動生成字幕だ。
自動生成の精度はあまり高くない。それがそうとうおかしな具合に間違っており、なかにはかなり下品な言葉になっていたところもあったことが、笑いを誘った。通称「空耳字幕」――これをきっかけとしてニコニコ動画は大流行したのである。
初めて「空耳字幕」を見たとき、私は「これは流行る」と直感し、運営元のドワンゴの株を買った。予想は的中し、それまではオタクのものだったニコニコ動画は、「空耳字幕で笑う」という意外な用途により、新たなユーザー層を獲得していった。
■「インターネット」と「宇宙」の共通点
もう1つ例を挙げておこう。
だいぶ前のことになるが、2005年のライブドア時代に、私は同人作品、ゲーム、コミック、音声作品などのコンテンツを販売する二次元総合ダウンロードショップ「DLsite(ディーエルサイト)」を運営するエイシス社を買収した。買収額は20億円ほどだったが、今の売り上げは250億円にもなる。
DLsiteの主な商品は「エロ」や「パロディ」を扱う同人誌であり、それをネットで販売する。要はネット上でコミケをやっているわけだ。私はこういう会社があることをまったく知らなかった。当時、ライブドアにいたオタクっぽい社員が見つけてきたのだ。
かつて、いわば「日陰者」だったオタクたちは、インターネットの民主化と共に、思いもよらないビジネスの種をまいてきた。
インターネットの民主化と宇宙の民主化が相似形を成すというのは、本章でも繰り返し述べてきたことだ。ならば、宇宙ビジネスにおいても、オタクパワーが、何か凡人には思いつかないような発想をもたらしてくれるのではないか。
■「思いついたら動く」が何よりも大事
今や大企業に入社して実績を積み重ね、信用を得ていくという時代ではなくなっている。中学生でも高校生でもいい。斬新な発想で新たなビジネスアイデアを生み出し、実現することこそ、今、求められている。
大事なことは「思いついたら動く」、その一点に尽きる。
本当にいいアイデアだったら、クラウドファンディングで多くの支持者が集まり、資金調達できるはずだ。資金が集まらなくても、がっかりすることはない。実行に移す前に、「このアイデアは多くの人に支持されるものではなかった」とわかったことが財産だ。時間、労力、お金をつぎ込む前に立ち止まることができる。
先述のISTでも、MOMO初号機から5号機まではクラウドファンディングで打ち上げ費用を賄(まかな)った。6号機、7号機のMOMOにはスポンサー企業のロゴや謳い文句をプリントした。
■自分でビジネスを創出するのが一番早い
なかでも6号機は、アダルトグッズメーカー「TENGA(テンガ)」と共同で「TENGAロケット」を打ち上げるプロジェクトとなったのだが、これを発表したときは、ずいぶん批判されたものだ。「宇宙を宣伝に使うな、学術以外の用途はけしからん」というわけだ。
しかし、その6号機の打ち上げに成功すると、TENGAとのコラボ効果もあり、幅広い世間的関心を集めることができた。それまでは宇宙開発関係者やコアな宇宙ファンにしか注目されていなかったものが衆目を集めることとなり、我が社の小型ロケット開発事業に対する認知度も高まったのだ。
また、TENGAの人形モデルを宇宙空間に放出し、回収にも成功したことは、国内の民間企業による宇宙空間への物資放出および回収の初事例となった。
こうしたアイデアの実現を通じて、私は「宇宙をみんなのものとすること」の一歩前進に一役買うことができたと思っている。
何度も述べてきたことだが、民主化したときに、その産業はスケールする。そこから、ようやくさまざまな自由な発想がもたらされ、混じり合い、新しいビジネスが生まれる。今まさに民主化が進みつつある宇宙には、その可能性が満ちあふれているのである。
宇宙の民主化の波に乗るには、自分でプロダクトやサービスを立ち上げ、ビジネスを創出してしまうのが一番早い。だからこそ、特に若い人たちには、オタク気質の人もそうでない人も、どんどん宇宙に興味をもって、関わってきてほしいと願うばかりである。
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実業家
1972年、福岡県生まれ。ロケットエンジンの開発や、スマホアプリのプロデュース、また予防医療普及協会理事として予防医療を啓蒙するなど、幅広い分野で活動中。また、会員制サロン「堀江貴文イノベーション大学校(HIU)」では、1500名近い会員とともに多彩なプロジェクトを展開。『ゼロ』『本音で生きる』『多動力』『東京改造計画』『将来の夢なんか、いま叶えろ。』など著書多数。
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(実業家 堀江 貴文)
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