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高齢の患者を長年診てきた医師・和田秀樹が「もっともなりたくない」と恐れている"身近な病気"の種類

プレジデントオンライン / 2024年8月12日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz

高齢者が気をつけたほうがいい病気は何か。医師の和田秀樹さんは「うつ病は一般人口の3%程度の有病率だが、65歳以上になると、それが5%に上がる。うつ病になり食欲不振になると、高齢者は簡単に脱水症状を起こし、そこから脳梗塞や心筋梗塞、肺炎を起こしやすくなる。これほど高齢者に身近なうつ病の怖さはあまり知られていないが、私はもっとも恐れている病気だ」という――。

※本稿は、和田秀樹『どうせ死ぬんだから』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

■高齢者は身体と心のダメージが増え「うつ病」になりやすい

私が診ている患者さんの6〜7割は認知症で、3割ぐらいがうつ病です。

認知症は多幸的になる人が多いのですが、うつ病は悲観的で自分が人に迷惑をかけているという罪悪感に苦しんでいる人が多い。しかも毎日がだるく、食欲もなく、何か食べても味がしないという辛い症状も続く。

実は、高齢の患者さんを長年診てきた私が、もっともなりたくないと恐れている病気がうつ病です。

各種の地域住民調査によると、うつ病は一般人口の3%程度の有病率ですが、65歳以上になると、それが5%に上がります。

高齢になればなるほど、心と身体の結びつきが強くなります。つまり、心が弱ると身体も弱り、逆に身体が弱ると心も弱るのです。高齢者は身体はもちろん、心にもダメージを受けることが増えます。

仕事を失うこと、伴侶や兄弟姉妹、長年の友人との死別、老化による自信の喪失などストレスフルなことが容赦なく押し寄せる。そのうえに、年を取るほど神経伝達物質が減るので、うつ病になりやすいわけです。

これほど高齢者に身近なうつ病ですが、その怖さはあまり知られていません。

うつ病になり食欲不振になると、高齢者は簡単に脱水症状を起こします。脱水すると血液中の水分が足りなくなって血液が濃くなるので、脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすくなる。

脱水症状があると免疫機能も落ちてくるので、肺炎も起こりやすくなります。うつ病になって体力を落として亡くなってしまうこともめずらしくないのです。

また、先ほど言った身内や親友との死別など度重なる喪失体験から、孤立感を深めて自殺する高齢者も少なくありません。

■「うつ死」しないための処方箋

うつ病のまま死ぬというのは、なんとしても避けたいものです。

ただ、うつ病は認知症とは違って、治療法がないわけではありません。薬が意外と効きやすいのです。

うつ病は、若い人ほど心理的問題が絡むとされているので、若者には薬はあまり効果がありません。

しかし、高齢者の場合は脳内の神経伝達物質であるセロトニンが減少し、それがうつ病を引き起こしていると考えられているため、セロトニンを補う薬を投与すると非常に良く効きます。

診察のとき、脳梗塞の後遺症で片麻痺があって手も震え、奥さんを亡くして「私はもう生きすぎました」などと嘆く高齢者を前にして胸が塞がる思いがするのですが、うつ病と考えて薬を出すと、「年を取るというのは、こんなものなんですね」と笑顔が戻り、食欲も復活して、驚くことがあります。

日頃からセロトニンを増やしておくことは、うつ病の予防にもなりえます。

たとえばセロトニンの材料であるトリプトファンが多く含まれる、肉や魚、大豆製品、乳製品、バナナなどを多めにとる。

肉より魚や乳製品のほうがヘルシーだと考えられやすいのですが、コレステロール値が高い人のほうがうつになりにくいことが明らかにされていますし、高齢になれば動脈硬化の予防より心の健康を優先させたほうがいいという私の考えから、肉をおすすめしています。

和風おろしハンバーグ
写真=iStock.com/w-stock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/w-stock

■高齢者は「足し算医療」で健康維持

私は多くの高齢者を診察してきて、年を取ったら、余る害よりも足りない害のほうがはるかに大きいことを知り、高齢者の健康維持には足し算が不可欠であると考えるようになりました。

高齢になればどうしても栄養が不足し、運動が不足し、性ホルモンが不足するなど足りないものがたくさん出てきます。

年を取れば取るほど、検査の異常値を叩いてその数値を下げる「引き算医療」より、その足りなくなった必要なものを足し算することによって健康をキープしていこうというのが私の考える「足し算医療」です。

脳内のセロトニンもそうですが、高齢者を要介護にしないための重要な要素として、とくに男性の場合は男性ホルモンを足す必要があります。

男性ホルモンが減ってくると意欲が落ちてきて、外出しようとしなくなるので要介護になるリスクが高くなります。記憶力、判断力も低下してきて、人づき合いがどんどん面倒になってきます。

だから奥さんにだけベタベタくっついて濡れ落ち葉などと疎まれるようになるわけですが、人間関係が希薄になるとボケるリスクも高くなります。

■この注射でショボくれた孤独な老人への道を防ぐ

そして、もう一つ重要なポイントは、男性ホルモンはドーピングにも使われたほど筋肉をつきやすくする働きがあります。同じように運動していても、男性ホルモンが多い人は筋肉がつくわけです。

ところが、年を取って男性ホルモンが減ってくると運動しているわりには筋肉がつかない。

そうなると、筋肉量と筋力が低下する「サルコペニア」や、骨や関節にも障害が起こって歩行機能が低下する「ロコモティブシンドローム」など、フレイルの一種である運動機能障害を引き起こしやすい。

男性ホルモンを維持しておかないと、足腰は弱るわ、頭は弱るわ、意欲がなくなるわ、人づき合いが面倒になるわ、という、どんどんショボくれた孤独な老人への道まっしぐらです。

現実に私のクリニックの患者さんにも男性ホルモンを調べてみると足りない人がいっぱいいて、その人たちにおおむね注射で男性ホルモンを足すのですが、目に見えて元気になります。

75歳ぐらいの男性から、久しぶりに朝勃ちしましたとか、10年ぶりに風俗に行きましたなんて、メールが届いたこともありました。

奥さんはどう思われるかわかりませんが、その方は奥さんが認知症になられてからずっと介護している人ですから、それくらいは許されてもいいんじゃないかなと私は思っています。

いずれにしても、それほど元気になるということです。

■肉を食べて、運動して、男性ホルモンを増やす

男性ホルモンを足すのに注射や薬は嫌だという場合は、まず、肉を食べましょう。肉に多く含まれるコレステロールは男性ホルモンの材料です。

先に言ったようにコレステロール値が高いほうが、うつにもなりにくい。よく牡蠣やニンニクは「精がつく」と言われますが、実際に男性ホルモンを増やす亜鉛がたくさん入っているので、ぜひ食事にとり入れてください。

また、男性ホルモンを増やすには運動をしたほうがいいといわれています。

和田秀樹『どうせ死ぬんだから』(SBクリエイティブ
和田秀樹『どうせ死ぬんだから』(SBクリエイティブ

そしてもう一つ、やっぱりエッチな動画を見ること、あるいは女性のいるお店に行くのがおすすめです。難しいかもしれないけれど、奥さんにバレないように気をつけて実行してください。

幸か不幸か女性は、閉経する時期になると男性ホルモンがむしろ増えるので、年を取って元気になる女性が意外と多い。人づき合いも盛んになるので、70代の団体旅行はほとんどが女性です。

そういう意味では女性に生まれて良かったのかもしれませんが、ぜひ、男性ホルモンの重要性に着目して、ご夫婦で男性ホルモンを増やせるように協力していただきたいと願っております。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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