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職場で意見が対立したらどうすればいいか…「経営の神様」松下幸之助が遺した"金言"

プレジデントオンライン / 2024年8月12日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mediaphotos

人間関係がうまくいかないとき、先人たちはどのように対応したのか。古今東西の名言名句を厳選して解説した、ジャーナリスト近藤勝重さんの著書『人間通の名言 唸る、励まされる、涙する』(幻冬舎新書)より、一部を紹介する――。

■生きる上で避けては通れない人間関係がある

夏目漱石の『それから』にこんな言葉があります。

到底人間として
生存する為には
人間から
嫌われるという運命に
到着するに違いない(夏目漱石『それから』)

菊池寛は次のように言っています。

触らぬ神に祟りなしというが
それと同じく
触らぬ人に祟りなしである
自分の気持を清浄に保つのには
対人関係を
なるべく少なくするのが
一番よいようだ(菊池寛「人の世話」)

人が人の中で生きていくとは、何と大変なことだろう、と思わせる言葉ではありますが、対人関係をなるべく少なく、と言われても、実際のところ会社では上司と部下、学校では先生と生徒、家庭では、友達関係では、と避けては通れない人間関係の中で私たちは生きているわけです。

■「人間に関する知識」がもっとも進んでいない

フランスの哲学者ルソーは、こう書いています。

人間のすべての知識のなかで
もっとも有用でありながら
もっとも進んでいないものは
人間に関する知識であるように
私には思われる(ルソー)

個性も違い、考え方も生き方も違う人間同士がうまくコミュニケーションをとって、お互い日々心晴れやかに過ごすために、先人たちは様々な言葉を遺(のこ)してくれているんでしょうね。

では、まずは職場での具体的な人間関係からです。

■松下幸之助「正反対大いに結構」

ある洋服メーカーで、若い社員が「うちの商品は他社に比べて地味すぎる。この際、もっと跳ぼうよ」と奇抜な面白さを狙ったファッションを企画して進言したところ、「奇抜というより奇妙だ」と古参の役員が「社会通念」といった言葉まで口にして相手にしなかったというのです。あり得る話ですよね。

松下幸之助
松下幸之助(写真=時事画報社『フォト』1961年8月15日号より/PD-Japan-organization/Wikimedia Commons)

では、経営の神様と呼ばれた松下幸之助氏は、対立する意見についてはどのように言っていたでしょう。

対立大いに結構
正反対大いに結構
これも一つの自然の理ではないか
立あればこそのわれであり正反対あればこその深味である
妙味である
だから排することに心を労するよりも
これをいかに受け入れ
これといかに調和するかに
心を労したい(松下幸之助『続・道をひらく』)

新企画とかヒット作を実現するには、提案側は社内の古参派の存在も考えたうえで、企画案がどれだけ今日的で、かつ客観的な視点で立案されたものであるかを印象づける努力を怠ってはならないわけです。

松下氏の言葉は、底流に“人と共に存在している”という理念が感じ取れますが、受け入れる側が持ちつ持たれつの仲間意識を持つ、と言いますか、同じ目的を持って仕事をしている者同士なんだ、という意識を持たなければならないということですね。職場での人間関係において最も大切なことではないでしょうか。

■悲観的に計画し、楽観的に実行する

次は、京セラの創業者、稲盛和夫氏が遺した言葉です。ち密さや細かい気配りまで感じさせられます。

「楽観的に構想し
悲観的に計画し
楽観的に実行する」ことが
物事を成就させ
思いを現実に変えるのに
必要なのです(稲盛和夫『生き方』)
稲盛和夫
稲盛和夫(写真=Conrad Erb/Science History Institute/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons)

この言葉を知った時、かつて大手製薬メーカーに勤務し、社長になった友人のことを思い出しました。彼が部長時代に面白い話をしていました。

■入社試験で優秀な人ばかり採ってもつまらない

「会社には、頭でいく人間、体でいく人間、心でいく人間、そういう連中が混在していたほうが組織は活発化していいんだ」

どうすればそういう人間が集められるんだろうと僕が聞くと、彼は思いもよらないことを言いました。

「入社試験で上から10人、下から10人採ったらどうだ」

下から、というのは随分楽観的だと僕は笑いましたが、彼は次第に本気になってきました。

「今は何と言ってもチーム力だからね。ともかく人事部と掛け合ってみるよ。選ばれるのが官僚のような人間ばかりじゃ、つまらないよ」

彼は大胆でユニークな発想をする男でしたが、ち密なところを持ち合わせているので、稲盛氏の言葉どおり、計画には反対、横やりなど乗り越えなければならない問題や、ややこしい人間関係と、あらゆることを想定してかかっていたことは想像に難くありません。

そして実現にこぎつけたなら、あとは楽観的に実行する。きっとやり尽くしたからこその楽観だと思います。今、企業業績は上向きだとのこと。彼の思い切った人事への提言が、いい方向へ動いているのかもしれませんね。

■まず誠実、次に知性、最後に行動力ある人を

米国で投資の神様と呼ばれ、富のほとんどを慈善活動に費やしているウォーレン・バフェットは、人を雇う時に見るべきは、まず誠実さだと講演やインタビューでたびたび話しています。

ウォーレン・バフェット
ウォーレン・バフェット(写真=米国国際貿易局/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons)

二番目が知性、三番目が行動力で、もし誠実さが欠けていれば、知性と行動力はその人自身の足をひっぱることになるだろうと。

確かに頭が切れて行動力もある。しかし誠実でないと言われたら雇う側としては二の足を踏みますし、友人には持ちたくないタイプですよね。

誠実さには、相手を、そして自分自身を重んじる気持ちが内在しています。自分の能力を過信し、心をどこかに置き忘れたようになれば、結局自分で自分を滅ぼしかねないというわけですね。

■上司の手伝いと家族との遊び、どちらが優先?

アインシュタインはこのように言っています。

自分自身のことについて
誠実でない人間は
他人から
重んじられる資格はない(アインシュタイン)

こんな話があります。

ある大手銀行の同期会で話題に上った話です。

A君は地方の支店に勤めています。奥さんと子どもと銀行の寮に住んでいるのですが、日曜日、家族で遊びに行こうとしたら、同じ寮に住む支店長が溝掃除をしていました。

A君は家族を家に帰して、すぐに溝掃除を手伝ったそうですが、同期のみんなにその話をして、「出かけられないよね、だいたい日曜日に溝掃除なんてしないでもらいたいよ」と不満をもらしました。すると、B君がこう言ったそうです。

「今から家族と出かけるところなので手伝えませんが、来週は僕がやりますって言えばよかったのに」

■自分自身に誠実に生きたほうがいい

さて、どうでしょう。A君は手伝い優先、B君は遊びを優先、ですが、誠実なのはどちらと聞かれると――これはB君ですよね。

近藤勝重『人間通の名言 唸る、励まされる、涙する』(幻冬舎新書)
近藤勝重『人間通の名言 唸る、励まされる、涙する』(幻冬舎新書)

A君は遊びに行きたかったのに、手伝わなければ上司の覚えが悪くなるんじゃないか、と手伝い、あとから上司の陰口を言っているわけで、自分に対しても上司に対しても誠実とは言えません。B君の言葉は、家族と一緒に楽しみたいという思いを優先し、来週は僕がやります、と自分にも上司にも誠実に対応しています。

ただ、この上司が、部下が手伝うのは当たり前だろ、と思っているような人物だとB君の誠実さはわからないんですね。

会社組織が大きければ大きいほど、部下は上司、上役の顔色ばかりうかがって、すまじきものは宮仕えと言いながら、自分に誠実に生きていくことをいつしか忘れてしまいます。自分自身に誠実である、ということはどういうことなのか、じっくり考えてみる必要がありそうです。

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近藤 勝重(こんどう・かつしげ)
ジャーナリスト
早稲田大学政治経済学部卒業後の1969年、毎日新聞社に入社。論説委員、『サンデー毎日』編集長、夕刊編集長、専門編集委員、毎日新聞客員編集委員などを歴任。『毎日新聞』(大阪)の人気企画「近藤流健康川柳」や『サンデー毎日』の「ラブYOU川柳」の選者を務めた。ベストセラー『書くことが思いつかない人のための文章教室』、『必ず書ける「3つが基本」の文章術』(ともに幻冬舎新書)など著書多数。長年MBS、TBSラジオの情報番組に出演する一方、早稲田大学大学院政治学研究科のジャーナリズムコースで「文章表現」を担当し、故・高倉健氏も聴講した。2024年5月10日逝去。

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(ジャーナリスト 近藤 勝重)

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