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カリスマではないから天下をとれた…松本人志にかわって千鳥・大悟が「バラエティーの帝王」になったワケ

プレジデントオンライン / 2024年8月19日 16時15分

大悟 お笑いコンビ「千鳥」のメンバー(GQ MEN OF THE YEAR 2018発表会見。東京都港区、2018年11月21日) - 写真=時事通信フォト

お笑いコンビ・千鳥の勢いが止まらない。特に大悟さんは、現時点でコンビ含め地上波レギュラーは13本となっている。なぜこれほどまでに人気なのか。ライターのジャスト日本さんは「芸人サイドからの厚い信頼が制作側にも伝わっている」という――。

■なぜ「千鳥・大悟」はテレビから求められているのか

お笑いコンビ・千鳥の大悟さんは、今年4月からの地上波レギュラーは13本(コンビ含む)となり、そのほとんどが冠番組だ。

大悟さんは、過去に週刊誌で不倫報道や遅刻について書かれたり、バラエティー番組ではタバコ、お酒をこよなく愛することを公言している。コンプライアンスが厳しい昨今では、一般的に上記事項はリスク要因と見なされることが多いと思われる。

だが、大悟さんがテレビで引っ張りだこの状態になっている。それはなぜなのか。また、彼はなぜ多くの芸人から愛されているのか。

「さまざまな出来事を嘘偽りなく話のネタにしている大悟さん。その飾らない姿が今の時代に合っているのかもしれません」

そう答えるのは今年4月から日本テレビ系で始まったバラエティー番組「大悟の芸人領収書」の企画と全体演出を担当する日本テレビの淺沼丈生さん。

「芸人さんやスタッフを含めて『大悟さんならどんな話をしても最後は必ず面白くしてくれる』という信頼感があります。その根底にはお笑いへの深い愛があって、そこがちゃんと世代を問わずに多くの芸人さんから評価されている部分だと思います」(淺沼さん)

■「女たらし」ではなく「芸人たらし」

この番組は入社5年目の若手社員の淺沼さんが「芸人が日々使っているお金を切り口にして番組にすると面白いのではないか」と立ち上げたもの。

「大悟の芸人領収書」は笑いのためには金を惜しまない令和に生きる昭和芸人の大悟さんがお笑い芸人達のエピソードを査定し、金額に見合う面白さと判定すれば全額キャッシュバック。さらなる芸の肥やしに使ってもらおうという「芸人×領収書 トークバラエティー」番組。

Tver「大悟の芸人領収書」より
Tver「大悟の芸人領収書」より

この番組で演出を務める制作会社バリサンのソマシュンスケさんは、

「大悟さんはMCとしての仕切り、ゲストの話を聞いてキャッシュバックを承認するのかをジャッジ、そして話のオチも作っていく。『大悟の芸人領収書』では一人で何役も務めている」と話す。

ソマさんは大悟さんが愛される理由について次のように語っている。

「大悟さんは、世間の方がイメージするように、女たらしな感じがするじゃないですか。でも、あの人こそ”男たらし”であり“芸人たらし”なんですよ。そこが人気の秘訣のような気がします。

色々な芸人さんとお仕事をしてきましたけど『大悟さんと飲んだことがある』という方が多いんです。若手芸人の飲み友達も、売れっ子のオズワルドの伊藤俊介さんからまだ若手の青木マッチョさんまで幅広くて。女性だけじゃなくて、男性からもモてるのが大悟さんなのかなと思います」

■女性スタッフが見た気遣い

女性だけじゃなく、男性からモテる芸人といえば、2020年に他界したお笑い界のレジェンド・志村けんさんの存在が浮かぶ。

大悟さんと生前の志村さんは、「週8回」一緒に酒席を交わすほどの「飲み友達」。かつて、志村さんが大悟さんに「お前がいるとうれしいんだよな」と語ったことがあるほどだ。それほど志村さんは大悟さんを「寵愛」していた。

大悟さんは志村さんについて尊敬を込めて「面白い神様」と形容している。お笑いと芸人に対する深い愛は志村さん譲りなのかもしれない。

また大悟さんは、先輩で他事務所のとんねるずの石橋貴明さんとも交友がある

大阪で売れっ子となり上京してきたとはいえ、東京芸人の代表格である志村さんや石橋さんの薫陶を受けているのも大きな特徴といえる。

女性スタッフからはどうみられているのだろうか。『大悟の芸人領収書』に演出として参加する制作会社ウッドオフィスの羽生千詠美さんは大悟さんの芸人に対する「フォローとアフターケア」を絶賛している。

「以前、ある芸人さんが収録中にうまく立ち回れなかったことがあって、休憩中に大悟さんが『大丈夫だよ、気にするなよ』と言葉をかけて、収録後に一緒に飲みに行ったと聞きました。

そういうことをされるとみんな『大悟さんのために頑張ろう!』と思いますよね。大悟さんに助けられた芸人さんは他にもたくさんいて、皆さんに対するフォローとアフターケアの手厚さが、愛されている理由かなと思います」

■出演者の長所を見つけて伸ばす

思えば大悟さんは順風満帆な芸人人生ではなかった。

最大11本あったという大阪でのレギュラー番組のほとんどを降板し、満を持して上京するも、東京で新たに獲得したレギュラー番組は相次いで早期終了。東京のバラエティー番組の空気にも馴染めず、伸び悩んでいた時期もあった。

だからこそ「思うようにいかなくて足搔いている芸人」の心情は誰よりもよく理解しているのではないか。

「大悟の芸人領収書」はゲストのお笑い芸人がレシートを清算してもらうための面白エピソードを披露するのがメインである。素材を出すのが芸人なら、素材に味付けするのが大悟さんの役割となる。どんな話でも絶対に最後は笑いに導く大悟さんのコメント力が番組の生命線である。

「相手を輝かせようという大悟さんの気持ちがすごく伝わります。以前、小倉優子さんがゲストの際、オープニングトークで『コリン星』の話題が出ました。その後の収録の中で、大悟さんは『コリン星』の話題を彼女に振りました。相手の長所を出して立てる気遣いが素晴らしいなと思います」(羽生さん)

「この番組はエピソードトークがメインなので、最後まで話を聞いた上でどう返したら一番面白くなるのかを大悟さんはすごく大事にされているかと思います。あと大悟さんの返しのコメントがめちゃくちゃ面白いですが、実はエピソードを出した芸人さんがちゃんと面白いと評価される方向になってくるのがいつも凄いなと思います」(淺沼さん)

■この人に面白いと判定してもらいたい

コンプライアンス遵守の令和のテレビ界において地上波レギュラーは13本(コンビ含む)。千鳥、特に大悟さんの快進撃は止まらない。

現場で共に番組を制作するスタッフはこの状況をどのように捉えているのだろうか。

「千鳥さんの番組はお笑いがメインの番組がほとんどです。芸人さんが誰に面白いと判定してもらえたら納得するのかと考えた時に、真っ先に名前が上がるのは千鳥さんであり、大悟さんなのです。芸人サイドから信頼されているということが制作側にも伝わっているからこそ、テレビ業界から引っ張りだこになっているのではないでしょうか」(淺沼さん)

「大悟さんはSNSをやっていません。ABEMAやNetflixなどネット配信の番組には出ていますけど、トーク力を武器にしてお笑いメインの番組だけをやり続けている。その大悟さんの生き様と覚悟に『一緒に仕事をしたい』と思うテレビマンの方々が多いからだと思います」(ソマさん)

■千鳥・大悟と松本人志の違い

誰もが憧れ尊敬の対象となり、お笑い界の頂点に君臨していたカリスマ・松本人志さんが活動停止中となっている現在、松本さんが長年座っていた「帝王の玉座」は空席。

日本のお笑い界もバラエティー番組もカリスマ不在の時代を迎えている。そんな中で、大悟さんは松本さんがMCを務めていた「酒のツマミになる話」の代わりを務め、メインのレギュラー番組が増加。その状況から、「ポスト松本人志」と形容されている。

萩本欽一さん、ビートたけしさん、明石家さんまさん、とんねるずさん、ダウンタウンさんなど、お笑いの世界で「天下取り」を果たしてきた芸人たちは、今もカリスマとして君臨し続け強烈な後光は放つ。

だが、テレビのメディア力低下や各賞レースの台頭により、「天下」の基準が曖昧になっている。最近の若手お笑い芸人の意識としては、カリスマに挑んで天下を取ることよりも、共生の意識が強いのではないか。

その点で、取材の終盤にディレクターのソマさんが語ったことが非常に印象的だ。

「僕にとって大悟さんはお笑い新時代の海賊王です。ワンピースのルフィみたいに色んな人をどんどん仲間にしていっている。

松本人志さんみたいな超天才は一人で天下を取りましたが、今はみんなと調和しながらやっていく時代だと思っています。

大悟さんがテレビ業界から引っ張りだこになっているのも、大悟さんという“お笑い船長”が率いる海賊船に芸人もテレビマンも乗りたいのだろうなと思います」

海賊船長
写真=iStock.com/Denis-Art
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Denis-Art

■カリスマが語った「お笑いの境地」

カリスマ不在の中で混沌としている今のお笑い界やバラエティー番組においては、「天下を独占」ではなく「天下を山分け」する形が、正解になっていくのかもしれない。

最後に2021年5月2日に放送されたバラエティー番組「ぼくらの時代」(フジテレビ系)に出演した松本人志さんが語ったお笑い観についてご紹介したい。

「宮本武蔵の『五輪書』をなぞられていた時期があって、日本一のお笑いになりたいと。(5つの章がある中で)勝手に漫才・コント・大喜利・トークで一番になると決めていたんです。そして『五輪書』の最後の章の空(くう)が“調和”なんですね。結局最終的には調和なんだって。笑いで一生懸命やっていても、みんなが面白ければいいじゃないっていう。この場が楽しければいい」

松本人志さんが最後にたどり着いたお笑いの境地「調和」。これを今、一番体現している芸人は、千鳥の大悟さんではないだろうか。

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ジャスト日本(じゃすとにほん)
ライター
ライター、プロレス考察家。1980年福岡県出身、和歌山県在住。プロレスからビジネスジャンルまで、幅広く執筆活動を展開。現在アメブロで「ジャスト日本のプロレス考察日誌」を更新中。著書に『俺達が愛するプロレスラー劇場 Vol.1』(ごきげんビジネス出版)『インディペンデント・ブルース』『プロレス喧嘩マッチ伝説』(いずれも彩図社)ほか多数。

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(ライター ジャスト日本)

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