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山手線ホームで「野良電動キックボード」に乗る人が登場…こんな無作法者を放置してはいけない切実な理由

プレジデントオンライン / 2024年8月8日 16時15分

【写真1】JRのホームを電動キックボードで走る男性 - 筆者提供

■電車内で折りたたまず、駅に降りて電動走行

まずは写真1を見ていただきたいのだが、ついにこんな人が現れるようになった。JR山手線などが乗り入れる都内某駅のできごとである。

見ての通り、電動キックでホームを疾走している。

うーん、信じがたいが、事実だ。というより「いつかは現れると思っていたのがついに現れた」というほうが正しいかもしれない。

これ、じつは私の知り合いのジャーナリストQ氏が送ってくれた写真で、この男性は混雑する山手線の車内に、電動キックボードを折りたたまずに持ち込んでいたのだという。車内で「せめて折りたたんだらどうだろう」と注意したら、「うるせえ!」と怒号を浴びせられたそうだ。

【写真2】本人は座席に座り、混雑した車内でも電動キックボードを折りたたまなかった
筆者提供
【写真2】混雑した車内でも電動キックボードを折りたたまなかった - 筆者提供

その後、偶然同じ駅で降りたら、ホームを電動走行し始めた。そこを撮影したら「ナニ撮ってんだ! おまえ!」と右腕を強く掴まれたという。

【写真3】駅に降りてすぐに電動キックに乗る男性
筆者提供
【写真3】駅に降りてすぐに電動キックに乗る男性。都心の混雑車両でこういうことを平気でする神経が不思議 - 筆者提供

「ならば、やめなさい」と反論したQ氏の腕には、この男の爪痕(文字通りの爪痕)がハッキリと残った。「痛かったですよ」とのこと。いやはやQさん、無事でよかった。その勇気に感服仕りました。

■ナンバープレートが付いたLUUPはマシ

しかし東京の街を見てても思うけれど、電動キックが増えた。

LUUPのようなシェアものもあるが、今回のようなタイプの、ネット直輸入系もある。

この2種類を比較すると、じつは安全性に大きな差があるのだ。

街中で最も目立つのがLUUPで、利用者によってはすごいスピードで歩道を走ったり、逆走したり、2人乗りだったりで、けっこう無法っぷりも目立つのだが、じつはマシンそのものとしてはルールを守ってる。

【写真4】2人乗りLUUP
筆者提供
【写真4】2人乗りのカップルが青山通りを往く - 筆者提供

20km/h以上は出ないし、歩道モード(6km/h以上出ないモード)も備えている。ちゃんとナンバープレートが付いているのがこの手合いだ。要するに「特例特定小型原動機付自転車」として登録され、税金を払い、自賠責にも入ってる。

■無保険で「車道も歩道もOK」は許されない

一方、今回の男性が乗ってたものには、よく見るとナンバープレートが付いてない。これ、何かというとネットで買った無登録電動キックなわけだ。

いわゆる「野良電動キック」。

最初からナンバープレートなんて付けるつもりがないんで、最高時速もパワーもデタラメに高かったりする。ネットの宣伝文句を見ると「ワガママに走ろう」「車道も歩道もOK」などと書いてある。アホかと。

【写真5】ナンバープレートが付いてない「野良電動キック」。ホーム走行の男性と同じタイプ
筆者提供
【写真5】ナンバープレートが付いてない「野良電動キック」 - 筆者提供

道交法改正(2023年7月)で「特例特定小型原動機付自転車」の定義ができたときから、電動キックボード、電動キックスケーター、電動サイクル(サドル付き電動キックのこと)ほか、この手の電動モビリティは「公道を走るなら税金を払って、自賠責に入ってナンバープレートを付けて」乗らなくてはならなくなった。

そうしていない「野良電動キック」は、公道走行自体が道交法違反なのだ。

以前はそのあたり曖昧だったのが、昨年7月に明確化されたというわけ。

【写真6】ナンバープレート無しで公道を走行する電動キックボードは道交法違反
筆者提供
【写真6】ナンバープレート無しで公道を走行する電動キックボードは道交法違反 - 筆者提供

■電車のホーム走行は「常識的に論外」

では、この電動キックで電車のホームを走れるのかどうか。

JR東日本の規定ではこうだ。

「キックボードにつきましては、動力の有無にかかわらず通常の手回り品の範囲に含まれます。ただし他のお客さまにご迷惑をおかけするおそれがある場合や列車が大変混雑している場合などは、お持込みをお断りする場合があります。また、袋などに収納いただくなど周りのお客さまへのご配慮をお願いいたします」。

このあたり、自転車の「輪行」(自転車を分解あるいは折りたたんで列車に載せること)と扱いは同じだ。

では、ホームを走るのはどうかと筆者が個人的に聞いてみたところ「電動キックと限定した規定はありませんが、他のお客様に迷惑のかかる行為になりますから基本的に禁止です。というより常識的に考えて論外です」とのこと。

このあたりも自転車と同じで、ホームを自転車で走るようなヤツはいない。当然だろう。

■本来、電動キックは歩道を走るのが苦手

電動キック、一度でも乗ったことがあれば分かるが、重心が高くて安定走行がけっこう難しい。特に低速運転をしようと思うとき、案外ふらつくのを感じることがあるはずだ。

さらにいうと電動キックの苦手分野はGO&STOPの頻発だったりする。スロットルのレスポンスには若干のタイムラグがあるし、GO&STOPのたびに前後に体重移動しなくてはならなくなるからだ。

低速とGO&STOPが不得意。要するに、このモビリティ、本来、歩道通行が苦手なのである。

ましてや歩道よりも人口密度が高く、すぐ横を電車が通り過ぎ、場合によっては線路に落ちかねないホームでは、電動キックは危険極まりないということになる。

【写真7】電車のホームは狭くて危ない
筆者提供
【写真7】電車のホームは狭くて危ない - 筆者提供

■「ホームで走っていい」を常識にしてはいけない

そんなことは乗れば分かると思うのに、この手のヤカラはなぜかそこが分からない。しかし、私が思うのは、こういう連中が平気でホームを走ってるのを、今のうちにどうしたって止めなくてはならないということだ。

なぜならば、こういう危なすぎる電動キック乗りを見て「あ、いいんだ」と思う人たちが現れかねないからだ。それ以上に、この手が電車のホームに多数出没して、お年寄りが弾き飛ばされたり、ベビーカーに引っかけたりして、被害者が出ては遅いのだ。

冒頭のQ氏は駅員に苦情を言ったそうだが、「そうですか、次からは気をつけて見ておきます」と、なんか気のない返事だったそうだ。鉄道会社も、警察も今後起きるであろうことにはちょっと注意したほうがいいと思う。

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疋田 智(ひきた・さとし)
自転車評論家
1966年生まれ。東京大学工学系大学院(都市工学)修了、博士(Ph.D.環境情報学)。学習院大学、東京都市大学、東京サイクルデザイン専門学校等非常勤講師。毎日12kmの通勤に自転車を使う「自転車ツーキニスト」として、環境、健康に良く、経済的な自転車を社会に真に活かす施策を論じる。NPO法人自転車活用推進研究会理事。著書に『ものぐさ自転車の悦楽』(マガジンハウス)、『自転車の安全鉄則』(朝日新聞出版)など多数。

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(自転車評論家 疋田 智)

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