たったこれだけで落ち込んだメンタルが急回復する…失敗した時に腕を突き上げて口に出したい"4文字の言葉"
プレジデントオンライン / 2024年8月9日 7時15分
※本稿は、吉岡眞司『強いチームはなぜ「明るい」のか』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
■心はプラス・マイナスを行き来する
どんな場面でも自分の持てる力を100%発揮し、成果を挙げられるようになる、そのための第一歩は、まず自分の心の状態を知ることです。
私たちの心は、さながら振り子のように前向きな気持ち(プラス)と、後ろ向きな気持ち(マイナス)を絶えず行ったり来たりしています。気持ちがプラスの状態のときは何をやってもうまくいくように感じますが、反対にマイナスのときは何もかもうまくいかないように感じてしまいます。
この心の振り子の状態は、私たちの思考と体調に大きな影響をおよぼすことがわかっています。
「このピンチで失敗は許されない……」
「ミスをしてしまった。上司にどう伝えよう……」
「大事な面接を前に、緊張している。どうしよう……」
このようなネガティブな感情に襲われているときには、自分に過度なプレッシャーがかかってしまい、自分本来のパフォーマンスが特に発揮できなくなってしまいます。
しかし、一見、悪者のように思えるネガティブな感情も、私たちが生きていくうえで必要なものなのです。
人間はこれまで、命の危険と隣り合わせだった時代を長く過ごしています。農耕時代、いやそれ以前の狩猟時代の頃から、私たちの遠い祖先は、生きながらえるために身の回りに危険なものがないか、常に先を見越して安全を確保することが求められていました。当時の人間にとって、ネガティブな感情や感覚は危険から身を守り、生きていくために不可欠なものだったのです。
だから、不安を感じたりストレスを過敏に感じたりするのは、人間として当たり前のことであり、それ自体を否定したり悲観する必要はありません。いわば私たちの本能のようなものですから。
話を戻すと、大事なのは、心の振り子は常にプラスとマイナスを行き来するものであり、それが私たちのパフォーマンスに影響をおよぼすというメカニズムを理解すること。そのうえで、大事な場面で感情をプラスの状態にすることです。
自分の感情を客観的に把握し、セルフコントロールする方法を身につけることで、「あ、今不安を感じているな」「緊張しているな」という場面でも心の状態をポジティブに変えられるのです。
■脳は「イヤなこと」ほど記憶している
ではそもそも、心の状態というのは、自分の力でコントロールできるものなのでしょうか。
答えは「できる」です。
そして、そのカギを握るのが、「言葉・動作(態度)・表情」の3つの要素です。
私たちが普段何気なく発している言葉や動作・表情は、無意識のうちに目や耳がキャッチし、脳に届けられ、心の状態に影響を与えます。
たとえば、イヤなことが起きたり、思いどおりにならないことがあったりすると、無意識のうちに「だめだ!」「なんでだよ!」などとマイナスの言葉をつい口にしてしまう、ふてくされた態度や浮かない表情が出てしまうことがあると思います。このような言動や表情は、そのまま自分の目や耳から脳に伝わり、心の状態に悪影響をおよぼします。その結果、心の振り子がマイナス方向に振れて、パフォーマンスを発揮しにくい状態になってしまうのです。
それでは、なぜマイナスの言葉・動作・表情が、心の状態に悪影響を与えてしまうのでしょうか。それは以下のような仕組みです。
私たちの脳には、過去の経験・体験を、そのときの感情とセットで無意識のうちに記憶するという特徴があります。「失敗した」体験と、「恥ずかしかった」「イヤな思いをした」という感情がセットになって、記憶データとして脳の中に蓄積されていくのです。そして、マイナスの言葉を口にすると、「あのしんどかったときについ発してしまった言葉だ」という脳の記憶データに結びついてしまい、そのときの状況や感情が鮮明に呼び起こされてしまいます。そのため、マイナスの感情に苛(さいな)まれてしまうというわけです。
それからもう一つ、脳には「プラスよりマイナスのことを優先的に記憶する」という特徴もあります。そもそも人間はネガティブになりやすい傾向があります。
「私ってどうしても物事をマイナスに考えてしまう癖がある」と嘆く人がいますが、人間である以上それは当たり前のこと。私たちは、誰もが普通にマイナス思考になってしまうような脳を持ち合わせているのです。
■脳は耳に入った言葉を「誰が言ったのか」関知しない
さらに、私たちの脳には「言葉を『誰が言ったのか』は関知しない」という特徴もあります。つまり、耳に入った言葉に対して、それを発したのが自分なのか、目の前の人なのか、それとも見ず知らずの第三者なのかを、脳は関知せず一つの音声データとして処理をするのです。
たとえば、近くにいる自分とは何の関わりもない赤の他人が、マイナスの言葉を発している(怒鳴っている、悪口を浴びせているなど)状況に出くわし、その言葉をたまたま耳にしたとします。そのとき、あなた自身はその人とは無関係であるにもかかわらず、あなたの脳は自分に向けて発せられた言葉と錯覚して受け取ってしまい、ネガティブな感情になってしまうのです。
逆に、あなたが会社のある部署のリーダーだとして、自分の部下に「なんでできないんだ!」と叱責したとしましょう。すると、その「なんでできないんだ!」という叱責の言葉は、近くに居合わせたほかのメンバーの耳にも入ります。すると、その言葉を耳にしたメンバー全員の脳に、過去に自分がその言葉を言われたときのマイナスの記憶と感情が呼び起こされ、結果としてチーム全体にネガティブな空気がまん延してしまいます。
それだけでなく、「なんでできないんだ!」という言葉を発したあなた自身も、自分の耳でその言葉を聞くことで、さらにネガティブな感情を高めてしまうのです。
■負けても「よっしゃ!」と喜んでみる
このように、私たちは自分が口にした、あるいは周囲から聞こえるネガティブな言葉によって、知らず知らずのうちに、心の振り子がマイナスに振れた状態になってしまうわけです。
では、心の振り子をプラスに振るにはどうすればよいのでしょうか?
答えは簡単で「逆」のことをする、つまりポジティブな言葉で、脳内にプラスのイメージや感情を呼び起こせばよいのです。
「あ、今、気分が今ひとつ上がらないな」と思ったら、口先だけでもよいのでプラスの言葉を口にしてみる。普段から、事態や状況を問わず、このようなプラスの出力を心がけると、脳が勝手に肯定的な錯覚を起こし、心をポジティブな状態にセルフコントロールすることができるわけです。
このような心のセルフコントロール術として、私がメンタルサポートをする方々に、最初に実践してもらう「プラスの出力」のワークがあります。
2人1組で、ジャンケンをします。勝った場合はもちろんですが、負けても、あいこでも、腕を突き上げながら大きな声で「よっしゃ!」と叫んで喜ぶのです。
「負けたのに『よっしゃ!』はおかしいのでは?」
と思うでしょう。でも、いいのです。
この「プラスの出力」での重要なポイントは、たとえ論理的につじつまが合っていなくてもかまわないということです。言葉そのものの意味はさておき、大きな声でプラスの状況のときに発する言葉を口にし、脳に届けることでポジティブな感情を呼び起こすことができるのです。
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人財教育家・メンタルコーチ
慶應義塾大学卒。人財教育家、慶應義塾体育会野球部・慶應義塾高等学校野球部人財育成・メンタルコーチ、一般社団法人能力開発向上フォーラム代表理事、SBTアスリートメンタルコーチ&1級メンタルコーチ。メンタルコーチを務める慶應義塾体育会野球部が第70回全日本大学野球選手権記念大会にて34年ぶり4回目の日本一、慶應義塾高等学校野球部が第105回全国高等学校野球選手権記念大会にて107年ぶり2回目の日本一、箕面自由学園高等学校チアリーダー部がJAPAN CUPチアリーディング日本選手権大会にて4年連続24回目の日本一に輝くなど、実績多数。
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(人財教育家・メンタルコーチ 吉岡 眞司)
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