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"老害"になるかどうかは50代が分かれ道…「仕事がデキる人」から「キレる高齢者」に変わってしまう人の共通点

プレジデントオンライン / 2024年8月25日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/XiXinXing

年齢を重ねると感情がコントロールできず、怒リやすくなる人が一定数いる。こうした“老害”にならないためにはどうすればいいのか。社員教育コンサルタントの朝倉千恵子さんは「年齢に関係なく学び続けることが重要になる。学ぶことをやめてしまうと、脳がどんどん老化していき、幼い子どものようにワガママになってしまう」という――。

■すぐキレる「老害化」は他人事ではない

「ベビーカーが邪魔だ!」「レジが遅い!」

街中で理不尽に怒り散らす高齢者の姿をあなたも見たことがあるのではないでしょうか。いわゆる“老害”。SNSでは職場、公共スペース、飲食店などさまざまな場所での老害エピソードが毎日のように炎上しています。

「老害なんて一部の人で、自分には関係のないこと」だと思っていませんか? そんなことはありません。むしろよほど意識をしない限りほぼ全ての人が老害化すると言っても過言ではないかもしれません。もちろん、私も含めてです。

老害化し周囲からは疎んぜられ、いつも不満をいっぱい抱えながら過ごすのか。周囲からも愛され自らも充実した人生の後半戦を送れるのか。ターニングポイントはずばり、50代です。

■優秀だった人が悪い意味で変わってしまう

先に結論からお伝えすると、老害化を防ぐためには「学び」しかないと私は考えています。

20歳だろうが80歳だろうが、学ぶことをやめてしまった者は老人である。
学び続ける者は、みな若い。

これは自動車王として名高い、ヘンリー・フォード氏の言葉です。この言葉が全てを表していると言ってもいいかもしれません。学びを止めた瞬間に、私たちの成長は止まり、あとは衰退するのみです。

私はこれまでに20万人以上のビジネスパーソンと出会ってきました。その中で若いころにものすごく優秀だった人、活躍していた人が年を重ねてから悪い意味で変わってしまったケースもたくさん見てきました。過去の栄光に酔いしれ、自分の成功体験を上書きできず、何度も同じ話をして、他人の意見には耳を貸さない。そんな人があなたの周りにもいませんか?

学ぶことはどの世代にとっても大事なことですが、私があえて50代がターニングポイントだとお伝えしている理由は2つあります。

■前頭葉が老化し、感情が制御できなくなる

1つは脳機能が衰えるからです。何もしなければ年齢とともに身体が弱ってくるように、脳も使わなければどんどん衰えていきます。脳の老化というと認知症をイメージしやすいですが、老化は感情からはじまるとも言われています。

感情のコントロールを司るのは脳の前頭葉と言われる部分です。幼い子供が感情的な言動をとってしまうのは前頭葉が未発達だから。そして早い人では40代を超えると、前頭葉が萎縮していくそうです。前頭葉が老化すると感情のコントロールが鈍り、自分でも気づかないうちに昔より気難しくなったり、イライラしたりするようになってしまいます。放っておくと、幼い子どものようにワガママになってしまうものです。

ではそうならないためには、どうすればいいのでしょうか? それは、脳に刺激を与えることです。つまり、学ぶこと。学びを通してさまざまなことを感じ、脳を稼働させ続けることは、脳の筋トレをしているのと同じこと。身体以上に脳は何歳になっても鍛えることができます。

50代がターニングポイントとしたもう1つの理由は、周囲からのフィードバックの量が減ってしまうからです。50代にもなれば、会社の中でもそれなりのポジションについている方も多いでしょう。若い頃であれば周囲の方から逐一フィードバック(時に耳の痛い指摘も含め)をもらえますが、年を重ね、立場や肩書きが上がっていくと誰もなにも言ってくれなくなります。

かなり強く意識をしない限りは、自分を客観的に振り返る機会が減ってしまい、裸の王様になってしまいます。裸の王様になることほど、怖いことはありません。

■歳の離れた若い友人を持つ効用

年齢からくる脳の衰え。加えて周囲の人々との関係の変化。これらを踏まえて、50歳以上の方々に強くオススメしたいのが「歳の離れた、若い友人を持つ」ことです。

私も若い頃には、父世代の方々にたくさん可愛がっていただきました。いま自分がその年齢になり、今度は逆に20~30代の若い世代の方々とたくさん交流をさせていただいております。年齢の離れた方から学ぶことはたくさんあります。私とは全く違う価値観を持ち、私が知らないことをたくさん知っている彼らの話はとても刺激的です。

車椅子の老人女性
写真=iStock.com/fotografixx
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fotografixx

ただし、私がどれだけ「年齢の離れた友人が欲しい」と思っていても、彼ら・彼女らが私に対して同じような好意を持ってくれたり、興味を持ってくれたりしなければ、それは単なる自己満足の独り相撲になってしまいます。歳の離れた友人を持つということは、その人たちにとっても魅力的な自分であり続ける努力とセットなのです。

■学ぶとは「自分は未熟だ」と知ること

年を重ねてからの学びの最大の効果は「謙虚さを覚える」ことだと私は考えています。学ぶプロセスの中では、分からないことやできないことに直面して落ち込むことがあったり、失敗して反省したりすることも多々あります。

「学ぶ=知っていることやできることが増える」と思っている方も多いかもしれませんが、むしろ学べば学ぶほど自分がいかに未熟で、まだまだなのかを思い知らされることのほうが多いものです。

学び続ける中で謙虚さを身につけると、くだらないことに腹が立たなくなります。自分の思い通りにいかずにイライラするのは、単にその人が学んでおらず未熟だからです。

自分が未熟であると気づいても悲観する必要は全くありません。それはあくまでも現状を把握したにすぎないからです。人は気づいたときからがスタート。あるべき姿に向かって、昨日よりも今日、今日よりも明日と一歩ずつでもいいから進んでいくそのプロセスこそが、人を成長させ人生をより豊かにしていくと私は思います。

■日本は先進国一「大人が学ばない国」

ここまで学び、学びと連呼してきましたが、そもそも日本の大人たちには学び癖がありません。「学び=学校の勉強」と勘違いしている人も少なくなく、学校を卒業してから止まってしまっている人もいます。

日本は世界と比較しても「大人が学ばない国」です。会社は従業員の学びに投資をしないし、個人でもあえて学ぼうとする人は少数です。これは様々な調査データからも明らかになっています。

OJTを除いた企業の人材投資額をGDPと比較すると、日本はわずか0.1%。それも年々減少傾向にあります。もちろん先進国の中では最低です。アメリカの人材投資額のGDP比は2.08%。その差は歴然です(厚生労働省「平成30年版 労働経済の分析」)。

また、パーソル総合研究所の「APAC就業実態・成長意識調査(2019)」によると、日本の社会人で社外学習・自己啓発を行っていない人の割合は46.3%。他国に圧倒的な差をつけて、ぶっちぎりのワースト1です。読書さえしない人が大半です。

【図表1】社外の学習・自己啓発
パーソル総合研究所「APAC就業実態・成長意識調査(2019)」より

同じ調査でベトナムはわずか2.0%。つまり98%の人が何かしらの学習や自己啓発を自分でやっているということです。

■「今のままで十分」と思ったら終わり

より最近の調査では、業務外の学習は何もしていないと答える人が過半数を超えたとする結果もあります。

【図表2】業務外の学習時間
パーソル総合研究所「学び合う組織に関する定量調査」より

学習意欲や学習時間は、男性は40代以降、女性は30代以降に大きく減少しており、その背景には「学びは若い人や新人だけがやるもの」といった思い込みや、「今のままで十分」という現状維持バイアスがあるとも指摘されています(パーソル総合研究所「学び合う組織に関する定量調査」)。

私たちは誰しも環境に適応しようとする性質があります。学ばない人ばかりの環境にいれば、自分も学ばなくなる人のほうが多いでしょう。本稿のテーマは「老害化したくないなら学びましょう」というシンプルなものですが、年を重ねて学び続けるというのはよほど強く意識をしないと、実は難しいのです。

■学んでいるつもりが偏っていく“落とし穴”

さらに、学ぼうという意欲がある人でも陥ってしまいがちな落とし穴があります。それが偏った情報に左右され、知らず知らずのうちに思想が固まってしまうことです。具体的には「エコーチェンバー」や「フィルターバブル」という現象があります。

エコーチェンバーとは、SNS上で自分と似たような価値観の人から発信された情報や同じようなニュースや情報ばかりが増幅することを言います。実際には価値観が多様化しているはずなのに、SNS上では自分と同じような意見を発信している人ばかりに見えてしまいます。

また、フィルターバブルとは、検索サイトなどのアルゴリズムによって、こちらの意思とは関係なく自分の趣味嗜好や価値観に合った情報が優先的に表示される現象のことを言います。知らないうちに、自分とは関係のない情報や見たくない情報からシャットアウトされてしまいます。

■自分で情報を拾いにいく重要性が増している

昔であれば多くの人が同じ新聞やニュースを見て情報収集をしていました。それぞれ思想の違いはあれど、自分と違う意見の人の声を見聞きする機会もありました。サッカーに興味がない人であっても、大きな試合があればその勝敗がどうなったかは自ずと耳に入ってきたでしょう。

しかし、今では情報が個人に合わせて配信されるので、AさんとBさんで同じSNSを使っていてもそこに流れてくる情報は全く違います。

実際にはそんな閉鎖的な環境の中に身を置いているのに、「どんな情報にもアクセスできているし、幅広く情報収集している」と思い込み、自分のスマホに流れてくる情報が全てで世の中のことが分かったような気持ちになってしまっている人も大勢います。

本当の意味で学びを深めるためには、あえて自分が興味のない分野や自分とは違う意見の人の声を積極的に拾いにいかなくてはいけません。その重要性はSNS時代の今、さらに増しています。

スマートフォンを使うビジネスマンの手
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

■「学ぶ」を始めるかんたんな第一歩

「学ぶ」とはとても意味の広い言葉であり、セミナーを受けたり、学校で勉強したりすることだけが学びではありません。本腰を据えた勉強も大事ですが、それ以上に毎日の暮らしの中に小さな学びをたくさん積み重ねていくことがより重要だと私は考えています。

そのためにもぜひ取り入れていただきたいのが「サムシング・ニュー」という習慣です。毎日1つ新しいことに挑戦してみてください。新しいお店に入ってみる、食べたことのないメニューを頼んでみる、行ったことのない場所に行ってみる、などどんな小さなことでも構いません。

年齢を重ねるにつれて、新しいことに挑戦する意欲も減退していきます。だからこそ、あえてやるのです。現状維持は衰退のはじまり。50代を超えたら、心も身体も頭も、努力をしてようやく現状維持。その先の成長を目指すためには、常に新しいことに挑戦し、学び続ける姿勢が欠かせません。

世の中にはまだまだあなたの知らないことがたくさんあります。たくさんの驚きや発見が、きっとこれから先のあなたの人生をより豊かなものにしてくれるでしょう。

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朝倉 千恵子(あさくら・ちえこ)
新規開拓社長/「トップセールスレディ育成塾」主宰
1962年大阪生まれ。小学校教師、税理士事務所、証券ファイナンス会社などの勤務を経て、人材育成の企業に営業職として入社。営業未経験ながら、礼儀礼節を徹底した営業スタイルを確立し、3年で売上NO1、トップセールス賞を受賞。その後、自身の営業ノウハウを広く伝えるべく独立。2004年6月、株式会社新規開拓設立、同代表取締役に就任。女性の真の自立支援、社会的地位の向上を目指した、「トップセールスレディ育成塾」を主宰。開講から20年経ち、卒業生は延べ3800名を超える。これまでに著作は41冊(累計約48万部)刊行され、近著に『運を整える。』(内外出版社)がある。

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(新規開拓社長/「トップセールスレディ育成塾」主宰 朝倉 千恵子)

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