「私は責任感のある人間です」では落とされる…学歴も能力も問題ないのに採用試験で不合格になる人の共通点
プレジデントオンライン / 2024年8月21日 9時15分
■人事コンサルが見た「就活生があまり理解していないこと」
――就活や入社試験について、就活生と人事では見え方が異なる点もあるかと思います。就活生が持っている幻想と人事が見ている現実の間にはどのようなギャップがありますか。
【曽和】就活生があまり理解していないのが、就活生にとって就活は「自分と合う、自分が活躍できる企業を見つける場」だということです。
第一志望の企業に入るための努力は確かに大切ですが、入社試験を受けていくうちに「この企業は自分に合わないな」と感じることもあります。そういう場合、第一志望の企業が最善の選択肢とは限りません。頑張って入社できたとしても、その企業の環境や仕事内容は向いていないかもしれませんから。
個人的な経験ですが、私は高校受験で関西の名門校・灘高校に合格したものの、いざ入学してみたら周囲の学生のレベルの高さに驚いて自信を失ってしまった経験があります。それだったら、ただ偏差値の高い学校に行くばかりが正解ではなく、地元の国公立高校に入って成績トップとしてやっていた方がよかった、という可能性もありますよね。
私の高校時代のようなケースでは、自分がレベルの高い集団に入って引き上げられるタイプなのか、勝てる環境に入って活躍するタイプなのかを知った上で進路を選ぶことが、よりよい未来につながります。就活でも同じです。合わない企業に無理して入っても、入社後に苦手な能力を要求され続けるのはつらいですから。
■これで「企業の求める人物像」がわかる
ですから、この本のような入社試験問題を解いてみて苦手だと感じた就活生の方がいたら、無理にコンサルティング業界などでの就活にこだわりすぎず、少し考え方を変えてみて、論理的思考力がそこまで必須ではない別の業界を視野に入れることが将来的な幸せにつながるかもしれません。
――では、企業側が求める人物像を就活生はどこから見つけることができるのでしょうか。
【曽和】ほとんどの企業が、求める人物像について「コミュニケーション能力」「主体性」「挑戦心」「協調性」「誠実性」のキーワードを掲げているので、正直わかりにくいですよね。これは企業側がもっと噛み砕いて説明するべき事項だと思います。
現実的な話をすると、企業の求める人物像を就活生が理解するためには、OB訪問や面接の逆質問を使うのがおすすめです。
例えば、コミュニケーション能力といっても傾聴力や交渉力、表現力、調和力などいろいろなベクトルがありますが、その企業はどれを重視しているのかを聞くことで、より理解が深まって周囲との差をつけられます。
また、企業ごとの仕事内容からも求める人物像を類推できます。一般的な仕事内容のイメージから、広告代理店ならコピーライティングを考えたりしますから好奇心旺盛でクリエイティブな思考が得意な人が必要そうですし、生命保険会社なら新規性よりもまずは既存の業務をしっかり安定的に遂行できる、誠実性のある人が求められそうだと想像できますよね。
■逆質問ではこんなことを聞くといい
――入社試験からは少し離れてしまいますが、逆質問では何でも聞いていいのでしょうか。自己アピールの場だとばかり考えていました。
【曽和】逆質問の時間は、企業側が就活生に対して「就職したい」と思ってもらうための動機づけの場でもあるので、基本的に何でも聞いてしまって大丈夫です。その上で、できれば具体的な質問をするのがおすすめです。
企業理念といった抽象的な質問に対しては、答えも抽象的なものになってしまいがちですが、「御社で活躍する人はどんな人ですか?」というように回答者が実体験を思い浮かべながら話せる質問をすると、より具体的な回答が返ってきて理解が深まりますよね。
■人事がスルーしてしまうESの内容
――ここからはさらに広く、就活一般についてのアドバイスをお聞きしていければと思いますが、面接の場で他の就活生と差をつけるにはどうすればよいのでしょうか。
【曽和】引き出しの多い人は魅力的に映ります。
例えば「赤から連想されるもの」というお題に対して、「信号」と答える人は多いですが、「小豆」と答える人は少ないですよね。クリエイティブ職に就く人は特にそうですが、採用担当者にとっていかに意外な答えを返せるかは、周りと差をつけられるポイントでしょう。
また、大人になってくると適材適所という考え方が強くなります。例えば中年での転職などでは、「御社に入って○○が得意になりたい」という変身願望よりも、「○○が得意なので御社で活躍したい」と言われた方が企業はうれしいです。
――そもそも面接にたどり着けない就活生もいますよね。そういった方はESでつまずいているわけですが、ESには何を書けばいいのでしょうか。
【曽和】企業は就活生のファクトを見ています。人事はESに書かれている事実から能力や性格、価値観を類推するわけです。逆に、「私は責任感のある人間です」などと主観による人柄の情報を盛り込む方がいますが、残念ながら人事はそういった部分をほとんど読み飛ばします。事実に立脚していないからです。
■「熱意」より「事実」が大事
そのためESの最低8割は実際の数値や自分が挑戦したことなど、お題に沿った「事実」を記載する必要があります。
企業は就活生が自社についてよく知っているかよりも、皆さんのことを知りたい気持ちが強いのです。だから、「御社について知っています」と下手におもねったり、結論ファーストのシンプルなESを出したりするよりも、読んでいる人がESの内容からあなた個人をイメージできるかどうかに留意して書くことをおすすめします。
――それでは、面接で落とされる場合はどうすればいいでしょうか。
【曽和】ここでもファクトが大事です。面接の場で、あなたが具体的な事実ベースで話しているかを振り返ってみてください。
就活生が抽象的な話に終始してしまっている場合、面接官が就活生の話を深掘りして具体的な内容を聞き出してくれるのが理想ですが、現実には就活生の具体的な情報をうまく聞き出してくれる面接官が少ないのです。
また「相手(企業)が欲しがっているものを自分が持っている」アピールができているかも考えてみてください。
■「同じ質問を何度もする」は高評価の証し
就活では頻繁に強みや弱みを聞かれますが、このふたつは表裏一体で、あなた自身の特徴であることに変わりありません。人間の特徴には善し悪しなどないので、ある企業であなたの弱みが評価されることもあれば、はたまたあなたの強みが裏目に出てしまうこともあります。なので、企業のニーズとあなたの能力が合っているというアピールができているかどうかが大事です。
――それでは逆に、就活生が「この企業は就活生をきちんと評価できているか」を見極める方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
【曽和】面接官があなたにしつこく質問してくるかどうかがひとつのポイントです。それは、皆さんのことをちゃんと理解しようとしている証拠だからです。
一般的に人間の会話は穴ぼこだらけで、就活においても就活生の情報のうち抜けている部分は必ずあるものです。そういうときに経歴や受け答えなどの印象から抜けている情報を臆測で推理するのではなく、ひとつひとつの事実をしっかり確認してくれるのは、企業の誠実さの証です。
質問内容がサラッとしていて話が弾んだ面接の方がうまくいったはずだと勘違いしやすいですが、実は同じような質問を何度もしつこく聞いてくれる企業の方が、あなたという人にしっかり向き合って理解し、評価しようとしてくれているのです。
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2020年6月、西岡壱誠が代表として株式会社カルペ・ディエムを設立。西岡を中心に、貧困家庭で週3日バイトしながら合格した東大生や地方公立高校で東大模試1位になった東大生など、多くの「逆転合格」をした現役東大生が集い、日々教育業界の革新のために活動している。漫画『ドラゴン桜2』(講談社)の編集、TBSドラマ日曜劇場『ドラゴン桜』の監修などを務めるほか、東大生300人以上を調査し、多くの画期的な勉強法を創出した。そのほか「リアルドラゴン桜プロジェクト」と題した教育プログラムを中心に、全国20校以上でワークショップや講演会を実施。年間1000人以上の学生に勉強法を教えている。
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人事コンサルタント、人材研究所社長
愛知県豊田市生まれ、関西育ち。灘高等学校、京都大学教育学部教育心理学科。在学中は関西の大手進学塾にて数学講師。卒業後、リクルート、ライフネット生命などで採用や人事の責任者を務める。その後、人事コンサルティング会社人材研究所を設立。著書に『人事と採用のセオリー』『人と組織のマネジメントバイアス』『「できる人事」と「ダメ人事」の習慣』『コミュ障のための面接戦略』『悪人の作った会社はなぜ伸びるのか?』など。
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(東大生集団 東大カルペ・ディエム、人事コンサルタント、人材研究所社長 曽和 利光)
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