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「私は運がいい」と思っている人は要注意…「運を信じる人ほど成功しづらい」調査が示す残念な結論

プレジデントオンライン / 2024年8月22日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kenkuza

成功する人に共通する特徴は何か。行動経済学のコンサルティングを行う山根承子さんは「運の捉え方や幸運の自覚は、努力に大きく影響する。『自分は幸運だ』『どうにかなるさ』というポジティブさは美徳である一方、努力を妨げてしまう悪癖となる可能性がある。また、『たまたまうまくいっただけ』という人ほど、見えない努力をしている可能性が高い。様々な研究が示しているように、成功するのは『運がいい人』ではなく『必要な努力ができる人』である」という――。

※本稿は、山根承子『努力は仕組み化できる』(日経BP)の一部を再編集したものです。

■運がいい人ほど成功しづらい? 調査が示す残念な結論

ここまで、努力と運の関係を見てきましたが、多くの人が自分の「運」を意識するのはいつでしょうか。いつも意識している人もいるでしょうが、多いのはおみくじを引いたときや厄年になったときなどではないでしょうか。

また、ビジネス成功者の話でもたびたび「運」という言葉を目にします。「成功したければ幸運だと思い込むべきだ」という話や、面接で運を尋ねられたら「自分は運がいい」と言ったほうがいいという話、「成功の最後の決め手は結局、運だ」というような主張を見たことがある人も多いかもしれません。

しかし、「努力」という観点からは、「幸運だと思い込む」ことは本当にいいことなのでしょうか。自分の力よりも「運」の力を頼りにする外的統制は、努力しにくいという結果をいくつか紹介してきました。

同じように、「幸運だ」という自覚も、努力を妨げているのではないでしょうか。

■人を努力から遠ざける考え方

運の存在を信じていない人、つまり「運があろうがなかろうが、とにかく自分の力次第だ」という人はもちろん努力するでしょう。彼らにとって成功に向かう道はただ1つ、自分の努力だけだからです。

しかし、「自分は不運で、運の力には期待できない」という人、つまり運を信じていてもその恩恵が自分には来ないと思っている人も努力をしそうです。

逆に、「自分は幸運なので、何もしなくても何とかなる」という人はたいして努力しないように思えます。

先の記事では、大学の期末試験の点数を予想させることで統制の所在を測定した以下のアンケートを紹介しました。

大学生の期末試験に対する統制の所在
出所=『努力は仕組み化できる』

このアンケートには学籍番号を記入させていたので、Q2の回答タイプごとに、実際の期末試験の点数を比較することができました。結果を見てみましょう(図表2)。

(自分の力によって)どうにかできるだろう 49.68点
(運が期待できないので)どうにもならないだろう 48.68点
(運によって)どうにかなるだろう 46.86点
(自分の力不足で)どうにもできないだろう 45.01点
「運と実力、どちらを重視するか」と実際の成績
出所=『努力は仕組み化できる』

やはり「(自分の力によって)どうにかできるだろう」という、内的統制の強い人たちの点数が最も高くなっています。

そして次に得点が高いのは「(運が期待できないので)どうにもならないだろう」を選んだ人たちでした。授業中に解説した内容をマークシート式で回答するというこの試験では、試験勉強の量(努力量)がそのまま得点に反映されていると考えられますので、「幸運は自分とは関係ない」と思っている人ほど、努力するといえそうです。

そして、運頼みの人たちの点数の低さも予想した通りといえるでしょう。

■「成功しやすさ」を測る12の質問

ここまで見てきたように、「私は幸運なので大丈夫」という考え方は、努力を遠ざけているかもしれません。あなたはどうでしょうか? どの程度、幸運を信じているでしょうか? 信じているとしたら、幸運はどの程度、自分のもとに舞い込むと思っているでしょうか?

この考え方は、「幸運に関する信念を測定する尺度(Belief in Good Luck Scale)」を使えば、簡単に測定することができるのでやってみましょう。

あなたはどのくらい「運の力」を信じているか
出所=『努力は仕組み化できる』

図表3の文章に、「1点=強く反対する」「2点=反対する」「3点=やや反対する」「4点=やや賛成する」「5点=賛成する」「6点=強く賛成する」の6段階で回答してください。

そして、全ての回答の点数を合計してみましょう。*のついている⑦と⑫は反転項目なので、「1点=強く賛成する」から「6点=強く反対する」として計算します。

最高だと72点、最低だと12点で、点数が高いほど、運の存在やその力を信じているということになります。もし得点の高かったあなたが「努力できない自分」に悩んでいるとしたら、それは幸運を信じ過ぎているせいかもしれません。

■素質があっても努力できないのはなぜか?

世の中のどれくらいの人が、努力を苦と思わないのでしょうか? 先の記事では、努力しやすい「内的統制」の人が意外に多く存在することを紹介しましたが、「自分は幸運だ」と思っている人は、実際どのくらいいるのでしょうか?

大学の期末試験における調査で示したように、幸運を期待している人は努力をしない傾向にあるといえそうです。幸運だと思っている人の数を見ることで、内的統制の人の数とはまた別の側面から、「努力しやすい人」と「努力しにくい人」の分布をうかがうことができるでしょう。

著者を含む研究チームは、近畿大学の経済学部と経営学部の学生を対象に定期的にアンケート調査を行っており、ここで運に関する質問をしています。その質問は「あなたはこれまでの人生で運がいいほうか悪いほうか、どちらだと思いますか?」というもので、「いいと思う」「どちらかといえばいいと思う」「どちらかといえば悪いと思う」「悪いと思う」の4つから当てはまるものを1つ選んで回答させています。

892件の回答があった調査の結果は図表4の通りでした。

自分は運がいいほうか?
出所=『努力は仕組み化できる』

多くの大学生は「自分は運がいいほうだ」と考えていて、「いいと思う」と「どちらかといえばいいと思う」を足した割合は77%にもなります。

もちろんこれは1つの大学の、特定の学部の学生というかなり限られたサンプルでの結果なので、日本国民全体に当てはまるかどうかはわかりません。しかし、8割近い大学生が「自分は運がいい」と考えているのは驚くべき結果ではないでしょうか。

ポジティブな考え方が大多数を占めているといえるので、未来は明るい気もするのですが、ここまで見てきたように「努力」という観点からは少し心配になる結果ともいえます。

■「たまたまうまくいっただけ」という人の「見えない努力」

しかしそんな中、「運が悪い」と言い切っている人も7%程度、存在します。彼らはなぜ、自分を幸運、または不運だと思うようになったのでしょうか。

前述のように、経験によって運の重視度が変わるのだとすると、この運に対する信念は個人の中で変化しているかもしれません。そのような個人の中での価値観の変動を捉えることはできるでしょうか。

実はこのアンケートは半年に1度実施しているので、同一個人の時間的変化を追えるようになっています。このアンケートに4回以上回答していて、運に関するこの設問の回答がずっと同じだった人の数は31.8%(回答者689人中219人)でした。つまり、約70%の人は、運の感じ方がその時々で変わっているのです。

いったいどのような出来事が、彼らの運の捉え方を変えたのでしょうか。ある人の運の知覚を変えたイベントを特定できたとしたら、非常に興味深い結果が見えるでしょう。

我々のアンケートでは交友関係の変化、成績の変化、ライフスタイルの変化など、多種多様な項目を測定しているため、その中から運の認識を変えた要素を見つけ出せる可能性はありますが、まだ具体的な分析はできていません。

山根承子『努力は仕組み化できる』(日経BP)
山根承子『努力は仕組み化できる』(日経BP)

運の捉え方や幸運の自覚は、努力に大きく影響します。「自分は幸運だ」「どうにかなるさ」というポジティブさは美徳である一方、努力を妨げてしまう悪癖となる可能性があります。

そういう「運まかせ」にしたくなる思いが芽生えたときほど、「努力」の必要性を思い起こすべきでしょう。

また、「たまたまうまくいっただけ」という人ほど、見えない努力をしている可能性が高いです。様々な研究が示しているように、成功するのはやっぱり、「運がいい人」ではなく「必要な努力ができる人」であるといえるでしょう。

もしあなたが努力したいと思っているのであれば、まず「努力が報われる世界である」と信じること、そして、「幸運に恵まれる」と思い過ぎないことも必要かもしれません。

※参考文献
・Darke, P. R., and Freedman, J. L. (1997) “The Belief in Good Luck Scale” Journal of Research in Personality, vol. 31(4), pp. 486–511.

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山根 承子(やまね・しょうこ)
パパラカ研究所 代表取締役社長
博士(経済学)。専門は行動経済学。大学教員を経て、企業や自治体に行動経済学のコンサルティングを行う法人を設立。行動経済学会常任理事、一般社団法人投資信託協会理事。著書に『今日から使える行動経済学』(共著、ナツメ社)、『行動経済学入門』(共著、東洋経済新報社)など。

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(パパラカ研究所 代表取締役社長 山根 承子 図版制作=キャップス)

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