1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

筋トレやストレッチよりも効果的…休んでも疲れが取れない人に整体師が教えている「日常生活の見直し」

プレジデントオンライン / 2024年8月27日 9時15分

骨盤が回転することで、胸骨が適切な位置に動く(出所=『読むと「全自動」で健康になるすごい本』)

疲れにくい体を手に入れるには、どうすればいいか。整体師の奥中伸さんは「肩こりや腰痛は、骨盤を上手く使えていないことに原因がある。『骨盤→背骨→胸骨』の流れを意識することで背骨が柱のように機能し、体をきちんと支えてくれるようになる。体を鍛えるよりも、骨を上手く使うことを意識したほうがいい」という――。(第2回)

※本稿は、奥中伸『読むと「全自動」で健康になるすごい本』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■「反り腰は良くない」の本当の意味

前回の記事から続けて骨盤の働きを見ていきましょう。骨盤の回転によって生じる力は、いろいろなものを突き上げます。その中でも大切なのが「胸骨(きょうこつ)」の突き上げです。骨盤が回転する円運動では、大きく2つの動きが発生します。

まずは、背骨が上がります。それと同時に、背骨が体の中心方向、つまり前のほうへと移動するのです。この2つの動きが合わさって、ナナメ上方向の突き上げが生じ、胸骨を上げます。みなさんの胸のど真ん中にある骨です。

骨盤のつくり出すさまざまな力のうち、最も実感してほしい部分です。「反り腰はよくない」と聞いたことはないでしょうか? 本稿のイラストも反り腰にも見えて、疑問に思った人もいるかもしれません。

反り腰の問題点は、腰が反っているのにその力が胸骨にまで届いていないこと。それだけです。腰が反って骨盤の回転を生み出せているのに、それが生かされていない。途中で力を伝えられない背骨ということです。

さて、胸骨をナナメ上に突き上げると、それに付随して「肋骨」も上げられます。肋骨が上がると、とても呼吸がラクになりそうですよね。他にもいろいろラクになってくるので楽しみにしておいてください。

■骨盤が上手く使えていれば「コリ」はできない

では逆に、その力がない左の人はどうなるのか?

左の人は腕が落ち放題なのですが、どこかで止まります。止まるということは、何かがつっかえ棒になってくれているか、何かが引っ張ってくれているかのどちらかです。つっかえ棒になっているのは、「肋骨」です。そしてその圧が内臓にもかかります。

もう何もよいことがありませんね。しかし、まだ続きます。落ちようとする腕は、首の筋肉や肩周辺の筋肉も引っ張っています。いつもこの力がかかるので、筋肉はそれに対応するためにかたくなります。これがいわゆる「コリ」です。コリは、落ちようとする力を受け止めるためにつくられているのです。

背骨を押し上げて、上にある重いパーツ(頭と腕)をその背骨に乗せるだけで腕は落ちなくなるので、コリはなくなります。思い出してください、これらすべてのことは「骨盤の回転」から始まっています。たったそれだけ。もう聞くのが嫌になるほどですが、骨盤の回転がないとさんざんなことになります。でも、まだ続きます。

■「良い呼吸」に必要なのは特別な呼吸法ではない

肋骨が上がると、呼吸がラクだと説明しました。実際に整体の現場では、肋骨を意識した呼吸法を指導することがあります。しかし、骨盤が回転して背骨を突き上げていれば、特別な呼吸法をしなくても、「よい呼吸」は勝手に行われるのです。

【図表2】呼吸を邪魔しない肩
肋骨の位置が動くことで、自然と「良い呼吸」ができるようになる(出所=『読むと「全自動」で健康になるすごい本』)

前の項目で、胸骨を上げる力が肋骨も上げると言いました。肋骨を上げる力がかかっていると、その肋骨が、肩が前に来ることを邪魔してくれるのです。肋骨が上がって、横隔膜(おうかくまく)や肺が自由になれば、呼吸が深くラクになります。さらに、肩が前方向につぶれないことによって、呼吸はよりラクになるのです。

肩が前方向につぶれていかなければ、肩にもむだな力がかからないので、腕をより自由に使えます。イラストでも、右の人は肩がまるで胸骨、肋骨、背骨に囲まれて守られているように見えるでしょう。肩や腕がとても自由に動きそうですね。

一方で、左の人はどんどん肩が落ちていき、その重みで胸もつぶれて肋骨も押し下げられていきます。これでは息も入りそうにありません。このように、呼吸ひとつ取っても、腕や肩まで関係しているのです。でも、あまり深く考えないで大丈夫。まず、「骨盤の回転」が起点だということを思い出してください。あとは勝手に備わる力です。まずは、普段の自分の基本骨格が持つ力を本来のものにする。そこを忘れて特別な呼吸法を練習しても、効果は薄いものになるでしょう。

■悪い姿勢は「柱が壊れた家」のようなもの

それは私たちが「構造体」だからです。これを忘れている人が多いのです。人体を、なんとなく「健康」「生命体」というイメージで捉えすぎて、私たちがただの構造物であることの重要性に気づかないのです。

構造物は、物理的につぶれてしまっては使い物になりません。そのためには、まず土台と支える柱があり、内部に空間をつくって、初めて何かの仕事が行えるのです。傾いている家には誰も住みたいと思わないし、上の屋根が落ちそうな作業場では誰もゆっくり仕事はできません。何度も言いますが、発端は骨盤の回転です。この回転が、背骨を上げ、肋骨を上げ、肩を後ろに持っていき、またその力で背骨自身を押し下げ、安定させるのです。

【図表3】背骨を柱として使う
背骨が「柱」として機能していないと、体が重力に押しつぶされてしまう(出所=『読むと「全自動」で健康になるすごい本』)

さて、骨盤や背骨の理想的な動きが、なんとなく分かってきたと思います。骨盤を回転させて、背骨を立てて「柱」として使っていくこと。それができないと、どこか他の部分が柱の役割を代行することになってしまいます。今回はそれを見ていきましょう。

図表3の右の人は背骨が柱として機能していますので、重力の力は背骨から足にきれいに流れていきます。重力の力とは「自分をつぶす力」です。これがきれいに流れていれば、自分はつぶれません。背骨をしっかりつぶすと、自分はつぶれないのです。シャキッと立っているのにラクそうですね。では左の人は? 背骨は柱として機能していません。

■背骨が機能しなくなると、筋肉が無理をすることに

そのため、自分をつぶす重力が、体のお肉の部分にそのままかかります。なんだか苦しそうです。一番重い頭がどんどん下がって、その力が背骨を後ろ側に出していきます。こんな状態で用事や仕事をするのは、本当に苦しいことでしょう。

その結果、「頑張って踏ん張る」ことを強いられます。踏ん張るのは「筋肉」です。背骨が柱として機能してくれず、どんどん自分がつぶれる方向に行くので、仕方なく筋肉で支えて踏ん張るのです。これが「コリ」となっていきます。

建物で言えば、柱が機能を失って壁側に力がかかり、その壁にある窓が歪(ゆが)んでしまって開閉がしにくい……、みたいな状態です。柱が柱として機能してくれないと、他の何かが力を受け持つしかないのです。

力を受け持つには「かたさ」が必要で、やわらかいお肉ではダメなのです。だから踏ん張ってわざわざ「かたいお肉」=コリにして耐えるしかありません。体はなんと健気(けなげ)なことでしょうか。柱が仕事をしないせいです。骨が仕事をしてくれさえすれば、筋肉は筋肉の仕事に専念できます。

筋肉の仕事は、「動き」を生み出すことだけです。決して「上からつぶれてくる自分の体を支えること」ではありません。

■骨盤が機能すれば、肩こりも腰痛も改善する

また、筋肉によけいな仕事をさせ続けると、筋肉の力の入れ方が分からなくなっていきます。力を入れたときの感覚、逆に力を抜いたときの感覚。特に脱力は、実はとても高度な技術です。これが整体的な「体の実力」を決めているとも言えます。床に寝転んで、本当に力を抜いてリラックスできる人は、実は少ないのです。

たいてい、寝ていても、どこかしら力みが残っています。寝るときにだけ力を抜こうとしても、できません。普段から骨を骨として使って、筋肉によけいな仕事をさせていない人だけが、ゆっくりぐっすり眠れる人なのです。

そして骨に骨の仕事をさせる発端は、何度も言うように「骨盤の回転」です。これがすべての出発点でしたね。筋肉を充実させたいのなら、筋トレではなく骨盤や骨をまず考える。加齢で筋肉が弱ってきたと思うなら、まず骨盤や骨を考える。そして自分の「矢印」を知る。それだけでずいぶん立派な体になっていきます。この矢印を知らずして、いくら筋肉を考えてもダメなのです。

肩こりで悩んでいる人も、腰痛で苦しんでいる人も、その原因のほとんどは骨を骨として使えていないことです。代わりに筋肉が頑張りすぎている。こんなもったいない話はないと思います。

■「悪い姿勢」は内臓にも影響を与える

整体で筋肉のコリを手技でほぐした後、私は必ず日常生活での骨盤の動きや姿勢を見直してもらいます。それにより、肩こりや腰痛から解放されていく人がたくさんいます。

用事のしすぎ、仕事のしすぎで肩こりや腰痛をつくっていたのではなく、骨を骨として使っていなかっただけなのです。骨を骨として使い、筋肉には筋肉の仕事に専念してもらう。これだけで、あなたの体は本来の力を発揮していきます。

【図表4】骨が内蔵の働きを決める
姿勢が悪いままだと、内臓にもダメージが及ぶ(出所=『読むと「全自動」で健康になるすごい本』)

さて、もう一ついきましょう。背骨が柱の役割をしてくれないと筋肉が踏ん張って「コリ」をつくると言いましたが、体の前側にはお肉以外にもまだ何かありますよね? そうです、内臓です。背骨が柱の役割をしないので、体がつぶれていく方向に力がかかっていくと……、その場所にいる内臓さんたちはどうなるのか?

内臓もお肉ですから、上から押さえられるとつぶれます。体をつぶす力を、内臓が柱の代わりに受け止めて、つぶれているのです。胃には胃の本来の仕事があり、肝臓には肝臓の本来の仕事があります。そこへ「柱の仕事も同時にやれ」と言われたら、どうなるか? 当然、本業にも影響が出てくるでしょう。

■「骨盤の回転」が健康への第一歩

誰だって、本業に加えて他の人の仕事を押し付けられたら、パフォーマンスは落ちます。内臓のパフォーマンスが落ちると、何が起こるか? 一言でいえば、代謝が下がります。だからダイエットをするなら、運動する前に自分の骨格の矢印を見直すべきです。

奥中伸『読むと「全自動」で健康になるすごい本』(KADOKAWA)
奥中伸『読むと「全自動」で健康になるすごい本』(KADOKAWA)

骨を柱として使い、内臓の代謝機能を上げることが先にやるべきことです。さらに、内臓に上からの力が長期間かかり続ければ、内臓そのものの疾患の原因にもなりかねません。骨盤を回転させ、背骨を背骨として機能させることがどれほど重要なのか。それができないと、どうなってしまうのか。恐ろしい話とすら言えます。

でも、怖がってはいけません。逆に言うと、骨格を整える術(すべ)を知り、実践していけば、思いのほかラクによい体は手に入るのです。骨盤は回転させるだけ。そこに頭を乗せる、肋骨が上がって腕を後ろに押す、その腕の重みも背骨に乗せる……、あとは重力が押し下げて背骨を安定した柱にしてくれる。私たちが行うべき「努力」は意外に少ないのです。

「骨盤の回転」というほんの一つのきっかけが、その後の「全自動」を生みます。健康はものすごい努力で獲得するものではないはずです。なぜなら、私たちという生命は、全自動で生まれてきているはずだから。

----------

奥中 伸(おくなか・しん)
整体師
奥中整体主宰。1975年生まれ。会社員を経て、2003年より奈良県で整体を開始。当初は、一般的な「コリをもみほぐす施術」を行うも、それが対症療法でしかないことに限界を感じ、より本質的な整体を探求する道へと入っていく。まず「人体は物質であり、構造である」という点に着目し、「体の正しい矢印」を知ってもらうことで、物理的・人体力学的に理にかなった体に導いていく教育的アプローチを実践。中でも、骨こそが力を伝える最重要パーツと捉え、日常動作から見直し、指導する整体に行き着く。フォロワーは4万人(2024年7月現在)。

----------

(整体師 奥中 伸)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください