頭の回転が超速になり「メールチェック時間が半分に減った」…科学的な"目のトレーニング"で人生を変える方法
プレジデントオンライン / 2024年8月30日 16時16分
■雑誌の1行17文字を「1ブロック」として読む
準備ができたら、小さな四角形からひとつずつ順に、大きな四角形を見ていきます。一つの四角形は0.5秒間隔で見ていきます。一番外側の四角形まで見終わったら、もう一度、一番小さな四角形から順に見ていきます。
トレーニングの合計時間は一般的に180秒を基準にしますが、これにこだわる必要はありません。90~180秒を目安にしましょう。
「高速間違い探しトレーニング」は、新聞や雑誌に掲載されている「間違い探しゲーム」に似たものです。たとえば、2つの絵が並べてあり、違っている部分を探すものです。その場合、多くの人は絵の左上からZの文字を描くように視線を動かして、チェックしていくはずです。速読のトレーニングでは、全体をぱっと見るようにします。絵の中心に視点を合わせて全体を見る、絵の四隅を見る感覚で全体を見るイメージです。その状態で、どこに違和感があるかを見つけます。制限時間を設けることも重要です。時間を決めてより速くすべての間違いを見つけていきましょう。目安時間が決められている場合には、その3分の1程度を目標にするといいでしょう。競い合う相手がいれば、さらに効果的です。素材は新聞や雑誌の「間違い探しゲーム」をそのまま利用してかまいません。
「雑誌一行読みトレーニング」は、雑誌を利用して、視野を広げる方法です。『プレジデント』の場合、記事は基本的に1行が17文字になっています。トレーニングを始めたばかりの人が1行を塊で見て理解できる文字数は10文字前後ですが、トレーニングに慣れてきたら、雑誌を使って1行単位で文字を塊で見る練習をしましょう。文字をブロック単位で見る感覚が摑めるはずです。手元に雑誌がなければ、スマホでニュース記事を表示してもかまいません。スマホに対応したニュースサイトの場合、1行に25文字前後で表示されるケースが多いでしょう。その場合、1行を半分ずつ、左右に分けて見ると、1ブロック11~14文字にできます。
実はスマホ用に最適化された文章には、「読んで」理解よりも「見て」理解のほうがやりやすい特徴があります。その意味ではスマホでトレーニングをしたほうが効果的ともいえます。「読む」→「見る」を切り替える感覚が摑みやすいでしょう。難点は横書きが多いことです。書籍は縦書きが基本なので、書籍の速読を目標とする場合は、縦書きの雑誌でトレーニングしたほうがいいでしょう。
本を読んだときの認識レベルには、4段階あります。レベル1では、文字が多く書かれているか、数字や記号が多いかが認識できます。レベル2は、見たことがある文章かどうかが認識できます。レベル3は、知っている言葉と知らない言葉を分けて認識できます。レベル4は、言葉や文章の意味が明確にイメージできます。速読の場合、まずはレベル2~3で十分です。しかし初心者は1で止まってしまうことが多いです。2~3に引き上げるには、トレーニングが必要です。トレーニングすることで、文字を見たときに「何が書かれているか」を理解する瞬間認識力が上がります。
■「1文字でも多く認識してやる」
トレーニング方法の一例が「高速ページめくり」です。1冊を5秒や8秒、10秒と、短い時間で何回もめくり、何が書かれていたかを読み取るトレーニングです。はじめのうちは、何が書かれているかわかりませんが、繰り返すうちに目が高速に慣れ、だんだん認識できてくるのです。
まずは、縦書きでソフトカバーの本を用意します。新書サイズであればより使いやすいでしょう。内容は自分の知っている分野のものが理想です。何がよいかわからない場合には、小説を選んでください。自分が馴染みのある分野や小説には、イメージしやすい言葉が多く使われています。何が書かれているかをイメージしやすくなります。
準備ができたら、本の下側の角を右の手のひらにのせます。親指と人差し指で表紙を支えて、片手で本を持ちます。次に左手をページに添えて、右手の手首を返すようにして、ページをパラパラめくっていきます。1冊分を1~2秒の高速でめくりながら、最初から最後のページまでを眺めていきます。これを60秒ほど繰り返します。
それが終わったら、少し速度を落とし、1冊分を4秒程度でめくります。これも60秒程度繰り返したら、次は1冊分を8秒程度のスピードで、再度60秒程度繰り返します。そして最後に1ページ当たり、0.5秒程度のスピードで1ページずつ、めくっていきます。見開きを1秒ずつ見ていく感じです。1冊分を1~2秒でめくる段階では、書かれている言葉はほとんど見えませんが、それでも「1文字でも多く認識してやる」という気持ちで取り組むことが重要です。また、最初のうちは本の中心部分が見えるほどには開けないことがあります。できるだけ、本の中心まで見えるように開くのが理想ですが、厳密に考えるよりも「高速で文字を見る」ほうを優先してください。はじめは何が書かれているかわからなくても、繰り返しているうちにだんだん認識できるようになっていきます。
■「忘れるのが当たり前」なら頭の回転が速くなる
速読は、大部分を忘れることを前提としています。そもそも記憶は、思い出し方によって①再認(再認識記憶)、②再生(再生記憶)に分けられます。一字一句は再現できないけれど「見たことがある」と認識できるのが、再認識記憶です。一方で読んだ文章を一字一句再現できるのが再生記憶です。速読で実現できるのは、このうち再認識記憶です。これは普通の読み方でも同じです。もし、再生記憶を実現したいと考えるなら、速読と記憶術を組み合わせるといいでしょう。たとえば①何度も繰り返し読む、②自分の経験と関連付けて覚えるようにする、③紙に書き出す、などの方法があります。
記憶には前述の再認識記憶、再生記憶の2つに分ける以外に、「短期記憶」と「長期記憶」に分ける方法があります。短期記憶は一時的に情報を覚えているだけですが、長期記憶は時間が経っても、思い出すことができます。脳にインプットされた情報は、最初はすべて短期記憶として保存されます。しかし、その情報が使われないと、脳が「不要な情報」と判断して、消してしまいます。脳に「必要な情報」だと判断させるには、記憶した情報を何度も使うのが効果的です。言い換えれば「反復学習」です。何度も繰り返し読むことで、長期記憶ができるようになります。反復学習で重要なのはスピードです。とくに最初は短期間で反復サイクルを増やすのが有効です。そのときに「忘れるのが当たり前」の心構えで再認識記憶の情報量を増やすことを目指してください。
自分の経験と関連付けて覚える方法は「エピソード記憶」とも呼ばれ、長期記憶に分類されます。経験は文字と比べて、思い出しやすいものです。何度も読み返しながら、文字と経験を結び付けていくと、記憶を定着させることができます。関連付ける経験が見つからない場合は、読んだ内容を自分なりに理解して書き出してみるといいでしょう。「書き出す」フォーマットを気にする必要はありません。自分の理解に沿って、どんどん書き出してください。「書き出す」というアウトプットが経験となって、文字と結びつくのです。
こうして速読を身に付けると、ビジネス上でも大きなメリットが得られます。たとえば情報処理能力が高まることです。本を読むことは、書かれている文字情報を処理することにほかなりません。速読によって処理能力そのものが高まり、頭の回転が速くなります。私が速読を教えている生徒さんの中には、「メールチェックが半分くらいの時間で終わるようになった」という人もいます。同じ仕事をこれまでよりも短い時間で処理できれば、時間に余裕ができて、割り込みの仕事にも柔軟に対応できるようになります。時間資産は1日24時間しかありません。しかし、速読をマスターすることで使える時間を増やすことができるのです。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月30日号)の一部を再編集したものです。
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Exイントレ協会代表理事
速読を学び始めて8カ月後に、日本速脳速読協会主催の2010年速読甲子園で準優勝。翌月開催された特別優秀賞決定戦で速読甲子園優勝者を下して日本一になる。現在はさまざまな分野において速読を生かした研修、指導を行っている。近著の『速読日本一が教える すごい読書術』(ダイヤモンド社)はベストセラーに。
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(Exイントレ協会代表理事 角田 和将 構成=向山 勇)
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