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「サングラスは相手に失礼」と言っている場合ではない…眼科医が警告する「目の日焼け」が招く重大リスク

プレジデントオンライン / 2024年8月22日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/franckreporter

目の健康を保つにはどうすればいいのか。眼科医の平松類さんは「目は体で唯一むき出しの臓器で、紫外線のダメージを直接受けている。紫外線を甘く見ると最悪の場合は失明につながる重大な病気になる恐れがある」という――。

■目は体で唯一の“むき出しになっている臓器”

酷暑と言われるほど暑い日が増えています。日差しが強く紫外線が多いので「日焼け止めを塗る」という対策は多くの人が行っているのでないかと思います。

ただ、そのおかげでシミ予防などはできていても、目の対策まで気をつかっている人はどれほどいるでしょうか。目は「体で唯一むき出しとなっている臓器」です。何も対策をしなければ、目は守れません。

目というのは、外からの光を取り込むことによってものを見るため、他の臓器と違い光が入るように透明になっています。光というのはエネルギーを伝播します。特に日光は紫外線のエネルギーが強く、重篤な症状を引き起こします。場合によっては失明の危機さえある病気を起こしてしまうのです。

しかし、日本人は目の紫外線対策が不十分と言われています。では、紫外線は目にどういう影響を与え、どういう病気を引き起こしてしまうのか? そしてどのような対策が適切なのか? をお話しできればと思います。

■紫外線は目にどのようなダメージを与えるのか

紫外線による目のダメージは、すぐ起きるものと、時間をかけて起きるものがあります。すぐ起きるもので有名なのは「雪目(ゆきめ)」です。雪目とは、スキーやスノーボードなどで雪がある場所に行って、ゴーグルをしない事で起きる現象です。

紫外線が雪に反射することで、上からも下からも目に当たり目の角膜に傷がついてしまうのです。そのため痛みが激しくなり、見えなくなって救急外来を受診する人が多いです。痛みにより涙が出ることも多い病気です。

痛みが強いものの、きちんと治療をすれば視力も回復して痛みも改善するのが一般的です。この「雪目」は、夏場でも砂浜などでずっと遊んでいると雪と同じように日光の紫外線や、地面からの照り返しで同様の現象がおきますので注意が必要です。

次にゆっくり起きるものとしては、「翼状片(よくじょうへん)」・「白内障」・「黄斑変性(おうはんへんせい)」があります。白内障は世界の失明原因第1位、黄斑変性は日本人の失明原因第4位です。

「翼状片」とは、白目の組織が翼のように黒目に向かって這い出して来るという現象です。目の表面に紫外線があたり、その反応として起きる病気です。“見た目で気になる”という以外にも黒目(角膜)をゆがませてしまうので、強い乱視を生じて見えにくくなってしまいます。

また異物感がでて絶えずごろごろとする感覚があります。治療としては一定以上大きくなると手術で取り除くことになります。

■紫外線が白内障のリスクをあげてしまうワケ

「白内障」は耳にしたことがある方が多いと思います。人間であれば99.9%、加齢とともに誰しもなる病気で、世界の失明原因第1位です。目の表面より少し奥にある水晶体というレンズにおきる病気ですが、本来透明である水晶体が紫外線によるダメージで白く濁ってしまうのです。

例えると、“透明な卵の白身が、熱を加える事で白くなる”のと同じような現象です。白く濁ってしまうので、目に光が通りにくくなり視力が下がりますが、日本では高度な医療が発達しているので治療により改善ができます。

「では、紫外線を浴びようが浴びまいが関係ないのでは?」と思った方もいるかもしれません。でも紫外線を浴びれば浴びるほど早くに白内障になってしまうのです。

白内障は50歳代で50%、80歳代で99.9%発症するわけですが、おおむね70歳代で白く濁りが強くなり、日常生活にも支障がでて、その汚れたレンズをとる手術する人が多いのです。

それが紫外線を浴びすぎてしまうと、40・50代で手術をすることになる可能性が高まるわけです。やはり手術というのはリスクもあるので避けたいものです。早い年齢での手術とならないためにも紫外線は避けるべきなのです。

目
写真=iStock.com/Toa55
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Toa55

■“治療しても治らない”目の病気にかかることもある

そして目の奥の網膜に紫外線のダメージが溜まる「黄斑変性」という病気にも注意が必要です。

黄斑というのは目の奥にある網膜の中でも最も大切な場所で、人間はここに光を集中させてものを見ています。そのためダメージを日々受けているのですが、そのダメージを消去する黄色い色素があるので“黄斑”というわけです。

この色素は40歳から徐々に減ってしまうため、紫外線などの光のダメージが蓄積しやすくなってダメージの回復ができなくなります。結果として、目の奥がむくんでしまったり出血を起こしたりします。そうすると歪んで見えたり視力が低下してしまうのです。

日本人の失明原因の第4位となっています。

「4位だから大丈夫では?」と思われるかもしれません。しかし、年々数が増えている病気で、米国では失明原因2位となっており、日本より多くの方が黄斑変性で失明しています。理由としては食生活が原因ではないかと言われていて、脂質が多い食事には要注意です。

治療法としては、目に定期的に注射して悪化を食い止めるというものになります。目に注射というだけでも怖いですが、費用も莫大です。1本10万円台後半のお薬です。16万円だとしても3割負担で4.8万円、両眼注射すれば9.6万円です(薬代のみで診察代などは別)。

しかも1回の治療では収まらず、定期的に治療を受けるのが一般的です。例えば2カ月に1回注射をうければそれだけで57.6万円かかってしまいます。

(収入に応じて高額療養費などありますが)つまりは一度発症すると「なかったことにする」という治療はできず、「悪化を食い止める」治療しかできないのが問題なのです。特に加齢黄斑変性は加齢とともに生活スタイルが重要な要素になってきます。

■どのくらいまでなら紫外線を浴びてもよいのか

ここまで読んでいただいた方は「何時間・何分ぐらいまでなら紫外線を浴びてもいいんですか?」と疑問を抱く方もいると思います。

結論から言うと「一概には言えない」ということになります。それは“日光を浴びる”と言っても、紫外線量は場所や時間、季節によって全く違うからです。

紫外線の強さを指標化した「UVインデックス」というものがあります。ここで気象庁の観測値のデータを見てみましょう。かつては札幌市や那覇市でも観測していたのですが、現在は茨城県のつくば市だけになっているため、例えば「2024年8月5日のつくば」のUVインデックス(図表1)を見ていただきます。

これを見ると、朝8時には2.6程度なのが、3時間後の11時には8.3になっています。ちなみに環境省は、8以上の場合は「できるだけ外出を控えたほうがよい」と呼び掛けています。

【図表1】2024年8月5日 茨城県つくば市の紫外線の強さを指標化したグラフ
出典=気象庁ホームページ「時別UVインデックス(観測値) 2024年8月5日 つくば」

紫外線量はこれだけ時間によって違う上に、場所が異なればまた違うものなのです。

そして何より「どのぐらいの時間浴びても大丈夫か?」への回答は、人それぞれの持つ回復力によっても変わってしまう、ということもあります。そのため「問題のないギリギリのラインはここまで」と言うのが難しいのです。

例えばタバコに関しても、沢山吸っても体に大きな影響が出ない人がいますが、わずかな喫煙でも影響する人がいるのと似ています。ですから、タバコは「1日○本までなら大丈夫!」とは言われず、「なるべく吸うのは避けよう」と言われることが多いわけです。

ただ、ここまで説明してきたように、紫外線は目にダメージを与える可能性が非常に高いものに変わりはありません。ですから、少なくとも目にとっては、“紫外線はなるべく避けるべきもの”と捉えていただければと思います。

■紫外線から目を守るには「サングラス」「帽子」「日傘」

では紫外線から目を守るために出来る対策は何があるのでしょうか?

一つにはサングラスがあります。サングラスの場合は「何色がいいのか?」という質問を受けることがありますが、実は色は関係ありません。あくまで紫外線は見えない光ですので、青だろうが、黒だろうが効果は変わらないと思ってください。

サングラス
写真=iStock.com/primeimages
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/primeimages

しかしサングラスをつけると「見た目が気になるから嫌だ」という人もいるでしょう。特に日本ではその傾向が顕著で、「サングラスは失礼」と考える方もいます。

これは、日本は感情を目で読み取り、海外は口で読み取るという文化に関係があるのでは? とも言われていますが、目を紫外線から守るためにはつけたほうがいいでしょう。もしどうしても気になる場合は、透明なメガネに紫外線のカット機能を組み込んだものもあるので、そういったサングラスを使っていただいても問題ありません。

ただわかっておいてほしいのは、持病がありサングラスを使わざるを得ない方もいるということです。「ドライアイが強すぎて目を開けていられない」、「緑内障で眩しくてサングラスをしなければいけない」という人が世の中にはいます。

「サングラスは失礼だ」と切り捨てずにそのことは理解いただければと思います。

サングラス以外にも紫外線から目を守る方法としては帽子・日傘があります。特に帽子はつばの長い帽子の方が目に光が入りにくく効果的です。帽子・日傘は、直接目に光が入ることを防いでくれるので、積極的に使用いただければと思います。

■「充血」「痛み」の症状が出たら眼科へ

では目に紫外線を入れすぎて充血がひどい・痛みがあるという場合はどうすればいいのでしょうか?

まずは眼科に行ってください。特に大きな異常がなければ冷やすというのも一つの手です。冷たくしたタオルを準備し、目をつぶって瞼の上に冷やしたタオルを置く事で冷却して痛みを和らげることが可能となります。

それでは「翼状片」になった場合はどうすればいいのか? これは普段から鏡でチェックして、大きくなっていないかどうかを見ておいた方がいいです。もし大きくなっていたり、ごろつき・みにくさが出てくれば眼科に行くべきです。

また、「白内障」の場合は、日々、視力や見え方をチェックするとよいです。異変を感じたら眼科で相談してください。

「黄斑変性」に関しては紫外線対策も大切ですが、加齢変化なので食事も重要な要素となります。目の生活習慣病とも言われるゆえんです。日々の食生活で、緑黄色野菜を取る事が悪化予防となります。

この黄斑という、目でものを見る中心の色素を補うには、ルテインという栄養素が特に重要といわれています。ケール・ゴーヤ・ほうれん草など緑の濃い物や卵などの黄色いものに含まれていますので、40歳をこえたらこまめに摂取するほうがよいでしょう。タバコもリスク因子といわれていますので注意が必要です。

■“シミ”は皮膚だけでなく目にもできる

病気ではないのですが、紫外線を浴びる事で皮膚にシミができるように、目にもシミができます。皆さんは鏡をみたときに「赤ちゃんの白目はきれいなのに、年齢を重ねるにつれて白目にくすみが出てきた」「シミがでてきた」と感じたことはないでしょうか?

目も、紫外線により茶色くなったり黄色く変化したりします。

いくら肌やそのほかの見た目をキレイにしても、目がくすむと年齢を感じさせてしまうので、目に紫外線を当てないようにケアをすることはあなたの見た目年齢を若く保つうえでも重要なのです。

また、見た目の変化では、色素班というシミ以外に瞼裂斑(けんれつはん)というのもあります。これは黒目と白目の境の場所の白目が盛り上がってしまう状態です。黄色くくすんで見えてくることもあり、特に水平のラインの場所が白く変化してきます。異物感が出ることもありますし、見た目にも目立ってしまう事があります。

一番の原因は紫外線ですが、目をこすってしまうなどの物理的な刺激も悪影響となりますので、気を付けていただいたほうがいいでしょう。

特に近年は、目の周りのクマとり手術や美容の皮膚レーザーなど、皮膚に対しては多くの美容的アプローチをされる方がいますが、目のケアを怠ってしまうと瞼と目の年齢差が際立ってしまいます。

こうした美の観点も含め、紫外線が強い日にはサングラスや帽子・日傘を使うなど、毎日の対策・目のケアを怠らないようにしていただければと思います。

鏡を見る女性
写真=iStock.com/RunPhoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RunPhoto

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平松 類(ひらまつ・るい)
眼科医 医学博士
愛知県田原市生まれ。二本松眼科病院副院長。「あさイチ」、「ジョブチューン」、「バイキング」、「林修の今でしょ! 講座」、「主治医が見つかる診療所」、「生島ヒロシのおはよう一直線」、「読売新聞」、「日本経済新聞」、「毎日新聞」、「週刊文春」、「週刊現代」、「文藝春秋」、「女性セブン」などでコメント・出演・執筆等を行う。Yahoo!ニュースの眼科医としては唯一の公式コメンテーター。YouTubeチャンネル「眼科医平松類」は20万人以上の登録者数で、最新情報を発信中。著書は『1日3分見るだけでぐんぐん目がよくなる! ガボール・アイ』『老人の取扱説明書』『認知症の取扱説明書』(SBクリエイティブ)、『老眼のウソ』『その白内障手術、待った!』(時事通信出版局)、『自分でできる!人生が変わる緑内障の新常識』(ライフサイエンス出版)など多数。

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(眼科医 医学博士 平松 類)

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