登校するでも休むでもない…夏休み明け「学校に行きたくない」と言うわが子に親が提案したい"第3の選択肢"
プレジデントオンライン / 2024年8月24日 8時15分
■9月1日は子どもの自死がもっとも多い
夏休みの終わりが近づくと、子どもの元気がなくなったり、憂うつそうになったりすることがありますね。また近年、夏休み明けすぐは特に、子どもの自死に注意が必要だといわれています。どうしてでしょうか。
それは児童・生徒の自殺者数が、9月に飛び抜けて多いからです(※1)。児童というのは小学生、生徒というのは中学生以上を指します。厚生労働省の「18歳以下の日別自殺者数」によると、新学期の始まる9月1日にとりわけ多いことがわかります。これは今だけでなく過去40年を通しての事実です。
大人であっても、夏休みなどの連休を楽しく過ごしたあとの仕事は憂うつになりがちです。仕事や職場で何らかの問題を抱えていればより一層、気が重くなりますね。子どもも同じです。学校で何らかの問題があると、休み明けには嫌な気持ちになるでしょう。とりわけ子どもはまだ世界が狭く、家庭と学校だけしか居場所のないことが多いので、学校がつらいと大人以上に苦しいといえるでしょう。だからこそ、自死が増えてしまうのです。
※1 厚生労働省「学生・生徒等の自殺の分析」
■学校に行きたくない理由はさまざま
では、子どもが学校に行きたくない理由はなんでしょうか。
大人から見ると、友達とうまくいっていないのでは、ということを最初に考えがちです。確かに仲の良い友達がまったくいなかったり、いじめられていたりすると学校に行きたくなくて当然でしょう。仲良しの友達がいても、一部の子にからかわれたり、嫌なことを言われたりすると通えなくなる場合もあります。
次に学校の勉強や運動についていけないと、嫌になることがあります。そのほか集団行動が苦手、担任の先生と合わない、自分ではなく他の人が怒られているのだとしても大声や叱責などを聞くのがつらい、給食が食べ切れない、起立性障害がある、発達障害がある、発達障害の二次障害があるなど、本当に子どもによってさまざまです。
学校に行きたくない理由は一つではなく、いくつも重なっているのかもしれません。また本人に尋ねても言語化できなかったり、親には心配をかけたくなかったり、恥ずかしいという気持ちが先だったりすると話せないこともあるでしょう。本人にも理由がわからないことさえあります。
■腹痛などの身体症状が出ることもある
また、子どもが心の問題だけでなく、「お腹が痛い」「気持ちが悪い」「頭が痛い」などの身体症状を訴えることもあります。そういう場合は、かかりつけの小児科(中学生まで)や内科(高校生)を受診しましょう。
受診の際、子どもは小学生以上でも、親に答えてもらおうとしたり、医師の質問に直接は答えず親のほうを向いてボソボソ話したりすることがあります。外から見てわかる症状はそれでもいいかもしれませんが、本人の気持ちやどう感じているかは本人にしかわかりませんね。保護者が代弁するのではなく、なるべく本人が答えるようにしましょう。
それから保護者が「学校が嫌だから体調が悪いと言っているだけなんです」などと勝手に答えるのも控えてください。詐病だと疑われたり、心因性の症状だと決めつけられたりするのは、お子さんにとって大変つらいことです。自分のことをわかってくれない、見当違いのお説教をされたと感じてしまったら、大人に助けを求めなくなる恐れがあります。
本当に体調が悪いのかもしれませんし、たとえ嘘の症状で休みたいのだとしても、「助けが必要」だというサインであることは間違いありません。小児科や内科を受診して身体的な病気が除外できれば、他のふさわしい診療科を見つけたり、支援センターに繋がったりすることができます。
■保護者も一人で抱え込まずに相談を
一方、保護者にとっても、子どもが学校に行きたがらないというのは、とても大きな問題です。この子は将来どうなってしまうのだろうと不安になるでしょうし、保護者である自分のせいかもしれないと責任を感じるかもしれませんし、日々のお世話も大変になるでしょう。そんなときには一人で悩まず、配偶者や親族、友人、子育て支援センター、児童相談所などに相談しましょう。
誰にも相談せず一人で抱え込んだ結果、何らかの要因で疲れ果てている子どもを「どうして学校に行けないの?」と問い詰めたり、「みんな学校に通えているのに、心が弱すぎるんじゃない? ここで頑張らないと」などと厳しく責めたり、「自分を変えないとダメ」と人格を否定したりすると、追い詰めることにもなりかねません。
学校を休ませていいのかどうかについて迷ったときには、LINEの「学校休んだほうがいいよチェックリスト」を試してみるのもおすすめです。これまで多くの不登校の子どもたちを支援してきた「Brunch(ブランチ)」「キズキ共育塾」「不登校新聞(現在はウェブメディア「不登校オンライン」)」が作成・運営、精神科医が監修していて、迷ったときに助けになるものです。
■登校するかしないかの二択ではない
まずは、お子さんが「学校に行きたがらない」という事実を受け入れ、本人がどう感じているのか、心の声に耳を傾けてください。自分の気持ちを最初は上手く言葉にできないかもしれませんが、忍耐強く待ちます。このとき、安易に否定すると「二度と言わない」と決意させてしまうかもしれませんから気をつけてください。
次に、今後どうしたいのかについても聞いてみましょう。心身ともに疲れ果てていて、いったん自宅で休みたいのかもしれません。もしくは教室へ行くのは無理でも、保健室や図書室、フリースクール、塾でなら勉強ができそうだとか、オンライン授業なら参加できそう、ということかもしれません。
学校にも、どうしたらいいか、またどういう対応をしてもらえそうか相談してみてください。担任の先生、養護の先生、スクールカウンセラー、校長先生や副校長先生が対応してくれると思います。敷地内に入ることができたら出席にしてくれたり、保健室登校やオンライン授業ができたりするかもしれません。市町村によっては不登校の子が通える支援教室があったり、民間のフリースクールがあったりする場合もあるでしょう。相談先は、複数あったほうがいいのです。
■信頼できて気軽に話せる大人が必要
以前、頭痛を訴えてクリニックを受診された不登校の患者さんは大変おとなしく、お母さんを介してしか会話できませんでした。ところが、学校健診で会った際には、ずいぶん印象が違いました。養護の先生に対してはおしゃべりで、保健室では頭痛を感じることなく勉強できたのです。その患者さんは、養護の先生のもとで勉強しながらいろいろと話をした結果、徐々にクラスで勉強ができるようになりました。
このように話せる大人を見つけるのは、子どもにとって難しいことです。相性もあるでしょう。でも、どのお子さんにも、ほどよい距離が取れて信頼できる家族以外の大人が見つかるといいのかもしれません。
最後に、夏休み中に遅寝遅起きの習慣がついてしまうと、休み明けに学校へ行くのがよりつらくなります。登校しない日も、生活リズムはあまり変えず、起床時間・食事時間と回数・就寝時間は同じにしましょう。そして、新学期が憂うつになるような要素があれば、早めの解決が肝心です。勉強や運動の苦手があれば夏休み中に追いつくようサポートする、人間関係に問題があれば相談先を見つけたり他の友達と会えるようにしたり、宿題は早めに終わらせるなど、対応をとってみてください。
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小児科専門医
1971年、東京生まれ。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都内で開業。医療者と非医療者の架け橋となる記事や本を書いていきたいと思っている。『新装版 小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK』など著書多数。
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(小児科専門医 森戸 やすみ)
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