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新人のミスに三流は「様子を見る」、二流は「理由を尋ねる」…パワハラと思われない"一流のうまい声かけ"

プレジデントオンライン / 2024年8月21日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

若手社員にはどう接すればいいのか。マネジメントコンサルタントの濱田秀彦さんは、「『パワハラ』と言われるのを恐れて、強く言えないと悩む上司・先輩層は多い。叱られ慣れていない令和時代の若者に対して効果的にメッセージを伝えるには、ひと工夫する必要がある」という――。

■「新入社員を叱れない」という悩み

マネジメントやリーダーシップの研修を行っていると、参加者である管理職、監督職の方々から新入社員に関する悩みをよく聞きます。例えば「レクチャー中に寝る」「言葉遣いがなっていない」「業務時間中にスマホでSNSを見ている」「メモをとらず、同じことを何度も聞く」「チームミーティングに平気で遅れてくる」などです。

そういった悩みを持つ方に「注意はしないのですか?」と聞くと、「パワハラと言われたくない」「ちょっと言うと落ち込まれる」「注意しても言い訳をしてくるので……」と歯切れの悪い返事が。

新入社員をはじめとする現代の若者層は、人生の中で叱られた経験が少なく、自分のよくない行動に気づき、正す機会を得られないまま社会に出てしまう傾向があります。

一方、管理職・監督職などの指導者層は、新入社員の非常識な行動を苦々しく思ってはいるものの、会社から研修などで、繰り返し「パワハラはいけない」「早期退職させるようなことはあってはならない」などと言われており、腫れ物に触るように接しています。

このままでは、新入社員は自身のよくない行動を正すことができず、指導者層もストレスを溜めるばかりです。

どうすればよいか、考えましょう。

■三流は「1度目は注意せず、様子を見る」

三流の指導者は叱るべきところで叱りません。気持ちはわかります。「うるさい上司と思われたくない」「叱った後の気まずい雰囲気がイヤ」「パワハラと訴えられたくない」と考え、叱りを躊躇するわけです。

ただ、叱らなかったらどうなるでしょう。

例えば、あなたが仕切っているチームミーティングに、新入社員が事前の連絡なしに遅れてきたとします。何も言わなかったら、時間通り来た先輩社員たちは「これはアリなんだ」と思ってしまいます。こういうことが度重なると、誰も時間通りに来なくなってしまう、規律崩壊という状態になります。犯罪学の世界に「割れ窓理論」というものがあります。これは、1枚の割れた窓ガラスを放置しておくと、次々に略奪が起こり、荒廃していくというもの。新入社員が割れ窓になってしまうわけです。

それに、叱るべきところで叱らないと、自分が上司から「なんで注意しないんだ!」と叱られてしまうかもしれません。だから、叱るのが苦手な指導者も、叱らざるを得ないときはあります。

また、よくない行動を見かけても「よっぽどのことがあったのだろう」「次からはきちんとしてくれるだろう」と考え1度目は何も言わず様子を見るという考えの指導者もいます。

これも、よくありません。1度目は様子を見た指導者も、2度目は言うでしょう。この状況を注意された新入社員から見ると、「1度目は何も言われなかった」「2度目は言われた」という事実だけが残ります。1度目は見逃してもらったとは考えず、2度目に言われた際、単に「今日は機嫌が悪い日なんだな」と解釈してしまうでしょう。指導者の「次からはきちんとしてくれるだろう」「頼むよ」という祈りが通じることはありません。

だから、よくない行動に対しては、1度目から注意が必要なのです。そこで、問題になるのは注意の仕方です。

■体育会出身の若手が、いきなり泣き出したワケ

よくない行動に対し1度目から注意すれば、三流からは抜け出せますが、次の課題は叱り方です。先ほどの、チームミーティングに事前の連絡もなく遅れてきた新入社員にこのように言ったらどうなるでしょう。

「遅い! 何時だと思ってるんだ」

今の新入社員は、このような叱られ方に慣れていません。いきなり、強めに言われたら、顔面蒼白。ショックで立ち直るのに相当の時間がかかるでしょう。実際に、管理職の方から「大学時代に体育会だった男性新入社員に、『体育会系だから少しキツく言っても大丈夫だろう』と思って、少し強めに注意したら、いきなり泣き出した」とボヤかれたことがあります。

公園のベンチに座り込み、頭を抱えている若い男性
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

また、追い込まれると「クレーム対応があったんです」のように、言い訳をしてくる新入社員もいます。以前だったら、授業や部活で言い訳をしたら先生や監督から「言い訳するな!」と一喝されることもありましたが、今はそういう時代ではありません。学生時代に苦し紛れの言い訳でその場を乗り切った、という成功体験を持つ新入社員は、追い込まれると言い訳作戦を展開します。それは、案外巧みで、上司の次のひと言は苦しくなりがちです。

■二流は「なぜ遅れたの?」と質問する

ということで、いきなりキツく言って追い込むのは得策ではなさそうです。でも、穏やかに話せば万事解決かというと、そうもいきません。例えば、

「あれ、時計見なかった?」「開始時間知らなかったの?」「遅れてもいいと思ってるの?」「連絡する5秒のヒマもなかった?」

こんな質問を矢継ぎ早にしたら、パワハラやモラハラ上司と見られかねません。また、次のような「なぜなぜ攻撃」も、パワハラ・モラハラ系と見られる可能性があります。

上司】なぜ遅れたの?

新人】クレーム対応で?

上司】なぜクレームになったの?

新人】ちょっと行き違いがあって

上司】なぜ?

新人】それは……

上司】なぜ黙ってるの?

これは、新人でなくてもたまりませんね。製造業などでよく使われる「なぜなぜ分析」というのがあります。これは、真因を探るのに「なぜ」を繰り返し、掘り下げるというものです。この「なぜなぜ分析」は、「こと」に向けてはとても有効なのですが、「人」に向けると、責めのニュアンスが強くなってしまいます。相手は「責められた」と被害者意識を感じて終わりです。では、一流の叱り方とはどのようなものなのでしょうか。

■一流は「段階的に叱る」

よくない行いに対しては1度目から叱る。ただし、いきなり強く言うのは効果的ではない。この前提から一流の叱り方が見えてきます。

一流の指導者は、段階的に叱ります。具体的には次のような3段階です。

1度目はソフトに(LEVEL I)
2度目はピシリと(LEVEL II)
3度目は厳しく(LEVEL III)

では、それぞれのイメージを、チームミーティングに新入社員が連絡なく遅れてきた場合にあてはめてみましょう。

LEVEL I「ソフトに」

これは、現代の指導者層からすると「叱る」レベルではなく、ソフトに注意するといったものです。例えば、ミーティングがすでに始まっており、上司が話しているところに、新入社員が入ってきたとします。

上司】(話を一度止め、新人のほうを見て)「どうした?」

新人】「ちょっとクレームがありまして」

上司】「そうか。わかった。次は時間通りに来てくれよ。頼むぞ」

「生ぬるい」と思うかもしれませんが、叱られ慣れていない現代の若者層には、この程度でじゅうぶん効き目があり、行いを正してくれる可能性大です。また、時間通り来た先輩社員も「遅れてくると言われるんだな」と感じ、規律崩壊を防げます。

LEVEL II「ピシリと」

1度目にソフトに注意すれば、たいてい直してくれますが、再発した際の2度目のイメージも作っておきましょう。先日、ソフトに注意したにもかかわらず、再びチームミーティングに連絡なしに遅れてきたとしましょう。

■「みんなって誰のことですか?」を避ける方法

上司のセリフ

「10分遅刻。2度目だよ」(事実)
「私は進められなくて困っていた」(影響)
「時間通りに来てくれ」(指示)
「どうしても遅れるときは事前に連絡してくれ」(選択肢)

これらのセリフを、相手の目を見て、ピシリと告げます。最初からこのレベルをやると少々厳しすぎますが、今回は2度目という想定なので、この程度は必要です。

上記の「事実」―「影響」―「指示」―「選択肢」という枠組みは、相手に意思を伝達し納得させる方法として知られる「DESC法」を応用したものです。事実をベースに客観的に話しながら、相手にやってほしいことを伝え、選択肢を示すことで追い込み過ぎず、納得を得るという話法です。

このプロセスの中で、やってしまいがちなのが、「影響」のところを「みんなに迷惑かけるじゃないか」といったセリフにしてしまうこと。そうすると、相手は「みんなって誰のことですか?」と心の中で反論してしまいます。それを避けるため「私は困っていた」とIメッセージ(私を主語にした表現)にします。そうすれば、「あなたは困ってない」という反論はできず、ストレートに伝わります。

今回、冒頭でさまざまな新入社員の非常識な行動を挙げましたが、「事実」―「影響」―「指示」―「選択肢」という言い方は、どの行動に対しても活用できます。LEVEL Iで注意したにもかかわらず再発したときには、ぜひやってみてください。

■3段階目の「厳しく叱る」は封じ手

段階的な叱り方については、理論上もうひとつ上の「厳しく叱る」というレベルがあります。ただ、そちらはあくまで「理論上」であって、現代社会では、実際には使えない「封じ手」です。例えば、先のミーティングに連絡なしで遅刻してくる新人に、ピシリと叱っても再発したとします。「厳しく」のレベルになったら、

上司】「君は参加しなくていい。席に戻って仕事してくれ。後で話そう」

新人】「いやこれには理由がありまして」

上司】「いいから戻って仕事をしてくれ。話は後だ」

という感じになるでしょう。しかし、これは新人が総務部に「会議への参加を拒否された」と訴えた場合、上司のほうが責められる可能性があり、さすがにリスキーです。レベルIIIの状態になる可能性が高い場合は、管理職も自身の上司や総務・人事部門に対応を相談し、連携しながら対応を決め、組織的に進めるほうがよいでしょう。

このように、段階的な叱り方のイメージを作ってきましたが、大切なのは実はレベルIです。レベルIで行動が改善されれば、レベルIIはやらなくて済むからです。レベルIも躊躇してしまいそうな方は、新入社員のよくない行動を見かけたときに「どうした?」のひとことをかけるだけでも効果があります。「その行いを私は気にしている」というメッセージになるからです。叱られ慣れていない令和時代の若者には、それだけでも効果があります。

よくない行いを見かけたら、1度目から注意。

それが、一流への一歩目です。

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濱田 秀彦(はまだ・ひでひこ)
マネジメントコンサルタント
ビジネス書作家。早稲田大学卒業後、住宅メーカー関連会社へ入社、最年少支店長を経て人材開発会社に転職。営業マネージャー、経営企画マネージャーを経て独立。現在は、ヒューマンテック代表。マネジメント、コミュニケーション、キャリア開発のコンサルタントとして講演・セミナーを行う。主な著書に『あなたが上司から求められているシンプルな50のこと』『あなたが部下から求められているシリアスな50のこと』(以上、実務教育出版)、『仕事を教えることになったら読む本』(アルク)などがある。

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(マネジメントコンサルタント 濱田 秀彦)

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