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「結婚している人のほうが幸福度は高い」約90万人のビッグデータ分析でわかった"日本の幸福度の実態"

プレジデントオンライン / 2024年8月28日 16時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bee32

幸福度は年齢によって大きく異なる。麗澤大学工学部教授の宗健さんは「『いい部屋ネット 街の住みここちランキング』の2019年から2024年の6年分の回答者、約90万名の個票データから男女の年齢別の主観的幸福度を集計した。その結果、幸福度は男女ともに50歳前後で最も低下していた」という――。

■「世界幸福度ランキング」で日本は51位だが…

ネットで「幸福度」と検索すると、世界幸福度ランキングが上位に出てきて、日本の順位があまり高くないという解説があったりする。

実際、最新の2024年版を見ると、1位はフィンランド、2位はデンマーク、3位はアイスランド、4位がスウェーデン、と北欧の国が並び、日本は51位となっている。

この世界幸福度ランキングは、国連が2012年から発表しているもので、自分の幸福度について最低を0、最高を10として回答してもらう主観的幸福度の国別の平均値をランキングにしたものだ。

そして、主観的とは個々人がどう感じているかということであり、その傾向は当然、その社会の構造や価値観、人種構成等の影響を受ける。その結果、1位のフィンランドは10点満点で7.74、日本は6.06とものすごく大きな差がある。

このことを考えれば、国別の幸福度の比較をことさら気にする必要はないだろう。

■人生全体で見ると幸福度はU字カーブを描く

幸福度が主観的なものだとしても、当然、周りの他人との比較といった要素は含まれる。そして、幸福度を年齢別に集計してみると年齢によって大きく変化していることがわかる。

図表1は、筆者が企画、設計、分析を担当している「いい部屋ネット 街の住みここちランキング」の2019年から2024年の6年分の回答者(92万3456名)の個票データ(以下、「住みここちランキングデータ」という)から、男女の年齢別の主観的幸福度(最低1、最大10)を集計したものである。

【図表1】男女の年齢別主観的幸福度
図表=筆者作成

男性の幸福度は20歳時点の6.68から一貫して緩やかに低下し、48歳時点の6.11で最低になる。その後、上昇に転じて60歳以降は急上昇し64歳で20歳時点の幸福度を超え、その後も上昇し続ける。

女性の幸福度は男性とは少し傾向が異なり、20歳時点の幸福度は6.68と男性と同じだが、26歳以降30歳頃にかけて一度上昇し、その後下降に転じ、49歳時点の6.48で最低になる。その後は、男性と同様に上昇に転じ、59歳時点で20歳時点の幸福度を超え、その後も上昇し続ける。

こうした傾向は、2010年に発刊された『日本の幸福度』(大竹文雄・白石小百合・筒井義郎)でも「年齢と幸福度との関係に関しては、加齢とともにU字型を描くとする研究が大半である(p.24)」とあるように、先行研究とも整合的である。

■50歳代の自殺者数が最も多い

アメリカでは、白人中年男性を中心とする自殺、薬物依存、アルコール関連疾患等による「絶望死」と呼ばれる死因が問題になっているが、日本でも自殺者数は2003年の3万4427名をピークに減少しているとはいえ、2023年でも2万人を超えている。

年齢別に見ると、50歳代の自殺者数が最も多く、次いで40歳代の自殺者数が多い。40~59歳が全体の35.8%を占めており、50歳前後の自殺者が多いと思われる。

そして、幸福度が50歳前後で最低になることを考えれば、幸福度と自殺に一定の関係があることが示唆される。

しかし、強調しておきたいのは、50歳以降は幸福度が平均としては上昇していることだ。

20歳以降、幸福度が下がり続け、50歳前後で最低になったとしても、その後、幸福度が上昇に転じ、60歳以降も高まることは、たとえある時点で人生に絶望しても自殺する必要がないことを示している。

■「男らしさ」への呪縛が幸福度を押し下げる

男女別に見ると、女性は常に男性よりも幸福度が高いことが示されている。これも、『日本の幸福度』で「幸福度の性差については、男性よりも女性の幸福度が高いことは多くの研究で報告されている(p.9,23)」とあるように先行研究とも整合的である。

この背景には、おそらく社会的に形成された「男らしさ」へのこだわりが影響しているだろう。

その男らしさとは、「仕事をして十分な収入があること」「社会や地域での一定の地位を獲得していること」「優れた体格や自信のある態度」「家族を持ち、家を構えること」といったことであり、そのどれかに欠けていることが、幸福度を押し下げている可能性がある。

つらそうに頭を抱える男性
写真=iStock.com/kuppa_rock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

日本では上方婚と呼ばれる、女性よりも男性のほうが年齢、学歴、収入が高い組み合わせが多いことも、男らしさが男女両方に意識されていることを示唆している。

実際、令和4年(2022年)人口動態調査の「初婚夫妻の年齢差別にみた年次別婚姻件数及び百分率」でも、夫が年上の夫婦は53.4%と過半数を占めており、夫が3歳以上年上の場合は29.6%となっている。

令和4年度就業構造基本調査の第240-1表から、夫の所得が妻の所得よりも高い比率を計算してみると、夫の年齢が30歳未満の場合で64.6%、夫の年齢が30歳以上39歳以下の場合では87.0%となっている。

この男らしさの呪縛は、年をとっても圧力をかけ続け、子どもがいる場合は教育費がかかり、仕事でも責任が増し、かといって弱音もはけない50歳前後の幸福度を押し下げているのだろう。

女性も子どもがいる場合には50歳前後の苦労は男性と同じようなもので、その苦労の時期を過ぎれば、幸福度が再び上がっていく、という構造なのだろう。

■結婚することは幸福度を大きく高める

所得の高さといった「男らしさ」を一定程度確保できている男性が、結婚している傾向が強いことは以前から指摘されているが、結婚している男女、結婚していない男女の幸福度を年齢別に集計してみると図表2のようになる。

【図表2】結婚している男女・結婚していない男女の年齢別幸福度
図表=筆者作成

特徴的なのは、結婚しているか、していないかで幸福度にはかなりの差があり、かつ、結婚している場合の男女差はかなり小さいのに比べて、結婚していない場合の男女差がかなり大きいことだ。

結婚するかしないかは、もちろん個々人が決めることだが、約90万人のビックデータを解析した結果は、結婚したほうが、幸福度が高まることを示している。

年齢別の変化を見ても、結婚している場合の50歳前後にかけての幸福度の低下は、結婚していない場合の低下よりも小さい。

結婚していることが幸福度を押し上げることは『日本の幸福度』でも「既婚者の幸福度が高いという事実は、多くの研究で指摘されている(p.27)」とあり、詳細は割愛するが、結婚することが幸福度を押し上げる効果は、年齢とは関係がない。

昨今は、結婚しなくても幸せになれる、という主張もあり、それを否定するつもりはない。もちろん、結婚すれば個人の自由度は狭まり、様々な苦労もあるだろうが、結婚することをもう少し前向きに捉えても良さそうだ。

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宗 健(そう・たけし)
麗澤大学工学部教授
博士(社会工学・筑波大学)・ITストラテジスト。1965年北九州市生まれ。九州工業大学機械工学科卒業後、リクルート入社。通信事業のエンジニア・マネジャ、ISIZE住宅情報・FoRent.jp編集長等を経て、リクルートフォレントインシュアを設立し代表取締役社長に就任。リクルート住まい研究所長、大東建託賃貸未来研究所長・AI-DXラボ所長を経て、23年4月より麗澤大学教授、AI・ビジネス研究センター長。専門分野は都市計画・組織マネジメント・システム開発。

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(麗澤大学工学部教授 宗 健)

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