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休み明けの「朝、起きられない」には理由がある…親子そろって陥りがちな「栄養失調」という落とし穴

プレジデントオンライン / 2024年8月26日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kieferpix

長期休暇後に子どもが不登校になってしまうのはなぜか。総合内科専門医の梶尚志さんは「給食のない休暇中は偏った食生活で栄養不足に陥りがちになる。その結果、疲れやすくなったり学習意欲が低下したりといった悪影響が生じることがある」という――。

■不登校の児童・生徒数は過去最多

今、日本では、夏休みなどの長期休暇の後に、学校に行けなくなる子ども達が急増しています。

そもそも、不登校の児童生徒数は年々増加しており、特に夏休み後にその傾向が顕著なのです。文部科学省の調査結果によれば、2022年度には不登校の児童・生徒数が29万9048人に達し、過去最高を記録しました。

うまく学校生活に戻れなくなる理由として、いくつかの理由が挙げられます。

・生活リズムの乱れ
・休み明けの学校生活に対する不安やストレス
・休み中、友人との関わりが少なくなることからの社会的な孤立感

その中で、特に食生活も含めた生活のリズムの変化や乱れについては、家庭内でも取り組むことができることが多く、とても重要なポイントと考えています。

■スマホの使い過ぎは睡眠を妨げる

生活のリズムが乱れると、体調にどのような変化が生じるのでしょうか。

まずは睡眠に問題が出てきます。長期休暇中は、夜更かしや遅寝遅起きが増えるため、通常の学校生活の期間に比べて生活リズムが大きく乱れます。これにより、体内時計が崩れ、夜に眠りにつきにくくなったり、朝起きるのが難しくなったりします。

また、休暇中は、テレビ、スマートフォン、コンピュータなどのスクリーンに触れる時間が増える傾向があります。特に、夜間にこれらのデバイスを使用することで、ブルーライトがメラトニンの分泌を抑制し、睡眠を妨げることがわかっています。

*Blocking nocturnal blue light for insomnia:Ari Shechte et al. J Psychiatr Res. 2018 Jan: 96: 196-202

次に、給食のない休暇中は食生活が偏り、栄養不足に陥りがちです。疲れやすい、勉強したくなくなる、怒りやすい、といった変化は必要な栄養を摂れていないサインだと言えます。

例えば、鉄分やビタミンB群が不足すると、エネルギー代謝が低下し、疲労感が増します。特に鉄分不足による貧血は、全身の倦怠感を引き起こすことがあります。

オメガ3系脂肪酸やビタミンB群(特にB6、ナイアシン)が不足すると、脳の機能が低下して、集中力や記憶力に悪影響を及ぼします。これにより、学習意欲が低下することがあります。

■マグネシウムやカルシウムが不足するとイライラ…

また、ビタミンC、ビタミンD、亜鉛が不足すると、免疫機能が低下し、風邪や感染症にかかりやすくなります。そのことが原因で、長期休暇明けに学校に行くと、集団生活に戻ることで体調を崩しやすくなります。

情緒不安定でイライラしがちになるのは、マグネシウムやカルシウムが不足しているからかもしれません。神経系のバランスが崩れ、学校生活への適応が困難になって不登校につながる可能性があります。

食物繊維や水分摂取が不足すると、消化機能が低下し、便秘や消化不良が生じやすくなります。これにより、腹部の不快感や食欲不振が生じ、学校でのパフォーマンスに影響を与えることがあります。

■夏休み中に染みついた「7つの悪習慣」

こうした体調不良を引き起こさないためには、次に挙げる「7つの悪習慣」を改める必要があります。

1.不規則な食事時間

食事時間が不規則になることで、体内時計が乱れ、睡眠リズムや集中力が低下します。

*Chrono-Nutrition: Circadian Rhythm and Personalized Nutrition:Marica Franzago et al. Int J Mol Sci. 2023 Feb; 24(3): 2571.

2.朝食の欠食

朝食を摂らない習慣がつくことで、体重の増加や肥満、エネルギー不足や集中力の低下を招き、不登校のリスクが増大します。

*Chrono-Nutrition: The Relationship between Time-of-Day Energy and Macronutrient Intake and Children’s Body Weight Status:Sofia Vilela. Journal of Biological RhythmsVolume 34, Issue 3, June 2019, Pages 332-342

3.栄養素のバランスの崩れ

ファストフードや高脂肪食といった偏った食事を続けることで、ビタミンやミネラルの不足が生じ、心身の健康に悪影響を与えます。

4.過剰な糖質の摂取

糖分の多いお菓子や飲み物を過剰に摂取することで、血糖値の急上昇と急下降が繰り返され、情緒不安定や疲労感を引き起こします。

5.ビタミンおよびミネラル不足

野菜や果物が不足した食生活が続くと、ビタミンやミネラルが不足しやすくなります。これにより、免疫力の低下、疲労感、精神的不調などが生じやすくなります。特に、先ほど紹介したようにビタミンD、B群、鉄、亜鉛などの栄養素は、精神的な健康に重要な役割を果たしています。これらの不足が、鬱や不安を引き起こすリスクを高めるとされています。

6.水分不足

水分摂取が不十分だと、軽度の脱水状態が続き、認知機能や気分に悪影響を及ぼします。これが学校生活に戻った際の適応障害につながることがあります。水分不足が集中力の低下や気分の変調を引き起こすことは、多くの研究で示されています。

*Effects of Dehydration and Rehydration on Cognitive Performance and Mood among Male College Students in Cangzhou, China: A Self-Controlled Trial:Na Zhang. Int J Environ Res Public Health. 2019 Jun; 16(11): 1891.

7.ジャンクフードの過剰な摂取

ジャンクフードを過剰に摂取することで、トランス脂肪酸が体内の炎症を悪化させて、メンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性があります。ジャンクフードの摂取が多い子どもたちは、行動問題が増加し、感情が不安定になる傾向があることが確認されました。

また、栄養価の高い食事を摂っている子どもたちに比べて、不安や抑うつ症状が顕著であることが、いくつかの医学論文で示されています。

*Fast Food Intake, Emotional and Behavioral Problems among Adolescents with Overweight and Obese Problems Participating in MyBFF@school Intervention Program:Zahari Ishak. SAGE OpenVolume 12, Issue 1, January-March 2022

■症状を緩和する栄養素「ベスト3+1」

夏休み中に不足しがちな栄養素を摂取するために、どんな食品を選べば良いのでしょうか。

〈タンパク質〉

タンパク質は、脳内の神経伝達物質の合成にも関与しており、精神的な健康や認知機能の維持に欠かせません。特に、タンパク質から合成される、トリプトファンというアミノ酸はセロトニンを合成する原料となり、気分を安定させて睡眠の質を良くします。

十分なタンパク質を摂取できると、メンタルホルモンのバランスを維持し、集中力や注意力をサポートしてくれ、学校生活への復帰がスムーズになると考えられます。

タンパク質を多く含んでいるのは肉・魚・卵料理・大豆製品です。朝ご飯には無調整豆乳がオススメです。

■脳機能をサポートするビタミンBを摂るメニュー

〈ビタミンB群〉

ビタミンB群は、エネルギー代謝において重要な役割を果たし、脳の機能をサポートします。特にビタミンB6、ナイアシン2は神経伝達物質の合成に関与し、気分の安定やストレスへの耐性を高める効果があります。また、ビタミンB12と葉酸は、ホモシステインの代謝を助け、脳の健康を維持する役割を果たします。

・豚肉
特にビタミンB1(チアミン)が豊富で、エネルギー代謝を助け、疲労回復に効果があります。暑さで食欲が減退気味であれば、サッパリとしたサラダ仕立ての「冷しゃぶ」が、おすすめです。

豚肉のしゃぶしゃぶサラダ
写真=iStock.com/deeepblue
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/deeepblue

・牛肉
ビタミンB12、ビタミンB6、ナイアシン、リボフラビンなど、タンパク質代謝に関わるビタミンが含まれます。植物性タンパク質やビタミンB、ミネラルが豊富な豆苗を使った「牛肉と豆苗のオイスターソース炒め」がおすすめです。お子さんも好きな味付けで、白米も進む一品。何より時短調理なので忙しい方や、暑い昼間の調理時には助かるメニューではないでしょうか。

・サーモン
ビタミンB12とビタミンB6を多く含み、脳の健康をサポートします。例えば朝食に千切りキャベツと鮭フレーク、トッピングにチースやマヨネーズを使った「鮭フレークのピザ風トースト」は食べやすくおすすめです。

・鶏レバー
ビタミンB2(リボフラビン)やビタミンB12を多く含み、血液を作るために重要です。レバーは食感や味などから苦手とするお子さんが多い食品です。調理法や味付けに工夫すると良いでしょう。おすすめは、カレー風味の唐揚げです。カレー風味によりレバーの臭みが消え、油で揚げることで、外はカリカリ、中はジューシーな食感で食べやすくなります。

・納豆
ビタミンB2、B6、B12が豊富で、腸内環境を整え、免疫力をサポートします。納豆オムレツやお味噌汁の具として朝ごはんにプラス一品で。

・卵
ビタミンB群全般を含んでおり、特にビタミンB12が多く、赤血球の生成や神経機能に役立ちます。ゆで卵にしてサラダのトッピングにしてはいかがでしょうか。

■鉄分不足は夏バテ・熱中症の原因にもなる

〈鉄分〉

鉄分は、赤血球の中で酸素を運ぶヘモグロビンの構成成分であり、全身の酸素供給に欠かせないミネラルです。また、鉄分は脳の発達やドーパミンやセロトニンといったメンタルホルモンの合成にも関与しており、特に集中力や記憶力、気分の安定に寄与します。

鉄分不足は熱中症や夏バテの原因にもなるため、残暑が続く9月以降も積極的に摂りたい栄養素です。鉄分を含む食材については前回記事をご覧ください。

■魚の缶詰でビタミンDを効率的に摂取

〈ビタミンD〉

ビタミンDは、免疫機能を高め、セロトニンの合成を促進し、気分を安定させます。したがって、ビタミンDが不足すると、うつ症状や不安感を引き起こす可能性があります。食事での摂取が難しいビタミンDは、天然由来型のビタミンD3製剤のサプリメントを摂取することで、適切なレベルを維持し、気分の安定化やストレスの軽減によって、不登校のリスクを減らすことが期待されます。

・サバ
脂ののった青魚であるサバはビタミンDを多く含みます。しかし、青魚特有の臭いや骨が気になりサバが苦手なお子さんも多いかと思います。そこで、骨なしの塩サバと市販のちらし寿司の素を使った「サバのちらし寿司」がおすすめです。骨なし塩サバはフライパンで簡単に焼けます。焼き上がったサバとちらし寿司の素、ご飯をまぜれば完成。青魚特有の臭いは酢飯で気になりません。お子さんも好きな味だと思います。

・マグロ
特にツナ缶に加工されることの多いマグロはビタミンDを含みます。茹でた小松菜や豆苗をポン酢やお好みの調味料と和えて、おひたし風に。

・イワシ
缶詰のイワシもビタミンDを効率的に摂取できる食品です。そのままでは食べにくいので、一手間加え、お豆腐と合わせた「イワシハンバーグ」やひき肉の代わりにイワシ缶を使った「イワシのキーマカレー」など良いかもしれません。

・シイタケ・しめじ(乾燥したもの)
干しシイタケにはビタミンDが多く含まれています。特に日光を当てて乾燥させたものが良いです。「炊き込みご飯」、「春巻き」の具材として使用すると食べやすいでしょう。

・卵黄
卵の黄身にはビタミンDが含まれており、手軽に摂取できます。卵同様にビタミンDが豊富なキクラゲとトマトをオイスターソースで炒めた「ふわふわ卵とキクラゲとトマトのオイスターソース炒め」や「サーモンユッケ」がおすすめです。

トマト・玉子・きくらげ炒め
写真=iStock.com/Promo_Link
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Promo_Link

・チーズ
チーズ、特に硬めのチーズ(例えばチェダーやパルメザン)はビタミンDを含んでいます。パスタやサラダのトッピングで。

■親子一緒に食事メニューを考えて作ってみる

長期休暇で生活習慣が乱れてしまうのは、子どもも大人も一緒です。親子そろって生活習慣の改善に取り組んでみてください。

まず重要なのは、規則正しい睡眠リズムの維持です。毎日、同じ時間に寝起きする習慣をつけましょう。親が一緒に早寝早起きを実践することで、子どもも自然と規則正しいリズムを維持できます。

夜寝る前には、テレビやパソコン、スマートフォンなどを見るスクリーンタイムを控え、リラックスできる活動(読書、ストレッチなど)を親子で一緒に取り入れると効果的です。規則正しい睡眠リズムは、体内時計を整え、休み明けにスムーズに学校生活に戻ることがでるようになります。十分な睡眠は、子どもの集中力や気分の安定にも寄与します。

食事についてはこれまでも解説してきた通りです。親子で一緒にメニューを考えて、食事を作ってみてください。特に、野菜やタンパク質、鉄分を含む食品をバランスよく取り入れましょう。料理を通じて栄養について親子で学ぶこともできますし、食事を楽しむことで、家族のコミュニケーションが深まり、食事の時間がリラックスできる場になります。

■日中は外に出ると、良いことだらけ

日中は、外での活動や運動を取り入れましょう。親子で散歩やサイクリング、スポーツなどのアウトドア活動を楽しむと良いです。また、家庭菜園やDIYなど、屋外での親子の共同作業もお勧めです。日中の活動は、身体的な疲労を促進し、夜に良質な睡眠を取るために役立ちますし、紫外線を浴びることでビタミンDの生成が促進され、気分の安定や免疫力の向上にもつながります。

家族で外出
写真=iStock.com/TATSUSHI TAKADA
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/TATSUSHI TAKADA

夏休みの宿題以外に、少しずつ学習の時間を設けることも効果的です。特に親子で一緒に読書をしたり、簡単な学習ゲームを楽しんだりすることで、楽しく学ぶ習慣をつけることができます。無理のない範囲で、定期的に学習する時間を設けることが重要です。

学習習慣を維持することで、夏休み明けの学習に対する抵抗感を減らし、学業にスムーズに戻ることができます。また、学習を通じて達成感を感じることで、自己肯定感が高まります。

最後におすすめするのが、親子で達成したい目標を立てることです。それが家族での旅行計画や、夏休みの宿題や工作などでも良いです。目標を達成したら、家族でお祝いする時間を持ちます。目標を設定し、それを達成することで達成感を味わうことができます。これは、自己効力感を高め、不登校の予防につながります。また、家族での成功体験を共有することで、家族の絆が深まることでしょう。

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梶 尚志(かじ・たかし)
梶の木内科医院院長
1964年生まれ、富山県出身。富山医科薬科大学(現富山大学)医学部医学科卒業。医学博士。総合内科専門医、腎臓専門医として患者を診察する中で、通常の診察では解決できない「体の不調」に栄養学的なアプローチから治療と生活指導を行う。著書に『え、私って栄養失調だったの? その不調は病気でなく状態です!』『え、うちの子って、栄養失調だったの? その不調は食事で改善します!』(みらいパブリッシング)がある。

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(梶の木内科医院院長 梶 尚志)

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